マンションの地震保険が重要な理由
マンションを購入・所有している方にとって、地震保険の加入は重要な検討事項です。「耐震構造だから大丈夫」と考える方もいますが、過去の震災では多数のマンションが被災しており、地震保険の必要性は高いといえます。
この記事では、マンションにおける地震保険の必要性、補償内容、保険料の決まり方、加入時のポイントを、財務省の公式情報を元に解説します。
初めて地震保険を検討する方でも、補償内容・保険料・加入時の注意点を正確に把握できるようになります。
この記事のポイント
- 耐震構造のマンションでも、過去の震災で多数の被災例があり、地震保険の必要性は高い
- 専有部分(各戸内部)と家財は個人で加入、共用部分(外壁、廊下等)は管理組合が加入する形で保険を分ける
- 保険金額は火災保険の30〜50%の範囲で設定。建物5,000万円・家財1,000万円が上限
- マンション(イ構造)の保険料は戸建てより安く、長期契約や耐震基準割引で保険料を抑えられる
- 2024年能登半島地震を受けて、今後保険料が引き上げられる可能性がある
(1) 過去の震災でのマンション被災事例
過去の大規模な震災では、マンションも多数被災しています。
- 阪神・淡路大震災(1995年):多数のマンションが倒壊・損壊
- 東日本大震災(2011年):津波被害に加え、液状化や建物損壊が発生
- 熊本地震(2016年):新耐震基準のマンションも被災
- 能登半島地震(2024年):耐震構造の建物も被害を受けた
SUUMOによると、これらの震災では耐震構造のマンションも被災しており、地震保険の必要性が再認識されています。
(2) 耐震構造でも地震保険が必要な理由
マンションは鉄骨鉄筋コンクリート造(イ構造)が多く、耐震性が高い建物です。しかし、以下の理由で地震保険の加入が推奨されます。
- 全損時の再建費用: 保険金額は火災保険の30〜50%が上限のため、全額カバーはできないが、住宅ローン返済や仮住まい費用に充当できる
- 大規模修繕の負担: 共用部分の損壊があると、修繕費用を管理組合で負担する必要がある
- 液状化リスク: 地盤の液状化は耐震構造でも被害が発生する
財務省によると、地震保険は地震・噴火・津波による火災・損壊・埋没・流失を補償する制度であり、火災保険だけではカバーできない損害に対応します。
(3) マンション地震保険の加入率
ソニー損保によると、専有部分の地震保険加入率は以下の通りです。
| 年度 | 専有部分加入率 | 共用部分加入率 |
|---|---|---|
| 2021年度 | 74.9% | 約40% |
専有部分の加入率は上昇傾向にありますが、共用部分(管理組合加入)の加入率は4割程度と低い水準です。
地震保険の基礎知識
地震保険の制度を理解することで、適切な補償内容を選ぶことができます。
(1) 地震保険とは
財務省によると、地震保険は以下の特徴を持ちます。
- 対象となる損害: 地震・噴火・津波による火災・損壊・埋没・流失
- 保険金額の上限: 火災保険の30〜50%の範囲で設定(建物5,000万円・家財1,000万円が上限)
- 損害区分: 全損100%、大半損60%、小半損30%、一部損5%の4区分で保険金を支払い
(2) 火災保険との関係
地震保険は火災保険に付帯する形でのみ加入できます。火災保険単独では地震による損害は補償されません。
| 保険の種類 | 補償対象 |
|---|---|
| 火災保険 | 火災・落雷・風災・水災等 |
| 地震保険 | 地震・噴火・津波による損害 |
まず火災保険に加入し、その後地震保険を付帯する流れになります。
(3) 専有部分と共用部分の違い
マンションの地震保険は、専有部分と共用部分で加入主体が異なります。
| 部分 | 所有者 | 保険加入者 | 対象 |
|---|---|---|---|
| 専有部分 | 個人 | 個人 | 各戸内部(居室、キッチン、浴室等) |
| 共用部分 | 管理組合 | 管理組合 | 外壁、玄関ホール、廊下、エレベーター等 |
| 家財 | 個人 | 個人 | 家具、家電、衣類等 |
ソニー損保によると、専有部分と家財は個人で、共用部分は管理組合が加入する形で保険を分けます。
マンションの地震保険の補償内容
地震保険の補償内容を理解し、適切な保険金額を設定することが重要です。
(1) 補償対象となる損害
地震保険は以下の損害を補償します。
- 地震による建物の損壊
- 地震による火災
- 噴火による損害
- 津波による流失・埋没
火災保険では、地震が原因の火災は補償されないため、地震保険の加入が必要です。
(2) 保険金額の上限と設定範囲
財務省によると、保険金額は以下のように設定されます。
- 範囲: 火災保険の30〜50%
- 上限: 建物5,000万円、家財1,000万円
例えば、火災保険で建物3,000万円・家財500万円に加入している場合、地震保険は建物900〜1,500万円・家財150〜250万円の範囲で設定できます。
(3) 損害区分と保険金の支払割合
地震保険の保険金は、損害の程度に応じて4区分で支払われます。
| 損害区分 | 支払割合 | 判定基準 |
|---|---|---|
| 全損 | 100% | 主要構造部の損害が50%以上、または焼失・流失した床面積が70%以上 |
