新築マンション購入の全体スケジュール
新築マンションの購入は、中古物件とは異なる独特の流れがあります。特に青田売り(竣工前販売)の場合、申込から入居まで6〜18ヶ月の長期間を要します。また、人気物件では抽選制度が採用されることも多く、購入までのプロセスを事前に理解しておくことが重要です。
本記事では、新築マンション購入の全体スケジュールから、モデルルーム見学、申込・抽選と契約の流れ、資金計画と住宅ローン、契約から引き渡しまでの流れ、税制優遇の活用まで、初めてマンションを購入する方に必要な情報を詳しく解説します。
この記事のポイント:
- 申込から入居まで6-18ヶ月(青田売りは契約後6-12ヶ月で引渡し)
- 人気物件は抽選制度で購入者を決定
- 青田売りは竣工前契約のため内覧会での確認が重要
- 住宅ローン控除は年末残高の0.7%を最大13年間控除可能
- すまい給付金などの税制優遇制度も活用できる
新築マンション購入の全体スケジュール
申込から入居まで(6-18ヶ月)
新築マンション購入の全体スケジュールは以下の通りです:
青田売りの場合:
- モデルルーム見学・物件選定:1〜3ヶ月
- 購入申込・抽選:1〜2週間
- 売買契約:抽選当選後1〜2週間
- 建築工程:契約後6〜12ヶ月
- 内覧会:引渡し1〜2ヶ月前
- 決済・引渡し:竣工後1〜2ヶ月
- 合計:9〜18ヶ月
竣工後販売の場合:
- モデルルーム見学・物件選定:1〜2ヶ月
- 購入申込・内覧:1〜2週間
- 売買契約:申込後1〜2週間
- 決済・引渡し:契約後1〜2ヶ月
- 合計:3〜6ヶ月
青田売りは竣工前販売のため、契約から引渡しまで時間がかかりますが、人気物件を確保できる・早期割引のメリットがあります。
青田売りと竣工後販売の違い
新築マンションの販売方式には、青田売りと竣工後販売の2種類があります:
青田売り:
- 建物が完成する前に販売開始
- メリット:人気物件を確保できる、早期割引がある場合も
- デメリット:完成イメージとの相違リスク、建築遅延で引渡し遅れの可能性
竣工後販売:
- 建物完成後に販売開始
- メリット:実物を見て購入できる、引渡しまで短期間
- デメリット:人気物件は売れ残りのみ、価格が青田売りより高い場合も
初めてマンションを購入する場合、実物を見て購入できる竣工後販売が安心ですが、人気エリアでは青田売りでないと希望の物件を確保できない場合もあります。
各工程の所要期間
新築マンション購入の各工程の所要期間は以下の通りです:
- モデルルーム見学: 1〜3ヶ月(複数物件を比較検討)
- 購入申込: 1〜2週間(申込金10〜100万円を支払い)
- 抽選: 1〜2週間(申込者多数の場合)
- 売買契約: 当選後1〜2週間(手付金は売買代金の5-10%)
- 建築工程: 6〜12ヶ月(青田売りの場合)
- 内覧会: 引渡し1〜2ヶ月前(完成後の確認)
- 住宅ローン本審査: 1〜2ヶ月
- 決済・引渡し: 契約後1〜2ヶ月(竣工後販売)、竣工後1〜2ヶ月(青田売り)
各工程で遅延が発生する可能性もあるため、余裕を持ったスケジュールを組むことが重要です。
モデルルーム見学と物件選定
モデルルーム見学のポイント
モデルルーム見学では、以下のポイントを確認します:
- 間取り・広さ: 家族構成に合った間取り、各部屋の広さ
- 設備仕様: キッチン、バス、トイレなどの設備のグレード
- 内装: フローリング、壁紙、建具などの仕様
- 収納: クローゼット、下駄箱などの収納スペース
- オプション: 標準仕様とオプション(有料)の違い
モデルルームは標準仕様よりグレードの高い設備を使用している場合があるため、標準仕様との違いを確認することが重要です。
立地・間取り・設備の確認
新築マンション選びで重要な3要素は立地・間取り・設備です:
立地:
- 駅からの距離(徒歩10分以内が理想)
- 周辺環境(商業施設、学校、病院へのアクセス)
- 治安・騒音・日当たり
間取り:
- 家族構成に合った部屋数(2LDK、3LDK、4LDKなど)
