連帯保証人と住宅ローン|必要なケース・責任・断り方を解説

公開日: 2025/10/27

連帯保証人とは|保証人との違い

住宅ローンを申し込む際、「連帯保証人が必要なのか」「頼まれたら引き受けるべきか」と悩む方は少なくありません。

この記事では、連帯保証人の責任、住宅ローンで連帯保証人が必要なケース、頼まれたときの断り方について、金融庁や住宅金融支援機構の公式情報を元に解説します。

連帯保証人の重い責任を正確に理解し、適切な判断ができるようになります。

この記事のポイント

  • 連帯保証人は債務者と連帯して返済義務を負い、債務全額+利息・遅延損害金を請求される可能性がある
  • 保証会社を利用すれば通常は連帯保証人不要だが、収入合算・ペアローン・親の土地に建てる場合等で必要になる
  • 外国人(永住権なし)が住宅ローンを組む際も連帯保証人を求められる場合がある
  • 連帯保証人を頼まれたら、リスクを正直に説明して断ることも選択肢の一つ
  • どうしても引き受ける場合は、債務者の返済能力を慎重に確認し、保証契約は書面で行う

連帯保証人の定義と保証人との違い

連帯保証人は、債務者と連帯して返済義務を負う人です。金融庁の説明によると、連帯保証人は保証人よりも重い責任を負います。

保証人との違い(抗弁権なし)

連帯保証人と保証人の最大の違いは、抗弁権の有無です。

保証人と連帯保証人の違い

項目 保証人 連帯保証人
催告の抗弁権 あり(まず債務者に請求してほしいと主張できる) なし
検索の抗弁権 あり(まず債務者の財産を差し押さえてほしいと主張できる) なし
分別の利益 あり(保証人が複数いる場合、分割される) なし
請求される可能性 債務者より後 債務者より先に来る可能性

連帯保証人は、債務者が返済できなくなった時だけでなく、債務者より先に請求される可能性もあります。

連帯保証人の重い責任

連帯保証人は以下の責任を負います。

  • 債務全額の返済義務: 債務者と同等の責任
  • 利息・遅延損害金の負担: 元本だけでなく利息・遅延損害金も含む
  • 債務者より先に請求される可能性: 金融機関は債務者と連帯保証人のどちらにでも請求できる

2020年の民法改正により、保証意思確認が厳格化されました。これは、連帯保証人のリスクの重さが認識されたためです。

住宅ローンに連帯保証人は必要か?

保証会社を利用すれば通常は不要

現在、多くの金融機関では保証会社を利用した住宅ローンを提供しています。保証会社を利用すれば、通常は連帯保証人不要で住宅ローンを組むことができます。

連帯保証人が必要なケース

以下のケースでは、連帯保証人が必要になる場合があります。

1. 収入合算(配偶者の収入を合算)

夫婦の収入を合算して住宅ローンを申し込む場合、収入を合算する配偶者が連帯保証人になる必要があります。

2. ペアローン(互いに連帯保証人)

夫婦がそれぞれ住宅ローンを組むペアローンの場合、互いに連帯保証人になります。

3. 親の土地に建てる場合

親の土地に建物を建てる場合、土地の所有者である親が連帯保証人になる必要があることがあります。

4. 自営業・転職直後等で信用力が低い場合

自営業者、転職直後、勤続年数が短い等の理由で信用力が低い場合、連帯保証人を求められることがあります。

5. 外国人の住宅ローン

新生銀行の説明によると、外国人(永住権なし)が住宅ローンを組む際、在留資格・勤続年数等で返済能力の判断が難しいため、連帯保証人を求められる場合があります。永住権がある場合は、連帯保証人不要な場合が多いです。

連帯保証人が必要なケースまとめ

ケース 連帯保証人 理由
保証会社を利用 通常不要 保証会社が保証するため
収入合算 必要(配偶者) 収入を合算するため
ペアローン 必要(互いに) それぞれがローンを組むため
親の土地に建てる 必要(親) 担保となる土地の所有者
信用力が低い 必要な場合あり 返済能力の補完
外国人(永住権なし) 必要な場合あり 在留資格・勤続年数等で判断

(出典: 三菱UFJ銀行, 三井住友銀行

連帯保証人のリスク

連帯保証人には以下の3つのリスクがあります。

リスク1:債務全額+利息・遅延損害金の返済義務

連帯保証人は、債務者と同等の返済義務を負います。債務者が返済できなくなった場合、債務全額+利息・遅延損害金を負担する可能性があります。

例:

  • 住宅ローン残高: 3000万円
  • 利息・遅延損害金: 300万円
  • 連帯保証人の負担額: 3300万円

リスク2:自分の借入能力が制限される

連帯保証している債務額が、自分の借入可能額から差し引かれます。例えば、3000万円の住宅ローンの連帯保証人になっている場合、自分が新たに住宅ローンを組もうとしても、借入可能額が3000万円減少します。

リスク3:信用情報に影響

債務者が返済を滞納した場合、連帯保証人の信用情報にも記録される可能性があります。信用情報に傷がつくと、自分のローン審査に悪影響を及ぼします。

連帯保証人の3つのリスク

リスク 内容 具体例
債務全額の返済義務 債務者と同等の責任 3000万円の住宅ローン+利息・遅延損害金
借入能力の制限 保証債務額が自分の借入可能額から差し引かれる 自分の住宅ローン借入可能額が3000万円減少
信用情報への影響 債務者の滞納が自分の信用情報に記録される 自分のローン審査に悪影響

