買い替えでマンション購入する流れ・スケジュール:成功する5つのステップ
買い替えでマンションを購入する場合、通常の住宅購入とは異なり、売却と購入を同時進行で進める必要があります。売り先行と買い先行の選択、二重ローンのリスク、引き渡しタイミングの調整、仮住まいの要否など、買い替え特有の課題に対応しながら、スムーズに新居を手に入れるためのスケジュール管理が重要です。
本記事では、買い替えでマンションを購入する際の流れとスケジュールを、公的機関の情報を基に実務的に解説します。
この記事で分かること:
- 買い替え購入の全体像と所要期間
- 売り先行・買い先行の選択基準
- 住宅ローン審査と買い替えローンの活用
- 売却と購入の決済タイミング調整
- 税制優遇と諸費用の試算
1. 買い替え購入マンションの流れ・スケジュール全体像
(1) 買い替え購入の特徴
買い替えでマンションを購入する場合、現在住んでいる物件の売却と新しい物件の購入を並行して進めます。通常の住宅購入と異なる主な特徴は以下の通りです:
- 売却と購入のタイミング調整が必要
- 売却代金を購入資金に充当する場合、資金計画が複雑
- 住宅ローンの残債がある場合、新規借入との関係を整理する必要
- 引き渡しのタイミングによっては仮住まいが必要になる場合も
(2) 売却と購入の同時進行
買い替えでは、売却活動と並行して新居探しを進めるのが一般的です。大きく分けて以下の2つのパターンがあります:
売り先行:現在の物件を先に売却してから新居を購入
- メリット:売却価格が確定し資金計画が立てやすい
- デメリット:売却後、購入までの間に仮住まいが必要になる場合がある
買い先行:新居を先に購入してから現在の物件を売却
- メリット:理想の物件を確保でき、引越しが1回で済む
- デメリット:一時的に二重ローンになる可能性がある、つなぎ融資の金利負担
どちらを選ぶかは、市場環境、資金状況、希望する物件の見つかりやすさなどを総合的に判断します。
(3) 所要期間の目安
買い替えの一般的なスケジュールは以下の通りです:
段階 | 期間 | 内容 |
---|---|---|
売却活動開始~売却契約 | 1-3ヶ月 | 査定、媒介契約、内覧対応、価格交渉 |
購入物件探し~購入契約 | 1-3ヶ月 | 物件見学、ローン審査、契約締結 |
売却決済・引き渡し | 契約後1-2ヶ月 | 残代金決済、所有権移転 |
購入決済・引き渡し | 契約後1-2ヶ月 | 残代金決済、所有権移転、入居 |
合計:3-6ヶ月が目安ですが、売却物件の売れ行きや購入物件の探索状況により変動します。
2. 物件探しと買い替えローンの検討
(1) 売却価格と購入予算のバランス
買い替えでは、現在の物件の売却価格が購入予算に大きく影響します。売却価格の見積もりを早期に行い、購入可能な物件の価格帯を把握することが重要です。
不動産会社に査定を依頼する際、以下の点を確認します:
- 市場相場(周辺の成約事例)
- 住宅ローン残債と売却後の手取り額
- 売却にかかる諸費用(仲介手数料、登記費用、譲渡税など)
売却価格が確定していない段階では、複数のシナリオ(楽観的・標準的・悲観的)で資金計画を立てることが推奨されます。
(2) 買い替えローンの活用
買い替えローンとは、現在の住宅ローン残債と新居の購入資金を一本化したローンです。売却価格が残債を下回る場合(オーバーローン)でも、買い替えローンを利用することで新居を購入できます。
買い替えローンの特徴:
- 残債と購入資金を合算して借入可能
- 新居の担保価値を超える融資も可能(ただし審査は厳しい)
- 売却と購入の決済を同日に行う必要がある場合が多い
買い替えローンは、通常の住宅ローンより審査が厳しい傾向があります。複数の金融機関で仮審査を受け、条件を比較することが重要です。
(3) 物件探しのタイミング
売却活動と並行して物件探しを開始します。売却契約が成立する前に購入契約を結ぶ場合、「買い替え特約」を付けることを検討します。
買い替え特約とは、一定期日までに売却が成立しなかった場合、購入契約を白紙解除できる特約です。ただし、人気物件では売主が買い替え特約を受け入れない場合もあるため、交渉が必要です。
3. 住宅ローン審査(買い替え特有の注意点)
(1) 残債と新規借入の審査
