住宅ローン50年とは?メリット・デメリットと注意点

公開日: 2025/10/27

住宅ローン50年とは

住宅ローンの返済期間を50年で組めると聞いて、月々の返済額を抑えられる一方で、総返済額がどれくらい増えるのか不安に感じる方は少なくありません。

この記事では、住宅ローン50年の仕組み、35年ローンとの違い、メリット・デメリット、向いている人・向いていない人を、住宅金融支援機構や金融庁の公式情報を元に解説します。

初めて50年ローンを検討する方でも、自分に適した返済計画を判断できるようになります。

この記事のポイント

  • 50年ローンは月々の返済額を1-2万円程度抑えられるが、総返済額は35年ローンより300万円~1,000万円以上増加
  • フラット50は長期優良住宅が条件、民間50年ローンは各金融機関が独自基準で提供
  • 完済時年齢が最長80歳となり、定年後の返済負担や健康問題による返済困難のリスクがある
  • 繰上返済を計画的に実行できる若年層には向いているが、定年が近い・売却の可能性が高い人には向いていない

フラット50と民間50年ローンの違い

住宅ローン50年は、最長50年の返済期間を設定できる住宅ローンです。大きく分けて「フラット50」と「民間50年ローン」の2種類があります。

フラット50

住宅金融支援機構が提供する全期間固定金利の50年ローンで、長期優良住宅の取得が条件です。長期優良住宅とは、耐久性・省エネ性などの基準を満たす住宅として認定されたものを指します。

民間50年ローン

各金融機関が独自の基準で提供する50年ローンです。2025年1月にはauじぶん銀行が取扱いを開始するなど、提供金融機関が拡大しています。変動金利型が多く、金利上昇リスクに注意が必要です。

利用条件

50年ローンの利用には、一般的に以下の条件があります。

  • 完済時年齢: 最長80歳(金融機関により異なる)
  • 借入時年齢: 18歳以上(成人)
  • 物件要件: フラット50は長期優良住宅認定が必須、民間は金融機関による
  • 審査基準: 返済能力、勤続年数、信用情報など総合的に判断

50年ローンのメリット

50年ローンの主なメリットは以下の通りです。

月々の返済額を大幅に抑えられる

返済期間を35年から50年に延ばすことで、月々の返済額を1-2万円程度抑えられます。借入3,000万円・金利1.5%の場合、35年ローンは月々9.2万円、50年ローンは月々7.7万円となり、月1.5万円の差が生まれます。

この差額を生活費や教育費に回すことができるため、若年層や子育て世帯にとっては家計の柔軟性が高まります。

借入可能額が増える

同じ月々の返済額でも、返済期間を長くすることで借入可能額が増加します。月々10万円の返済で35年ローン(金利1.5%)なら約3,260万円、50年ローンなら約3,900万円まで借入可能です。

希望の物件を購入しやすくなる一方で、総返済額の増加には注意が必要です。

長期間の団信保障が得られる

団体信用生命保険(団信)の保障期間が50年間と長くなります。万が一、契約者が死亡・高度障害状態になった場合、残債が保険で返済されるため、遺族の負担が軽減されます。

50年ローンのデメリット

50年ローンには以下のデメリットがあります。

総返済額が300万円~1,000万円以上増加

借入期間が長いほど利息負担が増加します。借入3,000万円・金利1.5%の場合、35年ローンの総返済額は3,860万円、50年ローンは4,620万円となり、760万円の差が生じます。

金利や借入額により差は拡大するため、総返済額のシミュレーションを必ず行うべきです。

売却時の残債割れリスク

50年ローンは元本の減少が遅いため、売却時に残債が物件価格を上回る「残債割れ」リスクが高まります。

日本経済新聞の報道によると、50年ローン利用者の売却時に残債割れとなるケースが増加傾向にあります。転勤・家族構成の変化等で売却を検討する際に、売却代金だけでは残債を返済できず、追加資金が必要になる可能性があります。

完済時年齢の高齢化(最長80歳)

完済時年齢が最長80歳となるため、定年退職後も返済が続くケースが多くなります。30歳で借入れた場合、完済時は80歳。60-65歳で定年を迎えた後、年金収入での返済が必要になり、老後資金を圧迫するリスクがあります。

健康問題により就労継続が困難になった場合、返済が滞る可能性も考慮すべきです。

35年ローンとの比較シミュレーション

具体的な数値で35年ローンと50年ローンを比較します。

項目 35年ローン 50年ローン 差額
借入額 3,000万円 3,000万円 -
金利 1.5% 1.5% -
月々の返済額 9.2万円 7.7万円 -1.5万円
総返済額 3,860万円 4,620万円 +760万円
完済時年齢(30歳借入) 65歳 80歳 +15年

