不動産CMの特徴とは
不動産業界のCMを見て、「なぜ個別の物件ではなくイメージCMが多いのか」「効果的なCMの特徴は何か」と疑問に思った方は少なくないでしょう。
この記事では、不動産業界の主要なCM事例、効果的なCMの特徴、広告規制、マーケティングトレンドを、国土交通省の宅地建物取引業法等の公的情報源や業界データをもとに解説します。
不動産CMの特徴を理解し、広告を見る際の判断基準を身につけることができます。
この記事のポイント
- 不動産業界では物件が売れてなくなるため、個別物件ではなく企業やブランドのイメージを訴求するイメージCMが中心
- 効果的なCMは感情に訴えるストーリー性、有名人起用、信頼性訴求、社会的価値の表現を重視
- 宅地建物取引業法で誇大広告が禁止され、景品表示法で優良誤認表示・おとり広告が規制されている
- デジタルマーケティングへのシフトが顕著で、60.9%がインターネット広告を利用(新聞広告は8.7%)
印象的な不動産CM事例
(1) 日鉄興和不動産LIVIO(横浜流星出演)
日鉄興和不動産は、2024年12月に横浜流星を起用したCMシリーズ最新作「LIVIO owner's emotion」を公開しました。
実際のリビオオーナーの声をもとに作られた感動的なエピソードで、横浜流星が3人のオーナーを演じています。「0日目の感動をずっと」をテーマに、住まいに対する愛着やブランド価値を訴求する内容です。
(2) 野村不動産PROUD(小松菜奈出演)
野村不動産PROUDのCMは、小松菜奈とコラット猫が登場し、洗練された映像美でブランドイメージを訴求しています。
シンプルながらも印象的なビジュアルで、高級感と信頼性を表現する戦略です。
(3) 東急不動産BRANZ(二階堂ふみ出演)
東急不動産は、2024年9月に二階堂ふみ出演の新CM「環境に全力TOKYU FUDOSAN『宣言』篇」を公開しました。
「マンションは、都市の自然になる。」をコンセプトに、環境への配慮をテーマにした先進的なマンションを表現しています。アナグマの新キャラ「ふどうさん」を導入し、環境先進マンションBRANZのブランディングを強化しています。
(4) 賃貸系CM(SUUMO、Able、CHINTAI)
SMN株式会社によると、2024年1月度のテレビCM放送回数ランキングでSUUMOが1位を獲得しました。
新生活シーズン(1-3月)に向けて賃貸不動産系CMが増加し、Able(6位)、CHINTAI(13位)、アパマンショップ(17位)がランクインしています。
賃貸系CMは物件数の多さや利便性を訴求し、認知度向上と集客を目的としています。
効果的なCMの特徴と広告戦略
(1) 感情に訴えるストーリー性
不動産CMの多くは、感情に訴えるストーリー性を重視しています。
日鉄興和不動産LIVIOのように、実際のオーナーの声をもとにした物語で共感を呼び、ブランドへの愛着を深める戦略が効果的です。
(2) 有名人起用によるブランディング
2024年の主要不動産CMでは、以下のような有名タレントが起用されています。
| 企業 | タレント | 訴求内容 |
|---|---|---|
| 日鉄興和不動産LIVIO | 横浜流星 | 感動的なオーナー体験 |
| 三井不動産 | 広瀬すず | 信頼性と親しみやすさ |
| 東急不動産BRANZ | 二階堂ふみ | 環境への配慮 |
| 野村不動産PROUD | 小松菜奈 | 洗練されたライフスタイル |
有名人を起用することで、ブランドイメージの向上と信頼性の訴求を実現しています。
(3) 信頼性訴求と社会的価値の表現
不動産は高額な買い物であるため、信頼性訴求が重要です。東急不動産のように環境への配慮をテーマにしたCMは、社会的価値を表現し、企業のブランディングを強化しています。
(4) 新生活シーズンを狙った集中投下
賃貸系CMは新生活シーズン(1-3月)に集中的に放送され、引越しを検討する層へのリーチを最大化しています。
不動産広告の規制
(1) 宅地建物取引業法による誇大広告の禁止
国土交通省の宅地建物取引業法第32条により、誇大広告が禁止されています。
誇大広告とは、実際より著しく有利・優良なものと誤認される表示のことで、違反した場合は6ヶ月以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、または業務停止・免許取消の可能性があります。
(2) 景品表示法による優良誤認表示の規制
景品表示法(景表法)は、不当な表示や過大な景品類の提供を規制する法律です。
優良誤認表示やおとり広告(実際には契約できない魅力的な物件を広告に掲載し、来店させて他の物件を紹介する行為)が禁止されており、違反した場合は売上額の3%の課徴金が課される可能性があります。
(3) 断定表現・特定用語の使用制限
公益社団法人 全日本不動産協会によると、以下のような断定表現・誇大表現は根拠なしに使用できません。
| 禁止される表現 | 理由 |
|---|---|
| 「必ず値上がりする」 | 断定的判断の提供 |
| 「最高級」 | 根拠のない最上級表現 |
| 「完全」「当社だけ」 | 根拠なく使用不可 |
| 「格安」 | 客観的根拠が必要 |
(4) 違反時の罰則
違反時の罰則は以下の通りです。
| 法律 | 罰則 |
|---|---|
| 宅地建物取引業法 | 6ヶ月以下の懲役または100万円以下の罰金、業務停止・免許取消 |
| 景品表示法 | 売上額の3%の課徴金 |
不動産業界のマーケティングトレンド
(1) デジタルマーケティングへのシフト
AD EBiSによると、不動産業界の60.9%がインターネット広告を利用しており、新聞広告(8.7%)を大きく上回っています。
テレビCMだけでなく、デジタルマーケティングへのシフトが顕著です。
(2) SNS広告とコンテンツマーケティング
SNS広告(特にInstagram)、コンテンツマーケティング、SEO等のデジタル施策が重視されています。
若年層へのリーチを強化し、物件情報をビジュアルで訴求する戦略が効果的です。
(3) 広告宣伝費の実態
不動産業界の広告宣伝費対売上高比率は平均4%です。CM制作費は企業規模や出演者により大きく異なりますが、大手不動産会社は年間数億円規模の広告予算を投下しています。
(4) 環境配慮をテーマにした新潮流
東急不動産のように、環境への配慮をテーマにしたCMが2024年以降増加しています。
SDGs(持続可能な開発目標)への関心が高まる中、環境先進マンションや省エネ住宅を訴求する戦略が新潮流となっています。
まとめ:不動産CMから学ぶブランディングの重要性
不動産業界では、物件が売れてなくなるため、個別物件ではなく企業やブランドのイメージを訴求するイメージCMが中心です。効果的なCMは、感情に訴えるストーリー性、有名人起用、信頼性訴求、社会的価値の表現を重視しています。
不動産広告には、宅地建物取引業法や景品表示法による規制があり、誇大広告・断定表現は禁止されています。違反時は6ヶ月以下の懲役または100万円以下の罰金、課徴金等の罰則が科されます。
デジタルマーケティングへのシフトが顕著で、60.9%がインターネット広告を利用しています。SNS広告、コンテンツマーケティング、環境配慮をテーマにした新潮流が2024年以降の主要トレンドです。
不動産CMを見る際は、誇大広告でないか、根拠は明示されているかを確認し、専門家(宅建士等)への相談も検討してください。
