マンション購入を検討する前に知っておくべきこと
マンションの購入や賃貸を検討している方にとって、「相場はどのくらいか」「管理費や修繕積立金はどの程度か」「高級マンションと一般マンションの違いは何か」といった疑問は重要なポイントです。
この記事では、マンションの相場調査方法、購入時の費用とランニングコスト、高級マンションと一般マンションの違い、失敗・後悔しないための注意点を、国土交通省の公式データや市場調査データを元に解説します。
初めてマンション購入を検討する方でも、必要な知識を整理し、理想の住まいを見つけられるようになります。
この記事のポイント
- 2024年の全国新築マンション発売戸数は5万9,467戸で前年比8.6%減、価格は上昇が続いている
- マンション相場は国土交通省の「不動産取引価格情報」やレインズマーケットインフォメーションで実際の成約価格を確認できる
- 管理費の平均は月額10,862円、修繕積立金の平均は月額12,268円(国土交通省調査)
- 高級マンションは立地・広さ・設備が充実しており、間取りは200~300㎡が一般的
- 住宅ローンの月額返済額は年収の35%以内(月収の25%以内)が目安
(1) 2024年のマンション市場動向
2024年のマンション市場は、供給戸数の減少と価格上昇という二極化が進んでいます。
2024年の主要指標:
- 全国新築マンション発売戸数: 5万9,467戸(前年比8.6%減、4年ぶりに6万戸割れ)
- 首都圏の発売戸数: 2万3,003戸(前年比14.4%減、1973年調査開始以来最少)
- 全国平均価格: 6,082万円(上昇が続く)
- ㎡単価: 94.3万円(上昇が続く)
- 首都圏の初月契約率: 66.9%(前年比3.4ポイント下落、2020年以来の60%台)
東京23区以外のエリア(千葉県、埼玉県、神奈川県、都下)で平均価格が上昇し、都心と郊外の二極化が進んでいます。
(出典: 不動産経済研究所「マンション市場動向」)
(2) 新築vs中古の選択基準
新築マンションと中古マンションは、それぞれ異なる特徴を持っています。
| 項目 | 新築マンション | 中古マンション |
|---|---|---|
| 価格 | 高め(6,000万円台が平均) | 新築より安い(築年数により大きく異なる) |
| 設備 | 最新設備が標準 | 築年数により古い場合がある |
| 管理状況 | 新規のため不明 | 過去の管理状況を確認できる |
| 即入居 | 建設中のため不可 | すぐに入居可能 |
新築は最新設備と新しい住環境が魅力ですが、価格が高めです。中古は価格が抑えられ、管理状況を事前に確認できる点がメリットです。
マンションの相場を調べる方法
(1) 国土交通省の不動産取引価格情報
国土交通省の「不動産取引価格情報」は、実際の成約価格を検索できる公的データベースです。
検索できる情報:
- 地域、沿線、専有面積、築年数などの条件で検索可能
- 実際の成約価格が確認できる(売出価格ではない)
- 無料で利用できる
このサイトを利用することで、特定エリアのマンション相場を正確に把握できます。
(2) レインズマーケットインフォメーション
レインズマーケットインフォメーションは、不動産取引情報提供サイトで、実際の成約価格を確認できます。
特徴:
- 不動産流通機構が運営する公的サイト
- マンション・戸建ての成約価格を検索可能
- 地域、築年数、専有面積等で絞り込み検索ができる
(3) 不動産ポータルサイトの活用と注意点
SUUMO、HOME'S等の不動産ポータルサイトでは、現在販売中の物件を検索できます。
注意点:
- ポータルサイトの価格は「売出価格」であり、実際の「成約価格」ではない
- 成約価格は売出価格より5~10%程度低くなることが多い
- 相場把握には、国土交通省やレインズの成約価格データを併用することをおすすめします
マンション購入時の費用とランニングコスト
(1) 頭金と諸費用の目安
マンション購入時には、物件価格以外に頭金と諸費用が必要です。
頭金の目安:
- 物件価格の5~10%(諸費用を含む)
- 例: 5,000万円の物件の場合、250~500万円
諸費用の内訳:
- 仲介手数料: 物件価格の3%+6万円+消費税(上限)
- 登記費用: 10~30万円(登録免許税+司法書士報酬)
- 火災保険: 10~20万円(10年一括払いの場合)
- 印紙税: 1~3万円
諸費用は物件価格の5~10%が目安です。
(2) 住宅ローンの月額返済額の考え方
住宅ローンの月額返済額は、年収の35%以内(月収の25%以内)が目安とされています。
例(年収500万円の場合):
年収500万円 × 35% = 175万円(年間返済額)
175万円 ÷ 12ヶ月 = 14.6万円(月額返済額の上限)
この範囲内に収めることで、生活費に余裕を持ちながら返済を続けられます。
(出典: SUUMO「マンション購入前にチェックしたいポイント」)
(3) 管理費と修繕積立金の相場
マンションのランニングコストとして、管理費と修繕積立金が必要です。
平均額(国土交通省調査):
- 管理費: 月額10,862円
- 修繕積立金: 月額12,268円
- 合計: 月額約2.3万円
