24時間換気システムとは:義務化の背景と仕組み
戸建てを購入または新築する際、「24時間換気システム」という言葉を聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。このシステムは、2003年の建築基準法改正で新築住宅への設置が義務化されました。この記事では、24時間換気システムの仕組み、種類(第1種・第3種等)、電気代、メンテナンス方法を詳しく解説します。
この記事のポイント
- 24時間換気システムは2003年の建築基準法改正でシックハウス対策のため義務化
- 第1種(給排気とも機械)・第3種(給気自然・排気機械)など3種類があり、戸建てでは第3種が最多
- 電気代は月150円~400円程度でつけっぱなしが推奨(こまめにON/OFFすると逆効果)
- フィルター清掃を2~3ヶ月に1度行うことで消費電力削減が可能
- 24時間換気を止めるとシックハウス症候群やカビ発生のリスクが高まる
(1) 2003年の建築基準法改正で義務化(シックハウス対策)
2003年の建築基準法改正により、すべての新築住宅に24時間換気システムの設置が義務化されました。背景には「シックハウス症候群」の社会問題化があります。シックハウス症候群とは、住宅の建材に含まれる化学物質(ホルムアルデヒド等)やダニ・ホコリによって、頭痛、めまい、喉の痛みなどの健康被害が起こる現象です。
高気密・高断熱住宅が普及する中、室内の空気が滞留しやすくなり、化学物質の濃度が上昇するケースが増えました。これを防ぐため、国土交通省は建築基準法を改正し、0.5回/時以上の換気回数を確保することを義務付けました。つまり、2時間で室内の空気がすべて入れ替わる換気能力が求められます。
(2) 24時間換気システムの基本的な仕組み
24時間換気システムは、給気口と排気口を組み合わせて室内の空気を常に入れ替える仕組みです。給気口から外気を取り込み、排気口から室内の汚れた空気を排出することで、新鮮な空気を保ちます。
一般的な換気扇との違いは、運転の継続性です。換気扇はキッチンやトイレなど局所的に使用しますが、24時間換気システムは文字通り24時間連続で稼働し、家全体の空気を循環させます。
(3) 換気扇との違いと換気回数0.5回/時以上の基準
建築基準法では、換気回数0.5回/時以上が義務付けられています。これは、1時間で室内の半分の空気が入れ替わることを意味します。例えば、床面積100㎡(約30坪)の戸建てなら、1時間あたり約120㎥の空気を入れ替える換気能力が必要です。
一方、キッチンやトイレの換気扇は局所換気であり、家全体の空気を入れ替えるものではありません。24時間換気システムは、これとは異なり、全館換気を行うことでシックハウス症候群のリスクを低減します。
24時間換気システムの3つの種類と選び方
24時間換気システムには、第1種・第2種・第3種の3種類があります。それぞれ給気と排気の方法が異なり、設置費用やランニングコストも変わります。
(1) 第1種換気:給排気ともに機械(熱交換器搭載で省エネ)
第1種換気は、給気・排気ともに機械で行う方式です。最大の特徴は、熱交換器を搭載できる点です。熱交換器は、排出する室内の空気と取り込む外気の間で熱を交換し、冷暖房効率を高めます。例えば、冬季に暖房で温めた室内の空気を排出する際、その熱を外気に移して給気することで、冷たい外気をそのまま取り込むよりもエネルギーコストを削減できます。
メリット:
- 熱交換器により冷暖房効率が向上
- 給排気を計画的に行えるため、換気ムラが少ない
- 花粉やPM2.5を高性能フィルターでシャットアウト可能
デメリット:
- 設置費用が高い(第3種の2~3倍)
- メンテナンス箇所が多い(給排気ファン、フィルター、熱交換器)
(2) 第2種換気:給気機械・排気自然(住宅では稀)
第2種換気は、給気は機械で行い、排気は自然換気で行う方式です。室内が外気より高い気圧になるため、外部からの空気の侵入を防ぐことができます。ただし、住宅ではほとんど採用されません。主にクリーンルームや無菌室など、清潔さが重視される施設で使用されます。
住宅に第2種換気を採用すると、気密性が低い場合に壁内結露のリスクがあるため、注意が必要です。
