相続購入マンションの流れ・スケジュール|遺産分割から引渡しまで完全..

公開日: 2025/10/18

相続財産でマンションを購入する流れとスケジュール

相続で取得した財産を使ってマンションを購入する場合、通常の購入手続きに加えて、遺産分割協議や相続税申告といった相続特有の手続きが必要になります。相続税の申告期限(10ヶ月)を意識したスケジュール管理が重要です。

本記事で分かること

  • 相続から遺産分割までの期間と手続き
  • 遺産分割後のマンション購入スケジュール
  • 相続財産を頭金とする住宅ローンの流れ
  • 相続税申告期限との調整方法
  • 契約から引渡しまでの実務手順

1. 相続マンション取得の全体スケジュール

(1) 相続開始から遺産分割まで(3~10ヶ月)

相続財産でマンションを購入する場合、以下のような流れになります。

ステップ 内容 所要期間
1. 相続開始 被相続人の死亡 -
2. 遺産分割協議 相続人全員で財産分配を決定 3~10ヶ月
3. 相続財産の現金化 不動産売却等で現金化 必要に応じて
4. 物件探し マンション検索・内覧 1~3ヶ月
5. 住宅ローン事前審査 借入可能額の確認 3~7日
6. 売買契約 契約締結、手付金支払い 1日
7. 住宅ローン本申込 正式審査、承認 2~4週間
8. 決済・引渡し 残代金支払い、鍵受領 1日

相続開始からマンション購入完了まで、6ヶ月~1年以上かかる場合があります。

(2) マンション購入手続き(2~4ヶ月)

遺産分割協議が完了した後のマンション購入手続きは、通常の購入と同様です(国土交通省)。

購入手続きの期間

  • 物件探し・内覧: 1~3ヶ月
  • 売買契約: 1日
  • 住宅ローン審査: 2~4週間
  • 決済・引渡し: 契約から1~2ヶ月後

相続財産を頭金とする場合、遺産分割協議書や相続財産の証明書類が必要になるため、通常より書類準備に時間がかかります。

(3) 相続税申告期限との調整

相続税の申告期限は、相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内です(国税庁)。

スケジュール例

  • 2024年5月1日: 相続発生
  • 2024年8月1日: 遺産分割協議完了(3ヶ月)
  • 2024年12月1日: マンション購入完了(4ヶ月)
  • 2025年3月1日: 相続税申告期限(10ヶ月)

マンション購入を相続税申告期限前に完了させるには、遺産分割協議を早期に終わらせることが重要です。

2. 遺産分割協議と購入準備

(1) 遺産分割協議の進め方

遺産分割協議とは、相続人全員で遺産の分け方を決める話し合いです。

協議の流れ

  1. 相続人の確定(戸籍謄本で確認)
  2. 相続財産の調査(不動産、預貯金、有価証券など)
  3. 相続人全員での話し合い
  4. 遺産分割協議書の作成(全員の署名・実印押印)

重要ポイント

  • 相続人全員の合意が必要
  • 期限は法的に定められていないが、相続税申告期限(10ヶ月)までの完了が望ましい
  • 協議がまとまらない場合は、家庭裁判所の調停・審判へ

遺産分割協議書は、住宅ローン審査や相続税申告に必要となるため、早めに作成しましょう。

(2) 相続財産の現金化

相続財産に不動産が含まれる場合、マンション購入の頭金として使うには現金化が必要です。

現金化の方法

  • 相続した不動産を売却(売却期間: 4~8ヶ月)
  • 代償分割で他の相続人から代償金を受け取る
  • 預貯金など既に現金化されている財産を利用

不動産の売却には時間がかかるため、マンション購入のスケジュールを考慮して早めに着手することが重要です。

(3) 代償分割の活用

代償分割とは、特定の相続人が不動産などを相続し、他の相続人に代償金を支払う遺産分割方法です。

活用例

  • Aさん: 実家の不動産を相続
  • Bさん: 代償金2000万円を受け取る
  • Bさんは代償金をマンション購入の頭金に充当

代償分割を利用すれば、不動産を売却せずに現金を得られますが、遺産分割協議での全員の合意が前提となります。

3. マンション購入の基本的な流れ

(1) 物件探しと内覧

遺産分割協議が完了したら、マンション探しを開始します。

物件探しの方法

  • 不動産ポータルサイトで検索
  • 不動産会社に相談
  • 希望条件を整理(立地、価格、広さ、築年数)

