不動産テックとは?最新サービスと業界への影響を徹底解説

著者: Room Match編集部公開日: 2025/12/4

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なぜ今不動産テックが注目されるのか

不動産業界で「不動産テック」という言葉を耳にすることが増えていますが、「具体的にどんなサービスか」「業界にどう影響するか」と疑問に思う方は少なくありません。

この記事では、不動産テックの定義、主要12分野のサービス、業界と利用者への影響を、不動産テック協会等の公式情報を元に解説します。

不動産取引の透明性向上や業務効率化がどう進むのか、自分のビジネスや生活にどう活用できるかを理解できるようになります。

この記事のポイント

  • 不動産テックとは「不動産×テクノロジー」で業界課題を解決する仕組み
  • 2017年80件から2025年528件へと急成長(5.5倍増)、市場規模は2025年に1兆円超の見込み
  • 12分野に分類:VR内覧、AI査定、IoTスマートロック、クラウドファンディング等
  • 98.6%がDX推進すべきと回答、76.2%が業務効率化・生産性向上の効果を実感(2025年調査)

(1) 不動産業界のアナログな商習慣と課題

日本の不動産業界は、紙ベースの契約書、対面での重要事項説明、FAXでのやり取りなど、アナログな商習慣が根強く残っています。

宅地建物取引業法(宅建業法)により、重要事項説明や契約書の交付には紙の書面が必要とされてきたため、デジタル化が進みにくい状況が続いていました。また、人手不足や長時間労働、情報の非対称性(売主・買主間の情報格差)も大きな課題です。

(2) テクノロジーによる業務効率化の期待

こうした課題を解決するため、AI(人工知能)、VR(バーチャルリアリティ)、IoT(モノのインターネット)等のテクノロジーを活用した不動産テックが急速に普及しています。

イタンジ株式会社の2025年調査によると、1,286名の不動産業界関係者のうち98.6%が「不動産業界でDXを推進すべき」と回答しており、業界全体でデジタル化への期待が高まっています。

(3) 法規制の変化:IT重説の解禁とデジタル化の推進

2017年に賃貸取引でIT重説(インターネットを使った重要事項説明)が解禁され、2021年には売買取引でも可能になりました。これにより、非対面での取引が法的に認められ、不動産テックの活用範囲が大きく広がりました。

不動産テック(PropTech)とは:定義と市場規模

不動産テックは、不動産業界をテクノロジーで変革する取り組みの総称です。

(1) 不動産テックの定義(不動産×テクノロジー)

不動産テック協会によると、不動産テック(PropTech, ReTech)とは「不動産×テクノロジー」の略で、テクノロジーの力で不動産業界の課題や商習慣を変える仕組みです。

欧米では「PropTech(Property + Technology)」と呼ばれ、日本では「ReTech(Real Estate + Technology)」とも表記されます。

(2) 市場規模の推移:2017年80件→2025年528件(5.5倍増)

ビジネス+ITによると、2017年には80件程度だったサービスが、2021年7月の第7版カオスマップでは446件、2025年8月の第11版では528件まで増加しました。わずか3年で5.5倍に急成長しています。

(3) 矢野経済研究所の予測:2025年に1兆2,460億円規模

GMO賃貸DXによると、矢野経済研究所の調査では、不動産テック市場規模は2025年に約1兆2,460億円に達する見込みです(2020年比203.9%成長)。

(4) グローバル市場:2024年384億ドル→2034年1,709億ドル予測

IDEAS FOR GOODによると、グローバル市場規模は2024年に384億ドル、2034年には1,709億ドルに達すると予測されています。特にアジア太平洋地域では2024〜2029年にCAGR(年平均成長率)18%超で成長する見込みです。

不動産テックの主要12分野とカオスマップ

不動産テックは12の主要分野に分類されています。以下、代表的な分野を解説します。

(1) 物件情報・メディア(不動産ポータルサイト等)

