マンション欠陥問題と建築品質の重要性
中古マンション購入を検討する際、「この物件に欠陥はないか」と不安に感じる方は少なくありません。新築マンションの9割に何らかの施工不良があるとの指摘もあり、中古マンションでも建築品質の確認は欠かせません。
この記事では、欠陥マンションの判断基準、実例、中古マンション購入時の建築品質確認方法(ホームインスペクション、内覧時のチェックポイント等)を、国土交通省の公式情報を元に解説します。
不動産購入者として、正しい知識を身につけ、安心できる物件選びができるようになります。
この記事のポイント
- 新築マンションの9割に何らかの施工不良があるとの指摘があり、中古マンションでも確認が必要
- 住宅品質確保法では、傾き3mm/m以上で構造上の欠陥の「一定の可能性」と定義
- 2018年の宅建業法改正で、ホームインスペクションの説明・斡旋が義務化
- ホームインスペクションの費用相場は5〜8万円、期間は約1〜2週間
- 内覧時はドア・窓の開閉、壁紙のひび割れ、漏水痕を確認
新築マンションの9割に何らかの施工不良があるとの指摘
東洋経済オンラインの記事によると、新築マンションの9割に何らかの施工不良があるとの指摘があります。完成前販売により、施工中のチェックが不十分になるリスクが背景にあります。
施工不良の内容は、軽微なもの(コンクリートの小さなひび割れ等)から、構造的な問題(傾き、基礎杭不良等)まで様々です。新築でもこのような実態があるため、中古マンションでは建築品質の確認がさらに重要になります。
欠陥は引き渡し後1〜3年以内に発覚することが多い
マンション管理組合のミカタによると、欠陥は引き渡し後1〜3年以内に発覚することが多いです。ただし、構造的な問題は数年後に顕在化することもあります。
中古マンションを購入する場合、築年数が経過しているため、過去に発覚した欠陥が修繕されているか、または未発見の欠陥が残っている可能性があります。購入前に専門家による診断を受けることが重要です。
中古マンション購入時の建築品質確認の必要性
中古マンション購入時には、以下の理由から建築品質の確認が必要です。
- 契約不適合責任の期間制限: 中古マンションの売主(個人)は、契約不適合責任を負う期間が短い(引き渡しから2〜3ヶ月等)ため、購入前の確認が重要
- 共用部の管理状況: 専有部だけでなく、建物全体(共用部)の健全性も重要
- 将来の修繕費用: 欠陥があると、将来の修繕費用が高額になる可能性
欠陥マンションとは?判断基準と実例
住宅品質確保法による構造上の欠陥の定義
**住宅品質確保法(品確法)**では、建物の傾きの基準が定められています(国土交通省「住宅の品質確保の促進等に関する法律について」)。
| 傾きの程度 | 判断基準 |
|---|---|
| 3mm/m以上 | 構造上の欠陥の「一定の可能性」 |
| 6mm/m以上 | 構造上の欠陥の「高い可能性」 |
例えば、1m当たり6mm(0.6cm)以上の傾きがある場合、構造上の欠陥の「高い可能性」があると判断されます。
パークシティLaLa横浜の事例(2015年・基礎杭問題)
マンション図書館によると、2015年に横浜市のパークシティLaLa横浜で、4棟のうち1棟で最大2.4cmの傾きが発覚しました。調査の結果、基礎杭が支持層(固い地盤)に到達していなかったことが原因と判明しました。
この事例は、施工会社のデータ改ざん問題として報道され、社会的に大きな影響を与えました。建物全体の建て替えが実施され、住民の生活に大きな影響を及ぼしました。
注意: このような事例は稀ですが、同じ施工会社の物件でも、物件ごとに品質は異なります。個別の物件について専門家による診断を受けることが重要です。
施工不良の症状(コンクリートのひび割れ・漏水痕・ドア開閉不良)
さくら事務所によると、施工不良は以下のような症状として現れます。
- コンクリートのひび割れ: 幅0.3mm以上のひび割れは構造上の問題の可能性
- 塗装の剥がれ・ひび割れ: 外壁塗装の劣化は防水性能の低下を示す
- 金属部分の錆: 雨水の浸入による腐食の可能性
- 漏水痕: 天井・壁の変色やシミは漏水の証拠
- ドア・窓の開閉不良: 建物の傾きや変形の可能性
- 壁紙の不自然なひび割れ・しわ: 複数の部屋で発生している場合、構造的な問題を示唆
欠陥発覚時の法的対応(契約不適合責任・損害賠償請求)
購入後に欠陥が見つかった場合、契約不適合責任に基づき、売主に修補請求・損害賠償請求が可能です。
契約不適合責任とは、2020年の民法改正により導入された制度で、売主が契約内容と異なるものを引き渡した場合の責任を指します(旧:瑕疵担保責任)。
ただし、契約不適合責任には期間制限があります(引き渡しから2〜3ヶ月等、契約内容により異なる)。期間内に欠陥を発見し、売主に通知することが重要です。
中古マンション購入時の建築品質確認方法
2018年宅建業法改正とホームインスペクションの説明義務
2018年に宅地建物取引業法(宅建業法)が改正され、不動産会社が中古住宅売買を仲介する場合、**ホームインスペクション(住宅診断)**の説明・斡旋が義務化されました。
これにより、買主は不動産会社からホームインスペクションの説明を受け、希望すれば専門家を斡旋してもらうことができます。
