不動産登記の必要書類|所有権移転・抵当権設定の完全ガイド

公開日: 2025/11/4

不動産登記の必要書類とは何か

不動産売買・相続・贈与・住宅ローン借入により登記手続きが必要になった際、「何の書類を準備すればよいか分からない」と不安に感じる方は少なくありません。

この記事では、不動産登記の必要書類を登記の種類(売買・相続・贈与・抵当権設定)別にチェックリスト形式で整理し、書類の取得先・有効期限・注意点を解説します。法務局日本司法書士会連合会の公式情報を元に、実務で必要な正確な情報を提供します。

司法書士に依頼する前に全体像を把握したい方、自分で登記申請を検討している方が、必要な書類を漏れなく準備できるようになります。

この記事のポイント

  • 不動産登記の必要書類は、登記の種類(売買・相続・贈与・抵当権設定)により大きく異なる
  • 所有権移転登記(売買)では登記識別情報・印鑑証明書・固定資産評価証明書が必須で、売主・買主それぞれが準備する書類がある
  • 相続登記では被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本が必要で、転籍・改製原戸籍を含む複数の市区町村から取り寄せる
  • 印鑑証明書の有効期限は発行後3ヶ月以内(相続登記の遺産分割協議書添付は期限なし)、固定資産評価証明書は当該年度のものを使用
  • 専門性が高く書類不備で却下されるリスクがあるため、司法書士への依頼を推奨

所有権移転登記(売買)の必要書類

不動産売買により所有権が移転する場合、売主と買主それぞれが準備する書類があります。

売主が準備する書類

売主(不動産を譲渡する側)が準備する書類は以下の通りです。

書類 内容 有効期限・注意点
登記識別情報(権利証) 不動産の所有権を証明する12桁の英数字 紛失した場合は司法書士が作成する「本人確認情報」で代替可能(費用5-10万円)
印鑑証明書 実印が本人のものであることを証明する書類 発行後3ヶ月以内
固定資産評価証明書 土地・建物の評価額を証明する書類 登記申請する年度(4月1日〜翌年3月31日)のもの
売買契約書 売買の合意内容を証明する書類 登記原因証明情報として提出

(出典: 法務局

登記識別情報を紛失している場合でも、登記は可能です。司法書士が本人確認を行い、「本人確認情報」を作成することで代替できますが、5-10万円程度の費用がかかります。

買主が準備する書類

買主(不動産を取得する側)が準備する書類は以下の通りです。

書類 内容 有効期限・注意点
住民票 買主の現住所を証明する書類 発行後3ヶ月以内
本人確認書類 運転免許証・マイナンバーカード等 司法書士による本人確認のため必要

(出典: 法務局

登記費用の目安

所有権移転登記(売買)にかかる費用は以下の通りです。

  • 登録免許税: 固定資産評価額の2%(住宅用は軽減措置により0.3%、2027年3月末まで)
  • 司法書士報酬: 5-10万円が相場

例えば、固定資産評価額が2,000万円のマンションの場合、登録免許税は2,000万円 × 0.3% = 6万円(軽減措置適用時)です。

相続登記の必要書類

不動産を所有していた方が亡くなり、相続人が所有権を取得する場合に必要な書類です。

被相続人(亡くなった方)の書類

相続登記では、被相続人の「出生から死亡までの連続した戸籍謄本」が必須です。これは、相続人を確定するために必要で、転籍や戸籍の改製(コンピュータ化)がある場合、複数の市区町村から以下の書類を取り寄せます。

  • 戸籍謄本(全部事項証明書): 現在の戸籍に記載されている全員の情報
  • 除籍謄本: 全員が除籍された戸籍
  • 改製原戸籍: 法改正で作り直された旧形式の戸籍

