戸建てフルリフォームとは?建て替えとの違いと検討すべき状況
戸建てのフルリフォームとは、住宅全体を大規模に改修する工事のことです。築20-30年の戸建てに住んでおり、老朽化や家族構成の変化に対応したい場合、フルリフォームは建て替えに比べて費用を抑えながら、思い入れのある家を残せるメリットがあります。
この記事では、フルリフォーム費用の総額・内訳、部位別の相場(浴室、キッチン、外壁等)、補助金制度、費用を抑えるポイントを、国土交通省の住宅リフォーム支援制度や各種メディアのデータを元に解説します。
40-60代の戸建て所有者で、費用の総額・内訳、部位別の相場、補助金の有無を知りたい方に向けて、コスト分析と部位別比較の情報を網羅しています。
この記事のポイント
- 戸建てフルリフォームの費用相場は500-1,000万円が一般的。内装のみで約500万円、外装含む全面改修で約1,000万円が目安
- 浴室リフォーム単体の費用は80-200万円が相場。ユニットバス交換は70-110万円、在来工法から半ユニットバスへの変更は50-150万円
- 2025年は住宅省エネ2025キャンペーンで最大280万円の補助金が利用可能。省エネ・耐震・バリアフリー改修が対象
- フルリフォームは建て替えの約60-70%の費用で済み、思い入れのある家を残せるメリットがある
- 解体後に床下腐食・シロアリ被害等が判明し追加費用が発生するケースが多い。予算は見積もりの10-20%の余裕を持つことが重要
(1) フルリフォームの定義(全面リフォーム・スケルトンリフォーム)
**フルリフォーム(全面リフォーム)**とは、住宅全体を大規模に改修する工事のことです。内装・外装・設備・構造補強を含む総合的な改修を指します。
フルリフォームの中でも、スケルトンリフォームは最も大規模な工事です。建物を躯体(骨組み)まで解体し、間取りから全面的に作り直すリフォームで、最も自由度が高い反面、費用も高額になります。
| 種類 | 内容 | 費用相場 |
|---|---|---|
| 全面リフォーム | 内装・外装・設備を全体的に改修 | 500-1,000万円 |
| スケルトンリフォーム | 躯体まで解体し、間取りから作り直し | 500万円以上 |
(2) 建て替えとの違い(費用は60-70%、思い入れを残せるメリット)
フルリフォームと建て替えの主な違いは以下の通りです。
| 項目 | フルリフォーム | 建て替え |
|---|---|---|
| 費用 | 建て替えの約60-70% | 全額 |
| 工期 | 3-6ヶ月程度 | 6-12ヶ月程度 |
| 思い入れ | 既存の家を残せる | 完全に新しい家 |
| 間取り変更 | 構造により制約あり | 自由度が高い |
| 固定資産税 | 大幅に上がらない | 新築評価で上がる |
フルリフォームは、建て替えに比べて費用を抑えながら、思い入れのある家を残せるメリットがあります。ただし、構造上の制約で間取り変更に限界がある場合もあります。
(3) フルリフォームを検討すべき状況(築20-30年、構造は健全)
以下のような状況では、フルリフォームを検討することをおすすめします。
- 築20-30年で老朽化が進んでいる: 設備の老朽化、内装の劣化が目立つ
- 構造は健全: 躯体(柱・梁・基礎)に大きな損傷がない
- 思い入れのある家を残したい: 建て替えではなく、既存の家を活かしたい
- 家族構成の変化: 子どもの独立、親との同居など
- 省エネ・バリアフリー化: 断熱性能の向上、段差解消など
リショップナビによると、築30年以上の戸建てでは、スケルトンリフォーム(躯体まで解体)が推奨されています。耐震補強・断熱改修を含めることで、長期的な安全性を確保できます。
フルリフォーム費用の相場と内訳:内装・外装・スケルトン別
(1) 費用相場の全体像(500-1,000万円が一般的)
リショップナビによると、戸建てフルリフォームの費用相場は以下の通りです。
| 工事内容 | 費用相場 |
|---|---|
| 内装のみ改修 | 約500万円 |
| 外装含む全面改修 | 約1,000万円 |
| スケルトンリフォーム | 500万円以上 |
ホームプロによると、最も多い価格帯は「1,001-1,500万円」、次いで「501-1,000万円」「-500万円」となっています。
(2) 内装リフォームの費用(約500万円)
内装リフォームには、以下の工事が含まれます。
| 項目 | 費用相場 |
|---|---|
| 壁紙張り替え | 50-100万円 |
| 床材張り替え | 80-150万円 |
| 建具交換(ドア・窓等) | 50-100万円 |
| 照明・電気配線更新 | 30-50万円 |
| 給排水管更新 | 50-100万円 |
合計で約500万円が目安です。
(3) 外装含む全面改修の費用(約1,000万円)