| 大半損 | 60% | 主要構造部の損害が40〜50%未満、または焼失・流失した床面積が50〜70%未満 |
| 小半損 | 30% | 主要構造部の損害が20〜40%未満、または焼失・流失した床面積が20〜50%未満 |
| 一部損 | 5% | 主要構造部の損害が3〜20%未満、または床面積の一部が損壊 |
(4) 補償対象外となるもの
ゼロリノベジャーナルによると、以下のものは補償対象外です。
- 貴金属、有価証券、骨董品
- 自動車
- 通貨、預貯金証書(一部例外あり)
- データ・ソフトウェア
地震保険料の決まり方と相場
マンションの地震保険料は、構造と地域によって決まります。
(1) 保険料を決める要素(構造・地域)
地震保険料は以下の要素で決まります。
- 建物の構造: イ構造(耐火建築物)とロ構造(非耐火建築物)
- 所在地: 都道府県別の地震リスク(1〜3等地で区分)
- 保険金額: 設定した保険金額
- 契約期間: 1年〜5年の長期契約
(2) イ構造とロ構造の違い
マンションは通常、イ構造(鉄骨鉄筋コンクリート造)に該当します。
| 構造 | 建物の種類 | 保険料 |
|---|---|---|
| イ構造 | 耐火建築物・準耐火建築物(鉄骨鉄筋コンクリート造、鉄筋コンクリート造等) | 安い |
| ロ構造 | 非耐火建築物(木造等) | 高い |
イ構造はロ構造に比べて保険料が安く設定されています。
(3) マンションの地震保険料の相場
ソニー損保によると、都心部のマンション(イ構造)で建物500万円・家財150万円の場合、年間17,880円程度が目安です。
保険料は地域により異なります。
| 地域 | 年間保険料(建物500万円・家財150万円の場合) |
|---|---|
| 東京・神奈川・千葉・埼玉 | 約17,880円 |
| 大阪・京都・兵庫 | 約14,000円 |
| 北海道・東北(一部) | 約8,000円 |
(出典: ソニー損保)
(4) 2024年以降の保険料改定の見通し
ほけんの窓口によると、2024年1月の能登半島地震を受けて、今後保険料が引き上げられる可能性があります。
過去の保険料改定:
| 年度 | 改定内容 |
|---|---|
| 2017年 | 全国平均で値上げ |
| 2019年 | 全国平均で値上げ |
| 2021年 | 平均5.1%増 |
| 2022年 | 福島・茨城・埼玉等で29.4〜29.9%増 |
今後の改定に備えて、早めの加入検討が推奨されます。
地震保険加入時の注意点
地震保険に加入する際は、以下のポイントを確認しましょう。
(1) 共用部分の加入状況の確認
共用部分の地震保険は管理組合が加入します。加入率は4割程度と低いため、管理組合の加入状況を確認することが重要です。
確認方法:
- 管理組合の総会資料を確認
- 管理会社に問い合わせ
- 重要事項説明書で確認(購入時)
共用部分の地震保険に未加入の場合、大規模修繕費用を管理組合で負担する可能性があります。
(2) 保険料を抑える方法(長期契約・耐震基準割引)
保険料を抑えるには、以下の方法があります。
長期契約:
| 契約期間 | 割引率 |
|---|---|
| 1年 | なし |
| 2年 | 約5% |
| 3年 | 約10% |
| 5年 | 約15% |
耐震基準割引:
HOME4Uによると、建築基準法の耐震基準を満たす建物は10〜50%の割引が適用されます。
| 割引の種類 | 割引率 | 適用条件 |
|---|---|---|
| 耐震等級割引 | 10〜50% | 耐震等級1〜3を取得 |
| 免震建築物割引 | 50% | 免震建築物として認定 |
| 耐震診断割引 | 10% | 耐震診断を実施し、基準を満たす |
(3) 複数社での見積もり比較
地震保険の保険料率は国が定めているため、保険金額が同じであれば保険料は同じです。ただし、火災保険とセットで加入するため、火災保険の補償内容・保険料を比較することが重要です。
比較すべきポイント:
- 火災保険の補償内容(水災、風災等)
- 火災保険の保険料
- 割引制度(長期契約、耐震基準割引等)
- 付帯サービス(24時間サポート等)
(4) 保険金の使い道
ゼロリノベジャーナルによると、地震保険の保険金は、修復・購入だけでなく、住宅ローン返済にも充当できます。
保険金の使途:
- 建物の修復費用
- 新しい住宅の購入費用
- 仮住まいの費用
- 住宅ローンの返済
保険金の使途は限定されていないため、被災後の生活再建に柔軟に活用できます。
まとめ:マンションの地震保険選びのポイント
マンションの地震保険は、耐震構造でも過去の震災で多数の被災例があり、加入の必要性は高いといえます。専有部分(各戸内部)と家財は個人で加入し、共用部分(外壁、廊下等)は管理組合が加入する形で保険を分けます。
保険金額は火災保険の30〜50%の範囲で設定され、建物5,000万円・家財1,000万円が上限です。マンション(イ構造)の保険料は戸建てより安く、長期契約や耐震基準割引を活用することで保険料を抑えられます。
2024年能登半島地震を受けて、今後保険料が引き上げられる可能性があるため、早めの加入検討が推奨されます。共用部分の地震保険加入状況を確認し、複数の保険会社で見積もりを比較しながら、適切な補償内容を選びましょう。
詳細はファイナンシャルプランナーや保険代理店への相談を推奨します。