例えば、被相続人が生まれてから3回転籍している場合、出生時・転籍時・現在の戸籍それぞれを取得する必要があります。

相続人全員の書類

相続人全員が準備する書類は以下の通りです。

書類 内容 有効期限・注意点
戸籍謄本 相続人の現在の戸籍 被相続人死亡後に取得したもの
印鑑証明書 遺産分割協議書に添付 有効期限なし(売買と異なる)
遺産分割協議書 相続人全員が実印で押印した協議書 相続人全員の合意内容を記載

(出典: 法務局

その他の必要書類

  • 固定資産評価証明書: 登記申請する年度のもの
  • 被相続人の登記識別情報: ある場合は提出(なくても登記可能)

印鑑証明書の有効期限に関する注意点

相続登記の遺産分割協議書に添付する印鑑証明書には有効期限がありません。これは、所有権移転登記(売買)の「発行後3ヶ月以内」とは異なる重要なポイントです。ただし、実務上は半年以内のものを推奨する司法書士が多いため、事前に確認することをおすすめします。

贈与登記・抵当権設定登記の必要書類

贈与登記の必要書類

不動産を無償で贈与する場合の必要書類は以下の通りです。

贈与者(あげる人)が準備する書類:

  • 登記識別情報(権利証)
  • 印鑑証明書(発行後3ヶ月以内)
  • 固定資産評価証明書(当該年度のもの)

受贈者(もらう人)が準備する書類:

  • 住民票(発行後3ヶ月以内)
  • 本人確認書類
  • 贈与契約書(登記原因証明情報として提出)

(出典: 不動産登記必要書類ガイド

抵当権設定登記の必要書類

住宅ローンを借りる際、金融機関が不動産に抵当権を設定する場合の必要書類です。

所有者が準備する書類:

書類 内容 有効期限・注意点
登記済証(登記識別情報) 不動産の所有権を証明する書類
印鑑証明書 実印の証明 発行後3ヶ月以内
住民票 現住所の証明 発行後3ヶ月以内

金融機関が準備する書類:

  • 金銭消費貸借契約書
  • 抵当権設定契約書

(出典: 不動産登記必要書類ガイド

書類の取得先と有効期限

必要書類の取得先と有効期限を整理します。

主な書類の取得先

書類 取得先 手数料 取得方法
戸籍謄本 本籍地の市区町村窓口 450円程度 窓口・郵送・コンビニ交付(マイナンバーカード)
住民票 住所地の市区町村窓口 300円程度 窓口・郵送・コンビニ交付
印鑑証明書 住所地の市区町村窓口 300円程度 窓口・コンビニ交付
固定資産評価証明書 不動産所在地の市区町村の資産税課 300円程度 窓口・郵送

(出典: 各市区町村公式サイト)

マイナンバーカードがあれば、コンビニで戸籍謄本・住民票・印鑑証明書を取得できます(午前6時30分〜午後11時、年中無休)。

有効期限の整理

書類ごとの有効期限を再確認します。

書類 有効期限 例外
印鑑証明書 発行後3ヶ月以内 相続登記の遺産分割協議書添付は期限なし
住民票 発行後3ヶ月以内
固定資産評価証明書 当該年度のもの 4月1日〜翌年3月31日
戸籍謄本 原則なし 被相続人死亡後に取得(相続登記)

(出典: 印鑑証明書の有効期限について - 司法書士事務所

固定資産評価証明書は「当該年度のもの」が必要です。例えば、2025年5月に登記申請する場合、2025年度(令和7年度)の証明書を取得する必要があります。

司法書士への依頼と自分で申請する方法

不動産登記は自分で申請することも可能ですが、専門性が高く、書類不備で却下されるリスクがあります。

司法書士へ依頼するメリット

司法書士に依頼するメリットは以下の通りです。

  • 書類不備による却下を防止: 必要書類の漏れや有効期限切れを防ぎ、一度の申請で登記を完了
  • 登記申請書の作成・提出を代行: 複雑な申請書様式を正確に作成し、法務局への提出を代行
  • 登記完了後の登記識別情報の受領まで一括対応: 登記完了後の書類受領も含めて対応