建築確認済証・検査済証の有無確認
建築確認済証と検査済証は、建物が法令に適合していることを証明する重要な書類です。
| 書類名 | 内容 |
|---|---|
| 建築確認済証 | 建物の設計が建築基準法に適合していることを証明 |
| 検査済証 | 建築工事完了後、建築基準法に適合していることを証明 |
これらの書類がない場合、建物が法令に適合していない可能性があります。購入前に必ず確認してください。
住宅性能評価書・長期優良住宅認定の確認
住宅性能評価書や長期優良住宅認定があれば、一定の品質基準を満たしている証拠です。
- 住宅性能評価書: 第三者機関が住宅の性能を評価した書類。耐震性、断熱性、劣化対策等の等級が記載
- 長期優良住宅: 一定の品質基準を満たした住宅に対する認定制度。税制優遇あり
これらの証明書がある物件は、建築品質が一定水準以上であることが期待できます。
施工会社の実績・評判の確認方法
施工会社の実績・評判をインターネット検索(口コミ掲示板、不動産レビューサイト等)で確認することも有効です。
ただし、口コミ情報は主観的な意見が多いため、参考程度に留めてください。同じ施工会社でも、物件ごとに品質は異なります。最終的には、実際の物件をホームインスペクションで確認することが重要です。
ホームインスペクション(住宅診断)の活用
ホームインスペクションとは(第三者専門家による劣化診断)
**ホームインスペクション(住宅診断)**とは、住宅に精通した専門家が、第三者の立場から住宅の劣化状況、欠陥の有無、改修すべき箇所やその時期、費用等を見極めるサービスです。
専門家は、建築士やホームインスペクター等の資格を持つプロフェッショナルです。専有部と共用部の両方を対象に、建物の劣化や不具合をチェックします。
費用・期間の相場(5〜8万円、約1〜2週間)
さくら事務所によると、ホームインスペクションの費用相場は5〜8万円、期間は約1〜2週間です。
費用は物件の規模や調査内容により異なります。基本的な調査(外観・室内の目視調査)のみの場合は5万円前後、詳細調査(設備機器の動作確認、専用機器を使った測定等)を含む場合は8万円以上になることもあります。
理想的なタイミング(売買契約前・申し込み後)
理想的なタイミングは売買契約前、申し込み後です。
このタイミングでホームインスペクションを実施すれば、劣化部分があった場合に値下げ・修理対応の交渉が可能です。契約後では、買主の都合でキャンセルする場合に手付金を放棄する必要があります。
専門家の選び方(建築士・ホームインスペクター)
ホームインスペクションを依頼する専門家は、以下の資格を持つプロフェッショナルがおすすめです。
- 一級建築士・二級建築士: 建築の専門家
- 既存住宅状況調査技術者: 国土交通省が定めた中古住宅の調査資格
- ホームインスペクター: 日本ホームインスペクターズ協会の認定資格
NPO法人「建築Gメンの会」等の第三者検査サービスを利用する方法もあります。
内覧時のセルフチェックポイントと確認書類
ドア・窓の開閉確認(開閉困難は構造上の問題の可能性)
内覧時は、すべてのドア・窓の開閉を確認してください。開閉困難や窓枠の歪みは、建物の傾きや変形の可能性を示唆します。
特に、複数のドア・窓で開閉困難がある場合は、構造上の問題が疑われます。
壁紙のひび割れ・しわ(複数の部屋で発生は構造的問題を示唆)
壁紙の不自然なひび割れ・しわが複数の部屋で発生している場合、構造的な問題の可能性があります。
壁紙は経年劣化でもひび割れることがありますが、複数の部屋で同じ場所にひび割れがある場合は、建物の変形や沈下が原因である可能性が高いです。
水入りペットボトルで振動確認、フラッシュカメラで漏水痕確認
さくら事務所によると、以下の方法でセルフチェックが可能です。
- 水入りペットボトルで振動確認: 床に水入りペットボトルを置き、歩行時の振動を確認。大きく揺れる場合は床の強度不足の可能性
- フラッシュカメラで漏水痕確認: スマホのフラッシュ機能を使って天井・壁を撮影。肉眼では見えにくい変色やシミが写真で確認できる場合がある
共用部の管理状況・修繕履歴の確認
中古マンションでは、専有部だけでなく、共用部の管理状況・修繕履歴も重要です。
- エントランス・廊下・階段: 清掃が行き届いているか、ひび割れや破損がないか
- 外壁・屋上: 外壁塗装の剥がれ、タイルの剥離、屋上防水の膨れがないか
- 修繕履歴: 大規模修繕の実施時期・内容を確認(管理組合の議事録等)
管理状況が良好な物件は、建物全体の健全性が保たれている可能性が高いです。
まとめ:安心できる中古マンション選びのポイント
中古マンション購入時には、建築品質の確認が欠かせません。新築マンションの9割に何らかの施工不良があるとの指摘もあり、中古マンションでは購入前の専門家による診断が重要です。
2018年の宅建業法改正により、ホームインスペクションの説明・斡旋が義務化されました。費用相場は5〜8万円、期間は約1〜2週間で、売買契約前に実施することをおすすめします。
内覧時は、ドア・窓の開閉、壁紙のひび割れ、漏水痕、共用部の管理状況を確認してください。信頼できる建築士や不動産会社に相談しながら、安心できる物件選びをしましょう。
