土地を無料で取得できるって本当?仕組みと実態
「土地を無料で取得できる」と聞くと、多くの方は「怪しいのでは?」「何か裏があるのでは?」と感じるかもしれません。しかし、実際に全国で0円物件(無償譲渡物件)の取引は増加しています。
この記事では、土地を無償で取得する方法、背景にある理由、かかる税金・維持費、注意すべきリスクを解説します。無償譲渡は「完全無料」ではないため、慎重な判断が必要です。
この記事のポイント
- 0円物件(無償譲渡物件)は実際に存在し、マッチングサイトで取引が行われている
- 無償譲渡の背景には人口減少、空き家問題、相続放棄、維持費負担がある
- 「0円」でも贈与税、不動産取得税、登録免許税、維持費がかかる
- 隠れた瑕疵(シロアリ被害、境界未確定等)のリスクがあり、専門家への相談が必須
- 取得前に総額での比較と現地確認を行うことが重要
(1) 0円物件とは何か
0円物件(無償譲渡物件)とは、売買価格が0円で譲渡される土地や建物のことです。法的には「贈与」に該当します。
主に以下のような特徴があります。
- 土地や建物の売買価格は0円
- 譲渡する側・受け取る側で贈与契約を締結
- 登記手続き(所有権移転登記)が必要
(2) 無償譲渡マッチングサイトの成約率と実績
2025年6月時点で、無償譲渡マッチングサイトは90以上の自治体と提携しており、成約率は約9割と高い実績があります。
主な無償譲渡マッチングサイト:
- みんなの0円物件
- 全国0円不動産(現役司法書士運営)
これらのサイトでは、全国の0円物件を検索・問い合わせできます。
なぜ土地が無償譲渡されるのか:背景と理由
なぜ土地の所有者は「0円でも手放したい」と考えるのでしょうか。背景には以下の理由があります。
(1) 人口減少・空き家問題の深刻化
日本では人口減少に伴い、空き家・空き地が増加しています。特に地方・過疎地では、買い手がつかない土地が増えています。
(2) 固定資産税・維持費の負担
使用していない土地でも、以下のコストが発生します。
- 固定資産税(年間数万円〜数十万円)
- 草刈り・管理費(年間数万円)
- 倒壊リスクがある建物の解体費用(数百万円)
所有しているだけで費用がかかるため、0円でも手放したいと考える所有者がいます。
(3) 相続放棄・管理の困難
親から相続した土地を管理できない、遠方で管理が困難といった理由で、手放したいと考える所有者も増えています。
(4) 地方・過疎地での供給増加
特に地方・過疎地では、不動産市場で売却できない土地が多く、無償譲渡の供給が増加しています。
土地を無料で取得する具体的な方法
土地を無償で取得するには、以下の方法があります。
(1) 無償譲渡マッチングサイトの活用
無償譲渡専門のマッチングサイトを利用すると、全国の0円物件を探せます。
| サイト名 | 特徴 |
|---|---|
| みんなの0円物件 | 90以上の自治体と提携、成約率約9割 |
| 全国0円不動産 | 現役司法書士運営、法的サポートあり |
(2) 空き家バンクと移住支援制度の活用
自治体が運営する空き家バンクでは、格安または無償の物件が掲載されることがあります。移住支援制度と組み合わせると、以下のメリットがあります。
- リフォーム補助金の活用
- 移住支援金の受給
- 地域の生活情報の提供
(3) 自治体の移住支援・リフォーム補助金
自治体によっては、移住者向けに以下の支援制度があります。
- 移住支援金(最大100万円〜300万円)
- リフォーム補助金(工事費の1/2、上限50万円〜100万円程度)
- 空き家バンク登録物件への補助
詳細は各自治体のホームページで確認してください。
(4) 司法書士によるサポート
無償譲渡では、贈与契約書の作成、登記手続き(所有権移転登記)が必要です。法的トラブルを防ぐため、司法書士に相談することを推奨します。
無償譲渡のメリット・デメリットと注意点
無償譲渡にはメリットとデメリットがあります。慎重に検討しましょう。
(1) メリット:取得費用を抑えられる、地方移住の選択肢
メリット:
- 物件の購入費用がかからない
- 地方移住や二拠点生活の選択肢が広がる
- 自治体の支援制度と組み合わせられる
(2) デメリット:取得後の維持費、隠れた瑕疵のリスク
デメリット:
- 贈与税、不動産取得税、登録免許税がかかる
- 固定資産税、草刈り・管理費、リフォーム・解体費用が発生
- シロアリ被害、土壌汚染、境界未確定等の隠れた瑕疵のリスク
(3) 現地確認の必須項目
0円物件を取得する前に、以下の項目を現地で確認してください。
- 建物の状態(シロアリ被害、雨漏り、傾き等)
- 土地の状態(草刈り必要性、不法投棄等)
- 境界の確定状況
- 周辺のインフラ(水道、電気、ガス)
- 解体が必要な場合の費用
(4) 贈与契約書作成と登記手続きの重要性
無償譲渡でも、正式な贈与契約書を作成し、所有権移転登記を行う必要があります。口約束だけでは法的に保護されないため、必ず書面で契約し、司法書士に登記手続きを依頼してください。
無償譲渡でかかる税金と維持費の実態
0円物件は「完全無料」ではありません。以下の税金と維持費がかかります。
(1) 贈与税(年間110万円超で課税)
土地の評価額(固定資産税評価額や路線価を基準)が年間110万円を超える場合、贈与税がかかります。
| 課税価格 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 200万円以下 | 10% | なし |
| 300万円以下 | 15% | 10万円 |
| 400万円以下 | 20% | 25万円 |
| 600万円以下 | 30% | 65万円 |
| 1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
(出典: 国税庁「贈与税の税率」2025年時点)
(2) 不動産取得税(評価額の3%〜4%)
土地や建物を取得したときに、不動産取得税がかかります。
- 土地・住宅: 固定資産税評価額の3%
- 住宅以外の建物: 固定資産税評価額の4%
(3) 登録免許税(評価額の2%)
所有権移転登記にかかる登録免許税は、固定資産税評価額の2%です。
(4) 取得後の維持費
取得後も以下の費用が発生します。
| 項目 | 年間コスト目安 |
|---|---|
| 固定資産税 | 数万円〜数十万円 |
| 草刈り・管理費 | 数万円〜10万円程度 |
| リフォーム・解体費用 | 数十万円〜数百万円(一時) |
(5) 総額での比較が必要
0円物件を取得する前に、税金・登記費用・維持費の総額を計算し、通常の不動産購入と比較することが重要です。場合によっては、格安物件を購入したほうが総額で安くなる可能性もあります。
まとめ:無償譲渡の土地取得は慎重な判断が必要
土地の無償譲渡(0円物件)は実際に存在し、マッチングサイトや空き家バンクで取引が行われています。人口減少、空き家問題、維持費負担を背景に、0円でも手放したい所有者が増えているためです。
ただし、「0円」であっても贈与税、不動産取得税、登録免許税がかかり、取得後も固定資産税や管理費が発生します。また、シロアリ被害、境界未確定等の隠れた瑕疵のリスクもあります。
無償譲渡を検討する際は、必ず現地確認を行い、総額での比較を行ってください。税金や登記手続きについては、司法書士や税理士などの専門家に相談することを強く推奨します。


