住宅ローン本審査後に転職してしまった!どうなる?
住宅ローンの本審査に通った後に転職のオファーを受けたり、既に転職してしまったりした場合、「審査が取り消されるのではないか」「銀行に報告すべきか」と不安に感じる方は少なくありません。
この記事では、本審査通過後の転職が融資に与える影響、銀行への報告義務、最悪のケースと対処法を、金融機関の公式情報や法的根拠を元に解説します。緊急性の高い状況に対応できるよう、具体的なアクションプランも提示します。
この記事のポイント
- 本審査通過と融資実行は別物。融資実行前の転職は銀行への報告が契約上の義務となっています
- 黙っていても在籍確認や健康保険証で必ず発覚。虚偽申告は契約違反で融資取り消し・期限の利益喪失のリスク
- 正社員→正社員で年収維持なら再審査で通る可能性もあるが、契約社員・試用期間中・年収減少は厳しい
- 融資取り消しで手付金没収(物件価格の5-10%)または違約金(10-20%)が発生する可能性
- 転職のベストタイミングは融資実行・物件引き渡し完了後
本審査後に転職してしまった場合の対処法
既に転職してしまった、または転職が決まっている場合、まず取るべき行動は「速やかに銀行へ報告すること」です。
速やかに銀行へ報告する(契約約款における告知義務)
住宅ローンの契約約款では、勤務先変更など重要事項の変更時に届出義務が定められています。三菱UFJ銀行によると、民法の信義誠実の原則からも、転職の事実を正直に報告することが必須です。
黙っていても必ず発覚するため(後述)、早めに報告することで、銀行側も再審査などの対応策を検討できます。
転職先の情報を準備する(雇用形態・年収・試用期間の有無)
銀行に報告する際は、以下の情報を準備しましょう。
- 転職先の会社名・業種
- 雇用形態:正社員、契約社員、派遣社員など
- 年収:前職と比較した増減
- 試用期間の有無:試用期間中は審査が厳しくなる
- 転職日:いつから新しい会社で働いているか
これらの情報を正確に伝えることで、再審査の判断がスムーズになります。
再審査の可能性と必要書類
転職を報告した場合、多くのケースで再審査が行われます。再審査では、転職先の情報を基に返済能力が再評価されます。
再審査に必要な書類は以下の通りです。
- 在籍証明書(転職先が発行)
- 雇用契約書(雇用形態・年収を確認)
- 源泉徴収票(前職の年収証明)
- 給与明細(直近3ヶ月分)
これらの書類を速やかに準備し、銀行の指示に従いましょう。
本審査通過後の転職で起こり得るリスク
本審査通過後の転職には、最悪のケースとして融資取り消しや多額のペナルティが発生する可能性があります。
融資取り消しと契約解除のペナルティ
融資が取り消されると、物件の売買契約が履行できません。多くの不動産売買契約には「融資利用の特約」が付いていますが、申込者の事情(転職等)による融資取り消しは特約対象外となることが多いです。
手付金没収(物件価格の5-10%)または違約金(10-20%)
ハウジングステージによると、融資利用の特約が適用されない場合、以下のペナルティが発生します。
| ペナルティの種類 | 金額の目安 | 例(3,000万円の物件) |
|---|---|---|
| 手付金没収 | 物件価格の5-10% | 150-300万円 |
| 違約金 | 物件価格の10-20% | 300-600万円 |
このように、融資取り消しは金銭的に非常に大きなリスクです。
物件の引き渡し遅延と追加コスト
融資が取り消されても別の金融機関で再審査を受け、融資を受けられる場合があります。ただし、物件の引き渡しが遅れると以下の追加コストが発生する可能性があります。
- 仮住まい費用(賃貸の更新料・引っ越し費用)
- 引っ越し業者のキャンセル料
- 物件の引き渡し遅延による違約金
転職のタイミングを誤ると、予期せぬ追加コストが発生するリスクがあります。
転職が発覚する仕組み
「黙っていればバレないのでは?」と考える方もいるかもしれませんが、転職は必ず発覚します。
在籍確認のタイミング(契約時・融資実行直前に複数回)
金融機関は、住宅ローンの審査過程で在籍確認を複数回実施します。
