DX不動産推進協会とは|業界のDXを推進する団体
「DX不動産推進協会」について、設立目的や活動内容の詳細を知りたいと考える方は少なくありません。
この記事では、DX不動産推進協会の概要、活動内容、不動産業界のDX動向を、DX不動産推進協会公式サイトの情報を元に解説します。
不動産業界関係者やDX推進担当者の方が、業界のデジタルトランスフォーメーションの現状と課題を把握できるようになります。
この記事のポイント
- DX不動産推進協会は2020年12月設立、2025年7月1日より「AI不動産推進協会」に名称変更
- 新興不動産8社(Robot Home、Casa、GA technologies等)が設立メンバー
- 2022年5月の宅建業法改正を実現し、電子契約を全面解禁
- 不動産業界の76.8%がDX未実施または予定なし(2021年総務省調査)で、IT投資率・労働生産性が低い
- AI査定、バーチャル内見、RPA導入などのDX事例で業務効率化を実現
(1) 2020年12月設立、2025年7月にAI不動産推進協会へ名称変更
DX不動産推進協会は、2020年12月17日に設立された不動産業界のデジタルトランスフォーメーションを推進する業界団体です。
代表理事は古木大咲氏(Robot Home CEO)が務めています。
2025年7月1日より「AI不動産推進協会」に名称変更し、電子化実現後のAI・ビッグデータ活用にフォーカスを移行しています。
(出典: DX不動産推進協会公式サイト)
(2) 設立メンバー企業8社(Robot Home、Casa等)
設立時の理事会社は以下の8社です。
| 企業名 | 事業内容 |
|---|---|
| Robot Home | 不動産テック |
| Casa | 賃貸管理システム |
| プロパティエージェント | 不動産投資 |
| GA technologies | 不動産テック |
| AMBITION | 不動産仲介 |
| ZUU | 金融メディア |
| Residence kit | 不動産開発 |
| シーラホールディングス | 不動産開発・投資 |
新興不動産会社を中心に、会員100社以上を目標として活動しています。
(出典: 日本経済新聞)
(3) 不動産取引の全面電子化を推進する目的
設立の主な目的は、不動産取引の全面電子化です。
従来の紙ベースの契約書・重要事項説明書をデジタル化し、業務効率化と顧客利便性向上を実現することを目指しています。
協会の設立目的と活動内容|政策提言・電子化推進
(1) 政策提言と宅建業法改正の実績(2022年5月)
協会の最大の成果は、2022年5月の宅地建物取引業法改正の実現です。
この法改正により、重要事項説明・売買契約・媒介契約の電子交付が認められ、不動産電子契約が全面解禁されました。
民間の立場から政策提言を行い、業界全体のDX推進を後押ししています。
(2) 不動産ID統一化の推進
不動産IDとは、不動産を一意に識別するためのIDです。
法務局・税務署・市区町村役場等で分散している不動産情報を統一・一元化するための仕組みとして、協会は不動産ID統一化を推進しています。
(3) 不動産履歴情報の一元化提言
不動産の所有履歴、修繕履歴、取引履歴などの情報が各所に分散しているため、一元化を提言しています。
情報の透明性向上と取引の円滑化が期待されます。
(4) 国土交通省の不動産ID官民連携協議会への参画(2024年3月)
2024年3月、協会は国土交通省の「不動産ID官民連携協議会」に入会しました。
不動産取引の透明化推進と、不動産IDによるビッグデータ整備を目指しています。
(出典: Robot Home Inc.)
