不動産業を開業する際の手続きと必要な資格・準備

著者: Room Match編集部公開日: 2025/12/9

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不動産業を開業するために知っておくべきこと

不動産業での独立・開業は、宅地建物取引士資格を活かして自らのビジネスを立ち上げる魅力的な選択肢です。しかし、開業には法的要件、資金準備、事業計画など、多くの準備が必要です。

この記事では、不動産業開業に必要な資格、宅建業免許の申請手続き、開業資金の目安、リスクと注意点について、全宅連全日本不動産協会の公式情報を元に解説します。

不動産業開業を検討されている方が、準備段階から開業後の運営まで、具体的なステップを理解できる情報を提供します。

この記事のポイント

  • 宅建業免許取得には2~3ヶ月、開業準備を含めると最短4ヶ月が必要
  • 営業保証金は本店1,000万円だが、保証協会入会で60万円に軽減可能
  • 開業資金は最低400万円程度、運転資金を含めると1,000万円が理想
  • 専任宅建士の設置義務(業務従事者5人に1人以上の割合)
  • 廃業率は約3%で、資金計画の甘さが失敗の主因

不動産業の種類(仲介・賃貸管理・買取等)

不動産業には、以下のような業態があります。

  • 売買仲介: 土地・建物の売買を仲介(宅建業免許必須)
  • 賃貸仲介: 賃貸物件の仲介(宅建業免許必須)
  • 賃貸管理業: 賃貸物件のオーナーから管理を受託(免許不要だが登録推奨)
  • 買取再販業: 物件を買い取って再販売(宅建業免許必須)

仲介業を行う場合は、宅建業免許の取得が必須です。

開業までの期間と流れ(最短4ヶ月)

不動産業開業の基本的な流れは以下の通りです。

  1. 事業計画の策定(1ヶ月)
  2. 事務所の確保(1ヶ月)
  3. 宅建業免許の申請(2~3ヶ月)
  4. 保証協会への入会
  5. 開業準備(設備・広告等)

準備から開業まで、最短でも4ヶ月程度は見込む必要があります。

不動産業開業に必要な資格と要件

宅地建物取引士の設置義務(5人に1人以上)

全日本不動産協会によると、宅地建物取引業を営む事業者は、一つの事務所につき業務従事者5人に1人以上の割合で専任の宅地建物取引士を設置する義務があります。

業務従事者数 必要な専任宅建士数
1~5人 1人以上
6~10人 2人以上
11~15人 3人以上

開業当初は、代表者自身が宅建士資格を持っていることが一般的です。

資格がなくても開業できる業態(賃貸管理業等)

賃貸業や賃貸管理業であれば、宅建士資格がなくても開業できます。ただし、仲介業務を行う場合は宅建業免許が必要になるため、ビジネスの幅が制限されます。

ダブルライセンスの有効性(FP・税理士等)

宅建士に加えて、以下の資格を持つことで、顧客への提案力が高まります。

  • ファイナンシャルプランナー(FP): 住宅ローン・資金計画の助言
  • 税理士: 不動産税務・相続対策の助言
  • マンション管理士: マンション管理組合の運営支援

ダブルライセンスは、差別化要素として有効です。

宅建業免許の申請手続きと流れ

都道府県知事免許と国土交通大臣免許の違い

宅建業免許には、以下の2種類があります。

免許の種類 対象
都道府県知事免許 1つの都道府県内のみに事務所を設置する場合
国土交通大臣免許 2つ以上の都道府県に事務所を設置する場合

開業当初はほとんどの場合、都道府県知事免許を取得します。

事務所設置要件(独立性・専用性・面積等)

宅建業法上の事務所は、以下の要件を満たす必要があります。

  • 独立性: 他の業務エリアと明確に区別されている
  • 専用性: 宅建業専用のスペースが確保されている
  • 面積: 最低限の業務スペースがある(目安:10㎡以上)
  • 設備: 机・椅子・電話・インターネット環境等

自宅を事務所にする場合も、居住エリアと事務所エリアを明確に区別する必要があります。賃貸物件の場合は、大家の承諾を得ることが必要です。

申請に必要な書類と期間(2~3ヶ月)