(3) 第3種換気:給気自然・排気機械(戸建てで最多)
第3種換気は、給気は自然換気(給気口から自然に空気が入る)、排気は機械で行う方式です。戸建て住宅で最も多く採用されています。理由は、設置費用が安く、メンテナンスが簡単なためです。
メリット:
- 設置費用が安い(第1種の1/2~1/3)
- メンテナンスが簡単(排気ファンとフィルターのみ)
- シンプルな構造で故障が少ない
デメリット:
- 給気口から外気を温めずに取り込むため、冬季は給気口近くが寒く感じる
- 熱交換器が使えないため、冷暖房効率は第1種より劣る
(4) 種類別の費用とメリット・デメリット比較
以下の表で、3種類の24時間換気システムを比較します。
| 項目 | 第1種換気 | 第2種換気 | 第3種換気 |
|---|---|---|---|
| 給気方法 | 機械 | 機械 | 自然 |
| 排気方法 | 機械 | 自然 | 機械 |
| 設置費用 | 50万~100万円 | 30万~60万円 | 20万~40万円 |
| 電気代(月) | 300円~500円 | 200円~400円 | 150円~300円 |
| 熱交換器 | 搭載可能 | 搭載不可 | 搭載不可 |
| 主な採用例 | 高性能住宅 | クリーンルーム | 一般戸建て |
戸建てで最もコストパフォーマンスが高いのは第3種換気です。ただし、冷暖房費を重視する場合や、花粉症・アレルギー対策を重視する場合は、第1種換気の導入も検討する価値があります。
電気代とランニングコスト
24時間換気システムの電気代は、つけっぱなしでも月150円~400円程度です。この金額は、部屋の広さや機種によって変動します。
(1) 電気代の目安(月150円~400円)
一般的な戸建て(床面積100㎡程度)の場合、24時間換気システムの消費電力は10W~30W程度です。これを24時間365日稼働させた場合の電気代を計算すると、以下のようになります。
- 10Wの場合: 10W × 24時間 × 30日 ÷ 1000 × 31円/kWh ≒ 223円/月
- 30Wの場合: 30W × 24時間 × 30日 ÷ 1000 × 31円/kWh ≒ 670円/月
実際には、機種や使用状況によって異なりますが、月150円~400円程度が目安です。第1種換気(給排気ともに機械)は消費電力が高く、第3種換気(排気のみ機械)は低めです。
(2) つけっぱなしが推奨される理由
24時間換気システムは、つけっぱなしの方が電気代が安く済みます。こまめにON/OFFすると、モーターの起動時に大きな電力が消費されるため、かえって電気代が増加します。また、換気を止めると室内の空気が滞留し、シックハウス症候群やカビ発生のリスクが高まります。
Panasonicの公式サイトでも、「基本的にスイッチは常にオンにしておく必要がある」と明記されています。
(3) フィルター清掃で消費電力削減
フィルターが詰まると、換気効率が低下し、モーターに負荷がかかって消費電力が増加します。2~3ヶ月に1度の頻度でフィルター清掃を行うことで、消費電力を10~20%削減できます。
清掃方法は簡単です。給気口・排気口のフィルターを取り外し、掃除機でホコリを吸い取るか、水洗いして乾燥させるだけです。
(4) 熱交換型の冷暖房コスト削減効果
第1種換気の熱交換型を採用すると、冷暖房費を年間数万円削減できる場合があります。熱交換器は、排出する室内の空気と取り込む外気の間で熱を交換し、冷暖房の負荷を軽減します。
例えば、冬季に室温20℃の空気を排出し、外気温5℃の空気を取り込む場合、熱交換器によって外気を15℃程度まで温めて給気することができます。これにより、暖房の負荷が減り、エネルギーコストを削減できます。
メリットとデメリット
24時間換気システムには、健康面で大きなメリットがある一方、電気代や運転音などのデメリットもあります。
(1) メリット:シックハウス症候群予防・カビ抑制
主なメリット:
- シックハウス症候群の予防: 室内の化学物質濃度を低く保ち、頭痛やめまいなどの健康被害を防ぎます
- カビ・結露の抑制: 湿気を外に排出することで、カビの発生や結露を抑えます