内覧時のチェックポイント

  • 日当たり、風通し
  • 室内の状態(床、壁、水回り)
  • 共用部分の管理状態
  • 管理費・修繕積立金の額

複数の物件を比較検討し、予算と希望条件に合う物件を選びましょう。

(2) 購入申込と価格交渉

購入したい物件が決まったら、購入申込書を提出します。

  • 購入希望価格を記載(価格交渉可能)
  • 購入意思の表明(法的拘束力はない)
  • 住宅ローン利用の有無を明記

中古マンションの場合、価格交渉の余地があることが多いです。希望価格を提示し、売主と交渉しましょう。

(3) 各段階のポイント

マンション購入の各段階で注意すべきポイントを確認しましょう。

物件選びのポイント

  • 相続財産の額に応じた予算設定
  • 住宅ローン利用の有無を検討
  • 管理組合の財政状態を確認

契約前のポイント

  • 重要事項説明を十分に理解
  • 契約解除条項(ローン特約など)を確認
  • 手付金の準備(売買代金の5~10%)

4. 住宅ローン手続きと審査

(1) 事前審査(仮審査)の準備

住宅ローンを利用する場合、事前審査を受けます。

事前審査の目的

  • 借入可能額の確認
  • 購入予算の目安を把握
  • 売主への購入意思の表明

所要期間

  • 3~7日程度

事前審査に通過しても、本審査で否認される可能性があるため、複数の金融機関に申し込むことも検討しましょう。

(2) 相続財産を頭金とする場合の書類

相続財産をマンション購入の頭金とする場合、以下の書類が必要です。

必要書類

  • 遺産分割協議書(相続人全員の署名・実印押印)
  • 相続財産の証明書類(預金通帳の写し、不動産売却の契約書など)
  • 戸籍謄本(相続関係を証明)
  • 本人確認書類、源泉徴収票、健康保険証

相続財産の現金化が完了していない場合、審査が保留されることがあります。早めに現金化を進めましょう。

(3) 審査期間と承認条件

住宅ローンの本審査は、売買契約後に行います。

本審査の期間

  • 2~4週間程度

審査のポイント

  • 年収と返済負担率(年収の35%以内が目安)
  • 勤続年数(3年以上が望ましい)
  • 信用情報(過去の延滞履歴など)
  • 物件の担保価値
  • 相続財産の現金化状況

相続財産を頭金とする場合、金融機関によって審査基準が異なるため、事前に相談することをおすすめします。

5. 相続税との関係と注意点

(1) 相続税申告期限(10ヶ月)

相続税の申告期限は、相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内です(国税庁)。

申告が必要な場合

  • 相続財産の総額が基礎控除額を超える
  • 基礎控除額 = 3000万円 + 600万円 × 法定相続人数

例: 法定相続人が3人の場合

  • 基礎控除額 = 3000万円 + 600万円 × 3人 = 4800万円
  • 相続財産が4800万円を超える場合、申告が必要

マンション購入を申告期限前に完了させるには、遺産分割協議を早期に終わらせ、購入手続きを計画的に進める必要があります。

(2) 相続財産の評価方法

相続税の計算では、相続財産を評価する必要があります。

主な財産の評価方法

  • 不動産: 路線価方式または倍率方式
  • 預貯金: 残高
  • 有価証券: 相続開始日の時価

マンション購入後、相続財産の総額が基礎控除額を超える場合は、相続税申告が必要です。税理士に相談して正確な評価を行いましょう。

(3) 納付資金の確保

相続税は、原則として現金一括納付です。

納付資金の確保方法

  • 相続財産の一部を現金で残しておく
  • マンション購入額を調整し、納付資金を確保
  • 延納・物納制度の利用(要件あり)

