土地利用計画書とは何か:基本概念と役割
「土地利用計画書って何?」「どんな時に必要なの?」と疑問に思う土地所有者や開発検討者の方は少なくありません。
この記事では、土地利用計画書の基本概念、必要なケース、記載内容、作成方法、提出先を、国土交通省や各自治体の公式情報を元に解説します。
土地利用計画書の作成が必要な方が、適切な手続きを行えるようになります。
この記事のポイント
- 土地利用計画書には「都道府県の計画」「自治体の指導要綱に基づく計画書」「農地転用等で必要な計画図」の3つの意味がある
- 開発許可、農地転用、一定規模以上の開発事業で提出が必要
- 土地利用計画図は1/100~1/300縮尺でA3用紙、Jw_cadまたは手書きで作成
- 周辺被害防止策(雨水処理計画等)の記載不備は許可が下りない原因になる
(1) 土地利用基本計画(国土利用計画法第9条)
土地利用基本計画とは、国土利用計画法第9条に基づき都道府県が定める計画です。この計画は、計画書と計画図で構成され、都道府県内の土地を以下の5つの地域(五地域)に区分して、適正な土地利用を図ることを目的としています。
五地域の区分
- 都市地域: 都市として開発・整備を図る地域
- 農業地域: 農業の振興を図る地域
- 森林地域: 森林の保全を図る地域
- 自然公園地域: 自然環境の保全と利用を図る地域
- 自然保全地域: 自然環境の厳格な保全を図る地域
この土地利用基本計画は都道府県レベルの広域的な計画であり、個別の開発事業や農地転用で直接作成するものではありません。
(出典: 国土交通省 - 土地利用基本計画の作成・活用)
(2) 土地利用事業計画書(自治体の指導要綱)
土地利用事業計画書とは、自治体の指導要綱に基づき、一定規模以上の開発事業で提出が必要な計画書です。自治体によって名称や要件が異なりますが、一般的に以下のような開発事業が対象となります。
対象となる開発事業の例(浜松市の場合)
- 住宅団地(10戸以上または1ヘクタール以上)
- 商業施設・工場等(1,000㎡以上)
- 土石採取(1,000㎡以上)
この土地利用事業計画書には、事業内容、土地利用計画図、周辺住民への説明会・協議記録などを添付する必要があります。
(出典: 浜松市 - 土地利用事業計画書の提出について)
(3) 土地利用計画図(開発事業・農地転用で必要な図面)
土地利用計画図とは、農地転用や開発事業で必要な図面で、1/100~1/300の縮尺でA3用紙に作成します。建築物配置、駐車スペース、境界線、周辺被害防止策(雨水処理計画等)を図示します。
この記事では、主に②土地利用事業計画書と③土地利用計画図を中心に解説します。
(4) この記事で分かること(作成方法・記載内容・提出場面)
この記事では、以下の内容を詳しく解説します。
- 土地利用計画書・計画図が必要なケース(開発許可、農地転用等)
- 記載すべき内容(建築物配置、周辺被害防止策等)
- 作成方法(縮尺、サイズ、Jw_cad活用等)
- 提出先と手続きの流れ(自治体の開発指導課、農業委員会等)
- 作成時の注意点(よくある失敗、専門家への相談)
土地利用計画書が必要なケースと法的背景
(1) 開発許可(都市計画法)が必要な場合
都市計画法に基づく開発許可を受ける際、土地利用計画図の提出が必要です。開発許可が必要なケースは、開発区域の面積や用途地域により異なります。
開発許可が必要な主なケース
- 市街化区域内: 1,000㎡以上の開発行為
- 市街化調整区域内: 原則としてすべての開発行為
- 非線引き区域内: 3,000㎡以上の開発行為(自治体により異なる)
開発許可の申請時には、土地利用計画図に加えて、造成計画、排水計画、給水計画などの図面も必要になります。
(2) 農地転用(農地法)の許可申請
農地転用とは、農地を住宅用地・駐車場・資材置場等に転用する際に必要な許可申請です。農地転用の許可申請では、土地利用計画図が最重要書類の一つとなります。