- リビングの広さ(15帖以上が理想)
- 収納スペース(各部屋にクローゼット)
設備:
- システムキッチン(食洗機、IHコンロなど)
- バス(追い焚き、浴室暖房乾燥機など)
- セキュリティ(オートロック、防犯カメラなど)
立地は変更できないため、最優先で検討すべき要素です。
管理計画と修繕積立金
新築マンション購入時には、以下の維持費も確認が必要です:
- 管理費: 月額1〜3万円(共用部分の清掃・管理費用)
- 修繕積立金: 月額5,000円〜2万円(将来の大規模修繕費用)
- 駐車場代: 月額5,000円〜3万円(地域により異なる)
新築時は修繕積立金が低めに設定されていることが多く、将来的に増額される可能性があります。長期修繕計画を確認し、将来の負担増を考慮することが重要です。
申込・抽選と契約の流れ
購入申込と抽選制度
人気物件では、申込者多数の場合に抽選で購入者を決める制度が採用されます:
購入申込:
- 申込金:10〜100万円(抽選に外れた場合は返金)
- 申込書:希望する住戸、支払方法などを記載
- 申込期間:通常1〜2週間
抽選:
- 申込者多数の場合、公平に購入者を決める
- 当選者のみ契約可能
- 外れても次順位として待機可能なケースあり
抽選倍率は物件により異なりますが、人気エリアでは10倍以上になることもあります。
重要事項説明と売買契約
抽選に当選すると、以下の流れで契約を締結します(国土交通省 不動産取引の流れと重要事項説明):
重要事項説明:
- 宅地建物取引士が契約前に物件や取引条件の説明を行う
- 建物の構造、設備、権利関係、ローン特約などを確認
- 所要時間:1〜2時間
売買契約:
- 重要事項説明の後、売買契約書に署名・押印
- 手付金:売買代金の5-10%を支払い
- 契約締結後、一定期間内は手付解除が可能(手付金放棄で解約)
重要事項説明は契約の最終確認の場です。不明点は必ず質問し、納得してから契約することが重要です。
手付金の支払い
売買契約時に支払う手付金は、売買代金の5-10%が一般的です:
例:売買代金4,000万円の場合
- 手付金:200〜400万円
手付金は売買代金の一部として充当されますが、契約後に買主都合で解約する場合は手付金を放棄することで解約できます(手付解除)。ただし、手付解除できる期間は契約書に定められており、通常は契約後1〜2ヶ月程度です。
資金計画と住宅ローン
住宅ローンの基本
住宅ローンは、住宅購入資金を金融機関から借りる融資です(金融庁 住宅ローンの基本)。長期・低金利が特徴で、最長35年、金利0.3〜1.5%程度(2025年1月時点)で借入が可能です。
住宅ローンの種類:
- 変動金利: 金利が市場金利に応じて変動。低金利だが金利上昇リスクあり
- 固定金利: 一定期間または全期間、金利が固定。金利上昇リスクを回避できる
- フラット35: 全期間固定金利の住宅ローン(住宅金融支援機構と民間金融機関が提携)
金利タイプの選択は、将来の金利動向や返済計画に応じて検討します。
フラット35の活用
フラット35は、全期間固定金利の住宅ローンです(住宅金融支援機構 フラット35の概要)。
特徴:
- 全期間固定金利(金利上昇リスクなし)
- 保証料不要
- 繰上返済手数料不要
- 技術基準(耐震性、省エネ性など)を満たす住宅が対象
金利:
- 2025年1月時点:1.8〜2.0%程度(融資率、返済期間により異なる)
変動金利より金利は高いですが、金利上昇リスクを回避できるため、長期的な返済計画を重視する場合に適しています。
事前審査と本審査
住宅ローンの審査は、事前審査と本審査の2段階で行われます:
事前審査:
- 時期:売買契約前(物件選定段階)
- 所要期間:3〜7日
- 審査内容:年収、勤務先、借入状況などの簡易審査
- 目的:借入可能額の目安を確認
本審査:
- 時期:売買契約後
- 所要期間:1〜2週間
- 審査内容:詳細な信用調査、物件の担保評価
- 目的:融資実行の最終判断
本審査に通らないと融資が実行されないため、売買契約書には「ローン特約」を入れ、本審査に通らない場合は無条件で契約を解除できるようにします。
