アパートとマンションの違いがわかりにくい理由
賃貸物件を探すとき、「アパート」と「マンション」という言葉は頻繁に見かけますが、その違いを正確に説明できる人は意外と少ないのではないでしょうか。
この記事では、アパートとマンションの構造・費用・住み心地の違いを、最新の住宅事情をもとに解説します。UR賃貸住宅の公式情報や業界の慣習を踏まえ、初めて賃貸物件を探す方でも物件選びの基準を明確に理解できる内容です。
読み終えた頃には、自分のライフスタイルに合った物件の探し方がわかるようになります。
この記事のポイント
- アパートとマンションには法律上の明確な定義はなく、不動産会社の社内ルールで分類されている
- 一般的にアパートは木造・軽量鉄骨造、マンションは鉄骨造・RC造(鉄筋コンクリート造)を指す
- アパートは家賃が安く初期費用を抑えられるが、防音性やセキュリティはマンションに劣る
- 物件名ではなく「建物構造」で検索すると、希望に合った物件が見つかりやすい
- ライフスタイルや優先順位(予算、防音性、セキュリティ等)に応じて選ぶことが重要
アパートとマンションの定義と構造の違い
(1) 法律上の定義は存在しない
意外に思われるかもしれませんが、建築基準法や宅地建物取引業法には「アパート」「マンション」という言葉の定義は存在しません。
法律上はどちらも「共同住宅」に分類され、登記簿謄本にも「アパート」「マンション」の区別は記載されていません。
(2) 不動産業界の慣習的な分類基準
では、どのように分類されているのでしょうか。
実は不動産会社ごとの社内ルールで分類されているのが実情です。UR賃貸住宅によれば、業界の慣習として以下のような分類が一般的です。
| 分類 | 主な構造 | 階数 |
|---|---|---|
| アパート | 木造、軽量鉄骨造 | 2-3階建て |
| マンション | 鉄骨造、RC造、SRC造 | 3階以上 |
ただし、この基準は絶対的なものではなく、会社によって異なる場合があります。
(3) 建物構造の種類と特徴
物件選びで最も重要なのは「建物構造」です。以下に主な構造の特徴をまとめます。
| 構造 | 特徴 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| 木造 | 主要構造部が木材 | 建築コストが低く家賃が安い | 防音性・耐火性が劣る |
| 軽量鉄骨造 | 厚さ6mm未満の鋼材使用 | 木造より耐久性が高い | 防音性は木造と同程度 |
| 鉄骨造 | 厚さ6mm以上の鋼材使用 | 中高層建築に適し耐震性に優れる | 建築コストが高め |
| RC造 | 鉄筋とコンクリートの組み合わせ | 防音性・耐火性・耐久性に優れる | 家賃が高い |
| SRC造 | 鉄骨を鉄筋コンクリートで覆う | 最も堅固、高層建築に適す | 建築コスト・家賃が最も高い |
防音性・セキュリティ・設備の違い
(1) 構造による防音性の違い
木造・軽量鉄骨造(アパート):
- 壁や床が薄く、隣室・上下階の生活音が聞こえやすい
- 足音、話し声、テレビの音などが響きやすい
- 在宅勤務やオンライン会議が多い方には不向きな場合がある
鉄筋コンクリート造(マンション):
- 壁や床が厚く、生活音が響きにくい
- 隣室との遮音性が高く、プライバシーが保たれやすい
- ただし、建築年数や施工品質によっても差があるため、内覧での確認が重要
(2) セキュリティ設備の違い
アパート:
- オートロックがない物件が多い
- 防犯カメラや管理人が不在の場合が多い
- 個人での防犯対策(補助錠、防犯フィルム等)が必要
マンション:
- オートロック、防犯カメラが標準装備の物件が多い
- 管理人常駐、24時間管理体制の物件もある
- 宅配ボックス完備で不在時も荷物を受け取れる
セキュリティを重視する女性の一人暮らしや、不在がちな方にはマンションが適しています。