(5) IoT・AI活用の推進
2025年7月の名称変更(AI不動産推進協会)に伴い、AI・ビッグデータ活用にフォーカスを移行しています。
IoT機器を活用した物件管理、AI査定システムの普及などを推進しています。
不動産業界のDXとは|デジタル化の必要性
(1) DX(デジタルトランスフォーメーション)の定義
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術を活用して業務効率化や新サービス創出を行い、顧客ニーズに応える変革です。
不動産業界では、紙ベースの業務プロセスのデジタル化、対面営業のリモート化、AI・IoT活用が主な取り組みです。
(2) 不動産業界が抱える課題(IT投資率・労働生産性の低さ)
不動産業界は、他業界と比較してIT投資率・労働生産性が低い傾向があります。
2021年の総務省調査によると、76.8%の企業がDX未実施または予定なしと回答しており、業界全体のDX推進が課題となっています。
(出典: 野村総合研究所)
(3) 紙ベースの物件情報デジタル化
従来、物件情報は紙の図面・契約書で管理されており、リアルタイム更新が困難でした。
デジタル化により、物件情報のリアルタイム更新と共有が可能になります。
(4) 対面営業のリモート化
コロナ禍を契機に、IT重説(オンラインでの重要事項説明)、リモート内見が普及しました。
顧客の移動負担を軽減し、効率的な営業活動が可能になります。
(5) 不動産テックの台頭
不動産テックとは、不動産×テクノロジーのことで、AI査定、VR内見、IoT活用等、不動産業界でのテクノロジー活用全般を指します。
スタートアップ企業を中心に、新しいサービスが続々と登場しています。
不動産DXの具体的な事例|AI査定・バーチャル内見・業務効率化
(1) AI査定システム(5秒で価格査定)
AI査定システム「HOMENET Pro」では、5秒で価格査定、3分で提案書作成が可能です。
従来の人手による査定と比較して、大幅な時間短縮を実現しています。
(2) バーチャル内見・VR活用
アイホーム社がバーチャル内見を導入した結果、契約数が128%増加した事例があります。
遠方の顧客でも、現地に行かずに物件を確認できるため、顧客満足度向上につながっています。
(3) 電子契約・IT重説の導入
2022年5月の宅建業法改正により、電子契約・IT重説が全面解禁されました。
契約手続きの効率化と、顧客の移動負担軽減が実現されています。
(4) RPA導入による業務時間削減(年間2.5万時間削減)
RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)とは、定型業務を自動化するツールです。
契約書作成や物件情報入力等にRPAを活用することで、年間2.5万時間の業務時間削減を実現した事例があります。
(5) 業務標準化と効率化
コスモ・バンク社がオーナーアプリで業務標準化と効率化を実現した事例もあります。
属人的な業務プロセスを標準化し、誰でも同じ品質で対応できる体制を構築しています。
(出典: GMO賃貸DX)
不動産業界のDX課題と展望|IT投資・労働生産性
(1) 76.8%の企業がDX未実施または予定なし(2021年総務省調査)
2021年の総務省調査によると、不動産業界の76.8%の企業がDX未実施または予定なしと回答しています。
業界全体でDX推進が遅れており、課題解決が急務です。
(2) 中小不動産会社のDX導入課題
中小不動産会社では、IT投資の予算・人材が不足しており、DX導入が進んでいないケースも多くあります。
クラウドサービスやSaaSの活用により、低コストでDX導入を進める取り組みが期待されます。
(3) 不動産情報の分散問題(法務局・税務署・市区町村役場)
不動産情報が法務局・税務署・市区町村役場・民間企業に分散しており、一元化が課題となっています。
DX不動産推進協会(AI不動産推進協会)は、不動産IDによる情報統一化を推進しています。
(4) 大手企業のDX推進事例(三井不動産等)
三井不動産等の大手企業は、DX推進本部を設置し、全事業でDX推進を行っています。
先進的な取り組みが、業界全体のDX推進を牽引することが期待されます。
(5) 今後の展望(AI・ビッグデータ活用)
2025年7月の名称変更(AI不動産推進協会)に象徴されるように、今後はAI・ビッグデータ活用が焦点となります。
不動産取引の透明化、顧客ニーズの予測、価格査定の精度向上などが期待されます。
まとめ|DX推進の今後と次のアクション
DX不動産推進協会(2025年7月1日より「AI不動産推進協会」)は、2020年12月に新興不動産8社により設立され、不動産取引の全面電子化を推進してきました。2022年5月の宅建業法改正を実現し、電子契約を全面解禁するなど、業界のDX推進に大きく貢献しています。
不動産業界は76.8%の企業がDX未実施または予定なし(2021年総務省調査)で、IT投資率・労働生産性が低い課題を抱えていますが、AI査定、バーチャル内見、RPA導入などの成功事例も出てきています。
不動産業界のDX推進を検討する際は、AI不動産推進協会公式サイトで最新情報を確認し、業界全体の動向を把握することをお勧めします。
