マンション管理人とは|仕事内容と役割の概要
定年退職後のセカンドキャリアとして「マンション管理人」を検討する際、「やめとけ」という評判を目にして不安に感じる方は少なくありません。
この記事では、マンション管理人の仕事内容、「やめとけ」と言われる理由、メリット・やりがい、向き不向きを、求人情報や業界データを元に公平に解説します。実態を正確に把握し、自分に合った選択ができるようになります。
この記事のポイント
- マンション管理人は清掃・点検・受付対応が主な業務で、特別な資格は不要
- クレーム対応・3K職種・住み込み勤務の負担が「やめとけ」と言われる主な理由
- ノルマ・残業がほとんどなく、自分のペースで働けるメリットがある
- 年収は200万円前後が目安で、契約社員・パートの非正規雇用がほとんど
- 60代以上のシニアに人気があり、未経験でも採用されやすい
(1) マンション管理人(管理員)の定義と役割
マンション管理人(管理員)は、マンションの清掃・点検・受付対応などを行う現場スタッフです。特別な資格は不要で、未経験でも採用されやすい仕事です。
マンション管理人の主な役割は以下の通りです。
- 共用部分(エントランス、廊下、階段等)の清掃
- 建物・設備の日常点検と管理会社への報告
- 住民からの相談対応・来客受付
- ゴミ出し・ゴミ処理の管理
- 緊急時の初動対応(設備トラブル等)
管理人はマンション管理会社に雇用され、管理会社の指示のもとで業務を行います。住民と毎日顔を合わせるため、コミュニケーション能力と責任感が求められます。
(2) マンション管理士との違い|現場スタッフ vs 国家資格
マンション管理人(管理員)とマンション管理士は別物です。
| 項目 | マンション管理人(管理員) | マンション管理士 |
|---|---|---|
| 資格 | 不要 | 国家資格 |
| 業務内容 | 清掃・点検・受付対応 | 管理組合へのコンサルティング |
| 立場 | 管理会社の現場スタッフ | 管理組合の顧問・アドバイザー |
| 雇用形態 | パート・契約社員が多い | 独立開業・顧問契約 |
マンション管理人は現場での実務を担当し、マンション管理士は管理組合の運営や大規模修繕の計画策定などをサポートする専門家です。この記事では「マンション管理人(管理員)」について解説します。
マンション管理人の仕事内容|清掃・点検・受付対応の実態
(1) 清掃業務|共用部分の清掃・ゴミ処理
マンション管理人の主要な業務の一つが清掃です。共用部分(エントランス、廊下、階段、駐輪場等)を毎日清掃し、マンションの美観を保ちます。
具体的な清掃業務:
- エントランス・廊下のモップ掛け、掃き掃除
- ゴミ置き場の整理・清掃
- 分別されていないゴミの整理(住民に注意喚起)
- 植栽の水やり・除草
- 外周の清掃・ゴミ拾い
清掃業務は体力を使いますが、ノルマはなく、自分のペースで進められます。きれい好きな人にとっては、清掃後の達成感がやりがいになります。
(2) 点検業務|設備・建物の日常点検と報告
マンション管理人は建物・設備の日常点検を行い、異常があれば管理会社に報告します。
点検業務の例:
- 共用部分の照明(切れていないか)
- エレベーター・ドアの動作確認
- 消火器・防災設備の確認
- 給排水設備の異常チェック
- 外壁・廊下の破損・汚損の確認
専門的な修理・メンテナンスは業者が行うため、管理人は「異常の発見」と「報告」が主な役割です。細かいことに気づく観察力が求められます。
(3) 受付対応|住民対応・来客対応・管理組合との連携
管理人室での受付対応も重要な業務です。住民からの相談や来客の対応を行います。
受付対応の例:
- 住民からの質問・相談対応(ゴミ出しルール、設備トラブル等)
- 宅配業者・工事業者の受付・確認
- 管理組合(理事会)への報告書作成
- 掲示板の管理・お知らせの掲示
住民と毎日顔を合わせるため、積極的にコミュニケーションを取ることでストレスを軽減できます。「おはようございます」「お疲れさまです」といった挨拶を心がけることで、住民との良好な関係を築けます。
(4) 緊急対応|トラブル時の初動対応