マンション購入で相続財産をすべて使い切ると、相続税の納付ができなくなる可能性があります。納付資金は必ず確保しましょう。

6. 契約から引渡しまでの実務

(1) 重要事項説明の時期と内容

売買契約の前に、重要事項説明を受けます(国土交通省)。

重要事項説明の内容

  • 物件の権利関係(所有権、抵当権など)
  • 法的制限(用途地域、建ぺい率など)
  • 取引条件(代金、支払方法、引渡時期)
  • 契約解除条項(ローン特約、瑕疵担保責任)

宅地建物取引士が説明を行い、所要時間は1~2時間程度です。不明点があれば必ず質問しましょう。

(2) 決済日の流れと所有権移転登記

住宅ローンが承認されたら、決済・引渡しを行います。

決済日の流れ

  1. 金融機関で住宅ローンの実行
  2. 売主への残代金支払い
  3. 所有権移転登記(司法書士が代行)
  4. 鍵の受領

当日持参するもの

  • 実印、印鑑証明書
  • 住民票
  • 本人確認書類
  • 残代金(住宅ローンで充当する場合は不要)
  • 登記費用、仲介手数料

決済が完了すると、マンションの所有者となります。

(3) 引渡し後の手続き

引渡し後は、以下の手続きを行います。

引渡し後の手続き

  • 管理組合への加入手続き
  • 管理費・修繕積立金の支払い設定
  • 火災保険・地震保険の加入
  • 住民票の異動(転居する場合)
  • 住宅ローン控除の確定申告(翌年)

管理費・修繕積立金は毎月支払う必要があるため、引落口座の設定を忘れずに行いましょう。

まとめ:相続財産でのマンション購入は計画的に進めよう

相続財産でマンションを購入する場合、遺産分割協議、相続税申告、マンション購入手続きを同時並行で進める必要があります。相続税の申告期限(10ヶ月)を意識したスケジュール管理が重要です。

重要なポイント

  • 遺産分割協議を早期に完了させる(相続税申告期限の10ヶ月までが望ましい)
  • 相続財産の現金化を計画的に進める
  • 住宅ローン審査では遺産分割協議書が必要
  • 相続税の納付資金を必ず確保する
  • マンション購入は遺産分割完了後2~4ヶ月で完了が目安

相続に関する手続きは複雑なため、弁護士、税理士、不動産会社に相談しながら、計画的に進めることをおすすめします。

よくある質問

Q1遺産分割協議はいつまでに完了すべきですか?

A1法的期限はありませんが、相続税申告期限(10ヶ月)までの完了が望ましいです。遺産分割協議書は住宅ローン審査や相続税申告に必要です。協議が長期化すると購入スケジュールに影響します。

Q2相続財産を頭金にする場合の住宅ローン審査は?

A2遺産分割協議書、相続財産の証明書類が必要です。相続財産の現金化完了が審査条件となることが多いため、事前審査段階で金融機関に相談することをおすすめします。

Q3相続税申告とマンション購入のタイミング調整は?

A3相続税申告期限(10ヶ月)を意識したスケジュール管理が必要です。遺産分割完了後3~4ヶ月でマンション購入を完了させるのが目安です。相続税の納付資金は別途確保しましょう。

Q4代償分割を利用したマンション購入は可能ですか?

A4可能です。特定の相続人が不動産を相続し、他の相続人に代償金を支払う方法です。代償金をマンション購入に充てられますが、遺産分割協議での全員の合意が前提となります。

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