不動産とは?種類と基礎知識を初心者向けに解説

著者: Room Match編集部公開日: 2025/11/18

不動産の基本知識が必要な理由(取引・投資・相続の前に)

初めて不動産取引を検討する際、「そもそも不動産とは何か?」「どんな種類があるのか?」と疑問に感じる方は少なくありません。

この記事では、不動産の法的定義、種類、権利関係の基礎知識を、民法や業界構造を元にわかりやすく解説します。

不動産取引・投資・相続の前に、基礎を正しく理解することで、適切な判断ができるようになります。

この記事のポイント

  • 不動産は民法第86条で「土地及びその定着物」と定義され、移動できない財産を指す
  • 物件種別(マンション・戸建て・土地)、用途別(住宅用・商業用・工業用)など多様な分類がある
  • 不動産は動産(家具・自動車等)と法的に区別され、登記制度や権利関係が異なる
  • 2024年の日本不動産投資額は前年比63%増の5兆4,875億円を記録し、市場は好調に推移

不動産とは:民法上の定義と法的位置づけ

(1) 民法第86条の定義(土地及びその定着物)

不動産は、民法第86条第1項で「土地及びその定着物は、不動産とする」と明確に定義されています。

土地と建物が代表的な不動産であり、移動できない性質を持つ財産を指します。法律上、不動産は高い価値を持ち、特別な法的保護を受けます。

(2) 定着物とは何か(建物・立木・橋・石垣等の具体例)

定着物とは、簡単に移動させられないものを指します。

具体的には以下のようなものが定着物に該当します。

定着物の種類 具体例
建物 一戸建て、マンション、店舗、工場
立木 大木、庭木(根を張っているもの)
土地に固定された構造物 橋、石垣、塀、門

建物は土地から独立した不動産として扱われるため、土地と建物は別々に登記されます。

(3) 不動産の歴史と由来(明治29年民法、フランス語Immobiliersから)

「不動産」という言葉は、明治29年(1896年)に制定された民法で初めて導入されました。

フランス語の「Immobiliers(動かないもの)」が由来となっており、移動できない財産という意味を持ちます。英語では「real estate」または「immovable property」と表現されます。

不動産の種類と分類(物件種別・用途別・業種別)

(1) 物件種別の分類(マンション・戸建て・土地・投資用物件)

不動産は物件種別により以下のように分類されます。

  • マンション: 集合住宅(賃貸・分譲)。区分所有権が設定される
  • 戸建て: 一戸建て住宅。土地と建物がセット
  • 土地: 地面そのもの。建物を建てる前提で取引されることが多い
  • 投資用物件: 賃貸収益を目的とした不動産(マンション・アパート・商業施設等)

(2) 用途別の分類(住宅用・商業用・工業用・農業用・投資用)

不動産は利用目的により以下のように分類されます。

用途 内容 具体例
住宅用 居住を目的とする不動産 マンション、一戸建て
商業用 商業活動を目的とする不動産 店舗、オフィスビル、ホテル
工業用 製造業を目的とする不動産 工場、倉庫、物流施設
農業用 農業を目的とする不動産 農地、畑
投資用 賃貸収益を目的とする不動産 賃貸マンション、賃貸オフィス

(3) 不動産業の分類(開発・販売・流通・賃貸・管理)

不動産業は大きく以下の3つに分類されます。

  • 開発・販売: 土地を仕入れて建物を建設し、販売する(デベロッパー)
  • 流通: 売主と買主を仲介し、取引を支援する(仲介業者)
  • 賃貸・管理: 物件を賃貸に出し、管理業務を行う(管理会社)

それぞれの業種が連携することで、不動産市場が成り立っています。

不動産と動産の違い(定着物と移動可能性)

(1) 不動産と動産の法的区別(民法第86条第2項)

民法第86条第2項では、「不動産以外の物は、すべて動産とする」と定義されています。

不動産と動産の最も大きな違いは、移動可能性です。

項目 不動産 動産
定義 土地及びその定着物 不動産以外の物
移動性 移動できない 移動できる
具体例 土地、建物、立木 家具、自動車、電子機器
登記 登記制度がある 登記制度はない(自動車除く)
所有権移転 登記により対抗要件を備える 引渡しにより対抗要件を備える

(2) 不動産・動産の具体例(建物は不動産、家具は動産)

不動産と動産の区別は、取引時に重要です。

不動産の具体例:

  • 土地、建物、立木、橋、石垣

動産の具体例:

  • 家具、ふすま、エアコン、照明器具、自動車、電子機器

建物に付属する家具やエアコンは動産に該当するため、不動産取引の対象外となる場合があります。取引時には、何が不動産に含まれるかを明確にすることが重要です。

(3) なぜ区別するのか(歴史的理由と実務的理由)

不動産と動産を区別する理由は2つあります。

歴史的理由:

  • 歴史的に、不動産(特に土地)は動産よりも価値が高いとされてきた
  • 不動産は生産や生活の基盤であり、特別な法的保護が必要とされた

実務的理由:

  • 不動産は移動できないため、登記制度により所有権を明確にする必要がある
  • 動産は移動可能なため、引渡しにより所有権移転が完了する

この区別により、不動産取引は登記、契約、権利関係など、動産取引よりも複雑な手続きが必要になります。

不動産取引の基礎知識(登記・権利・契約)

(1) 不動産登記の役割(所有権・抵当権の記録)

不動産登記とは、不動産の所有権、抵当権、借地権などの権利関係を公的に記録する制度です。

登記により、以下のことが可能になります。

  • 誰が不動産の所有者かを証明
  • 抵当権(住宅ローン等)が設定されているかを確認
  • 第三者に対して権利を主張(対抗要件)

登記は法務局で管理され、誰でも閲覧可能です。

(2) 不動産の権利関係(所有権・借地権・借家権等)

不動産には様々な権利関係があります。

権利 内容
所有権 不動産を自由に使用・収益・処分する権利
抵当権 債務が返済されない場合に不動産を競売にかける権利
借地権 土地を借りて建物を建てる権利
借家権 建物を借りて居住する権利
地役権 他人の土地を利用する権利(通行権等)

これらの権利は登記により記録され、取引時に確認する必要があります。

(3) 不動産取引の流れと注意点

不動産取引の基本的な流れは以下の通りです。

  1. 物件探し: 不動産会社に相談、物件の内覧
  2. 購入申込: 買付証明書の提出
  3. 売買契約: 重要事項説明、契約書の締結、手付金の支払い
  4. 住宅ローン審査: 金融機関への申込、審査
  5. 決済・引渡し: 残金の支払い、登記手続き、鍵の引渡し

不動産取引では、宅地建物取引士による重要事項説明が義務付けられています。契約前に、物件の状態、権利関係、法的規制を十分に確認してください。

まとめ:不動産の基礎を理解して適切な判断を

不動産は民法第86条で「土地及びその定着物」と定義され、移動できない財産を指します。物件種別(マンション・戸建て・土地)、用途別(住宅用・商業用・工業用)など多様な分類があり、それぞれに異なる特徴があります。

不動産と動産は法的に区別され、登記制度や権利関係が異なります。不動産取引では、所有権・抵当権・借地権などの権利関係を登記により確認し、専門家(宅地建物取引士、司法書士等)のサポートを受けることが重要です。

不動産の基礎知識を正しく理解することで、取引・投資・相続の場面で適切な判断ができるようになります。信頼できる不動産会社や専門家に相談しながら、慎重に検討を進めましょう。

よくある質問

Q1不動産とは何ですか?

A1民法第86条第1項で「土地及びその定着物」と定義される財産です。土地と建物が代表的な不動産で、移動できない性質を持ちます。定着物とは、建物・立木・橋・石垣など簡単に移動させられないものを指します。法律上、不動産は高い価値を持ち、登記制度により権利関係が明確にされます。

Q2不動産と動産の違いは何ですか?

A2不動産は移動できない財産(土地・建物等)、動産は移動可能な物(家具・自動車等)です。民法第86条で明確に区別されており、不動産は登記制度により所有権を証明し、動産は引渡しにより所有権移転が完了します。建物に付属する家具やエアコンは動産に該当するため、不動産取引時には何が含まれるかを明確にする必要があります。

Q3定着物とは何ですか?

A3簡単に移動させられないもので、建物・立木・橋・石垣などが該当します。建物は土地から独立した不動産として扱われるため、土地と建物は別々に登記されます。定着物は不動産の一部として、特別な法的保護を受けます。

Q4不動産の種類にはどんなものがありますか?

A4物件種別(マンション・戸建て・土地・投資用物件)、用途別(住宅用・商業用・工業用・農業用・投資用)などに分類されます。不動産業も開発・販売、流通(仲介)、賃貸・管理の3つに分かれており、それぞれの業種が連携することで不動産市場が成り立っています。目的に応じて適切な種類の不動産を選ぶことが重要です。

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Room Match編集部

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