戸建てリフォームが注目される理由と検討すべき状況
築15年以上の戸建てを所有していると、老朽化や設備の劣化に直面し、リフォームを検討する機会が増えます。しかし、費用がどれくらいかかるのか、どのように進めればよいのか分からず不安を抱える方も多いのではないでしょうか。
この記事では、戸建てリフォームの費用相場、工事種類別の目安、補助金制度の活用方法、失敗しないための注意点を解説します。
費用相場と補助金制度を理解することで、費用対効果の高いリフォーム計画を立てられるようになります。
この記事のポイント
- フルリフォーム費用は350~2000万円、平均824万円、中心価格帯は1000~1250万円
- 住宅省エネ2024キャンペーンで高断熱窓は最大200万円、子育てエコホーム支援事業で最大60万円の補助
- リフォームは建て替えより費用が抑えられ、工期も4~6ヶ月と短い
- 1981年以前の旧耐震基準物件は耐震診断が必須
- 2025年4月から建築基準法改正により建築確認申請が必要になる場合がある
(1) リフォームと建て替えの比較(費用・工期・メリット)
戸建ての老朽化に直面したとき、リフォームと建て替えのどちらを選ぶべきか迷う方は多いでしょう。それぞれのメリット・デメリットを整理しました。
| 項目 | リフォーム | 建て替え |
|---|---|---|
| 費用 | 350~2000万円 | 2000~5000万円 |
| 工期 | 4~6ヶ月 | 8~12ヶ月 |
| メリット | 費用を抑えられる、工期が短い、思い出が残る | 構造から新しくできる、間取りの自由度が高い |
| デメリット | 構造劣化がある場合は対応困難 | 費用が高い、工期が長い |
リフォームは費用を抑えられ、工期も短いというメリットがあります。ただし、基礎や構造部分の劣化がある場合は建て替えも検討すべきです。
(2) 築年数別のリフォーム推奨タイミング
築年数に応じて、優先すべきリフォーム箇所が異なります。
築20年前後
- 水回り設備の交換: キッチン、浴室、トイレ、洗面台
- 内装の張り替え: クロス、フローリング
- 費用目安: 300~800万円
築30年前後
- 外壁・屋根の塗装: 防水性能の回復
- 水回り設備の交換
- 断熱性能の向上: 窓の交換、断熱材の追加
- 費用目安: 800~1500万円
築40年以上
- スケルトンリフォーム検討: 構造躯体だけを残して全面改修
- 耐震診断・補強工事: 1981年以前は旧耐震基準のため必須
- 費用目安: 1500~2500万円
戸建てリフォームの費用相場と価格帯別の内訳
戸建てリフォームの費用は、工事内容や築年数により大きく異なります。具体的な相場を見ていきましょう。
(1) フルリフォームの総費用(350~2000万円、平均824万円)
リショップナビによると、戸建てのフルリフォーム費用は350~2000万円、平均は約824万円です。
ホームプロによると、中心価格帯は1000~1250万円で、全体の約73%が1500万円以下に収まります。
フルリフォームとは
フルリフォームは、内装・外装・設備を全面的に刷新する大規模改修です。スケルトンリフォームとも呼ばれ、構造躯体だけを残して内装を解体・再構築します。
(2) 価格帯別の内訳(500万円・1000万円・1500万円以上)
価格帯別にどのようなリフォームが可能かを整理しました。
500万円以下
- 内装の一部張り替え: リビング・ダイニングのクロス・フローリング
- 水回り設備1-2箇所の交換: キッチンまたは浴室
- 外壁の部分補修
- できないこと: 外装全体、耐震工事
1000万円前後
- 内装の全面張り替え: 全室のクロス・フローリング
- 水回り設備の全交換: キッチン・浴室・トイレ・洗面台
- 断熱性能の向上: 窓の交換、断熱材の追加
- できないこと: 外装全体、耐震工事
1500万円以上
- 内装の全面張り替え
- 水回り設備の全交換
- 外壁・屋根の塗装または張り替え
- 耐震補強工事
- 間取り変更
