戸建て解体費用の基礎知識
「実家を建て替えたいが、解体費用はどれくらいかかるのか」「できるだけ費用を抑える方法はないのか」そんな疑問をお持ちの方に向けて、この記事では戸建て解体費用の相場、内訳、安く抑える方法を詳しく解説します。
複数の不動産メディア(SUUMO、HOME'S、三井のリハウス等)の最新データと、2025年時点の費用相場を元に、構造別・規模別の具体的な金額をまとめました。
建て替えや土地売却を検討している方が、適正な費用を把握し、無駄なコストを削減できる内容となっています。
この記事のポイント
- 戸建て解体費用は100万円~300万円程度が一般的で、構造・広さ・立地により大きく変動
- 木造は坪単価3万円~5万円、鉄骨造は4万円~7万円、RC造は6万円~8万円が相場
- 廃棄物処分費が全体の約4~5割を占め、費用削減の鍵となる
- 複数業者からの相見積もり、残置物の自己処分、補助金活用で費用を抑えられる
- 自治体の補助金制度を利用すると、解体費用の20~70%(上限20万円~100万円)が補助される場合がある
(1) 解体費用の目安(100万円~300万円)
戸建て住宅の解体費用は、多くの場合100万円~300万円程度に収まります。
具体的な金額は、以下の3つの要素で決まります。
- 構造: 木造、鉄骨造、RC造で坪単価が異なる
- 広さ: 延床面積が大きいほど費用が高くなる
- 立地: 都市部は相場が高く、地方は安い傾向
例えば、30坪の木造住宅の場合、90万円~150万円が目安となります。
(2) 費用を決める3つの要素(構造・広さ・立地)
解体費用を大きく左右する要素を詳しく見ていきましょう。
1. 構造:
| 構造 | 坪単価 | 特徴 |
|---|---|---|
| 木造 | 3万円~5万円 | 解体が容易で費用が最も安い |
| 鉄骨造 | 4万円~7万円 | 木造より解体に時間がかかる |
| RC造 | 6万円~8万円 | コンクリート造で解体が最も困難、費用も高額 |
2. 広さ:
延床面積が大きいほど、解体する材料が増えるため費用が高くなります。
3. 立地:
- 都市部(東京都等): 相場が高い(木造で坪単価3~4万円)
- 地方: 相場が安い(木造で坪単価2~3万円)
都市部は道路が狭く重機が入りにくい、近隣への配慮が必要等の理由で費用が高くなります。
(3) この記事で分かること
この記事では、以下の情報を提供します。
- 構造別・規模別の詳細な費用相場
- 解体費用の内訳と追加費用が発生するケース
- 費用を安く抑える具体的な方法
- 自治体の補助金・助成金制度の活用方法
建て替えや土地売却を検討する際の判断材料として、ご活用ください。
構造別・規模別の解体費用相場
解体費用は構造と延床面積により大きく異なります。
(1) 木造住宅の解体費用(坪単価3万円~5万円)
木造住宅は、解体が最も容易で費用が安い構造です。
SUUMO・クラッソーネ等の不動産メディアのデータによると、坪単価は3万円~5万円が相場で、2025年時点では坪単価4万円~5万円が標準的な価格帯となっています。
30坪の木造住宅の場合:
- 最低価格: 30坪 × 3万円 = 90万円
- 最高価格: 30坪 × 5万円 = 150万円
- 相場: 90万円~150万円
木造は廃材の処分が比較的容易なため、解体費用を抑えやすい構造です。
(2) 鉄骨造住宅の解体費用(坪単価4万円~7万円)
鉄骨造住宅は、木造より解体に時間と手間がかかります。
坪単価は4万円~7万円が相場です。
30坪の鉄骨造住宅の場合:
- 最低価格: 30坪 × 4万円 = 120万円
- 最高価格: 30坪 × 7万円 = 210万円
- 相場: 120万円~210万円
鉄骨の切断には専門的な技術と重機が必要なため、木造より費用が高くなります。
(3) RC造住宅の解体費用(坪単価6万円~8万円)
RC造(鉄筋コンクリート造)は、解体が最も困難で費用も高額です。
