管理業務主任者とマンション管理士の重要性
マンション管理業界への転職や不動産業界でのキャリアアップを検討している方にとって、管理業務主任者とマンション管理士は重要な国家資格です。両資格は試験範囲が80-90%重複しているため、ダブル受験で効率的に取得できます。
この記事では、管理業務主任者とマンション管理士の違い、試験内容・難易度・合格率、取得メリット、ダブル受験の効率的な学習方法を、公式情報をもとに解説します。
資格取得で正確な情報をもとにキャリアを計画できるようになります。
この記事のポイント
- 管理業務主任者は管理会社側の国家資格で独占業務あり、マンション管理士は管理組合側のコンサルティング資格（名称独占資格）
- 試験範囲が80-90%重複し、試験日も約1週間しか離れていないため、同年度のダブル受験が推奨される
- 合格率はマンション管理士8-12%、管理業務主任者18-23%で、マンション管理士の方が難易度が高い
- 管理業務主任者合格者は翌年のマンション管理士試験で5問免除の特典あり、ダブル取得でキャリアの幅が広がる
(1) マンション管理の複雑化と専門家の必要性
マンションの老朽化・大規模修繕・管理費滞納など、管理組合が直面する課題は複雑化しています。
専門家の必要性:
- 管理会社側の専門家: 管理業務主任者（管理会社に所属し、重要事項の説明や管理事務の報告を行う）
- 管理組合側の専門家: マンション管理士（管理組合に対するコンサルティング、助言、指導を行う）
両資格は、マンション管理の適正化・透明化に貢献する重要な役割を担っています。
(2) 2資格の社会的需要の増加傾向
マンションストックの増加に伴い、管理業務主任者とマンション管理士の社会的需要は増加傾向にあります。
需要増加の背景:
- マンションストックの増加: 築30年超のマンションが今後増加
- 管理組合運営の複雑化: 管理費・修繕積立金の適正化、大規模修繕計画の策定等
- 法改正: マンション管理適正化法の改正により、管理の透明性が求められている
資格取得は、今後のキャリアにおいて有利に働く可能性があります。
管理業務主任者とマンション管理士の違い
(1) 立場の違い（管理会社側 vs 住民側）
管理業務主任者とマンション管理士の最大の違いは、立場です。
| 項目 | 管理業務主任者 | マンション管理士 |
|---|---|---|
| 立場 | 管理会社側 | 管理組合側（住民側） |
| 業務対象 | 管理組合に対する重要事項の説明・管理事務の報告 | 管理組合に対するコンサルティング・助言・指導 |
管理業務主任者は管理会社に雇用され、マンション管理士は独立または管理組合側のアドバイザーとして活動します。
(2) 独占業務の有無（管理業務主任者は独占業務あり）
管理業務主任者には、以下の4つの独占業務があります。
管理業務主任者の独占業務:
- 管理受託契約に関する重要事項の説明（契約前の説明）
- 重要事項説明書への記名・押印
- 管理事務の報告（管理組合への年次報告）
- 管理受託契約書への記名・押印
マンション管理士には独占業務がなく、名称独占資格です。
(3) 名称独占資格の意味（マンション管理士）
名称独占資格とは、その資格名称を使用できるのは有資格者のみだが、業務自体は誰でも行える資格です。
マンション管理士の特徴:
- 名称独占: 有資格者のみ「マンション管理士」の名称を使用可能
- 業務独占なし: コンサルティング業務自体は無資格者でも行える
- 信頼性の向上: 国家資格保有者として専門性をアピール可能
マンション管理士単独では就職に直結しにくいため、管理業務主任者とのダブル取得が推奨されます。
(4) 設置義務（管理業務主任者は30組合に1人以上）
管理業務主任者には、設置義務があります。
設置義務の内容:
- 管理会社は、30管理組合につき1人以上の管理業務主任者を設置することが法律で義務付けられている
- マンション管理士には設置義務なし
この設置義務により、管理業務主任者は安定した需要があります。
(5) 業務内容の比較表
両資格の業務内容を比較すると、以下の通りです。
| 項目 | 管理業務主任者 | マンション管理士 |
|---|---|---|
| 資格の種類 | 国家資格（業務独占資格） | 国家資格（名称独占資格） |
| 独占業務 | ✅ あり（4つの独占業務） | ❌ なし |
| 設置義務 | ✅ あり（30組合に1人以上） | ❌ なし |
| 主な活動場所 | 管理会社 | 独立・管理組合アドバイザー |
| 就職・転職 | 有利（独占業務・設置義務） | 単独では不利（ダブル取得推奨） |
試験内容・難易度・合格率
(1) 試験範囲の重複（80-90%が共通）
管理業務主任者とマンション管理士の試験範囲は、80-90%が重複しています。
共通の試験範囲:
- 区分所有法
- マンション管理適正化法
- 民法（契約、不法行為等）
- 建築基準法・消防法
- マンション管理の実務
試験範囲の重複率が高いため、ダブル受験で効率的に学習できます。
(2) 合格率の比較（マンション管理士8-12%、管理業務主任者18-23%）
両資格の合格率は、以下の通りです。
| 資格 | 合格率（近年） | 難易度 |
|---|---|---|
| マンション管理士 | 8-12% | 高い（宅建士より難しい） |
| 管理業務主任者 | 18-23% | 中程度（宅建士と同程度） |
2024年度（令和6年度）試験結果:
- 管理業務主任者: 合格率21.3%、合格基準点38点（50問中）、合格者数3,159人
- マンション管理士: 合格率12.7%（例年並み）
マンション管理士の方が難易度が高いです。
(3) 勉強時間の目安（マンション管理士500-700時間、管理業務主任者300時間）