買い替えの住宅ローン審査では、現在の住宅ローン残債と新規借入額を合算して審査されます。金融機関は、売却により残債が完済されることを前提に審査を行いますが、売却価格が確定していない段階では、査定額を基に審査します。
審査のポイント:
- 年収に対する返済負担率(一般的に35%以内)
- 売却価格の見込み額(複数の査定書提出を求められる場合も)
- 勤続年数、勤務先の安定性
- 他の借入(カードローン等)の有無
買い替えローンは通常より審査が厳しいため、事前に複数の金融機関で仮審査を受けることが推奨されます。
(2) つなぎ融資の検討
買い先行で進める場合、売却代金が入るまでの期間をつなぐために「つなぎ融資」を利用できます。つなぎ融資とは、購入時に必要な資金を一時的に借り入れ、売却代金で一括返済する短期融資です。
つなぎ融資の特徴:
- 期間:通常6ヶ月-1年程度
- 金利:住宅ローンより高い(年2-4%程度)
- 返済:売却代金で一括返済
つなぎ融資の金利負担は少なくないため、売却期間を短縮する努力が重要です。
(3) ダブルローンのリスク
買い先行で進める場合、売却が長引くと一時的に2つの住宅ローンを抱える「ダブルローン」状態になります。ダブルローン期間中は、2つのローンの返済と新居の住居費を同時に負担する必要があります。
リスク回避策:
- 売却活動を早期に開始し、購入前に売却契約を成立させる
- 売却期間を短縮するため、適正価格で売り出す
- つなぎ融資を活用し、ダブルローン期間を最小化
ダブルローンのリスクを正確に理解し、資金計画に織り込むことが重要です。
4. 売買契約と売却物件との同時進行
(1) 購入契約のタイミング
買い替えでは、売却契約と購入契約のタイミング調整が重要です。理想的なパターンは以下の通りです:
パターンA(売り先行):
- 売却契約締結
- 購入物件探し
- 購入契約締結
- 売却決済・引き渡し
- 購入決済・引き渡し
パターンB(買い先行):
- 購入契約締結(買い替え特約付き)
- 売却活動強化
- 売却契約締結
- 売却決済・引き渡し
- 購入決済・引き渡し
どちらのパターンでも、売却と購入の決済日を近接させることで、資金移動をスムーズに行えます。
(2) 売却契約との調整
購入契約を先に締結する場合、売却の見込み時期を考慮して購入物件の引き渡し日を設定します。売却が遅れると、つなぎ融資やダブルローンの負担が増えるため、余裕を持ったスケジュールを組むことが推奨されます。
売却契約が成立したら、速やかに金融機関に連絡し、決済日の調整を依頼します。
(3) 住宅ローン特約の活用
購入契約には、住宅ローン特約(融資利用特約)を付けることが一般的です。住宅ローン特約とは、住宅ローンの審査が通らなかった場合、契約を白紙解除できる特約です。
買い替えの場合、売却代金を購入資金に充当する予定であることを契約書に明記し、売却が成立しない場合のリスクを軽減することが重要です。
5. 決済・引き渡しとタイミング調整
(1) 売却と購入の決済順序
買い替えの決済は、通常「売却→購入」の順で行います。売却代金を受け取ってから購入代金を支払うことで、資金移動がスムーズになります。
同日決済の流れ例:
- 午前:売却物件の決済(残代金受領、所有権移転、鍵引き渡し)
- 午後:購入物件の決済(残代金支払い、所有権移転、鍵受取り)
同日決済は、司法書士、金融機関、不動産会社との綿密な調整が必要です。時間がタイトになるため、余裕を持って準備することが重要です。
(2) 引越しのタイミング
売却物件の引き渡し日と購入物件の引き渡し日が同日の場合、引越しを1日で完了する必要があります。引越し業者と事前に相談し、スムーズな引越しスケジュールを組むことが推奨されます。
引き渡し日がずれる場合、以下の対応が必要です:
- 売却先行の場合:仮住まい(賃貸マンション、ウィークリーマンション、実家等)を確保
- 買い先行の場合:新居への引越し後、売却物件の引き渡しまで維持費(管理費、修繕積立金、固定資産税等)を負担
(3) 仮住まいの必要性
売り先行で進める場合、売却物件の引き渡し後、購入物件の引き渡しまでの間に仮住まいが必要になる場合があります。仮住まい期間を最小化するには、以下の対応が推奨されます:
- 売却契約時に引き渡し日を購入予定日に近づける交渉
- 購入契約時に引き渡し日を早める交渉
