住み替え中古戸建て売却の流れ|スケジュール・同日決済・資金計画

公開日: 2025/10/14

住み替え売却の全体スケジュール

住み替えで中古戸建てを売却する場合、ライフステージの変化に合わせた新居購入との同時進行が必要です。この記事では、住み替え売却の準備から決済までの流れ、売り先行・買い先行の選択、同時決済の実務、資金調整の方法まで、住み替えを成功させるための具体的なスケジュールと戦略を解説します。

この記事のポイント

  • 住み替え売却は準備から決済まで4~6ヶ月が目安
  • 売り先行は資金計画が立てやすく、戸建ては売却期間が長めで推奨
  • 買い先行は引っ越しが1回で済むが、ダブルローン審査が厳しい
  • 同日決済なら仮住まい不要でコスト削減可能
  • 譲渡損失が出たら損益通算で税負担を軽減できる

(1) 準備から決済までの期間目安

住み替えで中古戸建てを売却する場合、準備から決済まで4~6ヶ月程度が一般的な目安です。中古戸建てはマンションに比べて売却期間が長くなる傾向があるため、余裕を持ったスケジュールを組むことが重要です。

住み替え売却の期間内訳

  • 準備期間(査定・戦略決定):1ヶ月
  • 売却活動(広告・内覧):2~4ヶ月(戸建ては長めに設定)
  • 契約から決済まで:1~2ヶ月
  • 合計:4~7ヶ月

新居購入のタイミングも考慮し、全体で半年~1年程度を見込んでおくと安心です(参照:国土交通省|不動産の売却の流れ)。

(2) 売り先行と買い先行の違い

住み替えには「売り先行」と「買い先行」の2つのパターンがあり、それぞれメリット・デメリットがあります。

比較項目 売り先行 買い先行
資金計画 売却代金確定後に新居購入で安心 ダブルローン審査が厳しい
仮住まい 必要な場合が多い 不要(新居に直接引越し)
売却期間 焦らず適正価格で売却可能 売却期限あり、値下げ圧力
適する人 ローン残債が多い、資金計画重視 自己資金が豊富、生活重視

戸建ての特徴:戸建てはマンションに比べて買い手が見つかりにくく、売却期間が長めになる傾向があります。そのため、住み替えでは売り先行を選択する方が多くなっています。

売却と購入の順序決定(準備期間)

(1) 住宅ローン残債と売却価格の確認

住み替えを検討する際、まず確認すべきは現在の住宅ローン残債と売却予想価格の関係です。これによって資金計画が大きく変わります。

アンダーローン(売却代金 > ローン残債)

  • 売却代金で残債を完済できる
  • 売却代金の余剰分を新居の頭金に充当できる
  • 売り先行・買い先行のどちらも選択可能
  • 資金的な余裕があるため、理想の新居探しに時間をかけられる

オーバーローン(売却代金 < ローン残債)

  • 売却代金だけでは残債を完済できない
  • 買い替えローンの利用を検討
  • 自己資金で補填するか、新居ローンに上乗せ
  • 金融機関の審査基準が厳しくなる

(2) 売り先行のメリット・デメリット

メリット

  • 売却代金が確定してから新居購入できる
  • 資金計画が立てやすく、無理のない購入が可能
  • 売却を急ぐ必要がなく、適正価格での売却を目指せる
  • ダブルローンのリスクがない

デメリット

  • 新居が決まるまで仮住まいが必要な場合がある
  • 引っ越しが2回必要(旧居→仮住まい→新居)
  • 仮住まい費用(賃料・引越し費用)が発生
  • 仮住まい期間中は荷物の一部をトランクルームに預ける必要も

(3) 買い先行のメリット・デメリット

メリット

  • 理想の新居をじっくり探せる
  • 新居が決まってから引っ越しできる
  • 引っ越しが1回で済む(旧居→新居)
  • 仮住まい費用が不要

デメリット

  • 一時的にダブルローン(2つの住宅ローン)を抱える
  • 金融機関の審査が厳しく、年収基準が高い
  • 月々の返済負担が重くなる(2つのローン返済)
  • 旧居の売却を急ぐ必要があり、値下げ圧力が強い

査定依頼と販売戦略(1ヶ月)

(1) 複数の不動産会社に査定依頼

住み替え売却を決めたら、まず複数の不動産会社に査定を依頼します。戸建ては立地・築年数・建物状態によって査定価格が大きく変わるため、3~5社に依頼して適正な売却価格を把握しましょう。