月々の返済額は1.5万円抑えられますが、総返済額は760万円増加します。金利が高い場合や借入額が多い場合、この差はさらに拡大します。

変動金利型の場合、50年という長期間で金利上昇の影響を受けやすいため、総返済額が更に増加するリスクがあります。

50年ローンが向いている人・向いていない人

50年ローンの適性を判断する基準を提示します。

向いている人

以下に該当する方は50年ローンの検討価値があります。

  • 若年層(20-30代): 完済時年齢が70-80歳でも、定年までの期間が長く、繰上返済の余地が大きい
  • 将来的な収入増が見込める: 昇給・昇進により、繰上返済を計画的に実行できる可能性が高い
  • 繰上返済を前提とした利用: 月々の返済額を抑えて生活費や教育費を優先しつつ、ボーナス等で繰上返済を実行できる
  • 月々の返済額を最優先: 手元資金を確保し、家計の柔軟性を重視する方

向いていない人

以下に該当する方は35年ローン等の検討が推奨されます。

  • 定年が近い(50代以降): 完済時年齢が80歳を超え、年金収入での返済が困難になる可能性が高い
  • 繰上返済の余裕がない: 総返済額の増加を吸収できず、老後資金を圧迫するリスクが高い
  • 売却の可能性が高い: 転勤・家族構成の変化等で売却を検討する場合、残債割れのリスクが高い
  • 総返済額を最優先: 利息負担を最小限に抑え、トータルコストを重視する方

繰上返済を前提とした利用

50年ローンは繰上返済を前提とした利用が重要です。月々の返済額が低いことに安心して貯蓄を怠ると、総返済額の増加により老後破産につながるリスクがあります。

期間短縮型の繰上返済(月々の返済額を変えずに返済期間を短縮する方式)を活用すれば、総利息の削減効果が大きくなります。

まとめ

住宅ローン50年は、月々の返済額を1-2万円程度抑えられる一方で、総返済額が35年ローンより300万円~1,000万円以上増加します。完済時年齢が最長80歳となり、定年後の返済負担や売却時の残債割れリスクを理解する必要があります。

フラット50は長期優良住宅が条件、民間50年ローンは各金融機関が独自基準で提供しています。2025年現在、取扱い金融機関が拡大中です。

35年ローンとのシミュレーションで総返済額の差を確認し、繰上返済を計画的に実行できるかを判断すべきです。若年層で将来的な収入増が見込める方には向いていますが、定年が近い・繰上返済の余裕がない・売却の可能性が高い方には向いていません。

複数金融機関から見積もりを取り、自身の状況と照らし合わせて慎重に検討しましょう。

よくある質問

Q150年ローンは途中で期間短縮できますか?

A1はい、繰上返済により期間短縮が可能です。月々の返済額を変えずに返済期間を短縮する「期間短縮型」を選択すれば、総利息の削減効果が大きくなります。ただし、金融機関により繰上返済手数料がかかる場合があるため、事前に確認すべきです。変動金利型の場合、繰上返済手数料が無料の金融機関が多い一方、固定金利型は手数料がかかる傾向にあります。

Q250年ローンは変動金利と固定金利どちらが多いですか?

A2民間50年ローンは変動金利型が多く、フラット50は全期間固定金利です。変動金利型は金利が低い一方で、金利上昇リスクがあります。50年という長期間で金利変動の影響を受けやすいため、将来の金利動向を慎重に検討すべきです。金利が1%上昇すると、総返済額が数百万円増加する可能性があります。

Q350年ローンで審査が厳しくなることはありますか?

A3完済時年齢が高齢化するため、返済能力の審査が厳しくなる傾向があります。定年後の収入見込み(年金、退職金等)や健康状態も考慮されます。また、長期優良住宅認定が条件のフラット50では、物件が耐久性・省エネ性などの基準を満たす必要があります。勤続年数、他の借入状況、信用情報も総合的に審査されます。

Q450年ローンを選んで後悔することはありますか?

A4繰上返済を怠ると総返済額が大幅に増加し、後悔する可能性があります。借入3,000万円・金利1.5%の場合、35年ローンと比較して760万円多く支払うことになります。また、売却時に残債割れで売却代金だけでは返済できず、追加資金が必要になるケースもあります。月々の返済額が低いことに安心せず、計画的な繰上返済と家計管理が重要です。