農地転用で土地利用計画図が重要な理由
- 転用目的の明確化: どのように土地を利用するのかを具体的に図示
- 周辺農地への影響評価: 雨水処理、日照、通風等への配慮を確認
- 事業の実現可能性: 計画が実際に実現可能かを判断する資料
農地転用の土地利用計画図については、後述のH2-4で詳しく解説します。
(3) 自治体の指導要綱(一定規模以上の開発事業)
多くの自治体では、開発指導要綱を定めており、一定規模以上の開発事業を行う際に、土地利用事業計画書の提出を義務付けています。
自治体の指導要綱による提出要件の例
| 自治体 | 対象事業 | 面積基準 |
|---|---|---|
| 浜松市 | 住宅団地 | 10戸以上または1ヘクタール以上 |
| 厚木市 | 開発行為 | 500㎡以上(市街化調整区域) |
自治体により要件が異なるため、事前に該当自治体の開発指導課に確認することが重要です。
(出典: 厚木市 - 土地利用計画図(記載例))
(4) 1ヘクタール以上の大規模開発(追加資料が必要)
1ヘクタール以上の大規模開発行為の場合、土地利用計画図に加えて、以下のような追加資料の提出が必要になる場合があります。
大規模開発で必要な追加資料
- 樹木保存計画: 既存樹木の保存計画
- 表土保全計画: 表土の剥ぎ取り・保管・再利用計画
- 環境影響評価: 周辺環境への影響評価(2ヘクタール以上の場合等)
これらの追加資料は、環境保全や周辺住民への配慮を確認するために求められます。
土地利用計画書・計画図の記載内容と作成方法
(1) 土地利用計画図の基本要素(建築物配置、駐車スペース、境界線)
土地利用計画図には、以下の基本要素を記載します。
土地利用計画図の基本要素
- 建築物配置: 建物の位置、大きさ、用途
- 駐車スペース: 駐車場の位置、台数、車路
- 境界線: 開発区域線、隣地境界線、官民境界線
- 道路: 既存道路、新設道路の幅員、種類
- 緑地: 緑地帯、植栽計画
- その他: 擁壁、階段、雨水処理設備等
これらの要素を図面に明確に図示し、読み手が計画内容を理解できるようにします。
(2) 縮尺とサイズの目安(1/100~1/300、A3用紙)
土地利用計画図の縮尺とサイズは、以下が一般的です。
縮尺とサイズの目安
- 縮尺: 1/100~1/300程度(土地の広さに応じて調整)
- サイズ: A3用紙に収まるサイズ
- 用紙の向き: 横向き(ランドスケープ)が一般的
縮尺は、計画内容を見やすく図示できるサイズにします。小さすぎる土地では1/50、大きな土地では1/500なども使用される場合があります。
(3) Jw_cadを使った作成方法(手書きも可能)
Jw_cadは、土地利用計画図作成に広く利用されているフリーのCADソフトです。手書きでも作成可能ですが、修正が容易なCADソフトの利用が推奨されます。
Jw_cadでの作成手順
- 敷地の外形線を作図: 実測図や公図を基に敷地の形状を入力
- 建築物を配置: 建物の位置、大きさ、用途を記入
- 駐車スペースを配置: 駐車場、車路を図示
- 周辺被害防止策を図示: 雨水枡、集水用溝、放流先等
- 文字を記入: 面積、用途、寸法等を記入
- 着色: 切土部分を黄色、盛土部分を緑色で着色(自治体により異なる)
Jw_cadの操作に不慣れな場合は、行政書士や土地家屋調査士に作成を依頼することも可能です。
(出典: 農地転用の図面作成:ポイントを農地関係専門の行政書士が解説します)
(4) 必須記載事項(開発区域線、里道・水路・河川の境界線)
土地利用計画図には、以下の必須記載事項があります。
必須記載事項
| 項目 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 開発区域線 | 開発区域の範囲を示す線 | 赤色の実線で図示することが多い |