査定依頼時の確認ポイント

  • 査定価格の根拠(類似物件の成約事例等)
  • 売却にかかる期間の見込み(戸建ては長めに設定)
  • 仲介手数料やその他費用
  • 住み替え実績の有無
  • インスペクション(建物状況調査)の提案有無

(2) 残債がある場合の売却可能額の確認

住宅ローンが残っている場合、売却時に残債を一括返済する必要があります。現在の残債額を金融機関に確認し、査定価格と比較して実際に手元に残る金額を計算しましょう。

売却可能額の計算式

手元に残る金額 = 売却価格 - (ローン残債 + 諸費用)

諸費用の内訳

  • 仲介手数料:売却価格 × 3% + 6万円 + 消費税(上限)
  • 抵当権抹消費用:1~3万円程度
  • 登記費用:司法書士報酬含む
  • 印紙代:売買契約書用(1~3万円程度)

(3) 買い替えローンの事前相談

オーバーローンの場合や、売却代金を新居の頭金に充当したい場合は、買い替えローンの事前相談をおすすめします(参照:住宅金融支援機構|買い替えローン)。

買い替えローンの特徴

  • 旧居のローン残債を新居のローンに組み込める
  • 審査基準が通常の住宅ローンより厳しい
  • 融資額が物件価格を超える(オーバーローン)ため金利が高めの場合も
  • 年収要件や勤続年数の基準が厳格

売却活動と契約締結(2-3ヶ月)

(1) 内覧対応と空室準備

売却活動が始まると、購入希望者の内覧対応が必要になります。戸建ての場合、庭や外観も含めて全体の印象が重要です。

内覧対応のポイント(戸建て特有)

  • 庭の手入れ(雑草除去、植栽の剪定)
  • 外壁・屋根の清掃(高圧洗浄も検討)
  • 室内の清掃・整理整頓を徹底
  • 水回りの清潔感を保つ
  • 照明を明るくし、換気を心がける
  • 駐車スペースの確保(購入希望者が車で来る場合が多い)

インスペクション(建物状況調査)の活用: 中古戸建ての売却では、インスペクションを実施することで建物の状態を明確化し、買い手の安心感を高められます(参照:国土交通省|既存住宅状況調査)。

(2) 売買契約と重要事項説明

購入希望者が見つかり、条件が合えば売買契約に進みます。契約前には宅地建物取引士による重要事項説明が行われます。

売買契約時の主な内容

  • 売買代金と支払い方法
  • 手付金の額(売買代金の5~10%程度)
  • 引き渡し予定日
  • 瑕疵担保責任の内容(特に戸建ては雨漏り・シロアリ等)
  • 契約解除の条件
  • 設備・備品の引き渡し条件

(3) 手付金受領と引き渡し日の調整

売買契約時には買主から手付金を受け取ります。この手付金は売買代金の一部に充当されます。また、引き渡し日は新居購入の決済日と調整することが重要です。

新居購入とのタイミング調整

(1) 決済日の同日設定

住み替えでは、旧居の売却決済と新居の購入決済を同日に設定することで、仮住まいを回避できます。戸建ての場合も同様に、午前中に旧居の決済、午後に新居の決済という流れが一般的です。

同日決済のメリット

  • 仮住まいが不要
  • 引っ越しが1回で済む
  • 仮住まい費用が不要(月10~20万円 × 期間分を節約)
  • ダブルローンの期間が最小化
  • トランクルームなどの一時保管費用も不要

同日決済の注意点

  • 両方の決済日を合わせる調整が必要
  • 買主・売主双方の都合に左右される
  • 司法書士が登記手続きを調整する必要がある
  • 引っ越し業者の手配も同日に調整が必要

(2) 仮住まいが必要な場合の対応

同日決済が難しい場合や、新居が建築中・リフォーム中の場合は仮住まいが必要になります。

仮住まいのコスト試算

  • 賃料:月10~20万円程度(地域・広さによる)
  • 敷金・礼金:賃料の1~2ヶ月分
  • 引っ越し費用:2回分(旧居→仮住まい:10~15万円、仮住まい→新居:10~15万円)
  • トランクルーム:月1~3万円(荷物の量による)
  • 合計(3ヶ月仮住まいの場合):約50~80万円

(3) つなぎ融資の活用

新居の購入代金が必要だが旧居の売却代金がまだ入金されていない場合、つなぎ融資を利用することで資金繰りを調整できます。

つなぎ融資の特徴

  • 短期間(数ヶ月)の融資
  • 旧居の売却代金で一括返済することが前提
  • 金利は通常の住宅ローンより高め(年2~4%程度)
  • 旧居の売却契約が成立していることが条件
  • 融資限度額は旧居の売却予定額の範囲内

