住宅ローンの連帯保証人とは
住宅ローンを申し込む際、または親族から連帯保証人を頼まれた際、「連帯保証人とは何か」「どんな責任があるのか」を正確に理解しておくことが重要です。
この記事では、住宅ローンの連帯保証人の基本、必要なケース、責任・リスクについて、金融庁や住宅金融支援機構の公式情報を元に解説します。連帯保証人になるかどうかを判断する材料を提供します。
この記事のポイント
- 連帯保証人は債務者と連帯して返済義務を負い、催告の抗弁権・検索の抗弁権がない
- 収入合算・ペアローン・親の土地に建てる場合等で連帯保証人が必要になる
- 離婚しても金融機関の承諾なしに連帯保証人から外れることはできない
- 2020年民法改正で保証意思確認が厳格化(配偶者以外は公正証書が必要)
連帯保証人とは|債務者と連帯して返済義務を負う人
連帯保証人の基本
連帯保証人は、債務者と連帯して返済義務を負う人です。債務者が返済できない時に、債務者に代わって返済する義務があります。
民法第447条によると、連帯保証人は以下の権利を持ちません。
| 権利 | 内容 | 連帯保証人 | 
|---|---|---|
| 催告の抗弁権 | 「まず債務者に請求してください」と主張する権利 | ❌ なし | 
| 検索の抗弁権 | 「債務者の財産を先に差し押さえてください」と主張する権利 | ❌ なし | 
| 分別の利益 | 複数の保証人がいる場合、人数で割った額だけ負担する権利 | ❌ なし | 
これらの権利がないため、金融機関は債務者より先に連帯保証人に請求することが可能です。
連帯保証人と連帯債務者の違い
住宅ローンには「連帯保証人」と「連帯債務者」という似た言葉がありますが、両者は異なります。
| 項目 | 連帯保証人 | 連帯債務者 | 
|---|---|---|
| 返済義務 | 債務者が返済できない時に代わりに返済 | 債務者と同等の返済義務 | 
| 住宅ローン控除 | ❌ 受けられない | ✅ 受けられる | 
| 団信 | ❌ 加入できない | ✅ 加入できる | 
| 所有権 | 通常なし | 持分に応じて所有権を持つ | 
連帯債務者は、債務者と同等の返済義務を負いますが、住宅ローン控除を受けられ、団信にも加入できます。
連帯保証人が必要なケース
収入合算(配偶者の収入を合算)
申込人の収入だけでは希望する借入額に届かない場合、配偶者や親子等の収入を合算して借入額を増やす方法があります。この場合、収入合算者は連帯保証人になることが一般的です。
例:
- 夫の年収:400万円
- 妻の年収:300万円
- 収入合算後:700万円 → 借入可能額が増える
- 妻は連帯保証人になる
収入合算者(妻)は、住宅ローン控除を受けられず、団信にも加入できません。夫が死亡しても住宅ローンは残り、妻が返済義務を負います。
ペアローン(夫婦がそれぞれ債務者・相手の連帯保証人)
ペアローンは、夫婦がそれぞれ住宅ローンを組む方法です。お互いに相手の連帯保証人になります。
例:
- 夫:2000万円借入(妻が連帯保証人)
- 妻:1000万円借入(夫が連帯保証人)
- 合計:3000万円
ペアローンの場合、夫婦それぞれが住宅ローン控除を受けられ、団信にも加入できます。ただし、離婚しても金融機関の承諾なしに連帯保証人から外れることはできません。
親の土地に建てる場合(担保提供者として)
親の土地に住宅を建てる場合、親が担保提供者として連帯保証人になることがあります。親が土地に抵当権を設定し、子が住宅ローンを組む形です。
自営業・転職直後等で信用力が低い場合
自営業・転職直後等で信用力が低い場合、親族等が連帯保証人になることで住宅ローンが承認される場合があります。ただし、金融機関により対応が異なります。
連帯保証人の責任・リスク
債務者と同等の返済義務
連帯保証人は、債務者と同等の返済義務を負います。催告の抗弁権・検索の抗弁権がないため、金融機関は債務者より先に連帯保証人に請求することが可能です。
債務全額+利息・遅延損害金を負担
連帯保証人は、債務全額+利息・遅延損害金を負担します。債務者が返済できない場合、連帯保証人が全額を返済する義務があります。
例:
- 住宅ローン残高:2000万円
- 利息・遅延損害金:200万円
- 合計:2200万円
連帯保証人は、この2200万円を全額返済する義務を負います。
自分の信用情報に影響
連帯保証人になると、自分の信用情報に影響します。自分の借入能力が制限され、新たな住宅ローンや車のローンが組みにくくなります。
離婚しても金融機関の承諾なしに外れられない
離婚しても、金融機関の承諾なしに連帯保証人から外れることはできません。離婚後も返済義務が継続します。
金融機関の承諾を得るには、以下のいずれかが必要です。
- 住宅ローンを全額返済
- 別の連帯保証人を立てる
- 債務者の収入だけで返済可能であることを証明
連帯保証人が死亡した場合、責任は相続人に引き継がれる
連帯保証人が死亡した場合、責任は相続人に引き継がれます。相続放棄しない限り、相続人が債務を負います。
2020年民法改正による変更点
保証意思確認の厳格化
2020年4月1日施行の民法改正により、配偶者以外の個人が事業用融資の保証人になる場合、公正証書での意思確認が必要になりました。
ただし、住宅ローンの連帯保証人は「事業用融資」ではないため、この規定は適用されません。しかし、金融機関は保証意思確認を厳格化しています。
極度額の設定
2020年民法改正により、個人が根保証契約(継続的な取引の保証)を締結する場合、極度額(保証の上限額)の設定が義務化されました。
住宅ローンは通常、特定の借入額に対する保証のため、極度額設定は不要ですが、金融機関により対応が異なります。
連帯保証人になる前に確認すべきこと
債務者の返済能力を慎重に確認
連帯保証人になる前に、債務者の返済能力を慎重に確認してください。以下の点を確認しましょう。
- 年収:安定した収入があるか
- 勤続年数:転職したばかりでないか
- 他の借入:他にローンがないか
- 返済計画:無理のない返済計画か
返済が困難になった場合の対応を話し合う
返済が困難になった場合の対応を、事前に債務者と話し合っておくことを推奨します。
- 早めに金融機関に相談する
- 返済期間の延長を検討する
- 任意売却を検討する
安易に引き受けない
連帯保証人は非常に重い責任を負います。親族だからといって安易に引き受けるべきではありません。
自分の経済状況、債務者の返済能力、リスクを総合的に判断し、引き受けるかどうかを慎重に決定してください。
まとめ
住宅ローンの連帯保証人は、債務者と連帯して返済義務を負います。催告の抗弁権・検索の抗弁権がないため、金融機関は債務者より先に連帯保証人に請求することが可能です。
収入合算・ペアローン・親の土地に建てる場合等で連帯保証人が必要になります。離婚しても金融機関の承諾なしに連帯保証人から外れることはできず、連帯保証人が死亡した場合は責任が相続人に引き継がれます。
連帯保証人になる前に、債務者の返済能力を慎重に確認し、安易に引き受けないことを強く推奨します。不安な場合は、弁護士やファイナンシャルプランナーに相談することをおすすめします。