| 官民境界線 | 里道・水路に接する場合の境界線 | 記載漏れに注意 |
| 河川区域線 | 河川に接する場合の河川区域と一般区域の境界線 | 河川管理者への確認が必要 |
| 方位 | 北方位を示す記号 | 図面の右上に記載することが多い |
| 縮尺 | 図面の縮尺 | 1/100等を明記 |
里道・水路・河川に接する場合は、官民境界線や河川区域線の記載が必須です。記載漏れがあると、審査が通らない可能性があります。
(5) 周辺被害防止策(雨水処理計画、集水用溝、雨水枡)
特に農地転用では、周辺農地への被害防止策の図示が重要です。周辺被害防止策が不十分だと、許可が下りない可能性があります。
周辺被害防止策の主な内容
- 雨水処理計画: 雨水の流れ、集水方法、放流先を図示
- 集水用溝: 敷地境界に設置する集水用の溝
- 雨水枡: 雨水を一時的に貯める設備
- 放流先: 雨水の最終的な放流先(河川、下水道等)
これらの設備を具体的に図示し、周辺農地に雨水による被害を与えないことを示す必要があります。
農地転用における土地利用計画図の特別な要件
(1) 転用目的の明確化(住宅用地・駐車場・資材置場等)
農地転用の土地利用計画図では、転用目的を明確に図示する必要があります。
転用目的の例
- 住宅用地: 住宅の配置、間取り、駐車スペース
- 駐車場: 駐車台数、車路の幅員、出入口
- 資材置場: 資材の種類、保管方法、フェンスの設置
利用目的を説明できないスペースは作らず、「なぜそのスペースが必要なのか」を図示することが重要です。
(2) 土地選定理由と周辺農地への配慮
農地転用では、「なぜその農地を転用する必要があるのか」という土地選定理由が問われます。
土地選定理由の例
- 既存の住宅に隣接しており、住宅の拡張に適している
- 幹線道路に接しており、駐車場として利便性が高い
- 周辺に住宅が多く、資材置場としての影響が少ない
周辺農地への配慮として、日照、通風、騒音、振動等への影響を最小限に抑える計画であることを示します。
(3) 周辺被害防止策の詳細図示(雨水処理・放流先)
農地転用における周辺被害防止策の図示は、特に詳細に行う必要があります。
詳細図示の例
- 雨水の流れを矢印で示す
- 集水用溝の位置、断面図、勾配を記載
- 雨水枡の位置、容量、構造を記載
- 放流先(河川、下水道、側溝等)を明記
- 放流量の計算(必要に応じて)
これらを詳細に図示することで、周辺農地に被害を与えない計画であることを示します。
(4) 文字を大きく見やすく(農業委員が理解しやすいように)
農地転用の土地利用計画図では、農業委員会の委員(高齢の農業従事者が多い)が理解しやすいように、文字を大きく見やすくすることが推奨されます。
見やすさのポイント
- 文字サイズ: 8pt以上(できれば10pt以上)
- フォント: ゴシック体など読みやすいフォント
- 色使い: 切土部分を黄色、盛土部分を緑色で着色(自治体により異なる)
- レイアウト: 情報を詰め込みすぎず、余白を適切に
(5) 事業計画書との違い(図面vs文書)
農地転用では、土地利用計画図と事業計画書の両方が必要です。それぞれの役割は以下の通りです。
土地利用計画図と事業計画書の違い
| 項目 | 土地利用計画図 | 事業計画書 |
|---|---|---|
| 形式 | 図面 | 文書 |
| 内容 | 建築物配置、周辺被害防止策等を図示 | 転用目的、事業内容、資金計画等を文章で記載 |
| 目的 | 具体的な土地利用方法を示す | 事業の見通し、実現可能性を示す |
土地利用計画図は「何をどこに配置するか」を図示し、事業計画書は「なぜ転用が必要か、事業は成立するか」を文章で説明します。
(出典: マネーフォワード クラウド - 農地転用の事業計画書の書き方は?)
