住宅ローンの収入合算とは?借入額を増やす仕組みを解説
夫婦共働きで住宅購入を検討する際、単独では希望額を借りられないという悩みを抱える方は少なくありません。そんな時に活用されるのが「収入合算」という方法です。
この記事では、収入合算の仕組み、ペアローン・連帯保証との違い、メリット・デメリット、選び方を、住宅金融支援機構や各金融機関の公式情報を元に解説します。
共働き夫婦が自分たちの状況に合った借入方法を選べるようになります。
この記事のポイント
- 収入合算には連帯債務型(フラット35等)と連帯保証型(民間ローン主流)があり、住宅ローン控除・団信の適用範囲が異なる
- 連帯債務型は夫婦2人とも住宅ローン控除を受けられるが、連帯保証型は主債務者のみ
- ペアローンは2本の独立したローンで、2人とも控除・団信が適用されるが諸費用が2倍
- 離婚しても連帯債務・連帯保証の法的責任は消滅せず、財産分与・名義変更が複雑化
- 将来の収入見込みや離婚リスクを踏まえ、控除額を比較して選ぶことが重要
収入合算の種類|連帯債務型と連帯保証型の違い
収入合算は、夫婦の収入を合算して住宅ローンの借入額を増やす方法です。連帯債務型と連帯保証型の2種類があり、住宅ローン控除・団体信用生命保険(団信)の適用範囲が大きく異なります。
連帯債務型(フラット35等)
連帯債務型は、夫婦2人とも債務者となる方式です。住宅金融支援機構のフラット35が代表的で、夫婦2人とも住宅ローン控除を受けられます。
団信も夫婦連生団信(デュエット)に加入すれば、夫婦どちらかが死亡・高度障害時にローン残高がゼロになります。
連帯保証型(民間ローン主流)
連帯保証型は、主債務者1人のみが債務者で、合算者は保証人となる方式です。みずほ銀行の説明によると、民間金融機関では連帯保証型が主流です。
主債務者のみが住宅ローン控除を受けられ、団信も主債務者のみに適用されます。合算者が死亡しても債務は残るため、注意が必要です。
住宅ローン控除・団信の適用範囲の違い
以下の表で、連帯債務型と連帯保証型の違いを整理します。
| 項目 | 連帯債務型 | 連帯保証型 | 
|---|---|---|
| 債務者 | 夫婦2人とも | 主債務者のみ | 
| 住宅ローン控除 | 夫婦2人とも受けられる | 主債務者のみ | 
| 団信 | 夫婦連生団信(デュエット)加入可 | 主債務者のみ | 
| 主な金融機関 | フラット35等 | 民間金融機関主流 | 
国税庁の説明によると、連帯債務型では夫婦それぞれの負担割合に応じて住宅ローン控除を受けられるため、控除額が大きくなるメリットがあります。
ペアローン・連帯保証との比較|それぞれの特徴とメリット・デメリット
ペアローンは、収入合算とは異なる仕組みで、夫婦がそれぞれ独立した2本のローンを組む方式です。
ペアローン(2本の独立したローン)
ペアローンは、夫婦がそれぞれ独立した2本のローンを組み、互いに連帯保証人となる方式です。三菱UFJ銀行の解説によると、2人とも債務者で、住宅ローン控除と団信が適用されます。
ただし、2本のローンとなるため、諸費用(印紙税、登記費用、事務手数料等)が2倍かかります。
収入合算との違いを表で整理
以下の表で、ペアローン・連帯債務・連帯保証の違いを比較します。
| 項目 | ペアローン | 連帯債務型 | 連帯保証型 | 
|---|---|---|---|
| ローン本数 | 2本 | 1本 | 1本 | 
| 債務者 | 夫婦2人とも | 夫婦2人とも | 主債務者のみ | 
| 住宅ローン控除 | 夫婦2人とも | 夫婦2人とも | 主債務者のみ | 
| 団信 | 夫婦2人とも | 夫婦連生団信加入可 | 主債務者のみ | 
| 諸費用 | 2倍 | 1本分 | 1本分 | 
(出典: 三菱UFJ銀行)
諸費用・控除額の比較
ペアローンは諸費用が2倍かかりますが、夫婦2人とも住宅ローン控除を受けられるため、控除額が大きくなります。連帯債務型も控除は2人分ですが、諸費用は1本分です。連帯保証型は諸費用は1本分ですが、控除は主債務者のみです。
収入合算のメリット・デメリット|借入額増加と引き換えのリスク
収入合算には借入額が増えるメリットがありますが、返済負担が大きくなるデメリットもあります。
メリット:借入額が増える、審査に通りやすい
収入合算の最大のメリットは、夫婦の収入を合算することで借入額が増え、希望の物件を購入できることです。単独では審査に通らない場合でも、収入合算により審査に通りやすくなります。
デメリット:返済負担が大きい、離婚時のリスク
借入額が増えることで返済負担が大きくなり、合算者の収入が途絶えた場合(退職・休職等)に返済が困難になるリスクがあります。
フラット35相談センターの解説によると、離婚しても連帯債務・連帯保証の法的責任は消滅せず、財産分与・名義変更が複雑化します。一方が返済を拒否すれば他方に全額請求されるため、離婚時のリスクを事前に理解しておくことが重要です。
合算者の収入が途絶えた場合のリスク
合算者が退職・休職・育児休暇等で収入が途絶えた場合、主債務者が全額返済する責任を負います。国税庁の贈与税に関するページによると、収入が途絶えても負担割合を変更しない場合、贈与税が発生する可能性があるため、注意が必要です。
収入合算・ペアローンの選び方|自分に合った方法を見つけるポイント
収入合算とペアローンのどちらを選ぶかは、将来の収入見込み、離婚リスク、控除額の比較を踏まえて判断する必要があります。
以下は、選択のポイントです。
- 連帯債務型(フラット35): 住宅ローン控除を2人とも受けられるため、控除額を最大化したい方に向いています。夫婦連生団信(デュエット)に加入すれば、夫婦どちらかが死亡時にローン残高がゼロになります。
- 連帯保証型(民間ローン): 主債務者のみが控除を受けられますが、合算者の団信負担がないため、保険料を抑えたい方に向いています。
- ペアローン: 諸費用が2倍かかりますが、控除も2人分受けられます。将来の収入が安定している共働き夫婦に向いています。
三菱UFJ銀行の解説によると、将来の収入見込みや離婚リスクを踏まえ、控除額をシミュレーションして比較することが推奨されています。
まとめ|収入合算は借入額増加の手段だがリスクも理解すべき
収入合算は夫婦で借入額を増やせる方法ですが、連帯債務型と連帯保証型で控除・団信の適用範囲が異なります。ペアローンとも比較し、将来の収入見込みや離婚リスクを踏まえて選ぶことが重要です。
連帯債務型は控除額が大きいが、連帯保証型は主債務者のみ控除が適用されます。ペアローンは諸費用が2倍ですが控除も2人分です。
信頼できる金融機関に相談しながら、自分たちのライフプランに合った方法を選びましょう。
