オフィスビル賃貸の基礎知識|立地・設備・賃料相場の見方

著者: Room Match編集部公開日: 2025/11/18

オフィスビル賃貸の基礎知識と選び方の重要性

オフィスビルの選び方は、企業の業務効率、従業員満足度、採用力、さらにはブランドイメージにまで影響を与える重要な経営判断です。立地、設備、賃料相場、契約条件など、検討すべき要素は多岐にわたります。

本記事では、オフィスビル賃貸の基礎知識として、選び方の基準、都心主要エリアの特徴、内覧時のチェックポイント、契約時の注意点を、三鬼商事株式会社の最新統計や業界レポートをもとに解説します。

初めてオフィス移転を担当する方でも、自社に最適な物件を見つけられるようになります。

この記事のポイント

  • オフィスビル選びは立地、設備、コスト、BCP対策の4つの基準で判断
  • 2025年8月時点、東京ビジネス地区の平均賃料は21,027円/坪(前年比6%増)
  • 内覧時は天井高、OAフロア、24時間空調、セキュリティ、耐震性、非常用電源を必ず確認
  • 契約は普通建物賃貸借と定期建物賃貸借の2種類。中途解約、更新料、フリーレント違約金に注意
  • エリア別の賃料差が大きいため、複数物件の比較検討が必須

オフィスビル選びの4つの基準

ザイマックス総研によると、企業のオフィス選びは以下の4タイプに分類されます。

(1) 立地条件(駅からの距離、周辺環境)

立地はオフィスビル選びの最重要要素です。駅からの距離だけでなく、周辺環境も業務効率に大きく影響します。

チェックポイント:

  • 主要駅からの距離: 徒歩5分以内が理想。10分超は従業員の負担増
  • 複数路線の利用可能性: 災害時のリスク分散、通勤利便性向上
  • 周辺環境: 銀行、郵便局、飲食店、コンビニの充実度
  • ビジネス環境: 取引先・関連企業の集積状況

麹町・半蔵門エリアは7路線が利用可能で、外資系企業・IT企業の入居が増加しています。

(2) 設備・スペック(天井高、OAフロア、空調)

設備の質は業務効率と従業員満足度に直結します。

設備項目 推奨スペック 理由
天井高 2.7m以上 開放感、照明効率の向上
OAフロア 50mm以上 配線の自由度、レイアウト変更の容易性
空調 24時間利用可能 残業・早朝出勤への対応
セキュリティ 入退館システム完備 情報漏洩防止、資産保護
エレベーター 50坪あたり1台 待ち時間の短縮

(3) コスト(賃料、共益費、敷金)

賃料だけでなく、共益費、敷金、更新料を含めた総コストで判断する必要があります。

コスト構成:

  • 賃料: 坪単価 × 面積(共益費別)
  • 共益費: 共用部分の維持管理費(賃料の10-20%程度)
  • 敷金: 月額賃料の数ヶ月分(オフィスでは3-12ヶ月分が一般的)
  • 更新料: 契約更新時に月額賃料の1-2ヶ月分

(4) BCP対策(耐震性、非常用電源、防災備蓄)

災害時に事業を継続するための備えは、企業の信頼性に直結します。

確認事項:

  • 新耐震基準適合: 1981年6月以降の建築確認を受けた建物
  • 免震・制振構造: 中間免震、ハイブリッド免震+制振など
  • 非常用電源: 72時間無停電電源が理想(3日間の事業継続)
  • 防災備蓄設備: 水、食料、毛布等の備蓄スペース

住友不動産麹町ガーデンタワー(2020年竣工)は中間免震構造、72時間無停電電源、DBJグリーンビルディング5つ星を取得しています。

都心主要エリアの特徴と賃料相場

(1) 東京オフィス市場の最新動向(2025年)

三鬼商事株式会社の調査によると、2025年8月時点の東京ビジネス地区の状況は以下の通りです。

指標 2025年8月 前年比
平均募集賃料 21,027円/坪 +6%
空室率 2.85% -1.5ポイント
トレンド 賃料上昇、空室率低下 コロナ禍後の回復基調