設備トラブルや住民間のトラブルが発生した際、管理人が初動対応を行います。
緊急対応の例:
- 水漏れ・停電等の設備トラブル時の管理会社への連絡
- 騒音トラブル等の住民間トラブルの仲介
- 不審者・不審物の発見時の警察への通報
- 災害時の避難誘導・安全確認
クレーム対応は管理会社への報告・連携が基本であり、一人で抱え込まないことが重要です。
「やめとけ」と言われる理由|クレーム・3K・住み込み勤務
(1) クレーム対応の負担|理不尽な扱い・精神的ストレス
マンション管理人が「やめとけ」と言われる最大の理由は、クレーム対応の負担です。
キャリアガーデンによると、「入居者からのクレーム・理不尽な扱いを受けることがあり、精神的ストレスがたまりやすい」とされています。
具体的なクレーム例:
- ゴミ出しルールを守らない住民への注意後の逆ギレ
- 騒音トラブルの仲介時に両者から責められる
- 管理人が原因でないトラブルへの苦情
- 深夜・早朝の緊急対応要求(住み込み勤務の場合)
うぇるねすによると、「住民と毎日顔を合わせるため、積極的にコミュニケーションを取ることでストレスを軽減できる」とされています。挨拶や日常会話を心がけることで、クレームを未然に防げる場合があります。
(2) 3K職種としての認識|きつい・汚い・危険
マンション管理人は「3K職種」(きつい・汚い・危険)と呼ばれることがあります。
3Kと言われる理由:
- きつい: 清掃・点検で1日中立ちっぱなし、体力を使う
- 汚い: ゴミ処理・清掃業務で汚れる
- 危険: 高所作業(電球交換等)・設備点検での事故リスク
ただし、体力的な負担は個人差があります。キャリアガーデンによると、「クレーム対応・3K職種と言われるが、体力的負担は比較的少なく、ノルマ・残業もほとんどない」とされています。
(3) 住み込み勤務のデメリット|24時間対応・プライベートとの境界
住み込み勤務(マンションの一室に住み込み、24時間体制で管理業務にあたる勤務形態)の場合、デメリットが大きくなります。
住み込み勤務のデメリット:
- 早朝・深夜の緊急対応が求められる
- 仕事とプライベートの境界が曖昧になる
- 住民に「いつでも対応してくれる」と思われ、休日でも呼び出される
- 勤務時間外でも対応を求められ、休息が取りにくい
うぇるねすによると、「住み込み勤務は24時間対応が求められるため、通勤型(常駐勤務)の求人を選ぶと負担を減らせる」とされています。
(4) 非正規雇用がほとんど|ボーナスなし・年収200万円前後
マンション管理人の多くは契約社員・パートの非正規雇用で、ボーナスは基本的に支給されません。
厚生労働省「令和5年度賃金構造基本統計調査」によると、マンション管理人の年収は以下の通りです。
| 雇用形態 | 年収目安 |
|---|---|
| フルタイム(契約社員) | 200万円前後 |
| パート | 時給1,000-1,200円 |
給与水準は一般的な事務職・サービス業と比べて低めです。「生活費を補う程度」と考える方が多く、配偶者の年金や貯蓄と合わせて生活するケースが一般的です。
マンション管理人のメリットとやりがい|安定性・自分のペース
(1) ノルマ・残業がほとんどない|自分のペースで働ける
マンション管理人の大きなメリットは、ノルマ・残業がほとんどないことです。
うぇるねすによると、「清掃・点検等の業務は多岐にわたるが、ノルマや残業はほとんどないため自分のペースで働ける」とされています。
通勤型(常駐勤務)の場合、勤務時間(例:9時〜17時)が決まっており、時間外の対応を求められることは基本的にありません。
(2) 未経験でも採用されやすい|定年後のセカンドキャリア
マンション管理人は特別な資格が不要で、未経験でも採用されやすい仕事です。
キャリアガーデンによると、「定年退職後のセカンドキャリアとして人気があり、未経験でも採用されやすい」とされています。60代以上のシニアに人気があり、70歳以上でも働いている人がいます。
(3) 住民との関係性構築|感謝の言葉がやりがい
マンション管理人のやりがいは、住民との良好な関係を築き、感謝の言葉をもらうことです。