決済・引き渡しと税務手続き

(1) 残代金決済と抵当権抹消

決済日には、買主から残代金を受け取り、同時に住宅ローンの残債を一括返済します。残債が完済されると、金融機関から抵当権抹消書類が発行され、司法書士が抵当権抹消登記を行います。

決済日の流れ

  1. 買主から残代金の受領
  2. 住宅ローン残債の一括返済
  3. 抵当権抹消書類の受領
  4. 司法書士による所有権移転登記・抵当権抹消登記
  5. 鍵の引き渡し
  6. 設備・備品の確認
  7. 公共料金等の精算

(2) 譲渡所得税の計算と特例

中古戸建てを売却して利益(譲渡所得)が出た場合、譲渡所得税が課税されます。ただし、マイホーム売却には3,000万円特別控除が適用される可能性があります(参照:国税庁|マイホームを買い換えた場合の特例)。

3,000万円特別控除の主な要件

  • 居住用財産であること
  • 居住しなくなってから3年目の年の12月31日までに売却
  • 配偶者や直系血族への売却でないこと
  • 前年・前々年に同特例を利用していないこと

注意点:3,000万円特別控除を適用すると、新居購入時の住宅ローン控除が3年間利用できなくなります。どちらが有利かは税理士に相談することをおすすめします。

(3) 譲渡損失の損益通算

住み替えでマイホーム売却損が出た場合、給与所得等と損益通算して税負担を軽減できる特例があります。その年で控除しきれない分は3年間繰越控除できます。

譲渡損失の損益通算の主な要件

  • 所有期間が5年超であること
  • 売却時に住宅ローンが残っていること
  • 新居も住宅ローンで購入すること
  • 確定申告が必須

損益通算の効果(例)

  • 給与所得:600万円
  • 譲渡損失:200万円
  • 損益通算後の所得:600万円 - 200万円 = 400万円
  • 所得税・住民税が軽減される(約40~60万円の節税効果)

まとめ

住み替えで中古戸建てを売却する場合、準備から決済まで4~6ヶ月程度が目安です。戸建てはマンションに比べて売却期間が長めになる傾向があるため、売り先行を選択する方が多くなっています。

資金計画を重視するなら売り先行、生活重視なら買い先行が向いていますが、ローン残債が多い場合は売り先行が無難です。住宅ローンが残っていても、売却代金で完済できる(アンダーローン)なら問題なく、完済できない(オーバーローン)場合は買い替えローンで残債を新居ローンに上乗せできます。

旧居の売却決済と新居の購入決済を同日に設定すれば、仮住まいが不要でコストを削減できます(約50~80万円の節約)。また、譲渡損失が出た場合は損益通算で税負担を軽減できるため、確定申告を忘れずに行いましょう。不明な点は不動産会社や税理士に相談することをおすすめします。

よくある質問

Q1戸建て住み替えで売り先行と買い先行はどちらが良いですか?

A1資金計画を重視するなら売り先行がおすすめです。売却代金が確定してから新居購入できるため、無理のない資金計画が立てられます。生活重視なら買い先行で、新居決定後に引っ越せますが、ダブルローン審査が厳しく返済負担が大きくなります。戸建てはマンションより売却期間が長めになる傾向があるため、売り先行を選択する方が多くなっています。

Q2戸建ての住宅ローンが残っていても売却できますか?

A2はい、売却可能です。決済時に残債を一括返済して抵当権を抹消します。売却代金で完済できる(アンダーローン)なら問題ありませんが、完済できない(オーバーローン)場合は買い替えローンで残債を新居ローンに上乗せできます。ただし、買い替えローンの審査は通常より厳しく、年収基準も高くなります。

Q3戸建て売却と新居購入の決済を同日にできますか?

A3はい、可能です。一般的には、午前中に旧居の決済と残債返済・抵当権抹消を行い、午後に新居の決済を行います。司法書士が登記手続きを調整します。同日決済なら仮住まいが不要でコスト削減できます(約50~80万円の節約)。ただし、両方の決済日を合わせる調整が必要で、買主・売主双方の都合に左右されます。

Q4住み替えで譲渡損失が出たらどうなりますか?

A4住み替えでマイホーム売却損が出た場合、給与所得等と損益通算して税負担を軽減できます。その年で控除しきれない分は3年間繰越控除できます。主な要件は、所有期間が5年超であること、売却時に住宅ローンが残っていること、新居も住宅ローンで購入することなどです。確定申告が必須となります。

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