不動産取得税とは何か、いつ払うのか知りたい
不動産購入を検討する際、「不動産取得税はいつ払うのか」「いくらかかるのか」「軽減措置を受けるにはどうすればよいのか」と疑問を持つ方は多いでしょう。不動産取得税は、取得後4~6カ月後に納税通知書が届くため、予め資金を準備しておく必要があります。
この記事では、不動産取得税の仕組み、計算方法、軽減措置の種類と適用要件、納付の流れ、申請方法を解説します。総務省の地方税制度、国土交通省の特例措置、東京都主税局などの公式情報を参考にしています。
不動産取得税の仕組みを理解し、軽減措置を活用することで、節税が可能になります。
この記事のポイント
- 不動産取得税は不動産を取得した際に一度だけ課される地方税(都道府県税)で、毎年課税される固定資産税とは異なる
- 税額は固定資産税評価額×税率(住宅は3%、非住宅は4%)で計算し、軽減措置により大幅に減額される
- 新築住宅は建物評価額から最大1,200万円(認定長期優良住宅は1,300万円)が控除される
- 納税通知書は取得後4~6カ月後に届き、通知から約1カ月以内に納付する
- 軽減措置を受けるには都道府県税事務所への申請が必要で、期限は取得後10~60日以内(都道府県により異なる)
不動産取得税とは?毎年払うのか、いつ払うのか
不動産取得税は何税か?地方税・国税の違い
総務省によると、不動産取得税は、土地や建物を取得した際に一度だけ課される地方税(都道府県税)です。
| 税の種類 | 課税主体 | 課税のタイミング | 税率 |
|---|---|---|---|
| 不動産取得税 | 都道府県 | 取得時に一度だけ | 3%または4% |
| 固定資産税 | 市区町村 | 毎年1月1日時点の所有者に課税 | 1.4%(標準税率) |
| 登録免許税 | 国 | 登記時に一度だけ | 物件種別により異なる |
不動産取得税は地方税であり、納税先は都道府県です。国に納める税金(国税)ではありません。
毎年払うのか?固定資産税との違い
不動産取得税は、不動産を取得した際に一度だけ課される税金です。毎年課税されることはありません。
一方、固定資産税は、毎年1月1日時点の不動産所有者に課される税金で、毎年支払う必要があります。
不動産取得税と固定資産税の違い:
| 項目 | 不動産取得税 | 固定資産税 |
|---|---|---|
| 課税のタイミング | 取得時に一度だけ | 毎年1月1日時点 |
| 課税主体 | 都道府県 | 市区町村 |
| 税率 | 3%または4% | 1.4%(標準税率) |
| 軽減措置 | あり(住宅・土地) | あり(住宅用地の特例等) |
これらの違いを理解することで、不動産取得税と固定資産税を正しく区別できます。
どんなときに課税されるのか(購入・贈与・新築)
東京都主税局によると、不動産取得税は以下の場合に課税されます。
- 購入: 売買契約により土地・建物を取得した場合
- 贈与: 無償で土地・建物を譲り受けた場合
- 新築: 建物を新築した場合(土地は別途購入時に課税)
- 増築・改築: 家屋の価値を増加させる改築を行った場合(一定規模以上)
有償・無償の別、登記の有無にかかわらず課税されます。
相続では非課税になる理由
総務省によると、相続による不動産の取得は非課税です。
理由:
- 相続は被相続人(亡くなった方)から相続人への財産の承継であり、新たな取得とは性質が異なる
- 相続税が既に課税されているため、二重課税を避ける
ただし、遺贈(遺言により財産を譲る)や贈与による取得は課税対象です。
不動産取得税の計算方法と税率
基本の計算式(固定資産税評価額×税率)
不動産取得税の基本的な計算式は以下の通りです。
計算式:
不動産取得税 = 固定資産税評価額(または課税標準額)× 税率
固定資産税評価額とは: 市区町村が決定する不動産の評価額で、一般的に市場価格の70%程度です。
標準税率4%と軽減税率3%の違い
不動産取得税の税率は、物件の種類と取得時期により異なります。
| 物件種別 | 標準税率 | 軽減税率(2027年3月31日まで) |
|---|---|---|
| 住宅用土地 | 4% | 3% |
| 住宅用建物 | 4% | 3% |
| 非住宅用土地 | 4% | 3%(2027年3月31日まで) |
