土地価格を調べる重要性
土地の購入・売却や相続を検討する際、「この土地はいくらくらいなのか」を正確に把握することは極めて重要です。価格を誤ると、売却時に損をしたり、相続税を過剰に支払ったりするリスクがあります。
この記事では、土地価格の4つの種類（公示地価・基準地価・路線価・実勢価格)の違いと調べ方を、国土交通省や国税庁の公式情報を元に解説します。
無料の公的サイトを活用した具体的な手順を理解することで、初めての方でも正確な土地価格を把握できるようになります。
この記事のポイント
- 土地価格には「一物四価」という4種類の評価額があり、目的に応じて使い分ける必要がある
- 公示地価・基準地価は不動産情報ライブラリや全国地価マップで無料で確認できる
- 相続税評価額は国税庁の財産評価基準書（路線価図）、固定資産税評価額は納税通知書で確認可能
- 実勢価格は不動産情報ライブラリで実際の取引価格を閲覧できる
- 固定資産税評価額は公示地価の70%程度、相続税路線価は80%程度、実勢価格は110-120%程度が目安
土地価格の4つの種類（一物四価）
土地価格には「一物四価」と呼ばれる4種類の評価額が存在します。それぞれ異なる目的で利用されるため、用途を間違えると正確な計算ができません。
(1) 公示地価・基準地価とは
公示地価は、国土交通省が毎年3月に公表する、1月1日時点の土地価格です。2名以上の不動産鑑定士による評価に基づき、1平方メートルあたりの正常な価格を公示します。
基準地価は、都道府県が毎年9月に公表する、7月1日時点の土地価格です。公示地価を補完する役割を持ち、公示地価の対象外地点をカバーしています。
どちらも一般的な土地取引の目安として広く活用されています。
(2) 相続税路線価とは
相続税路線価は、国税庁が毎年7月に公表する、相続税・贈与税の計算に使う評価額です。道路に面した土地の1平方メートルあたりの価格で表示され、公示地価の約80%の水準に設定されています。
相続や贈与に関する税金を計算する際は、必ずこの相続税路線価を使用します。
(3) 固定資産税評価額とは
固定資産税評価額は、市区町村が3年に1度評価替えする、固定資産税・都市計画税・不動産取得税の計算に使う評価額です。公示地価の約70%の水準が目安とされています。
固定資産税評価額は、毎年5月頃に届く固定資産税納税通知書の課税明細書で確認できます。
(4) 実勢価格とは
実勢価格は、実際の不動産取引で成立した価格です。市場の需給により変動し、公示地価の1.1〜1.2倍程度が一般的な目安とされています。
売却を検討する際は、実勢価格を参考にすることで、より現実的な売却額を把握できます。
(5) 4つの価格の関係性と換算方法
4つの価格の関係性を表で整理すると以下のようになります。
| 評価額の種類 | 公示地価との比率 | 主な用途 | 公表時期 |
|---|---|---|---|
| 公示地価 | 100%（基準） | 一般的な取引の目安 | 毎年3月 |
| 基準地価 | 100%（基準） | 公示地価の補完 | 毎年9月 |
| 相続税路線価 | 約80% | 相続税・贈与税の計算 | 毎年7月 |
| 固定資産税評価額 | 約70% | 固定資産税等の計算 | 3年に1度評価替え |
| 実勢価格 | 約110-120% | 実際の売買価格 | 四半期ごと |
公示地価・基準地価の調べ方
公示地価・基準地価は、無料の公的サイトで簡単に調べることができます。
(1) 不動産情報ライブラリでの調べ方
不動産情報ライブラリは、国土交通省が2024年4月にリニューアルした不動産価格調査サイトです。以下の手順で公示地価・基準地価を調べられます。
- 不動産情報ライブラリのサイトにアクセス
- 「地価公示・都道府県地価調査」を選択
- 都道府県・市区町村・地区名を入力して検索
- 該当地点の1平方メートルあたりの価格を確認
過去5年間の価格推移も確認できるため、価格の上昇・下降トレンドを把握できます。
(2) 国土交通省サイトでの調べ方
国土交通省の地価公示ページでは、最新の公示地価を都道府県別に閲覧できます。毎年3月下旬に更新されるため、最新データを確認する際に便利です。
