農地転用できない土地とは?
農地を宅地や駐車場などに転用したいと考える際、「この農地は転用できるのか」と不安に感じる方は少なくありません。農地転用には厳格な法規制があり、転用できない農地も存在します。
この記事では、農地転用できない土地の特徴、農地区分による転用可否、転用できない場合の対処法を、農林水産省の公式情報を元に解説します。
農地転用の可否は農地区分によって決まり、農用地区域内農地や甲種農地は原則転用不許可です。転用前に必ず農業委員会に確認することで、無駄な申請や違法転用を防げます。
この記事のポイント
- 農地転用の可否は農地区分(農用地区域内農地、甲種農地、第1種農地、第2種農地、第3種農地)によって決まる
- 農用地区域内農地と甲種農地は原則転用不許可(例外は公共事業等のみ)
- 第1種農地も原則不許可だが、一定の例外条件で許可される場合がある
- 無許可転用は違法で、原状回復命令や罰則(3年以下の懲役または300万円以下の罰金)の対象
- 転用できない農地でも、農用地区域からの除外や市街化区域編入により転用可能となる場合がある
農地転用の基本的な仕組み
農地法による規制
農地転用は農地法第4条・第5条により厳格に規制されています。
- 農地法第4条: 農地所有者が自ら農地を転用する場合の許可
- 農地法第5条: 農地を売買・賃貸借して転用する場合の許可
いずれの場合も、都道府県知事(または農林水産大臣)の許可が必要です。無許可での転用は違法であり、罰則の対象となります。
農地区分の種類
農林水産省によると、農地は以下の5つに区分され、区分によって転用の許可基準が異なります。
| 農地区分 | 特徴 | 転用の可否 |
|---|---|---|
| 農用地区域内農地 | 市町村の農業振興地域整備計画で農用地区域とされた農地 | 原則不許可 |
| 甲種農地 | 市街化調整区域内の優良農地(おおむね10ha以上のまとまった農地) | 原則不許可 |
| 第1種農地 | 良好な営農条件を備えた農地(10ha以上のまとまった農地等) | 原則不許可(一定の例外あり) |
| 第2種農地 | 市街地近郊の農地(市街化が見込まれる区域) | 周辺の他の土地で代替不可の場合のみ許可 |
| 第3種農地 | 市街地内の農地(鉄道駅500m以内等) | 原則許可 |
市街化区域内農地の特例
市街化区域内農地は、農地法の許可が不要です(ただし農業委員会への届出は必要)。市街化区域とは、都市計画法により「すでに市街地を形成している区域およびおおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域」です。
市街化区域内農地は比較的転用しやすいですが、固定資産税が高くなる点に注意が必要です。
転用できない農地の具体例
農用地区域内農地(青地)
農用地区域内農地(通称「青地」)は、市町村の農業振興地域整備計画で「今後も農業の用に供すべき土地」として指定された農地です。
農地法により、農用地区域内農地の転用は原則不許可です。例外的に許可されるのは以下の場合のみです。
- 土地収用法に基づく公共事業
- 農業振興地域整備計画に定められた土地利用計画に適合する農業用施設
- 農業者の住宅(自己居住用、一定の条件を満たす場合)
一般の住宅建築や駐車場への転用は認められません。
甲種農地
甲種農地は、市街化調整区域内の優良農地(おおむね10ha以上のまとまった農地、土地改良事業施行後8年以内の農地等)です。
甲種農地も原則転用不許可であり、例外的に許可されるのは以下の場合のみです。
- 土地収用法に基づく公共事業
- 農業用施設(農産物の加工・販売施設等、一定の条件を満たす場合)
- 公益性が高い施設(医療施設、社会福祉施設等、代替地がない場合)
個人の住宅建築は原則認められません。
第1種農地
第1種農地は、良好な営農条件を備えた農地(10ha以上のまとまった農地、土地改良事業の対象農地等)です。
第1種農地も原則転用不許可ですが、以下の場合は例外的に許可される可能性があります。
- 土地収用法に基づく公共事業
- 農業用施設
- 公益性が高い施設(学校、病院等、代替地がない場合)
- 集落接続(既存集落に接続する住宅、一定の条件を満たす場合)
第1種農地は甲種農地よりも転用の例外が広いですが、それでも許可のハードルは高いです。
無許可転用のリスク
原状回復命令
無許可で農地を転用した場合、都道府県知事から原状回復命令が出されます。原状回復命令に従わない場合、行政代執行により強制的に原状回復され、費用は所有者が負担します。
原状回復には多額の費用がかかるため、無許可転用は絶対に避けてください。
罰則(3年以下の懲役または300万円以下の罰金)
無許可転用は農地法第64条により、3年以下の懲役または300万円以下の罰金(法人の場合は1億円以下の罰金)に処せられます。
農地転用は必ず事前に農業委員会に相談し、適法な手続きを踏んでください。
売買契約の無効
農地の売買契約は、農地法の許可が効力要件です。無許可の売買契約は無効となり、所有権移転登記もできません。
農地を購入して転用する場合は、必ず農地法第5条の許可を受けてから売買契約を締結してください。
転用できない農地を転用可能にする方法
農用地区域からの除外(農振除外)
農用地区域内農地(青地)を転用するには、まず農用地区域から除外する手続き(農振除外)が必要です。
農振除外の要件(農業振興地域の整備に関する法律第13条):
- 農用地区域以外に代替すべき土地がない
- 農業上の効率的な利用に支障を及ぼすおそれがない
- 土地改良事業等の施行に係る区域内の土地でない(または施行後8年を経過している)
- 農業振興地域整備計画の変更が必要
農振除外には6ヶ月〜1年以上の期間がかかります。市町村の農政課に相談してください。
市街化区域への編入
市街化調整区域の農地を市街化区域に編入することで、転用しやすくなります。ただし、市街化区域への編入は都市計画法の都市計画決定が必要であり、個人では困難です。
市街化区域への編入は、市町村が主体となって進める都市計画の変更手続きです。地権者が個別に申請できる制度ではありません。
農業委員会への事前相談
農地転用できるかどうか不明な場合は、必ず市町村の農業委員会に事前相談してください。
事前相談で確認すべきこと:
- 農地区分(農用地区域内農地、甲種農地、第1種農地等)
- 転用許可の見込み
- 農振除外が必要か
- 必要書類と手続き期間
- 申請費用
事前相談により、無駄な申請や違法転用を防げます。
まとめ
農地転用できない土地は、農地区分により明確に定められています。農用地区域内農地(青地)、甲種農地、第1種農地は原則転用不許可であり、一般の住宅建築や駐車場への転用は認められません。
無許可での転用は違法であり、原状回復命令や罰則(3年以下の懲役または300万円以下の罰金)の対象となります。農地を転用する際は、必ず事前に農業委員会に相談し、適法な手続きを踏んでください。
転用できない農地でも、農用地区域からの除外(農振除外)により転用可能となる場合があります。農振除外には時間がかかるため、早めに市町村の農政課に相談してください。
農地転用は専門的な手続きが必要です。不明点があれば、市町村の農業委員会や行政書士等の専門家に相談することをおすすめします。