合格に必要な勉強時間の目安は、以下の通りです。
| 資格 | 勉強時間の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 管理業務主任者 | 約300時間 | 初学者の場合 |
| マンション管理士 | 約500-700時間 | 初学者の場合 |
| ダブル受験 | 約500-700時間 | 試験範囲の重複により効率的 |
注意:
- 勉強時間は個人差があります
- 法律の知識がある方は、より短い時間で合格できる場合があります
(4) 2024年度試験結果と2025年度試験日程
2024年度（令和6年度）試験結果:
- 管理業務主任者: 合格発表2025年1月10日、合格基準点38点、合格率21.3%
- マンション管理士: 合格率12.7%
2025年度試験日程（予定）:
- マンション管理士: 2025年11月23日（予定）
- 管理業務主任者: 2025年12月7日（予定）
試験日が約2週間しか離れていないため、知識が薄れないうちに受験できます。
(5) 5問免除の特典（管理業務主任者合格者向け）
管理業務主任者試験に合格すると、翌年のマンション管理士試験で5問が免除される特典があります。
5問免除の仕組み:
- 管理業務主任者試験合格（50問中38点以上）
- 翌年のマンション管理士試験で5問免除（50問中45問を解答）
- 事前に免除申請手続きが必要
この特典を活用することで、マンション管理士試験の負担を軽減できます。
取得メリット（就職・転職・キャリアアップ）
(1) 管理業務主任者の就職・転職メリット（独占業務・設置義務）
管理業務主任者は、独占業務と設置義務があるため、就職・転職に有利です。
メリット:
- 管理会社への就職: 30組合に1人以上の設置義務により、安定した需要
- 資格手当: 企業により異なりますが、月1-3万円程度とされるケースがあります
- キャリアアップ: 管理会社の管理職や責任者として活躍可能
(2) マンション管理士の活用方法（コンサルティング・独立）
マンション管理士は、名称独占資格のため、単独では就職に直結しにくいですが、以下の活用方法があります。
活用方法:
- 独立開業: マンション管理組合向けのコンサルタントとして独立
- 管理組合アドバイザー: 管理組合の顧問として助言・指導
- ダブル取得: 管理業務主任者とのダブル取得で、両面のスキルを持つ専門家として差別化
(3) ダブル取得のキャリアアップ効果
管理業務主任者とマンション管理士のダブル取得は、キャリアの幅を広げます。
ダブル取得のメリット:
- 両面のスキル: 管理会社側と管理組合側の両方の視点を持つ専門家
- 高い専門性: 2つの国家資格保有者として信頼性が向上
- 独立の選択肢: 管理会社勤務だけでなく、独立開業の選択肢も広がる
(4) 資格手当・収入アップの可能性
管理業務主任者の資格手当は、企業により異なりますが、月1-3万円程度とされるケースがあります。
収入アップの可能性:
- 資格手当: 年間12-36万円程度の収入アップ（企業により異なります）
- 昇進・昇給: 管理職や責任者として昇進の機会が増える
- 独立後の収入: マンション管理士として独立した場合、顧問料等の収入が得られる可能性
注意:
- 資格取得がキャリアに与える影響は個人差があります
- 企業により資格手当の有無・金額は異なります
ダブル受験のメリットと効率的な学習方法
(1) ダブル受験が推奨される理由（試験範囲の重複）
ダブル受験が推奨される理由は、試験範囲が80-90%重複しているためです。
ダブル受験のメリット:
- 効率的な学習: 同じ範囲を2回学習することで知識が定着
- 試験慣れ: 2回受験することで試験形式に慣れる
- どちらかに合格: 仮に一方に不合格でも、もう一方に合格できる可能性
(2) 試験日が約1週間しか離れていない利点
試験日が約2週間しか離れていないため、知識が薄れないうちに受験できます。
利点:
- 知識の鮮度: 1週目の試験で学んだ知識を2週目でも活用可能
- モチベーション維持: 連続して受験することで、学習のモチベーションを維持しやすい
(3) 効率的な学習計画の立て方
ダブル受験の学習計画は、以下のように立てることをおすすめします。
学習計画の例:
- 6-9ヶ月前: 基礎学習（区分所有法・民法等の基礎知識）
- 3-6ヶ月前: 過去問演習（管理業務主任者の過去問を中心に）
- 1-3ヶ月前: マンション管理士の特有範囲を追加学習（建築・設備等）
- 試験直前: 両試験の過去問を繰り返し解く
(4) 独学での合格可能性と通信講座の活用
独学での合格は可能ですが、試験範囲が広く専門的な内容も多いため、通信講座やテキストを活用した計画的な学習が推奨されます。
学習方法の選択肢:
- 独学: 市販のテキスト・過去問集を使用（費用を抑えられる）
- 通信講座: STUDYing、TAC、アガルート等の通信講座（効率的な学習）
- 通学講座: 資格学校の通学講座（対面での質問が可能）
自分の学習スタイルに合った方法を選んでください。
まとめ：どちらの資格を目指すべきか
管理業務主任者とマンション管理士は、立場（管理会社側 vs 管理組合側）、独占業務の有無、設置義務の有無が異なります。
管理業務主任者は独占業務と設置義務があるため、就職・転職に有利です。マンション管理士は名称独占資格で、単独では就職に直結しにくいため、管理業務主任者とのダブル取得が推奨されます。
試験範囲が80-90%重複し、試験日も約2週間しか離れていないため、同年度のダブル受験で効率的に学習できます。管理業務主任者合格者は翌年のマンション管理士試験で5問免除の特典があります。
資格取得を検討している方は、マンション管理業協会の公式サイトで最新の試験情報を確認し、計画的に学習を進めてください。