坪単価は6万円~8万円が相場で、物件によっては坪単価13万円に達する場合もあります。
30坪のRC造住宅の場合:
- 最低価格: 30坪 × 6万円 = 180万円
- 最高価格: 30坪 × 8万円 = 240万円
- 相場: 180万円~240万円
コンクリートの破砕と鉄筋の切断に大型重機が必要で、廃材の処分費用も高額になります。
(4) 延床面積別の費用目安(30坪・40坪・50坪)
延床面積別の費用目安をまとめました。
| 延床面積 | 木造 | 鉄骨造 | RC造 |
|---|---|---|---|
| 30坪 | 90万円~150万円 | 120万円~210万円 | 180万円~240万円 |
| 40坪 | 120万円~200万円 | 160万円~280万円 | 240万円~320万円 |
| 50坪 | 150万円~250万円 | 200万円~350万円 | 300万円~400万円 |
延床面積が大きくなるほど、費用も比例して増加します。
(5) 地域別の価格差(東京都と地方の違い)
解体費用は地域により異なります。
地域別の坪単価(木造の場合):
| 地域 | 坪単価 |
|---|---|
| 東京都等の都市部 | 3万円~4万円 |
| 地方 | 2万円~3万円 |
都市部は以下の理由で費用が高くなります。
- 道路が狭く重機が入りにくい
- 近隣への騒音・振動対策が必要
- 人件費が高い
- 廃材の運搬距離が長い
地方では道路が広く重機の搬入がスムーズなため、費用を抑えられます。
解体費用の内訳と追加費用
解体費用は複数の項目で構成されています。
(1) 仮設工事費(約1~2割)
仮設工事費は、安全に解体するための準備費用です。
主な内容:
- 足場の設置
- 養生シートの設置(飛散防止)
- 仮囲いの設置(第三者への安全配慮)
全体の約1~2割を占めます。
(2) 解体工事費(約3~4割)
解体工事費は、建物を壊す作業そのものの費用です。
主な内容:
- 重機による解体作業
- 手作業による解体(近隣配慮が必要な場合)
- 基礎の撤去
全体の約3~4割を占めます。
(3) 廃棄物処分費(約4~5割)
廃棄物処分費は、解体で発生した廃材の処分費用です。
処分が必要な廃材:
- 木材
- コンクリート
- 金属
- ガラス
- その他の建材
全体の約4~5割を占め、費用削減の鍵となる項目です。
近年は廃棄物処分費が高騰しており、2024~2025年の解体費用相場は全体的に上昇傾向にあります。
(4) 整地費用(約1割)
整地費用は、解体後の土地を平らにする費用です。
全体の約1割を占めます。
(5) 諸経費(約1割)
諸経費には、以下の項目が含まれます。
- 重機の運搬費
- 申請手続き費用(建設リサイクル法の届出等)
- 現場管理費
全体の約1割を占めます。
(6) 追加費用が発生するケース(アスベスト、地中埋設物、残置物)
見積もり時点では分からない追加費用が発生する場合があります。
1. アスベスト除去費用:
2006年以前の建物には、アスベストが含まれている可能性があります。含有が判明した場合、除去費用が別途必要です。
- 除去費用: 数十万円~数百万円
2023年からアスベスト含有調査が義務化されており、事前調査の結果次第で追加費用が発生します。
2. 地中埋設物撤去費用:
浄化槽、井戸、古い基礎等の地中埋設物が見つかった場合、撤去費用が追加発生します。
3. 残置物撤去費用:
家の中に家電、家具、日用品等が残っている場合、別途撤去費用が発生します。
残置物の量に応じて費用が変動するため、解体前に自分で処分することをおすすめします。
解体費用を安く抑える5つの方法
解体費用を抑えるための具体的な方法を紹介します。
(1) 複数業者から相見積もりを取る(3~5社)
解体費用は業者により大きく異なります。
相見積もりのメリット:
- 適正価格を把握できる
- 業者の対応を比較できる
- 価格交渉の材料になる
