マンション査定の基礎知識と活用方法
マンション売却を検討する際、「査定額はどう決まるのか」「相場はどう調べれば良いのか」と悩む方は少なくありません。
この記事では、マンション査定の方法、自分で相場を調べる方法、査定額に影響する要因、複数社への査定依頼の重要性を、国土交通省の不動産取引価格情報やレインズマーケットインフォメーションの公式情報を元に解説します。
適正な査定額を把握し、納得のいく売却につなげるための知識を身につけられるようになります。
この記事のポイント
- マンション査定は無料(媒介契約前の手数料徴収は法律で禁止)
- 机上査定は最短当日〜3日、訪問査定は1〜2時間立会で精密査定が可能
- レインズ・不動産情報ライブラリ等の公的データベースで自分で相場を確認できる
- 複数社(最低3社以上)への査定依頼で高値査定営業を見抜ける
- 査定額は「3ヶ月以内に売れる想定価格」であり、実際の売却価格とは異なる場合がある
1. マンション査定とは?売却前に必要な理由
(1) マンション査定の基本的な仕組み
マンション査定は、不動産会社が「この価格なら3ヶ月以内に売れるだろう」と想定する価格を算出するプロセスです。国土交通省の不動産取引価格情報や過去の類似物件の成約事例を参考に、取引事例比較法で算出されます。
取引事例比較法とは、売却する不動産と条件が近い不動産の過去の成約事例を参考に査定価格を算出する方法で、マンション査定で一般的に用いられます。
(2) 査定額と実際の売却価格の違い
査定額はあくまで「3ヶ月以内に売れる想定価格」であり、実際の売却価格は以下の要因で変動します。
| 要因 | 影響 |
|---|---|
| 市場の需給 | 需要が高い時期は高値で売れる |
| 購入希望者との交渉 | 値下げ交渉で売却価格が下がる場合あり |
| 売出時期 | 春・秋の転勤シーズンは需要増 |
| 売出価格 | 査定額より高く設定すると売却が長引く |
査定額はあくまで目安と考え、市場動向や購入希望者との交渉を見ながら売出価格を調整することが重要です。
(3) 査定は無料(媒介契約前の手数料徴収は禁止)
マンション査定は無料です。宅地建物取引業法により、媒介契約前の手数料徴収は禁止されています。複数の不動産会社に査定依頼しても費用はかかりません。
(4) 2025年のマンション市場動向
2025年も都市部のマンション市場は上昇傾向が継続中です。建設コスト上昇・円安による外国人投資家増加が価格を押し上げています。2013年から2023年の10年間でマンション価格は約1.7倍に上昇しました。
ただし、不動産市場は経済状況・金利・地域開発等の影響を受けるため、相場が変動する可能性があります。最新の市場動向は国土交通省や不動産会社に確認してください。
2. マンション査定の方法:机上査定・訪問査定・AI査定
(1) 机上査定(簡易査定):最短当日〜3日で結果
机上査定(簡易査定)は、物件の基本情報(築年数、広さ、立地等)のみで算出する査定方法です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 必要な情報 | 築年数、広さ、立地、階数等 |
| 所要時間 | 5分程度で依頼可能 |
| 結果までの期間 | 最短当日〜3日 |
| 精度 | 訪問査定より低いが、相場感をつかむには十分 |
机上査定は、まず相場感をつかむために活用するのが効率的です。
(2) 訪問査定:1〜2時間の立会で精密査定
訪問査定は、不動産会社の担当者が現地調査を行い、室内・共用部・周辺環境を確認して算出する査定方法です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 必要な情報 | 机上査定の情報 + 現地確認 |
| 所要時間 | 1〜2時間の立会が必要 |
| 結果までの期間 | 訪問から1週間程度 |
| 精度 | 高い(実際の状態を反映) |
訪問査定は、本格的に売却を検討する段階で依頼することを推奨します。
(3) AI査定:全国620万棟のデータで瞬時査定
AI査定は、過去の取引データや類似物件情報をAIが解析して瞬時に算出する査定方法です。プライスマップは全国620万棟以上のマンションデータを活用し、地図上に参考価格を表示します。
登録不要・匿名で利用可能なため、まず相場感をつかむのに便利です。
(4) 取引事例比較法による査定の仕組み
マンション査定では、取引事例比較法が一般的に用いられます。これは、売却する不動産と条件が近い不動産の過去の成約事例を参考に査定価格を算出する方法です。
算出の流れ:
- 対象マンションの基本情報を確認
- 同じエリア・築年数・広さの類似物件の成約事例を検索
- 条件の違い(階数、方角、設備等)で補正