(3) 共用設備の違い
アパート:
- エントランスや共用廊下がシンプル
- ゴミ置き場が簡易的な場合が多い
- 駐車場・駐輪場が別途契約の場合がある
マンション:
- エントランスホール、エレベーター完備
- ゴミ置き場が24時間利用可能な場合が多い
- 宅配ボックス、集合ポスト、駐車場・駐輪場が完備
共用設備の充実度は、管理費に反映されるため、必要な設備を見極めることが重要です。
家賃・管理費・初期費用の違い
(1) 家賃相場の違い
アパートは建築コストが低いため、同じ立地・間取りでもマンションより家賃が安い傾向があります。
日本経済新聞によれば、東京23区の単身者向け賃貸マンション平均家賃は2025年5月に初めて10万円を超えました。一方、アパートは都心部でも7-8万円程度で見つかる物件が多く存在します。
ただし、家賃相場は地域・時期により大きく異なるため、最新の情報を不動産会社で確認することをお勧めします。
(2) 管理費・修繕積立金の違い
アパート:
- 管理費: 3,000-5,000円/月
- 修繕積立金: 設定されていない場合が多い
マンション:
- 管理費: 5,000-15,000円/月
- 修繕積立金: 設定される場合がある(賃貸でも家賃に含まれる場合あり)
共用部分の維持管理費用は、設備の充実度に比例して高くなります。
(3) 初期費用の違い
初期費用の内訳は以下の通りです。
| 項目 | アパート | マンション |
|---|---|---|
| 敷金 | 家賃1-2ヶ月分 | 家賃1-2ヶ月分 |
| 礼金 | 家賃0-1ヶ月分 | 家賃1-2ヶ月分 |
| 仲介手数料 | 家賃0.5-1ヶ月分+税 | 家賃0.5-1ヶ月分+税 |
| 前家賃 | 家賃1ヶ月分 | 家賃1ヶ月分 |
| 火災保険 | 1.5-2万円 | 1.5-2万円 |
| 合計目安 | 家賃3-5ヶ月分 | 家賃4-6ヶ月分 |
アパートは家賃自体が安いため、初期費用の総額も抑えられます。
ライフスタイル別:アパートとマンションどちらを選ぶべきか
(1) 予算重視の場合
アパートがおすすめ:
- 家賃・管理費・初期費用を抑えられる
- 住居費を節約し、他の支出(貯金、趣味等)に回せる
- 短期間の居住を予定している場合にも適している
(2) 防音性・セキュリティ重視の場合
マンションがおすすめ:
- 在宅勤務やオンライン会議が多い方
- 夜勤等で不規則な生活時間の方
- 女性の一人暮らしや、防犯意識が高い方
- 小さなお子様がいるファミリー(上下階への配慮)
(3) 一人暮らし・カップル・ファミリー別の選び方
| ライフスタイル | おすすめ | 理由 |
|---|---|---|
| 一人暮らし(予算重視) | アパート | 家賃を抑え、貯金や趣味に回せる |
| 一人暮らし(防音・セキュリティ重視) | マンション | 在宅勤務や女性の一人暮らしに適す |
| カップル(DINKS) | マンション | 在宅勤務が多い場合、防音性が重要 |
| ファミリー | マンション | 子供の足音対策、セキュリティ確保 |
ライフスタイルや優先順位に応じて、柔軟に選ぶことが大切です。
まとめ:物件選びで確認すべきポイント
アパートとマンションの違いは、法律ではなく業界の慣習で分類されています。物件名だけで判断せず、以下のポイントを確認しましょう。
確認すべきポイント:
- 建物構造(木造、軽量鉄骨造、RC造等)
- 防音性(内覧時に壁の厚さを確認)
- セキュリティ設備(オートロック、防犯カメラ等)
- 家賃・管理費・初期費用
- 共用設備(宅配ボックス、エレベーター等)
物件検索時は、「アパート」「マンション」で絞り込むのではなく、建物構造で検索すると希望に合った物件が見つかりやすくなります。
信頼できる不動産会社や宅地建物取引士に相談しながら、自分のライフスタイルに合った物件を選びましょう。