不動産ポータルサイト(SUUMO、HOME'S等)やメディアが該当します。物件情報を一元的に検索できるプラットフォームで、利用者が多数の物件を効率的に比較できます。

(2) 価格可視化・査定(AI査定サービス等)

AIを使って不動産の価格を自動推定するサービスです。過去の取引データや周辺環境のデータを学習し、査定額を算出します。従来の訪問査定より短時間で結果が得られます。

(3) マッチング(物件と顧客のマッチングプラットフォーム)

物件と顧客を効率的にマッチングするプラットフォームです。希望条件を登録すると、AIが最適な物件を提案してくれるサービスもあります。

(4) VR/AR(バーチャル内覧、AR家具配置)

VR(バーチャルリアリティ)技術を使って、現地に行かずに物件内部を360度見学できるサービスです。AR(拡張現実)技術を使えば、部屋に家具を配置したイメージも確認できます。

(5) IoT(スマートロック、スマートホーム)

IoT(モノのインターネット)技術を活用したサービスです。スマートロックは鍵の受け渡しなしで入居でき、スマートホームは照明・エアコン等をスマホで操作できます。

(6) ローン・保証(オンライン住宅ローン審査等)

オンラインで住宅ローン審査や保証手続きができるサービスです。金融機関に訪問せず、自宅で審査結果を確認できます。

(7) クラウドファンディング(不動産投資型CF)

多数の出資者から少額ずつ資金を集めて不動産に投資する仕組みです。1万円から不動産投資を始められるサービスもあり、投資家の裾野が広がっています。

(8) 業務支援ツール(契約管理、顧客管理システム)

不動産会社向けの契約管理システム、顧客管理システム(CRM)等です。ペーパーレス化や業務の自動化により、社内業務を効率化します。

(9) 管理(賃貸管理、ビル管理の効率化)

賃貸物件の管理業務(家賃回収、入居者対応等)やビル管理を効率化するツールです。オーナーと管理会社、入居者をつなぐプラットフォームもあります。

(10) その他の主要分野

リフォーム・リノベーション、シェアリングエコノミー(民泊、コワーキングスペース等)、建築・設計支援なども含まれます。

主要12分野の一覧表

分野 代表的なサービス例
物件情報・メディア SUUMO、HOME'S
価格可視化・査定 AI査定サービス
マッチング マッチングプラットフォーム
VR/AR VR内覧、AR家具配置
IoT スマートロック、スマートホーム
ローン・保証 オンライン住宅ローン審査
クラウドファンディング 不動産投資型CF
業務支援ツール 契約管理システム
管理 賃貸管理、ビル管理

不動産テックがもたらす変化:業界と利用者への影響

不動産テックは、業界と利用者の双方に大きな変化をもたらしています。

(1) 業界への影響:業務効率化、ペーパーレス化、人手不足の解消

イタンジ株式会社の2025年調査によると、76.2%の企業が不動産DX導入により「残業時間削減」「従業員の生産性向上」「業績向上」の効果を実感しています。

契約書のペーパーレス化、オンライン契約の導入、業務の自動化により、従来1日かかっていた作業が数時間で完了するケースもあります。

(2) 利用者への影響:情報の透明性向上、手続きの簡素化、非対面取引の実現

利用者(購入者、売却者)にとっては、以下のメリットがあります。

  • 情報の透明性向上:AI査定により価格の根拠が明確になる
  • 手続きの簡素化:オンライン契約で時間・場所の制約が減る
  • 非対面取引の実現:VR内覧で現地に行かずに物件を確認できる

(3) 2025年調査:98.6%がDX推進すべきと回答、76.2%が効果を実感

前述の通り、98.6%が「不動産業界でDXを推進すべき」と回答しており、業界全体でDXの必要性が認識されています。一方で、初期コストや社内の抵抗により、DX推進が進まない企業も存在します。

