買い替えで新築マンション購入の全体スケジュール
既存住宅を売却して新築マンションに買い替える場合、売却と購入のタイミング調整が重要です。新築マンションは竣工までに時間がかかるため、スケジュール管理が複雑になります。本記事では、買い替えの流れとタイミング調整のポイントを解説します。
この記事でわかること
- 買い替えの全体スケジュール(6~18ヶ月が目安)
- 売り先行・買い先行の選択基準と資金計画
- 住み替えローン・ダブルローン・つなぎ融資の活用方法
- 新築マンション特有の竣工待ち期間の調整
- 旧居売却の税務手続き(買換え特例・住宅ローン控除)
(1) 売却開始から新居入居まで(6-18ヶ月)
買い替えの全体スケジュールは、売り先行か買い先行かによって異なります。
売り先行の場合:
- 旧居の売却活動:3~6ヶ月
- 仮住まい期間:3~12ヶ月(新築マンション竣工待ち)
- 新築マンション契約から竣工・引渡し:6~12ヶ月
- 合計:12~18ヶ月
買い先行の場合:
- 新築マンション契約から竣工・引渡し:6~12ヶ月
- 旧居の売却活動(並行):3~6ヶ月
- 合計:6~12ヶ月
買い先行の方がスケジュールは短いですが、新築マンションの竣工遅延や旧居売却の遅れによる二重ローンのリスクがあります。
(2) 新築マンション特有の竣工待ち
新築マンションは、契約から竣工・引渡しまで6~12ヶ月かかります。建築中の物件(青田売り)の場合、さらに長期化することもあります。
竣工待ち期間の調整:
- 契約時に竣工予定日を確認(通常、契約から6~12ヶ月後)
- 旧居の売却時期を竣工予定日に合わせる
- 竣工遅延リスクを考慮し、余裕を持ったスケジュールを組む
竣工が遅れると、売り先行の場合は仮住まい期間が延長し、買い先行の場合は二重ローン期間が延長します。
(3) 各工程の所要期間
買い替えの各工程の標準的な所要期間は以下の通りです:
工程 | 所要期間 | 備考 |
---|---|---|
旧居の査定・媒介契約 | 2~4週間 | 複数社査定、専任媒介契約が推奨 |
旧居の販売活動 | 1~3ヶ月 | 広告掲載、内見対応、価格交渉 |
旧居の売買契約 | 1週間 | 手付金受領、重要事項説明 |
新築マンションの見学・申込み | 2~4週間 | モデルルーム見学、抽選または先着順 |
新築マンションの契約 | 2~4週間 | 重要事項説明、売買契約 |
住宅ローン審査 | 2~4週間 | 事前審査・本審査 |
新築マンションの竣工・引渡し | 6~12ヶ月 | 建築中の物件はさらに長期化 |
旧居の決済・引渡し | 1~2ヶ月 | 売買契約から決済まで |
売り先行・買い先行の選択基準
(1) 資金状況による判断
売り先行と買い先行の選択は、資金状況によって決まります。
売り先行が適しているケース:
- 旧居の住宅ローン残債があり、売却代金で完済する必要がある
- 新居の頭金を旧居の売却代金で賄う
- 資金に余裕がなく、二重ローンを避けたい
買い先行が適しているケース:
- 旧居の住宅ローン残債がない、または自己資金で完済できる
- 新居の購入資金を旧居の売却代金に依存しない
- 引越しを1回で済ませたい(仮住まいを避けたい)
資金に余裕がなければ、売り先行が安全です。仮住まいが必要ですが、資金計画が明確になります。
(2) 仮住まいコストの試算
売り先行の場合、旧居売却から新築マンション竣工までの仮住まいが必要です。
仮住まいコスト:
- 賃貸住宅の家賃:月10~20万円(エリアによる)
- 敷金・礼金:家賃の2~3ヶ月分
- 引越し費用:旧居→仮住まい、仮住まい→新居の2回分(20~40万円)
- 家具・家電のレンタル費用(必要に応じて)
