土地の評価額と売値の違いとは?
土地を売却する際、「固定資産税の評価額は1,000万円だから、1,000万円で売れる」と考える方がいますが、これは誤解です。土地の評価額と実際の売値は全く異なる概念です。
この記事では、土地の評価額と売値の違い、4つの評価額の種類、評価額から売値を計算する方法、相場を自分で調べる方法を、国土交通省や国税庁の公式情報を元に解説します。
土地を売却する前に、正しい相場を把握し、適正な価格で売却できるようになります。
この記事のポイント
- 土地は「一物五価」と呼ばれ、公示地価・基準地価・相続税路線価・固定資産税評価額・実勢価格の5つの価格がある
- 固定資産税評価額から売値目安を計算する公式:売値目安=固定資産税評価額÷0.7×1.1
- 相続税路線価から売値目安を計算する公式:売値目安=路線価×面積÷0.8×1.1
- 実勢価格は公示地価の1.1〜1.2倍が目安だが、都市部では2倍以上になることもある
- 計算式で算出できるのはあくまで目安であり、実際の取引価格は個別の交渉で決まる
評価額は公的な指標、売値は実際の販売価格
評価額とは、税金の計算や公的な土地評価の基準となる価格です。国や自治体が定めた基準に基づいて算出されます。
売値とは、実際に土地を売却する際の販売価格です。売主が自由に設定でき、買主との交渉で最終的に決まります。
評価額は税金計算のための指標であり、売値は市場の需給バランスで決まるため、両者は異なります。
なぜ評価額と売値が異なるのか
評価額は標準的な条件で算出されますが、実際の土地は個別性が高く、以下の要因で価格が変動します。
- 市場の需給バランス: 人気エリアは評価額より高値、過疎地は低値になる
- 立地条件: 駅近・商業施設近接は高値、接道が悪いと低値
- 物件の個別性: 土地の形状・面積・日照・眺望等で価格が変わる
このため、評価額をそのまま売値として期待することはできません。
土地の評価額の種類(一物五価)
土地は「一物五価」と呼ばれ、同じ土地に5つの価格が存在します。それぞれの目的と基準が異なるため、違いを理解することが重要です。
| 評価額の種類 | 用途 | 公示地価との関係 | 発表時期 |
|---|---|---|---|
| 公示地価 | 土地取引の指標 | 基準(100%) | 毎年3月 |
| 基準地価 | 公示地価の補完 | ほぼ同等 | 毎年9月 |
| 相続税路線価 | 相続税・贈与税の計算 | 約80% | 毎年7月 |
| 固定資産税評価額 | 固定資産税・都市計画税の計算 | 約70% | 3年ごと評価替え |
| 実勢価格 | 実際の取引価格 | 約110-120% | 随時 |
公示地価とは(国土交通省・毎年1月1日時点)
公示地価は、国土交通省が毎年1月1日時点で公表する標準地の1㎡あたりの価格です。全国約26,000地点で調査され、3月に発表されます。
土地取引の指標として使われ、他の評価額の基準となります。
基準地価とは(都道府県・毎年7月1日時点)
基準地価は、都道府県が毎年7月1日時点で公表する基準地の価格です。公示地価を補完する役割を持ち、9月に発表されます。
公示地価とほぼ同等の水準で算出されます。
相続税路線価とは(国税庁・公示地価の約80%)
相続税路線価は、相続税・贈与税の計算基準となる道路に面した土地の1㎡あたりの価格です。国税庁が毎年7月に公表します。
公示地価の約80%が目安とされており、路線価が定められていない地域では「倍率方式」(固定資産税評価額×倍率)で評価されます。
固定資産税評価額とは(市区町村・公示地価の約70%)
固定資産税評価額は、固定資産税・都市計画税の計算基準となる評価額です。市区町村が算出し、3年ごとに評価替えが行われます。
公示地価の約70%が目安とされており、総務省の基準に基づいて評価されます。
実勢価格とは(実際の取引価格)
実勢価格は、実際の不動産取引で成立した価格です。市場の需給バランスで決まり、公示地価の1.1〜1.2倍が目安とされています。
都市部では公示地価の2倍以上になることもあります。
評価額と実際の売値の関係
実勢価格は公示地価の1.1〜1.2倍が目安