契約から引き渡しまでの流れ
建築工程の確認
青田売りの場合、建築工程を定期的に確認できます:
- 工事現場の見学会: 販売会社が定期的に開催
- 工程表の確認: 契約時に工程表を受け取り、進捗を確認
- 遅延の連絡: 建築遅延が発生した場合、販売会社から連絡あり
建築遅延が発生すると、引渡し日が延期され、仮住まい費用が発生する可能性もあります。工程表を確認し、余裕を持ったスケジュールを組むことが重要です。
内覧会での確認事項
内覧会は、引渡し前に完成した住戸を確認する機会です。以下のポイントを確認します:
- 間取り・広さ: 契約内容と相違がないか
- 設備: キッチン、バス、トイレなどが正常に動作するか
- 内装: フローリング、壁紙、建具に傷や汚れがないか
- 建具: ドア、窓、クローゼットの開閉がスムーズか
- 水回り: 給水、排水、換気が正常に機能するか
不具合があれば、引渡しまでに修正を依頼します。内覧会では、第三者の建築士による同行サービスを利用することも可能です(有料、5〜10万円程度)。
決済・引き渡し手続き
決済・引き渡しは、以下の流れで行われます(法務局 不動産登記の手続き):
- 残代金の支払い: 買主が売主へ残代金を支払い(住宅ローン実行)
- 所有権保存登記: 新築建物で初めて行う登記(建物の所有者を公示)
- 抵当権設定登記: 住宅ローンを利用する場合、金融機関の抵当権を設定
- 鍵の引渡し: 売主が買主へ鍵を引き渡し
- 入居: 引渡し後、自由に入居可能
登記手続きは司法書士が代行し、通常1〜2週間で完了します。
税制優遇の活用と入居後手続き
住宅ローン控除の申請
住宅ローン控除は、年末のローン残高の0.7%を所得税・住民税から最大13年間控除できる制度です(国税庁 住宅ローン控除の適用要件)。
適用要件:
- 床面積50㎡以上(2024年以降、合計所得金額1,000万円以下の場合は40㎡以上)
- 借入期間10年以上
- 引渡し日から6ヶ月以内に入居
控除額:
- 年末ローン残高 × 0.7%(最大13年間)
- 新築マンション(省エネ基準適合):最大455万円(借入限度額4,500万円 × 0.7% × 13年)
申請方法:
- 入居翌年に確定申告で申請
- 2年目以降は年末調整で申請可能
すまい給付金の活用
すまい給付金は、消費税率引上げに伴う住宅取得支援制度です(国土交通省 すまい給付金)。
給付額:
- 収入額に応じて最大50万円
- 2021年12月までの入居が対象(延長の可能性あり)
申請方法:
- 引渡し後に申請書を提出
- 給付金事務局に郵送またはオンライン申請
制度の詳細や申請期限は変更される可能性があるため、最新情報を確認することが重要です。
所有権保存登記
所有権保存登記は、新築建物で初めて行う登記です。建物の所有者を公示し、登記簿に記録します。
登録免許税:
- 固定資産税評価額 × 0.4%(本則)
- 軽減措置:0.15%(2026年3月31日まで、一定の要件を満たす住宅)
申請方法:
- 決済日に司法書士が代行
- 通常1〜2週間で登記完了
登記完了後、登記識別情報(12桁の英数字)が発行されます。これは不動産の権利証に相当する重要な情報なので、厳重に保管します。
まとめ
新築マンション購入は、申込から入居まで6〜18ヶ月の長期間を要します。青田売りは契約後6〜12ヶ月で引渡し、竣工後販売は契約後1〜2ヶ月で引渡しとなります。人気物件は抽選制度で購入者を決定するため、当選しないと購入できません。
青田売りは竣工前契約のため、完成イメージとの相違リスクがありますが、内覧会での確認が重要です。建築遅延で引渡し遅れの可能性もあるため、余裕を持ったスケジュールを組むことが重要です。
税制優遇では、住宅ローン控除が年末ローン残高の0.7%を最大13年間控除可能です。入居翌年に確定申告で申請し、2年目以降は年末調整で申請できます。すまい給付金などの税制優遇制度も活用し、総合的な資金計画を立てることをおすすめします。