2021年6月の空室率6.19%をピークに改善が続いており、優良物件の争奪が激化しています。

(2) 千代田区(麹町・半蔵門エリア)の特徴

三菱地所リアルエステートサービスによると、麹町・半蔵門エリアの特徴は以下の通りです。

特徴:

  • 7路線利用可能: JR、東京メトロ、都営地下鉄
  • 2010年以降、2,000坪超の新築ビル供給増加
  • 外資系企業、IT企業の入居が増加傾向
  • 賃料は他エリアより割安で高グレードビルが多い

麹町駅から徒歩3分の住友不動産麹町ガーデンタワーは、1フロア500坪超、天井高3.0mの大規模オフィスビルです。

(3) 港区(三田・虎ノ門エリア)の特徴

港区は東京を代表するビジネスエリアで、特に三田エリアは大規模オフィスビルの開発が進んでいます。

代表例: 住友不動産東京三田ガーデンタワー(2023年竣工)は、地上42階建て・高さ215m、標準階面積1,204坪(下層階)の大規模ビルです。ハイブリッド免震+制振構造、72時間無停電電源、ZEB Ready認証、DBJグリーンビルディング5つ星を取得しています。

JR田町駅徒歩5分、都営三田線三田駅徒歩3分の好立地です。

(4) エリア別賃料水準の比較

エリア 賃料水準 特徴
千代田区 高額 官公庁、大企業本社が集積
港区 高額 外資系企業、IT企業が多い
新宿区 比較的手頃 交通利便性が高い
渋谷区 比較的手頃 IT・クリエイティブ系企業が多い

立地の優先順位を明確にして、予算内で最適なエリアを選びましょう。

内覧時の必須チェックポイント

(1) 駅からの距離と周辺環境の確認

実際に駅から歩いて、所要時間と経路を確認しましょう。

確認事項:

  • 実際の所要時間: 信号待ち、坂道、地下道を含めた時間
  • 経路の安全性: 歩道の幅、街灯の有無、夜間の雰囲気
  • 周辺施設: 銀行、郵便局、飲食店、コンビニの距離

(2) 設備仕様(天井高、OAフロア、空調、セキュリティ)

野村不動産によると、内覧時のチェックポイントは以下の通りです。

設備 チェック内容
天井高 2.7m以上が理想。実測して確認
OAフロア 50mm以上の高さ。配線の自由度を確認
空調 24時間利用可能か。個別空調か一括空調か
セキュリティ 入退館システム、防犯カメラ、機械警備の有無
エレベーター 台数、速度、待ち時間を確認

(3) 防災・BCP対策の確認

確認事項:

  • 新耐震基準適合: 1981年6月以降の建築確認
  • 免震・制振構造: 中間免震、ハイブリッド免震+制振など
  • 非常用電源: 停電時の電源供給時間(72時間が理想)
  • 防災備蓄設備: 水、食料、毛布等の備蓄スペース
  • 避難経路: 非常階段の位置、避難経路図の確認

(4) テナント構成とビル全体の雰囲気

テナント構成は、ビルの雰囲気や自社のイメージに影響します。

確認事項:

  • 業種構成: 同業他社、関連企業の有無
  • 共用部の清潔感: エントランス、トイレ、廊下の状態
  • 管理体制: 管理人の常駐、清掃頻度

契約時の注意点とコスト計算

(1) 普通建物賃貸借契約と定期建物賃貸借契約の違い

オフィスターによると、契約種類は以下の2種類です。

項目 普通建物賃貸借契約 定期建物賃貸借契約
契約期間 通常2年 1年以上で自由に設定
更新 自動更新 期間確定で終了
再契約 自動 双方の合意が必要
借主保護 強い 弱い
適用場面 一般的なオフィス 短期利用、期間限定プロジェクト