3~5社から見積もりを取ることで、最適な業者を選べます。
(2) 残置物を自分で処分する
残置物の撤去費用は、量に応じて数万円~数十万円になる場合があります。
自分で処分できるもの:
- 家電(リサイクルショップへ売却)
- 家具(粗大ごみとして処分)
- 日用品(不燃ごみ・可燃ごみとして処分)
自分で処分することで、大幅なコスト削減が可能です。
(3) 解体工事の閑散期を狙う
解体工事には繁忙期と閑散期があります。
閑散期:
- 1~3月
- 7~8月
閑散期は業者の予約が取りやすく、価格交渉もしやすい時期です。
繁忙期:
- 4~6月(新年度の建設ラッシュ)
- 9~12月(年末までの完工を目指す案件が多い)
可能であれば、閑散期に工事を行うことをおすすめします。
(4) 見積書の内訳を詳細に確認する
見積書の内訳が「一式」表記ばかりの業者は注意が必要です。
チェックすべきポイント:
- 内訳が詳細に記載されているか
- 追加費用の有無
- 廃棄物処分費の妥当性
- 「一式」表記が多くないか
「一式」表記が多い業者は、内訳が不明確で追加費用が発生しやすいため、避けることをおすすめします。
(5) 補助金・助成金を活用する
自治体の補助金・助成金制度を活用すると、解体費用を大幅に削減できます。
詳細は次のセクションで解説します。
解体工事の補助金・助成金制度
自治体によっては、解体工事の補助金・助成金制度があります。
(1) 国土交通省の空家再生等推進事業
国土交通省の「空家再生等推進事業」を基に、各自治体が独自の補助金・助成金制度を設置しています。
対象となるのは、主に以下のような物件です。
- 空き家(一定期間使用されていない住宅)
- 老朽化した建物
- 倒壊の危険性がある建物
(2) 補助率と上限額(20~70%、上限20万円~100万円)
補助金制度の内容は自治体により異なります。
一般的な補助内容:
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 補助率 | 20~70% |
| 上限額 | 20万円~100万円 |
例えば、解体費用が200万円で補助率50%・上限100万円の場合、100万円が補助されます。
(3) 補助金の申請方法と注意点(工事前申請が必須)
補助金申請には、以下の注意点があります。
重要事項:
- 工事前に申請が必須: 工事後の申請は不可
- 先着順や予算上限: 予算がなくなり次第終了
- 審査期間: 申請から承認まで1~3ヶ月程度かかる場合がある
申請の流れ:
- 自治体の窓口で制度の有無を確認
- 必要書類を準備(建物の写真、見積書等)
- 申請書を提出
- 審査・承認
- 解体工事の実施
- 完了報告・補助金の受け取り
必ず工事前に申請を行ってください。
(4) 都道府県別の助成金制度の確認方法
各自治体の公式サイトや窓口で確認できます。
確認方法:
- 自治体の公式サイトで「解体 補助金」「空き家 助成金」等のキーワードで検索
- 自治体の都市計画課、住宅課等に電話で問い合わせ
補助金制度は予算に限りがあるため、早めの確認をおすすめします。
まとめ:戸建て解体で後悔しないために
戸建て解体費用は、構造・広さ・立地により100万円~300万円程度が一般的です。木造は坪単価3万円~5万円、鉄骨造は4万円~7万円、RC造は6万円~8万円が相場となっています。
費用の約4~5割を廃棄物処分費が占めるため、残置物を自分で処分することで大幅なコスト削減が可能です。また、複数業者(3~5社)から相見積もりを取り、適正価格を把握することが重要です。
自治体の補助金・助成金制度を活用すると、解体費用の20~70%(上限20万円~100万円)が補助される場合があります。ただし、工事前の申請が必須で、先着順や予算上限があるため、早めの確認と申請をおすすめします。
解体工事は高額な費用がかかるため、事前の情報収集と複数業者の比較検討を行い、後悔のない判断をしましょう。