- 仮住まい期間中の荷物保管(トランクルーム等)
仮住まいの費用(賃料、引越し代2回分、家具家電レンタル等)は意外と高額になるため、事前に見積もりを取り、資金計画に組み込むことが重要です。
6. 買い替え時の税制優遇と総費用
(1) 買換え特例の活用
買い替え時には、一定の条件を満たすことで税制優遇を受けられます。代表的なものに「特定居住用財産の買換え特例」があります。
この特例は、売却価格より高い物件に買い替える場合、譲渡益への課税を将来に繰り延べる制度です。ただし、適用には細かい要件(所有期間10年超、居住期間10年以上等)があり、専門家への相談が推奨されます。
(2) 譲渡損失の損益通算
買い替えで売却価格が購入価格(取得費+譲渡費用)を下回る場合、譲渡損失が発生します。一定の条件を満たすと、この譲渡損失を給与所得等と損益通算し、所得税の還付を受けられます。
「居住用財産の買換えに係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」(国税庁)を適用することで、最大4年間の所得税・住民税軽減が可能です。
(3) 諸費用の総額試算
買い替えでは、売却と購入の両方で諸費用が発生します。主な費用は以下の通りです:
売却時の諸費用:
- 仲介手数料(売却価格の3%+6万円+消費税)
- 登記費用(抵当権抹消等)
- 譲渡税(譲渡益が出た場合)
購入時の諸費用:
- 仲介手数料(購入価格の3%+6万円+消費税)
- 登記費用(所有権移転、抵当権設定等)
- 住宅ローン関連費用(融資手数料、保証料等)
- 不動産取得税、固定資産税日割り清算
その他:
- 引越し代
- 仮住まい費用(該当する場合)
- 家具家電購入費
諸費用は購入価格の5-10%程度が目安です。事前に詳細な見積もりを取り、資金計画に組み込むことが重要です。
まとめ:買い替えでマンション購入する際のスケジュール管理ポイント
買い替えでマンションを購入する際、売却と購入を同時進行で進めるスケジュール管理が成功の鍵です。
重要ポイント:
- 売り先行・買い先行の選択は市場環境と資金状況で判断
- 買い替えローンやつなぎ融資の活用で資金繋ぎをスムーズに
- 売却と購入の決済を近接させ、資金移動を効率化
- 仮住まい期間を最小化し、諸費用を抑える
- 税制優遇(買換え特例、譲渡損失の損益通算)を活用
買い替えは通常の住宅購入より複雑ですが、不動産会社、金融機関、税理士などの専門家と連携し、綿密なスケジュール管理を行うことで、スムーズに新居を手に入れることができます。
FAQ:買い替えでマンション購入する流れ・スケジュールに関するよくある質問
Q1. 買い替えでマンション購入する場合、売却と購入どちらを先にすべきですか?
売り先行は資金計画が立てやすく、二重ローンのリスクがありませんが、仮住まいが必要になる場合があります。買い先行は理想の物件を確保でき、引越しが1回で済みますが、つなぎ融資やダブルローンの金利負担が発生します。市場環境(売却しやすさ)と希望条件(物件の見つかりやすさ)を考慮し、専門家と相談して選択することが推奨されます。
Q2. 買い替えローンの審査は通常より厳しいですか?
買い替えローンは、現在の住宅ローン残債と新規借入を合算して審査するため、通常の住宅ローンより審査が厳しい傾向があります。売却価格が確定していない段階では、査定額を基に審査が行われます。複数の金融機関で仮審査を受け、条件を比較することが重要です。年収に対する返済負担率が35%以内であることが一般的な目安です。
Q3. 買い替えで購入するマンションの決済と、売却するマンションの決済は同日にできますか?
同日決済は可能ですが、時間調整が重要です。午前中に売却物件の決済を行い、売却代金を受領してから、午後に購入物件の決済を行うのが一般的なパターンです。司法書士、金融機関、不動産会社との事前調整が必要で、スケジュールがタイトになるため、余裕を持って準備することが推奨されます。
Q4. 買い替え購入にかかる期間はどのくらいですか?
売却活動開始から購入完了まで3-6ヶ月が一般的な目安です。売却物件の売れ行き(市場環境、価格設定、物件の魅力等)や購入物件の探索状況(希望条件、市場在庫等)により変動します。余裕を持ったスケジュールを組み、焦らず適切な判断を行うことが成功の鍵です。