(3) 全国地価マップでの調べ方
全国地価マップ（一般財団法人資産評価システム研究センター運営）では、地図上で視覚的に公示地価・基準地価を確認できます。住所または地図から該当地点を選択するだけで、複数の評価額を一度に閲覧可能です。
路線価の調べ方（相続税・固定資産税）
路線価は相続税と固定資産税で異なるため、目的に応じて正しいサイトで確認する必要があります。
(1) 相続税路線価の調べ方（国税庁サイト）
相続税・贈与税の計算には、国税庁の財産評価基準書（路線価図）を使用します。
- 国税庁 財産評価基準書にアクセス
- 調べたい年分と都道府県を選択
- 市区町村・地区を選択して路線価図を表示
- 該当する道路の路線価（千円単位/平方メートル）を確認
路線価方式または倍率方式のどちらで評価するかは、該当地域の路線価図で確認できます。
(2) 固定資産税路線価の調べ方（全国地価マップ）
固定資産税評価額の基準となる固定資産税路線価は、全国地価マップで確認できます。トップページで「固定資産税路線価」を選択し、住所または地図から該当地点を検索してください。
(3) 固定資産税納税通知書での確認方法
最も手軽な固定資産税評価額の調べ方は、毎年5月頃に市区町村から送付される固定資産税納税通知書を確認する方法です。
課税明細書の「価格」または「評価額」欄に、土地の固定資産税評価額が記載されています。この金額をそのまま固定資産税の計算に使用できます。
実勢価格（取引価格）の調べ方
実勢価格は市場で実際に取引された価格のため、売却を検討する際に最も参考になります。
(1) 不動産情報ライブラリでの取引価格確認
不動産情報ライブラリでは、実際の取引価格を四半期ごとに公表しています。
- トップページで「不動産取引価格情報検索」を選択
- 都道府県・市区町村・地区を入力
- 取引時期・物件種別（宅地・農地等）を選択して検索
- 該当地域の実際の取引価格を確認
アンケート回答に基づくデータのため、すべての取引が掲載されているわけではありませんが、地域の相場を把握する上で信頼性の高い情報源です。
(2) 民間サイトでの相場確認（SUUMO・HOME'S等）
SUUMOやHOME'Sなどの不動産ポータルサイトでは、独自算出の土地価格相場を確認できます。都道府県・市区町村・駅別に平均価格が表示されるため、ざっくりとした相場感を掴む際に便利です。
ただし、個別の土地の条件（形状・接道状況・用途地域等）により価格は大きく変動するため、あくまで参考値として捉えてください。
(3) 不動産会社への査定依頼
売却を具体的に検討している場合は、複数の不動産会社に査定を依頼することをおすすめします。不動産会社は周辺の取引事例や市場動向を踏まえた査定額を提示してくれます。
複数社の査定を比較することで、より正確な実勢価格を把握できます。
まとめ：目的別の使い分けと注意点
土地価格の調べ方を目的別に整理すると以下のようになります。
| 目的 | 調べる価格 | 主な調査方法 |
|---|---|---|
| 一般的な取引の目安 | 公示地価・基準地価 | 不動産情報ライブラリ、全国地価マップ |
| 相続税・贈与税の計算 | 相続税路線価 | 国税庁 財産評価基準書 |
| 固定資産税の確認 | 固定資産税評価額 | 固定資産税納税通知書、全国地価マップ |
| 売却価格の目安 | 実勢価格 | 不動産情報ライブラリ、不動産会社査定 |
注意点として、以下の点を押さえておきましょう。
- 土地価格は立地・形状・接道状況・用途地域などにより大きく変動するため、公示地価や路線価はあくまで目安として捉える
- 実勢価格は市場環境により変動し、公示地価から大きく乖離する場合がある
- 固定資産税評価額は3年に1度の評価替えのため、最新の市場価格を反映していない可能性がある
- 相続税や固定資産税の正確な計算には、税理士等の専門家への相談を推奨する
この記事で紹介した公的サイトを活用することで、無料で信頼性の高い土地価格情報を入手できます。売却や相続を検討する際は、複数の情報源を組み合わせて、より正確な価格を把握しましょう。