| 非住宅用建物 | 4% | 軽減なし(4%) |
2024年度税制改正大綱により、住宅用土地・建物の税率3%への軽減措置が2027年3月31日まで延長されました。
宅地の評価額1/2特例(2027年3月31日まで)
宅地(住宅用地)を取得した場合、固定資産税評価額を2分の1に軽減する特例があります。
例:
- 宅地の固定資産税評価額:2,000万円
- 特例適用後の課税標準額:1,000万円(2,000万円 × 1/2)
- 不動産取得税:1,000万円 × 3% = 30万円
この特例は2027年3月31日まで適用されます。
マンション・戸建て・土地別の計算例
新築マンション(建物のみ)の例:
- 固定資産税評価額:2,000万円
- 控除額:1,200万円(新築住宅の特例)
- 課税標準額:800万円(2,000万円 - 1,200万円)
- 不動産取得税:800万円 × 3% = 24万円
新築戸建て(建物のみ)の例:
- 固定資産税評価額:1,500万円
- 控除額:1,200万円(新築住宅の特例)
- 課税標準額:300万円(1,500万円 - 1,200万円)
- 不動産取得税:300万円 × 3% = 9万円
宅地(土地のみ)の例:
- 固定資産税評価額:3,000万円
- 課税標準額:1,500万円(3,000万円 × 1/2)
- 不動産取得税:1,500万円 × 3% = 45万円
ただし、住宅用土地の場合、さらに軽減措置が適用される可能性があります(詳細は後述)。
軽減措置の種類と適用要件
新築住宅の控除(1,200万円または1,300万円)
国土交通省によると、新築住宅を取得した場合、建物の固定資産税評価額から以下の金額が控除されます。
| 住宅の種類 | 控除額 | 適用期限 |
|---|---|---|
| 一般の新築住宅 | 1,200万円 | 恒久措置 |
| 認定長期優良住宅 | 1,300万円 | 2026年3月31日まで |
適用要件:
- 床面積が50㎡以上240㎡以下(戸建て以外は1区画当たり)
- 個人が自己の居住用に取得した住宅
認定長期優良住宅の控除額1,300万円への上乗せ措置は、2026年3月31日まで延長されています。
中古住宅の控除(築年数・床面積の条件)
中古住宅の場合も、一定の条件を満たせば控除が受けられます。
適用要件:
- 床面積が50㎡以上240㎡以下
- 個人が自己の居住用に取得した住宅
- 新耐震基準を満たす住宅(昭和57年1月1日以降に新築された住宅、または耐震基準適合証明がある住宅)
控除額: 新築された時期により異なります。
| 新築時期 | 控除額 |
|---|---|
| 1997年4月1日以降 | 1,200万円 |
| 1989年4月1日~1997年3月31日 | 1,000万円 |
| 1985年7月1日~1989年3月31日 | 450万円 |
| 1981年7月1日~1985年6月30日 | 420万円 |
詳細は各都道府県税事務所にご確認ください。
住宅用土地の軽減措置(床面積要件との関連)
住宅用土地を取得した場合、以下のいずれか多い金額が税額から控除されます。
控除額:
- 45,000円
- 土地1㎡あたりの固定資産税評価額 × 1/2 × 住宅の床面積の2倍(1戸につき200㎡が上限)× 3%
適用要件:
- 土地を取得してから3年以内に住宅を新築した場合
- 土地と同時または土地取得後1年以内に建売住宅・中古住宅を取得した場合
この軽減措置により、住宅用土地の不動産取得税が大幅に減額される、またはゼロになる場合があります。
都道府県別の違い(東京・千葉・福岡等)
不動産取得税の税率や軽減措置は全国共通ですが、申請期限や手続きの詳細は都道府県により異なります。
例:
- 東京都: 取得後30日以内に申告(軽減措置の申請は60日以内が目安)
- 千葉県: 取得後10日以内に申告
- 福岡県: 取得後60日以内に申告
具体的な申請期限や必要書類は、各都道府県税事務所の公式サイトでご確認ください。
納税通知書が届く時期と納付の流れ
いつ頃届くのか(取得後4~6カ月)
不動産取得税の支払時期によると、所有権移転登記後、おおむね4~6カ月後に都道府県から納税通知書が届きます。
流れ:
- 不動産を取得し、所有権移転登記を行う
- 登記情報が法務局から都道府県に通知される