実勢価格は、公示地価の1.1〜1.2倍が一般的な目安です。これは、公示地価が1月1日時点のデータで、発表までに数ヶ月のタイムラグがあるためです。
市場の需給が活発な地域では、公示地価を上回る価格で取引されます。
都市部と地方で乖離が異なる理由
都市部では土地の需要が高く、実勢価格が公示地価を大きく上回る傾向があります。一方、地方では需要が少なく、公示地価を下回ることもあります。
| エリア | 実勢価格と公示地価の関係 |
|---|---|
| 都市部(駅近・商業地) | 公示地価の1.5〜2倍以上 |
| 郊外(住宅地) | 公示地価の1.1〜1.2倍 |
| 地方(過疎地) | 公示地価を下回る場合あり |
市場の需給バランスが価格を左右する
土地の価格は、市場の需給バランスで大きく変動します。人気エリアでは評価額を大きく上回る価格で取引される一方、需要が少ないエリアでは評価額を下回ることもあります。
売却を検討する際は、評価額だけでなく、実際の取引事例を確認することが重要です。
評価額から売値を計算する方法
固定資産税評価額から売値を計算(評価額÷0.7×1.1)
固定資産税評価額は公示地価の約70%で算出されるため、以下の公式で売値の目安を計算できます。
公式:
売値目安 = 固定資産税評価額 ÷ 0.7 × 1.1
計算例: 固定資産税評価額が1,000万円の場合
1,000万円 ÷ 0.7 × 1.1 = 約1,571万円
この計算で、売値の目安が約1,571万円と分かります。
相続税路線価から売値を計算(路線価÷0.8×1.1)
相続税路線価は公示地価の約80%で算出されるため、以下の公式で売値の目安を計算できます。
公式:
売値目安 = 路線価 × 面積 ÷ 0.8 × 1.1
計算例: 路線価が20万円/㎡、土地面積が100㎡の場合
20万円 × 100㎡ ÷ 0.8 × 1.1 = 約2,750万円
この計算で、売値の目安が約2,750万円と分かります。
計算結果はあくまで目安である理由
これらの計算式で算出できるのはあくまで目安です。実際の土地価格は、以下の要因で大きく変動します。
- 土地の形状・面積・接道状況
- 周辺環境・眺望・日照
- 市場の需給バランス
- 売主・買主の交渉
不動産会社の査定を複数社で取得し、実際の相場を確認することを推奨します。
土地の相場を自分で調べる方法
国土交通省「不動産取引価格情報」で実勢価格を確認
国土交通省「不動産取引価格情報」では、実際の取引価格データを確認できます。エリアや物件種別で絞り込んで、過去の取引事例を調べることができます。
自分の土地と条件が近い事例を参考にすることで、実勢価格の目安がわかります。
公示地価・基準地価の調べ方
公示地価・基準地価は、国土交通省の地価公示サイトで検索できます。自分の土地に近い標準地・基準地の価格を確認してください。
路線価・固定資産税評価額の調べ方
路線価の調べ方:
- 国税庁「路線価図・評価倍率表」で検索可能
固定資産税評価額の調べ方:
- 毎年送付される「固定資産税納税通知書」に記載
- 市区町村の固定資産税課で「固定資産評価証明書」を取得
不動産会社の査定を複数社で比較
正確な売値を知るには、不動産会社の査定を複数社で取得することが最も確実です。各社の査定額を比較し、平均値を参考にしてください。
査定は無料で受けられるため、3社以上に依頼することを推奨します。
まとめ:土地の相場を正しく把握するために
評価額と売値の関係を理解する
土地の評価額と売値は異なる概念です。評価額は税金計算の基準、売値は市場の需給で決まる実際の販売価格です。
固定資産税評価額や相続税路線価から売値の目安を計算できますが、あくまで参考値であり、実際の取引価格とは乖離する可能性があります。
専門家への相談が重要
土地の売却を検討する際は、不動産会社の査定を複数社で取得し、実際の相場を確認してください。国土交通省「不動産取引価格情報」で過去の取引事例も参考にしましょう。
相続税・贈与税の申告は専門的な知識が必要なため、税理士への相談を推奨します。
正しい相場を把握し、適正な価格で土地を売却してください。