宅建Jobマガジンによると、「住民から『いつもありがとう』『きれいにしてくれてありがとう』と声をかけられることがやりがいになる」とされています。
マンションをきれいに保ち、住民が快適に暮らせる環境を作ることで、人の役に立っている実感を得られます。
(4) 人手不足で需要が高い|築40年超マンションの増加
国土交通省「マンション政策の現状と課題」によると、築40年超のマンションは2031年には約249.1万戸に急増する見込みです。
高経年マンションの増加により、管理人の需要は高まる傾向にあります。定年延長(70歳まで継続雇用促進)も進んでおり、シニアにとって安定した仕事の一つと言えます。
向き不向き・年収・勤務形態|セカンドキャリアとしての選択
(1) 向いている人|コミュニケーション能力・責任感・きれい好き
キャリアガーデンによると、マンション管理人に向いている人の特徴は以下の通りです。
- コミュニケーション能力: 住民と良好な関係を築ける
- 責任感: 管理業務を着実に遂行できる
- きれい好き: 清掃業務に抵抗がない
- 世話好き: 人の役に立つことに喜びを感じる
- 細かいことに気づく: 設備の異常を発見できる観察力
住民との日常的な挨拶や会話を通じて信頼関係を築ける人は、クレームを未然に防ぎ、ストレスを軽減できます。
(2) 向いていない人|クレームに弱い・体力に自信がない
マンション管理人に向いていない人の特徴は以下の通りです。
- クレームに弱い: 理不尽な扱いを受けるとストレスがたまる
- 体力に自信がない: 清掃・点検で1日中立ちっぱなしは辛い
- コミュニケーションが苦手: 住民との会話が負担に感じる
- 細かいことが気にならない: 異常の発見が難しい
クレーム対応は管理会社への報告・連携が基本ですが、精神的な負担を感じやすい人は通勤型(常駐勤務)を選ぶと負担を減らせます。
(3) 年収・給与相場|フルタイムで200万円前後が目安
マンション管理人の年収・給与相場は以下の通りです。
| 雇用形態 | 年収・時給 | 備考 |
|---|---|---|
| フルタイム(契約社員) | 年収200万円前後 | ボーナスなし |
| パート | 時給1,000-1,200円 | 週3-4日勤務が多い |
| 住み込み勤務 | 年収200-250万円 | 家賃・光熱費が無料または低額 |
(出典: 厚生労働省「令和5年度賃金構造基本統計調査」、求人情報サイトより)
給与は地域・経験・管理会社により異なるため、目安として参考にしてください。住み込み勤務の場合、家賃・光熱費が無料または低額になるため、実質的な収入は増えます。
(4) 勤務形態の違い|住み込み・常駐・巡回の選択肢
マンション管理人の勤務形態には以下の3種類があります。
| 勤務形態 | 内容 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| 住み込み勤務 | マンションの一室に住み込み、24時間体制で管理 | 家賃・光熱費が無料または低額 | 24時間対応、プライベートとの境界が曖昧 |
| 常駐勤務 | 決まった勤務時間(9時〜17時等)で通勤 | 時間外対応なし、ワークライフバランス良好 | 給与が低め |
| 巡回勤務 | 複数のマンションを巡回して管理 | 多様な現場を経験できる | 移動時間が長い、業務が多い |
通勤型(常駐勤務)の求人を選ぶと、住み込み勤務のデメリットを回避できます。求人票で勤務形態を必ず確認しましょう。
まとめ:マンション管理人は本当にやめとくべきか
マンション管理人は、クレーム対応・3K職種・住み込み勤務の負担が「やめとけ」と言われる主な理由です。一方で、ノルマ・残業がなく自分のペースで働ける、未経験でも採用されやすいメリットがあります。
「きつい」「やめとけ」は個人の主観・職場環境により異なるため、一概には言えません。コミュニケーション能力・責任感・きれい好きな人には向いている仕事です。
通勤型(常駐勤務)の求人を選ぶことで、住み込み勤務のデメリットを回避できます。定年後のセカンドキャリアとして検討する際は、勤務形態・給与・職場環境を確認し、自分に合った選択をしましょう。