例:仮住まい期間6ヶ月、家賃15万円の場合
家賃:15万円 × 6ヶ月 = 90万円
敷金・礼金:15万円 × 3ヶ月 = 45万円
引越し費用:30万円
合計:165万円
仮住まいコストが高額になる場合、買い先行を検討します。
(3) それぞれのメリット・デメリット
売り先行のメリット:
- 資金計画が明確(売却代金が確定してから新居を購入)
- 二重ローンを避けられる
- 旧居の売却に集中できる(居住中でも売却活動可能)
売り先行のデメリット:
- 仮住まいが必要(引越し2回、コスト増)
- 仮住まい期間が長引くリスク(新築マンション竣工遅延)
買い先行のメリット:
- 引越し1回で済む(仮住まい不要)
- 新居を先に確保できる(希望物件を逃さない)
- 旧居を空室にして売却できる(内覧対応しやすい)
買い先行のデメリット:
- 二重ローン期間が発生する可能性
- 新築マンション竣工遅延と旧居売却遅延の二重リスク
- 資金に余裕が必要
買い替え資金計画とローン戦略
(1) 住み替えローンとダブルローン
買い替え時の資金調達方法として、住み替えローンとダブルローンがあります。
住み替えローン:
- 旧居の住宅ローン残債を新居のローンに上乗せして借りられる商品
- 金融庁の住宅ローンガイドによれば、金融機関によって取扱いが異なる
例:
旧居の売却価格:2,500万円
旧居のローン残債:2,800万円
オーバーローン:300万円
新居の購入価格:4,000万円
住み替えローン:4,000万円 + 300万円 = 4,300万円
ダブルローン:
- 旧居と新居の両方の住宅ローンを一時的に並行して返済する状態
- 買い先行で、旧居売却前に新居を購入する場合に発生
注意点:
- 住み替えローンは審査が厳しい(担保評価以上の借入のため)
- ダブルローン期間は返済負担が大きく、収入基準が高い
(2) つなぎ融資の活用
つなぎ融資は、旧居売却代金を新築マンション購入資金に充てる際、決済日のずれを補う短期融資です。
つなぎ融資が必要なケース:
- 新築マンション引渡し日(残代金決済)が旧居売却日より前の場合
- 旧居売却代金を新居の頭金に充てる予定だが、タイミングがずれた場合
つなぎ融資の流れ:
- 新築マンション引渡し日につなぎ融資を実行
- つなぎ融資で残代金を決済
- 旧居売却後、売却代金でつなぎ融資を一括返済
つなぎ融資の金利:
- 短期融資のため、住宅ローンより高め(年2~4%程度)
- 利息は日割り計算で、融資期間分のみ発生
例:つなぎ融資1,000万円、期間3ヶ月、金利3%の場合
利息 = 1,000万円 × 3% × 3ヶ月 ÷ 12ヶ月 = 7.5万円
(3) 旧居の住宅ローン残債処理
旧居の住宅ローン残債がある場合、売却代金で完済するか、住み替えローンで新居のローンに上乗せします。
売却代金で完済できる場合:
- 売却決済日に、売却代金で住宅ローンを一括返済
- 抵当権抹消登記を行い、所有権を買主に移転
売却代金で完済できない場合(オーバーローン):
- 自己資金で不足分を補う
- 住み替えローンで残債を新居のローンに上乗せ
オーバーローンの場合、住み替えローンの審査が厳しくなるため、自己資金を用意することが推奨されます。
新築マンション購入の流れ
(1) モデルルーム見学と申込
新築マンションは、モデルルームで間取り・設備・共用施設を確認します。
モデルルーム見学:
- 複数の新築マンションを比較(立地、価格、設備)
- 間取り図で部屋の広さ・配置を確認
- 管理費・修繕積立金の金額を確認
購入申込み:
- 希望住戸を決定し、購入申込書を提出
- 抽選または先着順で購入者を決定
- 申込金(10~20万円)を支払う(契約時に充当)
(2) 重要事項説明と売買契約