宅建業免許の申請には、以下の書類が必要です。

  • 宅地建物取引業免許申請書
  • 事務所の写真・図面
  • 専任宅建士の設置を証明する書類
  • 代表者の身分証明書・登記されていないことの証明書
  • 法人の場合は定款・登記事項証明書

申請から免許交付まで、2~3ヶ月が標準です。

保証協会への入会手続き

営業保証金は、本店1,000万円が法律で定められていますが、保証協会(全宅保証または全日保証)に入会すれば60万円に軽減できます。

ほぼすべての開業者が保証協会に入会しており、レインズ利用のためにも加入がほぼ必須です。

開業資金とコストの内訳

最低必要資金の目安(400万~1,000万円)

不動産業開業に必要な資金の目安は、以下の通りです。

項目 金額
保証協会入会金 60万円
法人設立費用 24万2,000円
事務所・設備費用 100万~200万円
広告・集客費用 50万~100万円
その他諸費用 50万円
合計(最低限) 400万円程度

ただし、運転資金を6ヶ月~1年分確保するため、実際には1,000万円程度の準備が理想です。

営業保証金(本店1,000万円→保証協会入会で60万円)

営業保証金は、顧客保護のために法務局へ供託する金額です。

  • 法律上の要件: 本店1,000万円、支店1店舗ごとに500万円
  • 保証協会入会時: 本店60万円、支店1店舗ごとに30万円

保証協会に入会することで、大幅に費用を抑えられます。

法人設立費用(約24万2,000円)

株式会社として開業する場合、以下の費用が必要です。

  • 定款認証手数料: 約5万円
  • 登録免許税: 15万円(資本金の0.7%、最低15万円)
  • その他諸費用: 約4万2,000円

個人事業主として開業する場合は、これらの費用は不要です。

その他の初期費用(事務所・設備・広告等)

事務所を借りる場合、敷金・礼金・賃料(数ヶ月分)が必要です。また、机・椅子・パソコン・電話・看板等の設備費用も見込みましょう。

広告・集客費用として、Webサイト制作、ポータルサイト掲載料、チラシ印刷費等も準備が必要です。

運転資金の確保(6ヶ月~1年分推奨)

不動産業は、契約から入金までの期間が長いため、開業後数ヶ月は収入がない期間を想定する必要があります。

全日本不動産協会によると、運転資金6ヶ月~1年分を確保しないと資金ショートのリスクがあります。

事業計画のポイントと営業戦略

個人事業主vs法人の選択

個人事業主のメリット:

  • 設立費用が不要
  • 手続きが簡便

法人のメリット:

  • 社会的信用が高い
  • 税制上のメリット(法人税率、経費計上の範囲等)

信用面では法人が有利ですが、手続きの簡便さでは個人が有利です。

専門分野の選定(居住用・投資用・商業用等)

開業当初は、以下のいずれかに専門分野を絞ることが推奨されます。

  • 居住用不動産: ファミリー向け、単身者向け
  • 投資用不動産: 収益物件、一棟マンション
  • 商業用不動産: 店舗、事務所

広く浅くではなく、狭く深くが成功のカギです。

レインズ利用と集客戦略

レインズ(不動産流通標準情報システム)は、全国の物件情報を共有するネットワークです。保証協会に加入することで利用でき、営業上ほぼ必須です。

Webサイト、ポータルサイト(SUUMO、HOME'S等)、SNS、チラシ等を組み合わせた集客戦略が重要です。

フランチャイズ加盟のメリット・デメリット

メリット:

  • ブランド力を活用できる
  • 開業ノウハウや研修が提供される

デメリット:

  • 加盟金100万~300万円が必要
  • ロイヤリティ(売上の3~10%程度)が発生

独立性を重視するか、サポートを重視するかで判断しましょう。

開業時のリスクと注意点

廃業率約3%の実態と失敗原因

令和5年度のデータでは、不動産業の廃業率は約3%(約130,000社中約4,000社が廃業)です。

失敗の主な原因は以下の通りです。

  • 資金計画の甘さ: 運転資金不足によるキャッシュフロー悪化
  • 集客不足: 顧客獲得の戦略が不十分
  • 専門知識不足: 法規制や市場動向への理解不足

キャッシュフロー管理の重要性(契約~入金期間が長い)