- アレルギー対策: 高性能フィルター搭載の第1種換気なら、花粉やPM2.5を97%シャットアウト可能
- 室内空気の清浄化: ペットの臭いや調理の臭いを排出し、常に新鮮な空気を保ちます
特に、アレルギー体質の方や小さなお子様がいる家庭では、24時間換気システムの健康効果は大きいといえます。
(2) デメリット:電気代・運転音・冬季の寒さ
主なデメリット:
- 電気代: 月150円~400円程度の電気代がかかる(ただし、冷暖房費削減で相殺される場合もある)
- 運転音: 排気ファンの音が気になる場合がある(寝室近くに設置すると音が目立つ)
- 冬季の寒さ: 第3種換気では、給気口から冷たい外気が入り、給気口近くが寒く感じる
- メンテナンスの手間: フィルター清掃を怠ると換気効率が低下する
特に、第3種換気を採用している場合、冬季の給気口近くの寒さは大きな課題です。
(3) デメリットの解消方法(全館空調との組み合わせ等)
デメリットを解消する方法:
- 運転音の対策: 静音性の高い機種を選ぶ、寝室から離れた場所に排気口を設置する
- 冬季の寒さ対策: 給気口に給気ガラリ(空気の流れを調整する部材)を設置する、全館空調システムと組み合わせる
- 全館空調との組み合わせ: 第1種換気と全館空調を統合したシステムを導入すれば、家全体の温度ムラがなくなり、快適性が大幅に向上します
最近では、全館空調システムと24時間換気を統合した製品が登場し、デメリットを解消しつつ、高い快適性を実現できるようになっています。
メンテナンス方法とよくあるトラブル
24時間換気システムを長く快適に使用するには、定期的なメンテナンスが欠かせません。
(1) フィルター清掃の頻度(2~3ヶ月に1度)
フィルター清掃は、2~3ヶ月に1度が推奨されます。清掃方法は以下の通りです。
- 給気口・排気口のカバーを外す
- フィルターを取り出す
- 掃除機でホコリを吸い取るか、水洗いする
- 完全に乾燥させてから元に戻す
フィルター清掃を怠ると、換気効率が低下し、消費電力が増加します。また、カビやダニが繁殖し、かえって室内の空気が汚れることもあります。
(2) 給気口・排気口の点検方法
給気口・排気口が正しく機能しているか、定期的に点検しましょう。
点検方法:
- 給気口: ティッシュペーパーを給気口に近づけ、空気が流れているか確認する
- 排気口: ティッシュペーパーを排気口に近づけ、吸い込まれるか確認する
空気の流れが弱い場合は、フィルターが詰まっている可能性があります。清掃しても改善しない場合は、専門業者に点検を依頼しましょう。
(3) 音がうるさい・換気が弱い場合の対処法
音がうるさい場合:
- フィルターが詰まっていないか確認する
- 排気ファンに異物が挟まっていないか確認する
- モーターが劣化している場合は、専門業者に交換を依頼する
換気が弱い場合:
- フィルターを清掃する
- 給気口・排気口が家具で塞がれていないか確認する
- ダクトが破損している場合は、専門業者に点検を依頼する
(4) 専門業者に依頼すべきケース
以下の場合は、専門業者(建築会社、設備業者等)に点検・修理を依頼することを推奨します。
- モーターから異音がする
- 清掃しても換気効率が改善しない
- 排気ファンが回らない
- ダクトの破損や結露が疑われる
自己判断での修理は、かえって故障を悪化させる可能性があるため、早めに専門業者に相談しましょう。
まとめ:戸建てで快適に暮らすための24時間換気活用法
24時間換気システムは、2003年の建築基準法改正でシックハウス対策のため義務化されました。第1種(給排気ともに機械)・第3種(給気自然・排気機械)など3種類があり、戸建てでは第3種が最も多く採用されています。電気代は月150円~400円程度で、つけっぱなしが推奨されます。
フィルター清掃を2~3ヶ月に1度行うことで、消費電力を削減し、換気効率を維持できます。24時間換気を止めると、シックハウス症候群やカビ発生のリスクが高まるため、基本的にスイッチは常にオンにしておきましょう。
戸建てで快適に暮らすために、24時間換気システムを正しく理解し、適切にメンテナンスすることが大切です。詳細は建築会社や設備業者にご相談ください。