- 都道府県が固定資産税評価額を元に税額を計算
- 納税通知書が郵送される(取得後4~6カ月)
納税通知書には、税額、納付期限、納付方法が記載されています。
届かない場合の対応(自主申告の必要性)
納税通知書が届かない場合でも、納税義務は消滅しません。
対応方法:
- 都道府県税事務所に問い合わせて状況を確認する
- 自主的に申告を行う(申告期限は都道府県により異なる)
未申告の場合、後日追徴課税される可能性があるため、早めに確認・申告してください。
納付期限と支払方法
納付期限は、納税通知書の発送から約1カ月以内が一般的です。
支払方法:
- 金融機関の窓口で納付
- コンビニエンスストアで納付(金額による制限あり)
- クレジットカードで納付(都道府県により対応状況が異なる)
- 口座振替(事前手続きが必要)
支払方法は都道府県により異なるため、納税通知書に記載された方法を確認してください。
納付を怠った場合のペナルティ(延滞金)
納付期限を過ぎると、延滞金が発生します。
延滞金の計算:
- 納付期限の翌日から納付日までの日数に応じて、年率で計算される
- 年率は法律で定められており、変動する場合がある
また、悪質な場合は財産の差し押さえなどの滞納処分を受ける可能性があります。納税通知書を受け取ったら、速やかに納付してください。
軽減措置の申請方法と注意点
申請先と申請期限(都道府県により10~60日以内)
軽減措置を受けるには、都道府県税事務所への申請が必要です。
申請先:
- 不動産が所在する都道府県の税事務所
申請期限: 都道府県により異なりますが、一般的に取得後10~60日以内です。
| 都道府県 | 申請期限 |
|---|---|
| 東京都 | 取得後60日以内が目安 |
| 千葉県 | 取得後10日以内 |
| 福岡県 | 取得後60日以内 |
申請期限を過ぎると軽減が受けられない可能性があるため、早めに申請してください。
必要書類の準備(登記簿謄本、住民票等)
軽減措置の申請には、以下の書類が必要です。
一般的な必要書類:
- 不動産取得税申告書(都道府県税事務所で入手または公式サイトからダウンロード)
- 登記簿謄本(登記事項証明書)
- 住民票
- 売買契約書のコピー
- 建築確認済証のコピー(新築の場合)
- 認定長期優良住宅の認定通知書のコピー(認定長期優良住宅の場合)
必要書類は都道府県や物件の種類により異なるため、事前に都道府県税事務所に確認してください。
申請を忘れた場合の還付請求(5年以内)
軽減措置の申請を忘れた場合でも、取得から5年以内であれば還付請求が可能です。
還付請求の流れ:
- 都道府県税事務所に還付請求の旨を連絡
- 必要書類を準備して提出
- 審査後、過払い分が還付される
ただし、還付請求には時間がかかる場合があるため、できるだけ期限内に申請することを推奨します。
税理士・司法書士への相談を推奨するケース
以下の場合は、税理士や司法書士への相談を推奨します。
- 軽減措置の適用要件が複雑で判断が難しい場合
- 複数の不動産を同時に取得した場合
- 相続や贈与と組み合わせた取得の場合
- 申請期限が迫っている場合
専門家に相談することで、正確な税額計算と適切な軽減措置の適用が可能になります。
まとめ:不動産取得税を正しく理解し、節税を実現する
不動産取得税は、不動産を取得した際に一度だけ課される地方税(都道府県税)です。毎年課税される固定資産税とは異なり、取得時のみの負担です。税額は固定資産税評価額×税率(住宅は3%、非住宅は4%)で計算されますが、軽減措置により大幅に減額されます。
新築住宅の場合、建物の固定資産税評価額から最大1,200万円(認定長期優良住宅は1,300万円)が控除され、住宅用土地も軽減措置により税額が大幅に減少します。納税通知書は取得後4~6カ月後に届き、通知から約1カ月以内に納付する必要があります。
軽減措置を受けるには、都道府県税事務所への申請が必要で、申請期限は取得後10~60日以内(都道府県により異なる)です。申請を忘れた場合でも、取得から5年以内であれば還付請求が可能ですが、できるだけ期限内に申請してください。
不動産取得税の正確な計算や軽減措置の適用に不安がある場合は、税理士や司法書士に相談することを推奨します。専門家のアドバイスを受けながら、適切な節税を実現しましょう。