管理費と修繕積立金の違い:
| 項目 | 管理費 | 修繕積立金 |
|---|---|---|
| 用途 | 共用部分の日常的な維持管理 | 大規模修繕工事のための積立 |
| 内訳 | 管理員人件費、清掃費、設備点検費等 | 外壁塗装、屋上防水、配管工事等 |
| 支払い | 毎月 | 毎月(または一時金) |
(出典: 三菱UFJ銀行「管理費・修繕積立金を徹底解説」、国土交通省「マンション総合調査(平成30年度)」)
(4) 段階増額方式の注意点
修繕積立金には「段階増額方式」を採用しているマンションがあります。
段階増額方式とは:
- マンション購入当初は積立金を低く設定
- 年数経過とともに値上げする方式
- 購入時の負担は軽いが、将来的に月額負担が増加する
購入前に、修繕積立金が段階増額方式かどうかを確認し、将来の負担を考慮することをおすすめします。
高級マンションと一般マンションの違い
(1) 立地の違い(駅近・静かな環境)
高級マンションの立地は、利便性が高く、かつ静かな環境が特徴です。
高級マンションの立地条件:
- 駅から徒歩数分の駅近
- 土地の価値・人気が高いエリア(港区、千代田区等)
- 騒音が少なく、治安が良い
一般マンションは駅から徒歩10~15分程度の立地が多く、価格が抑えられます。
(出典: 長谷工の住まい「高級マンションの驚くべき価格・間取り・設備とは?」)
(2) 間取りと専有面積の違い
高級マンションは、専有面積が広いのが特徴です。
| 項目 | 高級マンション | 一般マンション |
|---|---|---|
| 専有面積 | 200~300㎡ | 50~100㎡ |
| 間取り | 3LDK~5LDK以上 | 1LDK~3LDK |
| 天井高 | 2.7m以上 | 2.4~2.6m |
高級マンションは平均的な一般マンション(100㎡)の2~3倍の広さがあります。
(3) 設備とサービス(コンシェルジュ・共用施設)
高級マンションは、設備とサービスが充実しています。
高級マンションの設備・サービス:
- コンシェルジュサービス(24時間対応、宅配物受取、クリーニング等)
- ゲストルーム(来客用宿泊施設)
- フィットネスジム(マシン完備)
- ラウンジ・パーティールーム
- 屋上庭園・プール
一般マンションは、共用施設が限定的な場合が多く、管理費も抑えられます。
マンション購入で失敗・後悔しないための注意点
(1) 資金計画の立て方(年収の35%以内)
資金計画は、住宅ローンの月額返済額を年収の35%以内に抑えることが基本です。
資金計画のチェックポイント:
- 住宅ローンの月額返済額が年収の35%以内か
- 管理費・修繕積立金を含めた総負担額を試算したか
- 将来の修繕積立金の値上げを考慮したか
- 教育費・老後資金等の他の支出も考慮したか
余裕を持った資金計画を立てることで、長期的に安定した生活を維持できます。
(2) 旧耐震基準と新耐震基準の確認
1981年6月を境に、建築基準法の耐震基準が大きく変わりました。
耐震基準の違い:
| 基準 | 期間 | 特徴 |
|---|---|---|
| 旧耐震基準 | 1981年6月以前 | 震度5程度の地震で倒壊しないことを基準 |
| 新耐震基準 | 1981年6月以降 | 震度6強~7程度の地震で倒壊しないことを基準 |
旧耐震基準で建てられたマンションは、現在の地震リスクに十分対応していない可能性があるため、購入前に耐震診断の結果を確認することをおすすめします。
(3) ハザードマップでの災害リスク確認
購入前に、ハザードマップで災害リスクを確認してください。
ハザードマップで確認できるリスク:
- 浸水リスク(河川氾濫・高潮)
- 土砂災害リスク
- 地震・液状化リスク
国土交通省のハザードマップポータルサイトで、全国のハザードマップを確認できます。
(4) 周辺環境の確認方法(昼夜・平日週末)
周辺環境は、実際に訪問して確認することが重要です。
確認のポイント:
- 昼と夜で雰囲気が異なる場合がある(繁華街近くは夜騒がしい等)
- 平日と週末で人の流れが変わる場合がある
- スーパー、学校、病院等の生活施設の距離を確認
- 駅からの実際の所要時間を歩いて確認
最低でも2回(昼・夜、または平日・週末)訪問することをおすすめします。
(出典: SUUMO「マンション購入前にチェックしたいポイント」)
まとめ:理想のマンションを見つけるために
マンション購入は、相場調査、資金計画、物件選びの3つのステップを丁寧に進めることが重要です。
相場調査は、国土交通省の「不動産取引価格情報」やレインズマーケットインフォメーションで実際の成約価格を確認してください。不動産ポータルサイトの価格は売出価格であり、成約価格ではない点に注意が必要です。
資金計画は、住宅ローンの月額返済額を年収の35%以内に抑え、管理費・修繕積立金を含めた総負担額を試算してください。
物件選びでは、旧耐震基準・新耐震基準の確認、ハザードマップでの災害リスク確認、周辺環境の現地確認を行い、失敗・後悔を避けましょう。
マンション購入は大きな決断です。不動産会社やファイナンシャルプランナー等の専門家に相談しながら、理想の住まいを見つけてください。