企業の事業計画に応じて選択しましょう。

(2) 契約期間・中途解約・更新料の確認

契約期間: 通常2年間。中途解約は3-6ヶ月前の予告が必要です。

更新料: 契約更新時に月額賃料の1-2ヶ月分が必要な場合があります。契約書で必ず確認しましょう。

(3) フリーレント期間と早期解約違約金

フリーレント期間がある場合、契約初期の一定期間は賃料が無料になります。ただし、早期解約時に違約金が発生する場合があるため、契約書の特約条項を必ず確認してください。

(4) 総コストの計算方法(賃料+共益費+敷金+更新料)

計算例(坪単価20,000円、面積100坪の場合):

項目 計算 金額
月額賃料 20,000円 × 100坪 200万円
共益費 賃料の15% 30万円
月額合計 賃料 + 共益費 230万円
敷金(6ヶ月分) 200万円 × 6 1,200万円
年間コスト 230万円 × 12 2,760万円
更新料(2年後) 200万円 × 2 400万円

賃料だけでなく、共益費、敷金、更新料を含めた総コストで比較しましょう。

まとめ:自社に最適なオフィスビルを見つける方法

オフィスビル選びは、立地、設備、コスト、BCP対策の4つの基準で判断します。2025年8月時点、東京ビジネス地区の平均賃料は21,027円/坪で前年比6%増加しており、優良物件の争奪が激化しています。

内覧時は天井高、OAフロア、24時間空調、セキュリティ、耐震性、非常用電源を必ず確認し、契約時は普通建物賃貸借と定期建物賃貸借の違い、中途解約、更新料、フリーレント違約金に注意してください。

エリア別の賃料差が大きいため、複数物件を比較検討し、自社の優先順位(立地、コスト、拡張性、イメージ)を明確にして、最適なオフィスビルを選びましょう。専門家(不動産仲介業者、弁護士等)への相談も推奨します。

よくある質問

Q1東京のオフィスビル賃料相場はいくらか?

A12025年8月時点、三鬼商事株式会社の調査によると、東京ビジネス地区の平均募集賃料は21,027円/坪(前年比6%増)です。エリアにより差が大きく、千代田区・港区は高額、新宿区・渋谷区は比較的手頃です。空室率は2.85%まで低下しており、コロナ禍後の回復基調が鮮明です。賃料は市況により変動するため、最新情報は三鬼商事等の公式サイトで確認してください。

Q2普通建物賃貸借契約と定期建物賃貸借契約の違いは?

A2普通建物賃貸借契約は契約期間満了時に自動更新され、借主保護が強いです。定期建物賃貸借契約は期間確定で終了し、再契約には双方の合意が必要です。一般的なオフィスでは普通建物賃貸借契約が多く、短期利用や期間限定プロジェクトでは定期建物賃貸借契約が選ばれます。企業の事業計画に応じて選択し、契約書の内容を専門家(不動産仲介業者、弁護士等)に確認することを推奨します。

Q3内覧時に必ずチェックすべき設備は?

A3天井高(2.7m以上が理想)、OAフロア高さ(50mm以上)、24時間空調の有無、セキュリティ(入退館システム)、エレベーター台数(50坪あたり1台)、新耐震基準適合、非常用電源(72時間が理想)、防災備蓄設備を確認してください。BCP対策の観点で、免震・制振構造、停電時の電源供給時間、避難経路も重要です。野村不動産等の専門家のチェックリストも参考にしましょう。

Q4敷金・保証金はいつ返還されるのか?

A4敷金・保証金は退去時に原状回復費用を差し引いて返還されます。オフィスでは月額賃料の3-12ヶ月分が一般的で、原状回復費用は入居時の状態に戻すための工事費です。契約書で返還条件、原状回復の範囲、返還時期を必ず確認してください。敷金返還トラブルを避けるため、入居時に室内の状態を写真で記録しておくことを推奨します。

Q5フリーレント期間がある場合の注意点は?

A5フリーレント期間は契約初期の一定期間(1-3ヶ月)、賃料が無料になる特典です。ただし、早期解約時(契約から2年以内等)に違約金が発生する場合があります。契約書の特約条項で「フリーレント期間中の解約時は免除分を返還」等の記載がないか必ず確認してください。専門家(不動産仲介業者、弁護士等)に相談し、総コストで判断することを推奨します。

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