低グレード材料を選び、複数社から相見積もりを取ることで、500万円でも内装と水回り設備の交換は可能です。
(3) 部位別のリフォーム費用(水回り・外壁・屋根等)
パナソニックによると、部位別のリフォーム費用の目安は以下の通りです。
| 部位 | 工事内容 | 費用目安 |
|---|---|---|
| キッチン | システムキッチン交換 | 50~150万円 |
| 浴室 | ユニットバス交換 | 80~150万円 |
| トイレ | 便器交換 | 15~50万円 |
| 洗面台 | 洗面台交換 | 10~50万円 |
| 外壁 | 塗装 | 80~150万円 |
| 屋根 | 塗装 | 50~100万円 |
| 断熱 | 窓交換(1箇所) | 5~15万円 |
| 耐震補強 | 耐震補強工事 | 100~300万円 |
水回り設備は、グレードにより価格が大きく変動します。ショールームで実物を確認し、予算に応じた選択をすることが重要です。
費用を抑えるポイントと補助金制度の活用
リフォーム費用を抑えるためには、複数社からの相見積もりと補助金制度の活用が有効です。
(1) 複数社からの相見積もりと価格交渉
複数の業者から見積もりを取ることで、適正価格を把握し費用を抑えられます。
相見積もりのポイント
- 3社以上に依頼: 大手・地域密着型・工務店をバランスよく選ぶ
- 同じ条件で比較: 工事範囲、材料グレード、工期を統一
- 見積書の内訳を確認: 諸経費・管理費の割合を比較
見積書の内訳を確認し、「一式」表記が多い業者は避けましょう。明細が具体的な業者ほど、信頼性が高い傾向があります。
(2) 住宅省エネ2024キャンペーン(高断熱窓最大200万円)
国土交通省によると、住宅省エネ2024キャンペーンで高断熱窓への交換は最大200万円の補助が受けられます。
補助対象
- 高断熱窓への交換: 最大200万円
- 断熱改修: 最大20万円
- エコキュート導入: 最大18万円
- 太陽光発電設備: 最大25万円
申請条件
- リフォーム後の住宅が一定の省エネ性能を満たすこと
- 登録事業者による工事であること
(3) 子育てエコホーム支援事業(最大60万円)
国土交通省によると、子育てエコホーム支援事業で最大60万円の補助が受けられます(執筆時点:2025年1月)。
対象世帯
- 子育て世帯: 18歳未満の子供がいる世帯
- 若者夫婦世帯: 夫婦いずれかが39歳以下
補助対象リフォーム
- 省エネリフォーム: 断熱改修、エコキュート導入等
- 子育て対応改修: 対面キッチン設置、間仕切り変更等
- バリアフリー改修: 手すり設置、段差解消等
注意点
補助金は予算上限に達すると早期終了するため、早めの申請が必須です。
(4) 優先順位をつけた段階的リフォーム
予算が限られている場合は、優先順位をつけて段階的にリフォームすることで、無理のない資金計画が立てられます。
優先順位の例
- 安全性: 耐震補強、外壁・屋根の防水
- 快適性: 水回り設備の交換、断熱性能の向上
- 美観: 内装の張り替え、照明の交換
戸建てリフォームの流れと手順
戸建てリフォームは、以下の6ステップで進みます。
(1) 相談から見積もりまで
リショップナビによると、リフォームは相談→見積もり→契約→工事→引き渡しの6ステップで進みます。
相談(1週間~1ヶ月)
- 希望条件の整理: リフォーム箇所、予算、工期
- 図面の準備: 既存図面があれば準備(打ち合わせがスムーズに)
- リフォーム会社への問い合わせ: 3社以上に相談
見積もり(2週間~1ヶ月)
- 現地調査: 業者が現地で建物状況を確認
- 見積書の受領: 工事内容・金額・工期の提示
- 比較検討: 3社の見積書を比較
(2) 契約と工事準備
契約(1日)
- 工事請負契約: 工事内容・金額・工期を確定
- 契約書類の確認: 追加費用の条件、保証内容を確認
工事準備(2週間~1ヶ月)
- 詳細設計: 仕上げ材料・設備機器の最終決定
- 工事スケジュール確定: 着工日・完了日の決定