外装工事を含む全面改修では、以下の費用が追加されます。
| 項目 | 費用相場 |
|---|---|
| 外壁塗装 | 80-150万円 |
| 屋根塗装・葺き替え | 100-200万円 |
| 断熱改修 | 100-200万円 |
| 耐震補強 | 100-200万円 |
内装リフォーム(約500万円)+ 外装工事(約500万円)で、合計約1,000万円が目安です。
(4) スケルトンリフォームの費用(500万円以上)
スケルトンリフォームは、建物を躯体まで解体し、間取りから全面的に作り直す工事です。最も自由度が高い反面、費用も高額になります。
費用相場: 500万円以上(規模・素材により変動)
含まれる工事:
- 躯体までの解体
- 間取り変更
- 耐震補強
- 断熱改修
- 給排水管・電気配線の全面更新
- 内装・設備の新設
(5) 築年数・面積による費用差
フルリフォーム費用は、築年数・面積により大きく変動します。
| 築年数 | 必要工事 | 費用への影響 |
|---|---|---|
| 築20-30年 | 設備更新・内装改修 | 標準 |
| 築30-40年 | 耐震補強・給排水管更新 | +100-200万円 |
| 築40年以上(旧耐震基準) | 大規模な耐震補強 | +200-300万円 |
旧耐震基準(1981年5月以前)の物件は、新耐震基準(1981年6月以降)に適合させるため、大規模な耐震補強が必要になります。
部位別リフォーム費用:浴室・キッチン・外壁など
(1) 浴室リフォームの費用(80-200万円、ユニットバス交換70-110万円)
TOTOによると、戸建て浴室リフォームの費用相場は以下の通りです。
| 工事内容 | 費用相場 |
|---|---|
| ユニットバス交換 | 70-110万円 |
| 在来工法から半ユニットバスへの変更 | 50-150万円 |
| 壁・天井交換、扉交換 | 50万円以下 |
| 給湯器交換 | 20-40万円 |
中心価格帯: 100-120万円
ユニットバスは、工場で製造したパーツを現場で組み立てる浴室です。防水性が高く、施工期間が短いというメリットがあります。
在来工法は、現場で一から浴室を作る工法です。タイル張り等で自由度が高いですが、施工期間が長く、防水リスクがあります。
半ユニットバスは、浴槽・床・壁下部がユニット、壁上部・天井が在来工法のハイブリッド型です。戸建てで採用されることが多いです。
(2) キッチンリフォームの費用
キッチンリフォームの費用相場は以下の通りです。
| 工事内容 | 費用相場 |
|---|---|
| システムキッチン交換(スタンダード) | 80-120万円 |
| システムキッチン交換(ハイグレード) | 150-300万円 |
| 対面キッチンへの変更(間取り変更含む) | 200-400万円 |
(3) 外壁リフォームの費用(100-200万円)
外壁リフォームの費用相場は以下の通りです。
| 工事内容 | 費用相場 |
|---|---|
| 外壁塗装(30坪) | 80-150万円 |
| サイディング張り替え(30坪) | 150-250万円 |
| 屋根塗装(30坪) | 50-100万円 |
| 屋根葺き替え(30坪) | 100-200万円 |
(4) 給排水管更新・耐震補強の費用
| 工事内容 | 費用相場 |
|---|---|
| 給排水管更新(全体) | 50-150万円 |
| 耐震補強(壁補強・基礎補強) | 100-200万円 |
| 断熱改修(全体) | 100-200万円 |
(5) メーカー別の価格差(LIXIL、TOTO等を公平に比較)
浴室・キッチン等の設備は、メーカー・グレードにより価格が変動します。
浴室(ユニットバス)の例:
| メーカー | グレード | 価格帯(工事費込み) |
|---|---|---|
| LIXIL | スタンダード | 70-100万円 |
| LIXIL | ハイグレード | 120-180万円 |
| TOTO | スタンダード | 80-110万円 |
| TOTO | ハイグレード | 130-200万円 |
| パナソニック | スタンダード | 75-105万円 |
| パナソニック | ハイグレード | 125-190万円 |
注: 上記は目安です。実際の価格は施工業者・工事内容により変動します。複数社から見積もりを取得し、比較検討することを推奨します。
フルリフォームの費用を抑える方法と補助金制度
(1) 費用削減のコツ(優先順位明確化、複数社見積もり、既存設備再利用)
フルリフォームの費用を抑える方法は以下の通りです。
- 優先順位を明確化: 必須工事(耐震・防水等)と希望工事(デザイン変更等)を分け、予算に応じて調整
- 複数社見積もり比較: 3社以上から見積もりを取得し、詳細な内訳を比較
- 既存設備の再利用: 使用可能な設備(建具、照明等)は再利用する