購入者が決定したら、国土交通省の宅地建物取引業法に基づき、重要事項説明を受けます。
重要事項説明の内容:
- 物件の権利関係(所有権、共有部分の持ち分)
- 法令制限(建築基準法、都市計画法など)
- 設備の仕様(エアコン、給湯器、床暖房など)
- 管理規約、管理費・修繕積立金の金額
売買契約:
- 契約書に署名・押印
- 手付金(物件価格の5~10%)を支払う
- 竣工予定日、引渡し予定日を確認
(3) 住宅ローン審査
売買契約後、住宅ローンの本審査を申し込みます。
審査の流れ:
- 事前審査(物件探し段階で実施推奨)
- 本審査(売買契約後、2~4週間)
- 金銭消費貸借契約(住宅ローン契約)
- 融資実行(引渡し日に実行)
審査基準:
- 年収、勤続年数、他の借入状況
- 物件の担保評価
- 健康状態(団体信用生命保険加入のため)
買い替えの場合、旧居のローン残債や住み替えローンの利用により、審査が厳しくなることがあります。
旧居売却と税務手続き
(1) 買換え特例の活用
国税庁の居住用財産の買換え特例によれば、旧居を売却して新居を購入する場合、譲渡所得税を繰り延べることができます。
買換え特例の適用要件:
- 居住期間が10年以上
- 売却価格が1億円以下
- 買換え先も居住用であること
- 売却年の前年1月1日から翌年12月31日までに買換え先を取得
税額の計算:
- 旧居の譲渡所得税は、買換え先を将来売却するまで繰り延べ
- 新居売却時に、旧居と新居の譲渡所得を合算して課税
注意点:
- 買換え特例と3,000万円特別控除は併用不可
- 譲渡益が3,000万円以下なら、3,000万円特別控除の方が有利
(2) 住宅ローン控除の適用
国税庁の住宅ローン控除ガイドによれば、新築マンションの購入で住宅ローン控除が適用されます。
控除額:
年末ローン残高 × 0.7% = 年間控除額(最大13年間)
新築マンションの借入限度額(2024年以降):
- 長期優良住宅・ZEH水準省エネ住宅:5,000万円(最大控除額455万円)
- 省エネ基準適合住宅:4,000万円(最大控除額364万円)
- その他の住宅:3,000万円(最大控除額273万円)
適用条件:
- 引渡し日から6ヶ月以内に入居
- 床面積50㎡以上(合計所得金額1,000万円以下なら40㎡以上)
- 住宅ローンの借入期間が10年以上
(3) 譲渡所得税の計算
旧居売却時には、譲渡所得税がかかります。
譲渡所得の計算式:
譲渡所得 = 売却価格 - (取得費 + 譲渡費用)
税率:
- 短期譲渡所得(所有期間5年以下):39.63%
- 長期譲渡所得(所有期間5年超):20.315%
3,000万円特別控除:
- 居住用財産の売却なら、譲渡所得から3,000万円を控除
- 買換え特例と併用不可
例:
売却価格:4,000万円
取得費:3,000万円
譲渡費用:150万円(仲介手数料など)
譲渡所得 = 4,000万円 - 3,000万円 - 150万円 = 850万円
3,000万円特別控除後 = 850万円 - 850万円 = 0円
→ 譲渡所得税はかからない
タイミング調整とトラブル対策
(1) 新築マンション竣工遅延対策
新築マンションの建築遅延は珍しくありません。天候不良や資材不足で竣工が遅れることがあります。
対策:
- 契約時に竣工予定日と遅延時の対応を確認
- 遅延時の違約金・損害賠償の条項を契約書に明記
- 売り先行の場合、仮住まい期間に余裕を持つ
- 買い先行の場合、旧居売却時期を竣工予定日より後に設定
契約書の記載例:
- 「竣工予定日:2025年3月31日。遅延の場合、売主は買主に1日あたり○○円の違約金を支払う」
(2) 売却と購入の決済日調整