不動産業は、契約成立から仲介手数料入金までの期間が1~2ヶ月程度かかります。開業後数ヶ月は収入のない期間を乗り切るための運転資金が必要です。

宅建業法・景表法の遵守ポイント

不動産業は、以下の法規制を厳守する必要があります。

  • 宅建業法: 誇大広告の禁止、重要事項の説明義務、断定的判断の提供禁止
  • 景表法: 優良誤認表示の禁止、「必ず儲かる」等の断定表現禁止

法令違反は免許取消しのリスクがあるため、注意が必要です。

2025年問題と市場動向の変化

2025年問題(団塊世代の後期高齢者化)により、不動産市場の変化が予測されます。中古住宅やセカンドベストエリアへの需要シフトも見込まれており、市場動向を注視する必要があります。

専門家(行政書士・税理士等)への相談の必要性

開業には、以下の専門家への相談が推奨されます。

  • 行政書士: 免許申請手続きのサポート
  • 税理士: 税務・会計の助言
  • 司法書士: 法人設立の登記手続き

すべてを自力で行うことは可能ですが、専門家に依頼することで時間と労力を節約できます。

まとめ:不動産業開業の成功に向けて

不動産業開業には、宅建業免許の取得、営業保証金の確保、事務所の設置など、多くの準備が必要です。最低400万円程度の開業資金が目安ですが、運転資金を含めると1,000万円程度の準備が理想です。

開業後は、キャッシュフロー管理、集客戦略、法令遵守が重要です。廃業率約3%という厳しい現実もありますが、資金計画を堅実に立て、専門分野を絞り込むことで成功の可能性が高まります。

不動産業開業を検討される際は、行政書士や税理士などの専門家に相談しながら、準備を進めることをお勧めします。

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よくある質問

Q1宅建資格がなくても不動産業を開業できますか?

A1賃貸業・賃貸管理業なら宅建資格がなくても開業可能です。しかし、仲介業を行う場合は宅地建物取引業法により、業務従事者5人に1人以上の割合で専任の宅地建物取引士を設置する義務があります。そのため、自身が資格を持つか、雇用する従業員が資格を持つ必要があります。開業当初は代表者自身が宅建士資格を持っていることが一般的です。

Q2不動産業の開業資金はいくら必要ですか?

A2最低400万円程度が目安です。内訳は、保証協会入会時の営業保証金60万円、法人設立費用24万2,000円、事務所・設備費用100万~200万円、広告費50万~100万円、その他諸費用50万円です。ただし、不動産業は契約から入金までの期間が長いため、運転資金6ヶ月~1年分の確保が推奨され、実際には1,000万円程度あると安心です。

Q3宅建業免許取得にかかる期間は?

A3申請から免許交付まで2~3ヶ月が標準です。事前準備として事務所の確保、必要書類の作成、専任宅建士の配置などがあるため、計画開始から開業まで最短でも4ヶ月程度は見込む必要があります。余裕を持って6ヶ月程度のスケジュールを組むことをお勧めします。申請書類に不備があると、さらに時間がかかる場合があります。

Q4営業保証金1,000万円は必ず必要ですか?

A4宅地建物取引業法上は、本店1,000万円、支店1店舗ごとに500万円の営業保証金を法務局へ供託する必要があります。しかし、保証協会(全宅保証または全日保証)に入会すれば、本店60万円、支店1店舗ごとに30万円に大幅に軽減できます。ほぼすべての開業者が保証協会に入会しており、レインズ利用のためにも加入がほぼ必須です。

Q5自宅を事務所にして開業できますか?

A5可能ですが、宅地建物取引業法上の事務所要件を満たす必要があります。具体的には、居住エリアと事務所エリアを明確に区別し、独立性・専用性が確保されていることが条件です。最低限の業務スペース(目安10㎡以上)、机・椅子・電話・インターネット環境等の設備も必要です。賃貸物件の場合は、事務所利用について大家の承諾を得ることが必須です。

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Room Match編集部

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