- 仮住まいの手配: フルリフォームの場合は仮住まいが必要
(3) 工事と引き渡し
工事(3~6ヶ月)
- 解体工事: 既存設備・内装の解体
- 構造補強: 耐震補強、基礎補修(必要に応じて)
- 設備工事: 水回り設備、電気・ガス配管
- 内装工事: クロス・フローリング張り
- 外装工事: 外壁・屋根塗装(必要に応じて)
引き渡し(1日)
- 完成検査: 工事内容の確認、不具合のチェック
- 引き渡し: 鍵の受け渡し、書類の受領
- アフターフォロー: 保証内容、定期点検の説明
よくある失敗例と注意点・2025年の法改正
リフォームで失敗しないために、よくある失敗例と注意点を確認しましょう。
(1) 予算設定ミスと追加費用の発生
SUUMOリフォームタイムズによると、予算設定ミスで生活が苦しくなるケースがあります。
失敗例
- 予算ギリギリで計画: 追加工事が発生して費用超過
- 基礎・構造の劣化: 解体後に発覚し、追加工事で数百万円増
対策
- 予算の10-20%を予備費として確保: 追加工事に備える
- 現地調査を丁寧に実施: 構造・基礎の状態を事前確認
構造・基礎の状態は現地調査で初めて判明するため、追加費用が発生する可能性を念頭に置きましょう。
(2) デザイン優先による実用性不足(吹き抜け等)
SUUMOリフォームタイムズによると、吹き抜けで冷暖房費増大の失敗例があります。
失敗例
- 吹き抜け設置: 開放感はあるが、冷暖房費が年間10万円以上増加
- 大きな窓: 採光は良いが、断熱性能が低下
対策
- 実用性を優先: デザインと機能性のバランスを取る
- ランニングコストを試算: 光熱費の増減を事前確認
(3) 1981年以前の旧耐震基準物件の注意点
リショップナビによると、1981年以前の建物は旧耐震基準で補強が必要です。
旧耐震基準とは
1981年5月以前の建築基準法に基づく耐震基準で、現行基準より低い耐震性能です。
必要な対応
- 耐震診断: 建物の耐震性能を調査(費用: 10~30万円)
- 耐震補強工事: 耐震性能が不足している場合は補強(費用: 100~300万円)
耐震補強を行うことで、補助金や税制優遇を受けられる場合があります。自治体の窓口にご確認ください。
(4) 2025年4月からの建築基準法改正(建築確認申請・省エネ義務化)
増改築.comによると、2025年4月から建築基準法改正により以下の変更があります。
4号特例の縮小
主要構造部の50%超を修繕する大規模リフォームは建築確認申請が必要になります。
省エネ基準適合の義務化
増改築部分にも省エネ基準適合が義務化され、断熱性能向上が標準になります。
影響
- 建築確認申請: 申請費用(10~30万円)と審査期間(1~2ヶ月)が追加
- 省エネ基準適合: 断熱材・窓のグレードアップが必要
2025年4月以降にリフォームを計画する場合は、これらの法改正を考慮した計画が必要です。
まとめ:戸建てリフォーム成功のチェックリスト
戸建てリフォームの費用相場は、フルリフォームで350~2000万円、平均824万円、中心価格帯は1000~1250万円です。住宅省エネ2024キャンペーンで高断熱窓は最大200万円、子育てエコホーム支援事業で最大60万円の補助が受けられます(執筆時点:2025年1月)。
リフォームは建て替えより費用が抑えられ、工期も4~6ヶ月と短いメリットがあります。ただし、1981年以前の旧耐震基準物件は耐震診断が必須で、基礎や構造部分の劣化がある場合は建て替えも検討すべきです。
2025年4月から建築基準法改正により、主要構造部の50%超を修繕する大規模リフォームは建築確認申請が必要になります。リフォーム計画を立てる際は、複数社から相見積もりを取り、補助金制度を活用し、優先順位をつけた段階的なリフォームを検討しましょう。
不明な点がある場合は、建築士や宅地建物取引士などの専門家への相談もご検討ください。
注記: 本記事の情報は2025年1月時点のものです。補助金制度や法規制は改正される可能性があるため、最新情報は国土交通省や自治体の公式サイトでご確認ください。