- 本審査時:申込時の勤務先に在籍しているか確認
- 契約時:金銭消費貸借契約締結時にも確認
- 融資実行直前:資金振込前に最終確認
転職すると、前の勤務先に在籍していないことが判明し、虚偽申告として扱われます。
健康保険証の取得日で勤続年数が判明
保険の窓口によると、健康保険証には「資格取得年月日」が記載されており、これにより実際の勤続年数が分かります。
例えば、本審査時に「勤続3年」と申告していても、健康保険証の取得日が「2025年3月1日」となっていれば、転職したことが明らかです。
虚偽申告のリスクと法的問題(期限の利益喪失)
虚偽申告は銀行取引約定書における契約違反となり、以下の法的リスクがあります。
- 融資取り消し:契約が無効となる
- 期限の利益喪失:分割返済の権利を失い、残債を一括返済しなければならない
- 信用情報への影響:将来的な借入が困難になる
金融庁も融資審査時の顧客情報検証を金融機関に求めており、虚偽申告は厳しく追及されます。
再審査で何が見られるか
転職を報告した場合、再審査では転職先の情報が詳しく評価されます。
転職先の雇用形態(正社員・契約社員・試用期間)
再審査で最も重視されるのは雇用形態です。
| 転職前 | 転職後 | 再審査の評価 |
|---|---|---|
| 正社員 | 正社員 | 比較的有利(年収維持なら通る可能性あり) |
| 正社員 | 契約社員 | 不利(審査が厳しい) |
| 正社員 | 試用期間中の正社員 | 不利(試用期間中は審査が厳しい) |
| 正社員 | 派遣社員 | かなり厳しい |
SBI新生銀行によると、正社員→正社員で年収維持なら再審査で通る可能性もありますが、契約社員・試用期間中の場合は否決される可能性が高いです。
年収の変化と返済能力の再評価
年収が前職よりも減少している場合、返済能力が低下したと判断され、再審査で否決されるリスクが高まります。逆に年収が増加している場合でも、試用期間中や勤続年数リセットにより審査が厳しくなることがあります。
勤続年数のリセット(通常1年以上、できれば3年以上が望ましい)
住宅ローン審査では、勤続年数が重視されます。一般的に1年以上、できれば3年以上が望ましいとされていますが、転職によりこの勤続年数がリセットされます。
再審査では「勤続0年」からスタートとなるため、審査が厳しくなります。場合によっては、借入額の減額や保証人の追加を求められることもあります。
転職のタイミングと注意点
転職を検討している場合、住宅ローンのタイミングを慎重に考える必要があります。
融資実行後も報告義務あり(契約約款)
三菱UFJ銀行によると、融資実行後も契約約款で勤務先変更の届出義務があるケースが多いです。
報告を怠ると、将来的な借り換えや追加融資時に信用問題となるリスクがあります。融資実行後であっても、速やかに銀行へ報告しましょう。
物件の売買契約前に転職のタイミングを慎重に考える
転職のベストタイミングは、融資実行・物件引き渡し完了後です。本審査通過から融資実行まで通常1-2ヶ月かかるため、この期間は転職を避けることが理想です。
どうしても転職が必要な場合は、以下の選択肢を検討しましょう。
- 物件購入を延期:転職後、勤続年数が1年以上になってから再挑戦
- 転職先を決める前に住宅ローンを完了:融資実行後に転職
- 転職先の内定を保留:融資実行まで待てるか交渉
まとめ
住宅ローン本審査通過後の転職は、必ず銀行へ報告しましょう。虚偽申告は在籍確認や健康保険証で必ず発覚し、融資取り消し・期限の利益喪失のリスクがあります。
最悪の場合、手付金没収(物件価格の5-10%)または違約金(10-20%)の支払いが発生し、3,000万円の物件なら150万~600万円の損失です。
正直に報告した場合、転職先の雇用形態・年収・勤続年数により再審査で通る可能性もあります。次のアクションとして、速やかに銀行へ連絡し、転職先の情報を準備して再審査に備えましょう。
転職のベストタイミングは融資実行・物件引き渡し完了後です。どうしても転職が必要な場合は、物件購入のタイミングを見直すことも選択肢の一つです。