司法書士報酬の相場

登記の種類 報酬相場
所有権移転登記(売買) 5-10万円
相続登記 10-20万円
抵当権設定登記 3-5万円

(出典: 日本司法書士会連合会

自分で申請する場合の手順

自分で登記申請する場合の手順は以下の通りです。

  1. 管轄法務局で事前相談(無料): 必要書類や申請書の書き方を確認
  2. 法務局HPから申請書様式をダウンロード: 法務局公式サイトから取得
  3. 必要書類を揃えて窓口またはオンライン申請: 書類を提出
  4. 登記完了(申請から1-2週間): 登記識別情報を受領

専門性が高く、書類不備で却下されると再申請の手間・時間・費用が発生するため、司法書士依頼を推奨します。特に相続登記は戸籍の取得範囲が複雑なため、専門家のサポートを受ける方が確実です。

不動産登記の必要書類まとめと次のアクション

不動産登記の必要書類は、登記の種類により大きく異なります。

  • 所有権移転登記(売買): 登記識別情報・印鑑証明書・固定資産評価証明書等を売主・買主それぞれが準備
  • 相続登記: 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本・遺産分割協議書等が必要で、複数の市区町村から取り寄せ
  • 贈与登記: 贈与契約書・登記識別情報・印鑑証明書等
  • 抵当権設定登記: 金銭消費貸借契約書・登記識別情報等

印鑑証明書の有効期限は発行後3ヶ月以内(相続登記の遺産分割協議書添付は期限なし)、固定資産評価証明書は当該年度のものを使用する点に注意が必要です。

書類不備を防ぐため、司法書士への依頼を推奨します。法務局公式サイトで申請書様式と必要書類のチェックリストを確認し、早めに準備を始めることが重要です。

次のアクションとして、信頼できる司法書士に相談し、自分のケースに必要な書類を具体的に確認しましょう。

よくある質問

Q1登記識別情報(権利証)を紛失した場合はどうすればいいですか?

A1司法書士が作成する「本人確認情報」で代替できます。司法書士が本人確認を行い、所有者であることを証明する書類を作成します。費用は5万〜10万円程度かかりますが、この書類があれば登記識別情報がなくても所有権移転登記を進めることが可能です。紛失した場合でも慌てずに、司法書士に相談してください。

Q2相続登記の戸籍謄本「出生から死亡まで」とは具体的に何ですか?

A2被相続人が生まれてから亡くなるまでの連続した戸籍謄本です。転籍(本籍地の変更)や戸籍の改製(コンピュータ化)がある場合、除籍謄本・改製原戸籍を含む複数の戸籍を取得する必要があります。例えば、3回転籍している場合、出生時・転籍時・現在の戸籍それぞれを本籍地の市区町村から取り寄せます。相続人を確定するために必須の書類です。

Q3固定資産評価証明書の「当該年度のもの」とはいつの証明書ですか?

A3登記申請する年度(4月1日〜翌年3月31日)の証明書です。例えば、2025年5月に申請する場合、2025年度(令和7年度)の証明書が必要です。前年度の証明書では申請が却下されるため、必ず最新年度のものを取得してください。不動産所在地の市区町村の資産税課で取得できます。

Q4印鑑証明書の有効期限は全ての登記で3ヶ月以内ですか?

A4いいえ。所有権移転登記(売買)・抵当権設定登記は発行後3ヶ月以内が必要ですが、相続登記の遺産分割協議書に添付する印鑑証明書には有効期限がありません。ただし、実務上は半年以内のものを推奨する司法書士が多いため、事前に確認することをおすすめします。登記の種類により有効期限が異なる点に注意してください。

Q5登記は自分でできますか?それとも司法書士に依頼すべきですか?

A5自分でも可能ですが、専門性が高く、書類不備で却下されると再申請の手間・時間・費用が発生します。特に相続登記は戸籍の取得範囲が複雑で、転籍や改製原戸籍を含む複数の書類が必要なため、一般の方が全てを揃えるのは困難です。司法書士への依頼を推奨します。費用は5万〜20万円程度ですが、確実に登記を完了できます。