連帯保証人を頼まれたときの断り方

連帯保証人を頼まれたとき、引き受ける義務はありません。リスクを正直に説明して断ることも一つの選択肢です。

リスクを正直に説明して断る

連帯保証人のリスクを正直に説明し、「責任を負えない」と断ることができます。

説明すべきリスク:

  • 債務全額を負担する可能性がある
  • 自分の借入能力が制限される
  • 信用情報に影響する可能性がある

具体的な断り文句

以下のような断り方があります。

1. 配偶者が許さない

「配偶者と相談したが、家族の将来を考えると連帯保証人は引き受けられない」

2. 既に他の保証人になっている

「既に他の保証人になっており、これ以上の保証はできない」

3. ブラックリスト入りしている

「過去に金融事故があり、信用情報に傷がついているため、連帯保証人になれない」

4. 専門家に相談した

「税理士(または弁護士)に相談したところ、連帯保証人は避けるべきとアドバイスされた」

代替案を提示する

断る際に、以下のような代替案を提示すると良いでしょう。

代替案:

  • 保証会社の利用を検討してもらう
  • 頭金を増やして借入額を減らす
  • 親が資金援助する
  • 他の親族に相談する

専門家(FP、弁護士)に相談することを提案することも有効です。

連帯保証人になる場合の注意点

どうしても連帯保証人になる場合は、以下の点に注意が必要です。

債務者の返済能力を慎重に確認

債務者の返済能力を慎重に確認しましょう。

確認すべき項目:

  • 年収
  • 勤続年数
  • 借入額
  • 返済計画(月々の返済額、返済期間)
  • 他の借入(カードローン、自動車ローン等)

返済計画に無理がないか、将来的に返済できる見込みがあるか、慎重に判断しましょう。

保証契約は書面で行う

金融庁の指針により、保証契約は書面で行う必要があります。口頭の約束は無効です。

保証契約書には以下の内容が記載されます。

  • 保証する債務の内容(借入額、金利、返済期間)
  • 保証人の責任範囲
  • 保証期間

2020年民法改正の保証意思確認

2020年の民法改正により、個人が事業用融資の保証人になる場合、公証人による保証意思確認が必要になりました。住宅ローンの場合は対象外ですが、保証意思確認の厳格化は、連帯保証人のリスクの重さが認識されたためです。

保証契約の流れ

  1. 債務者が金融機関に住宅ローンを申し込む
  2. 金融機関が連帯保証人を求める
  3. 連帯保証人が保証契約書に署名・捺印
  4. 保証契約成立

安易に引き受けず、リスクを十分理解した上で判断することが重要です。

まとめ:連帯保証人は安易に引き受けない

連帯保証人は、債務者と連帯して返済義務を負い、債務全額+利息・遅延損害金を請求される可能性があります。保証人よりも重い責任を負うため、安易に引き受けるべきではありません。

保証会社を利用すれば通常は連帯保証人不要ですが、収入合算・ペアローン・親の土地に建てる場合、自営業・転職直後、外国人(永住権なし)等で必要になる場合があります。

連帯保証人を頼まれたら、リスクを正直に説明して断ることも選択肢の一つです。どうしても引き受ける場合は、債務者の返済能力を慎重に確認し、保証契約は書面で行いましょう。

連帯保証人の判断に迷う場合は、FPや弁護士等の専門家に相談することをおすすめします。

よくある質問

Q1連帯保証人と保証人の違いは?

A1連帯保証人は催告の抗弁権・検索の抗弁権がなく、債務全額を請求される可能性があります。催告の抗弁権は「まず債務者に請求してほしい」と主張できる権利、検索の抗弁権は「まず債務者の財産を差し押さえてほしい」と主張できる権利です。保証人はこれらの権利がありますが、連帯保証人にはありません。そのため、連帯保証人は保証人よりも重い責任を負います。金融機関は債務者より先に連帯保証人に請求することも可能です。

Q2住宅ローンで連帯保証人はいつ必要?

A2保証会社を利用すれば通常は連帯保証人不要です。ただし、以下のケースでは必要になります。①収入合算(配偶者の収入を合算する場合、配偶者が連帯保証人)②ペアローン(互いに連帯保証人)③親の土地に建てる場合(親が連帯保証人)④自営業・転職直後等で信用力が低い場合⑤外国人(永住権なしの場合、在留資格・勤続年数等で保証人を求められる場合がある)。永住権がある場合は連帯保証人不要な場合が多いです。

Q3連帯保証人を頼まれたら必ず引き受けるべき?

A3引き受ける義務はありません。連帯保証人には債務全額+利息・遅延損害金を負担するリスク、自分の借入能力が制限されるリスク、信用情報に影響するリスクがあります。リスクを正直に説明して断ることも一つの選択肢です。断る際は、代替案(保証会社の利用、頭金を増やす、親が資金援助等)を提示すると良いでしょう。安易に引き受けると多額の負債を抱えるリスクがあるため、慎重に判断すべきです。

Q4外国人の住宅ローンで連帯保証人が必要なのはなぜ?

A4永住権なしの外国人の場合、在留資格・勤続年数等で返済能力の判断が難しいため、連帯保証人を求められる場合があります。在留資格には期限があり、期限後に帰国する可能性があること、勤続年数が短い場合が多いこと等が理由です。永住権がある場合は、日本人と同様の審査基準が適用され、連帯保証人不要な場合が多いです。金融機関により基準が異なるため、複数の金融機関に相談することをおすすめします。