買い替えでは、旧居売却の決済日と新居購入の決済日を調整します。
理想的なタイミング:
- 旧居売却の決済日を新居購入の決済日より前に設定
- 旧居の売却代金を新居の頭金または住宅ローン返済に充てる
調整方法:
- 旧居の売買契約時に、決済日を新居の引渡し予定日に合わせる
- 買主に決済日の調整を依頼(柔軟に対応してくれる買主を選ぶ)
決済日がずれる場合:
- つなぎ融資を利用して資金繰りを調整
- 仮住まい期間を延長
(3) 仮住まい期間の想定
売り先行の場合、仮住まい期間を事前に想定します。
仮住まい期間の目安:
- 新築マンション契約から竣工・引渡しまで:6~12ヶ月
- 竣工遅延のリスクを考慮し、+2~3ヶ月の余裕を持つ
仮住まい先の選択:
- 短期賃貸(マンスリーマンション、ウィークリーマンション)
- 一般賃貸(敷金・礼金なしの物件を探す)
- 実家に一時的に住む(家賃コスト削減)
仮住まい期間が長引くと、コストが増加するため、新築マンションの竣工予定日を契約時に必ず確認します。
まとめ
買い替えで新築マンションを購入する場合、売却開始から新居入居まで6~18ヶ月が目安です。売り先行は資金計画が明確で二重ローンを避けられますが、仮住まいが必要です。買い先行は引越し1回で済みますが、新築マンション竣工遅延と旧居売却遅延の二重リスクがあります。
資金調達では、住み替えローン、ダブルローン、つなぎ融資を活用します。旧居売却では、買換え特例または3,000万円特別控除を検討し、新居では住宅ローン控除を活用します。新築マンションは竣工遅延のリスクがあるため、契約時に遅延時の対応を確認し、余裕を持ったスケジュールを組むことが重要です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 買い替えで新築マンション購入、全体でどのくらい期間がかかる?
売却開始から新居入居まで6~18ヶ月が目安です。売り先行の場合、旧居の売却に3~6ヶ月、仮住まい期間3~12ヶ月(新築マンション竣工待ち)、新築マンション契約から竣工・引渡しに6~12ヶ月かかります。
買い先行の場合、購入と売却を並行して進めますが、新築マンションの竣工待ち期間があるため調整が複雑です。竣工遅延のリスクを考慮し、余裕を持ったスケジュールを組むことが重要です。
Q2. 新築マンションの竣工が遅れたらどうする?
建築遅延は珍しくありません。天候不良や資材不足で竣工が遅れることがあります。売り先行の場合は仮住まい期間が延長し、買い先行の場合は二重ローン期間が延長します。
対策として、契約時に竣工予定日と遅延時の対応(違約金・損害賠償)を契約書に明記します。余裕のあるスケジュール設定が重要で、仮住まい期間や二重ローン期間に+2~3ヶ月の余裕を持つことが推奨されます。
Q3. 買い替え時、売り先行と買い先行どちらが安全?
資金に余裕がなければ、売り先行が安全です。仮住まいが必要ですが、資金計画が明確になります。旧居の売却代金が確定してから新居を購入するため、二重ローンを避けられます。
買い先行は引越し1回で済むというメリットがありますが、新築マンション竣工遅延と旧居売却遅延の二重リスクがあります。資金に余裕があり、リスクを許容できる場合に適しています。
Q4. つなぎ融資はいつ利用する?
つなぎ融資は、旧居売却代金を新築マンション購入資金に充てる際、決済日のずれを補う短期融資です。新築マンション引渡し日(残代金決済)が旧居売却日より前の場合に利用します。
金利は住宅ローンより高め(年2~4%程度)で、利息は日割り計算です。例えば、つなぎ融資1,000万円、期間3ヶ月、金利3%の場合、利息は7.5万円程度です。決済日の調整を優先し、つなぎ融資は最終手段として考えることが推奨されます。