- 査定価格を算出
3. 自分で相場を調べる方法:公的データベースの活用
査定前に相場を自分で調べておくと、不動産会社から提示される査定額が妥当かどうか判断できます。
(1) レインズマーケットインフォメーション(実際の成約価格)
レインズマーケットインフォメーションは、国土交通大臣指定の不動産流通機構が運営する、実際の成約価格データベースです。
確認できる情報:
- 成約価格
- 築年数
- 広さ
- 駅距離
- 取引時期
(2) 不動産情報ライブラリ(国土交通省の取引価格データ)
不動産情報ライブラリは、国土交通省が運営する、過去の不動産取引価格を四半期ごとに公開するデータベースです。
(3) マンションプライス(全国14万棟以上のデータ)
マンションプライスは、マンション名を入力するだけで相場情報が確認できるツールです。全国14万棟以上のデータを活用しています。
(4) プライスマップ(AI査定で地図上に参考価格表示)
プライスマップは、AI査定で地図上に参考価格を表示するツールです。全国620万棟以上のマンションデータを活用し、登録不要・匿名で利用可能です。
4. 査定額に影響する要因:立地・築年数・管理状態
(1) 駅距離と周辺環境
駅距離は査定額に大きく影響します。徒歩10分以内が理想で、5分以内ならさらに高評価です。周辺環境(スーパー、学校、病院等)も重要です。
(2) 築年数と建物の状態
築年数が浅いほど査定額は高くなります。ただし、築20〜30年でも管理状態が良ければ高評価を得られる場合があります。
| 築年数 | 査定への影響 |
|---|---|
| 築5年以内 | 新築同様の評価 |
| 築10年以内 | 高評価 |
| 築20年以内 | 標準的な評価 |
| 築30年以上 | 管理状態が重要 |
(3) 管理組合の運営状況と修繕履歴
管理組合の運営状況と修繕履歴は査定に影響します。大規模修繕が計画的に実施されているか、修繕積立金が適切に積み立てられているかが確認されます。
(4) 室内の状態(水回り・設備・リフォーム歴)
室内の状態も査定に影響します。水回り(キッチン・バス・トイレ)の清潔さ、設備の状態、リフォーム歴が確認されます。
訪問査定前に水回りと玄関を掃除しておくと、第一印象が良くなります。ただし、大規模なリフォームは不要です(買主が自分好みにリフォームしたいケースが多いため)。
(5) 階数・方角・眺望
階数が高いほど査定額は高くなる傾向があります。方角は南向きが理想で、東向き・西向き・北向きの順に評価が下がります。眺望が良い場合も高評価です。
5. 複数社への査定依頼と注意点:高値査定営業を見抜く
(1) 最低3社以上への査定依頼を推奨
複数の不動産会社に査定依頼することで、適正な売却価格が見えてきます。最低3社以上が推奨です。
複数社に依頼する理由:
- 査定額の妥当性を確認できる
- 高値査定営業を見抜ける
- 不動産会社の対応力を比較できる
(2) 査定額の根拠を必ず確認
査定額の根拠を確認せずに媒介契約を結ぶと、適正な売出価格を設定できず売却が長引くリスクがあります。
確認すべきポイント:
- 参考にした取引事例
- 査定額の算出根拠
- 売出価格の提案理由
(3) 高値査定営業のリスク(契約後に値下げ提案)
1社だけの査定では、高値で釣って後から値下げを提案する「高値査定営業」に引っかかる可能性があります。
高値査定営業の見抜き方:
- 他社より明らかに高い査定額を提示
- 査定額の根拠が曖昧
- 契約を急かす
複数社に査定依頼し、査定額の根拠を確認することで、高値査定営業を見抜けます。
(4) 査定前の準備(水回り清掃・修繕履歴整理)
訪問査定前に以下の準備をしておくと、第一印象が良くなります。
- 水回り(キッチン・バス・トイレ)の清掃
- 玄関の整理整頓
- 修繕履歴の整理
- 管理組合の議事録の確認
(5) 大規模リフォームは不要
大規模なリフォームは査定前に不要です。買主が自分好みにリフォームしたいケースが多いため、水回りと玄関の清掃程度で十分です。
6. まとめ:適正な査定額で売却を成功させる
マンション査定は、机上査定・訪問査定・AI査定の3種類があり、まず机上査定で相場感をつかみ、本格的に売却を検討する段階で訪問査定を依頼することを推奨します。
レインズマーケットインフォメーション・不動産情報ライブラリ等の公的データベースで自分で相場を確認し、複数社(最低3社以上)に査定依頼することで、適正な査定額を把握できます。
査定額の根拠を確認し、高値査定営業を見抜くことが重要です。査定額は「3ヶ月以内に売れる想定価格」であり、実際の売却価格とは異なる場合があるため、市場動向や購入希望者との交渉を見ながら売出価格を調整しましょう。詳細は宅地建物取引士等の専門家にご相談ください。