- 補助金活用: 国・自治体の補助金制度を活用し、実質負担を下げる
(2) 住宅省エネ2025キャンペーン(最大280万円補助)
国土交通省によると、2025年は住宅省エネ2025キャンペーンで最大280万円の補助金が利用可能です。
対象工事:
- 断熱改修(窓・壁・床・天井)
- 高効率給湯器の設置
- 太陽光発電設備の設置
補助額:
- 最大280万円(工事内容により変動)
申請方法:
- リフォーム業者が代理申請(個人は直接申請不可)
- 着工前に申請が必要
(3) 長期優良住宅化リフォーム推進事業
長期優良住宅化リフォーム推進事業は、既存住宅の性能向上(耐震・省エネ・劣化対策等)を行い、長期使用を可能にするリフォームを支援する制度です。
対象工事:
- 耐震改修
- 劣化対策(外壁・屋根・給排水管更新等)
- 省エネ改修
補助額:
- 上限100-250万円(工事内容により変動)
(4) 子育てグリーン住宅支援事業
子育て世帯向けの補助金制度です。安全対策(事故防止・防犯)リフォームも対象です。
対象世帯:
- 18歳未満の子どもがいる世帯
対象工事:
- 省エネ改修
- 安全対策(手すり設置、防犯ガラス設置等)
- バリアフリー改修
補助額:
- 上限30-60万円
(5) 自治体独自の補助金制度
各自治体独自の補助金制度も多数あります。国の補助金と併用できる場合もあり、支援額を拡大できる可能性があります。
確認方法:
- 各自治体の公式サイトで「住宅リフォーム補助金」を検索
- リフォーム業者に相談
フルリフォームの注意点と失敗しないためのポイント
(1) 工期・仮住まいの確保(戸建てで4ヶ月以上)
クラフトによると、フルリフォームの工期は以下の通りです。
| 物件種別 | 工期 |
|---|---|
| マンション | 3ヶ月以上 |
| 戸建て | 4ヶ月以上 |
フルリフォームでは、工事中の仮住まいが必須です。仮住まい費用(賃貸住宅の家賃、引っ越し費用等)も予算に含める必要があります。
仮住まい費用の目安:
- 家賃: 月10-20万円 × 4-6ヶ月 = 40-120万円
- 引っ越し費用: 往復20-40万円
(2) 解体後の追加費用リスク(床下腐食・シロアリ被害)
フルリフォームでは、解体後に床下の腐食・シロアリ被害等が判明し、追加費用が発生するケースが多いです。
対策:
- 予算は見積もりの10-20%の余裕を持つ
- 事前に床下点検を実施し、リスクを把握する
(3) 業者選びのポイント(実績・保証内容・見積もり内訳)
解体窓によると、2020年調査では66%がリフォーム施工品質に不満を感じたとの結果があります。
業者選びのポイント:
- フルリフォーム実績が豊富(年間10件以上)
- 詳細な見積もり内訳を提示(材料費・工事費・諸経費を明確に)
- 保証内容が明確(工事後の保証期間・範囲)
- 大幅値引きを提示する業者は要注意(手抜き工事のリスク)
(4) デザインと住みやすさのバランス(廊下・収納・生活動線)
デザイン重視で住みやすさを犠牲にする失敗事例が多いです。
よくある失敗例:
- 廊下を狭くしすぎて、家具搬入が困難
- 収納不足で、リビングに物が溢れる
- 生活動線を考慮せず、日常生活が不便
対策:
- 設計段階で生活動線を十分検討
- 収納スペースを確保(延床面積の10%以上が目安)
- 家族全員の意見を反映
(5) よくある失敗事例と対策
| 失敗事例 | 対策 |
|---|---|
| 見積もりより費用が大幅に増加 | 複数社見積もり比較、詳細な内訳確認、予算に10-20%の余裕を持つ |
| 施工品質に不満 | 実績豊富な業者選び、工事中の定期確認、保証内容を明確化 |
| デザイン重視で住みにくい | 生活動線・収納を優先、家族全員の意見を反映 |
| 工期が大幅に延びた | 余裕を持った工期設定、仮住まい期間を長めに確保 |
まとめ:フルリフォームを成功させるための判断基準
戸建てフルリフォームの費用相場は500-1,000万円が一般的です。内装のみで約500万円、外装含む全面改修で約1,000万円が目安です。浴室リフォーム単体の費用は80-200万円、ユニットバス交換は70-110万円が相場です。
フルリフォームを成功させるためのポイント:
- 複数社見積もり比較、詳細な内訳を確認
- 補助金活用で実質負担を下げる(住宅省エネ2025キャンペーン等)
- 予算は見積もりの10-20%の余裕を持つ(追加費用リスクに備える)
- 実績豊富な業者を選ぶ(フルリフォーム年間10件以上)
- デザインと住みやすさのバランスを重視
フルリフォームの判断は、築年数、構造の健全性、予算、家族のライフスタイルなど、複数の要素を総合的に考慮する必要があります。個別の判断は、建築士やリフォーム専門家への相談を推奨します。また、国土交通省の住宅リフォーム支援制度で最新の補助金情報を確認し、申請期限を厳守することが重要です。