土地利用計画書の提出先と手続きの流れ
(1) 開発許可の場合(自治体の開発指導課)
開発許可を受ける場合、土地利用計画図を含む申請書類を、自治体の開発指導課(または都市計画課)に提出します。
開発許可の手続きの流れ
- 事前相談: 開発指導課に計画内容を相談(30分~1時間程度)
- 申請書類の作成: 土地利用計画図、造成計画、排水計画等を作成
- 申請書類の提出: 開発指導課に提出
- 審査: 自治体による審査(1~3ヶ月程度)
- 許可・不許可の決定: 許可が下りれば工事着手可能
事前相談では、記載漏れや要件不足を防ぐため、計画の概要を説明し、必要な書類や注意点を確認します。
(2) 農地転用の場合(農業委員会)
農地転用の許可申請では、土地利用計画図を含む申請書類を、市区町村の農業委員会に提出します。
農地転用の手続きの流れ
- 事前相談: 農業委員会に計画内容を相談
- 申請書類の作成: 土地利用計画図、事業計画書、登記事項証明書等を準備
- 申請書類の提出: 農業委員会に提出(毎月の締切日あり)
- 農業委員会の審議: 月1回の定例会で審議
- 都道府県知事への進達: 4ヘクタール以下の場合
- 許可・不許可の決定: 許可が下りれば転用可能
農地転用の審査期間は、概ね1~2ヶ月程度です。
(3) 自治体の指導要綱に基づく提出(周辺住民への説明会・協議記録)
自治体の指導要綱に基づく土地利用事業計画書の提出では、周辺住民への説明会の開催や協議記録の添付が求められる場合があります。
周辺住民への説明会の目的
- 開発計画の内容を周辺住民に説明
- 周辺住民の意見・要望を聴取
- トラブルの未然防止
説明会の開催状況や、周辺住民からの意見・要望とそれに対する対応を記録し、提出書類に添付します。
(4) 事前相談の重要性(記載漏れ・要件不足を防ぐ)
土地利用計画書・計画図の作成前に、必ず農業委員会や自治体窓口に事前相談を行うことが重要です。
事前相談のメリット
- 必要な書類、記載事項を確認できる
- 自治体ごとの様式・要件の違いを把握できる
- 記載漏れや要件不足を防げる
- 審査期間の短縮につながる
事前相談せずに作成すると、記載漏れや要件不足でやり直しになり、時間と労力を無駄にする可能性があります。
(5) 提出後の審査期間と許可・不許可の判断基準
提出後の審査期間は、以下が目安です。
審査期間の目安
- 開発許可: 1~3ヶ月程度
- 農地転用: 1~2ヶ月程度
- 自治体の指導要綱に基づく提出: 1~2ヶ月程度
許可・不許可の判断基準は、法令の要件を満たしているか、周辺への影響が適切に配慮されているかなどが評価されます。
まとめ:土地利用計画書作成で注意すべきポイント
土地利用計画書には、「都道府県の計画」「自治体の指導要綱に基づく計画書」「農地転用等で必要な計画図」の3つの意味があります。この記事では、後者2つを中心に解説しました。
土地利用計画図は1/100~1/300縮尺でA3用紙に作成し、建築物配置、駐車スペース、境界線、周辺被害防止策(雨水処理計画等)を図示します。特に農地転用では、周辺被害防止策の記載不備は許可が下りない原因になります。
自治体ごとに様式・要件が異なるため、事前に農業委員会や自治体窓口に相談し、記載漏れや要件不足を防ぐことが重要です。専門家(行政書士、土地家屋調査士等)への相談も検討しましょう。
適切な土地利用計画書を作成することで、スムーズな許可取得が可能になります。