不動産DXの成功事例と導入のポイント

実際に不動産DXを導入した企業の成功事例を紹介します。

(1) 事例1:基幹システム刷新で業務時間35%削減

サービシンクによると、ある不動産会社が基幹システムを刷新した結果、業務時間が35%削減されました。従来は手作業で行っていた契約書作成、物件情報の登録、顧客管理をシステム化することで、大幅な効率化を実現しました。

(2) 事例2:オンライン・無人内覧の導入

スマートロックとVR内覧を組み合わせることで、顧客が自分の都合に合わせて無人で内覧できるサービスを導入した企業もあります。営業担当者の同行が不要になり、顧客の利便性が向上しました。

(3) 事例3:東急不動産のTFHD digital設立と専門人材の内製化

東急不動産ホールディングスは2022年2月に「TFHD digital株式会社」を設立し、専門人材の内製化を推進しています。外部ベンダーに依存せず、自社でデジタル人材を育成することで、長期的なDX推進体制を構築しています。

(4) 導入のポイント:初期コスト、社内研修、段階的な導入

不動産DXを成功させるには、以下のポイントが重要です。

  • 初期コストの確保:システム導入には数百万円~数千万円の投資が必要
  • 社内研修の実施:従業員がツールを使いこなせるよう教育が必要
  • 段階的な導入:一度にすべてをデジタル化せず、小規模な試験導入から始める

詳細は不動産コンサルタントやITコンサルタントへの相談をおすすめします。

まとめ:不動産テックの今後の展望と活用戦略

不動産テックは、2017年80件から2025年528件へと急成長し、市場規模は2025年に1兆円超に達する見込みです。VR内覧、AI査定、IoTスマートロック、クラウドファンディング等、12分野にわたる多様なサービスが展開されています。

98.6%が不動産業界でDXを推進すべきと回答しており、業界全体でデジタル化への期待が高まっています。業務効率化、ペーパーレス化、人手不足の解消といった効果が76.2%の企業で実感されており、今後さらに普及が進むと予想されます。

グローバル市場では2024年384億ドルから2034年1,709億ドルへと成長する見込みで、アジア太平洋地域でも急成長が期待されています。最新の不動産テック動向は不動産テック協会の公式サイトで確認できます。

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よくある質問

Q1不動産テックの代表的なサービスにはどんなものがあるのか?

A1VR内覧(現地に行かずに360度見学)、AI査定(過去データを学習して自動査定)、IoTスマートロック(鍵の受け渡し不要)、オンライン契約(非対面で契約完結)、不動産投資型クラウドファンディング(1万円から投資可能)等、多岐にわたります。2025年時点で528のサービスが不動産テック協会のカオスマップに掲載されています。

Q2不動産テックは仲介業者の仕事を奪うのか?

A2業務効率化や顧客体験の向上に貢献するツールであり、仲介業者の仕事を奪うものではありません。むしろ人手不足の解消や生産性向上に役立ちます。2025年調査では76.2%の企業が残業削減・生産性向上の効果を実感しており、仲介業者が本来注力すべき顧客対応やコンサルティング業務に時間を使えるようになります。

Q3不動産テックを利用する消費者のメリットは?

A3非対面で物件情報の収集・内覧が可能、AI査定により価格の透明性が高まる、オンライン契約で手続きが完結、時間・場所の制約が減る等のメリットがあります。VR内覧なら現地に行かずに複数物件を見学でき、スマートロックなら鍵の受け渡しなしで入居できます。IT重説(オンライン重要事項説明)の解禁により、法的にも非対面取引が可能になりました。

Q4不動産テックの今後の展望は?

A42025年に1兆円超の市場規模に達する見込みです(矢野経済研究所)。グローバル市場では2024年384億ドルから2034年1,709億ドルへと成長予測があり、アジア太平洋地域では2024〜2029年にCAGR 18%超で成長する見込みです。法規制の緩和(IT重説の解禁等)やDX推進により更なる普及が期待されています。

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Room Match編集部

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