相続購入戸建ての流れ・スケジュール|7~18ヶ月完全ガイド

公開日: 2025/10/14

相続資金で戸建て購入:スケジュールを理解しよう

相続により得た資金で戸建てを購入する場合、通常の購入とは異なる準備期間が必要です。相続手続きの完了、遺産分割協議、相続税の納税など、相続特有のプロセスがスケジュールに影響します。本記事では、相続発生から購入完了までの全体の流れ、各フェーズの所要期間、相続特有のタイミング調整を解説します。

この記事でわかること

  • 相続発生から購入完了までの全体スケジュール(7~18ヶ月)
  • 相続手続き・遺産分割協議・相続税申告の流れ
  • 購入準備・物件探し・ローン審査・引渡しの各フェーズ
  • 相続資金の確定と購入タイミングの調整
  • 現金購入とローン併用の違い

1. 相続資金で戸建て購入するスケジュール|全体の流れ

(1) 相続発生から購入完了までの期間(7~18ヶ月)

相続資金で戸建てを購入する場合、相続発生から引渡しまで7~18ヶ月程度が目安です。相続手続きに時間がかかるため、通常の購入よりも長期間を要します。

全体スケジュールの目安

フェーズ 期間 主な内容
相続手続きと資金確定 3~10ヶ月 財産調査、遺産分割協議、相続税申告
購入準備期間 1~2ヶ月 資金計画、事前審査、希望条件整理
物件探しと契約 2~3ヶ月 物件探し、内見、売買契約
住宅ローン審査と契約 1~2ヶ月 本審査、金銭消費貸借契約
引渡しと入居 1ヶ月 残金決済、所有権移転登記、入居
合計 7~18ヶ月 -

遺産分割協議がスムーズに進めば7~8ヶ月で完了しますが、協議が難航する場合は18ヶ月以上かかることもあります。

(2) 各フェーズの所要期間

各フェーズの所要期間は、以下の要因により変動します。

所要期間に影響する要因

  • 遺産分割協議の状況:相続人間の合意形成に時間がかかる場合あり
  • 相続財産の種類:不動産・預貯金・有価証券など多様な場合、評価に時間がかかる
  • 相続税の納税:納税資金の確保が購入資金に影響
  • 住宅ローンの有無:現金購入なら審査期間が不要

相続手続きが完了し、資金が確定してから購入活動を始めるのが安全です。

(3) 相続特有のタイミング調整

相続資金で購入する場合、以下のタイミング調整が重要です。

タイミング調整のポイント

  1. 相続税申告期限:相続開始から10ヶ月以内に申告・納税
  2. 遺産分割協議の完了:資金確定前の購入はリスクが高い
  3. 購入資金の確保:相続税納税後の残額で購入予算を決定
  4. 住宅ローン併用の有無:現金購入かローン併用かで審査期間が変動

相続税の納税資金を確保した上で、購入資金を決定することが重要です。

2. 相続手続きと資金確定(3~10ヶ月)

(1) 相続財産の調査と評価(1~2ヶ月)

相続が発生したら、まず相続財産の全容を把握します。

相続財産の調査内容

財産の種類 調査方法
不動産 登記簿謄本、固定資産税評価証明書で確認
預貯金 金融機関に残高証明書を請求
有価証券 証券会社に残高証明書を請求
債務 ローン残高、未払い税金などを確認

相続財産の評価額を確定し、遺産分割協議の基礎資料とします。不動産は相続税評価額(路線価方式または倍率方式)で評価します。

(2) 遺産分割協議と合意(1~6ヶ月)

相続人全員で遺産の分け方を話し合います(国税庁「相続税の申告と納税」)。

遺産分割協議の流れ

  1. 相続人の確定:戸籍謄本で相続人を確定
  2. 協議の開始:相続人全員で財産の分け方を話し合い
  3. 合意形成:各相続人の取得財産を決定
  4. 遺産分割協議書の作成:合意内容を書面化、全員が署名・押印

協議が難航するケース

  • 相続人が多数いる場合
  • 不動産など分割しにくい財産がある場合
  • 相続人間で意見が対立する場合

協議が難航すると、調停・審判に発展し、さらに時間がかかります。購入資金を相続財産から充当する場合、協議の完了が購入スケジュールの前提となります。

(3) 相続税申告と納税(10ヶ月以内)

相続開始から10ヶ月以内に、相続税の申告と納税を行います。

相続税申告のスケジュール

時期 内容
相続開始~3ヶ月 財産調査、相続人確定
3~6ヶ月 遺産分割協議、財産評価
6~10ヶ月 相続税申告書作成、納税準備
10ヶ月以内 相続税申告・納税

相続税の納税資金を確保した上で、残額を購入資金に充当します。納税資金が不足する場合、相続不動産を売却して納税することもあります。

3. 購入準備期間(1~2ヶ月)

(1) 資金計画の確定

相続手続きが完了したら、購入資金の計画を立てます。

資金計画の立て方

項目 内容
相続財産の総額 遺産分割協議で確定した取得額
相続税の納税額 納税後の残額を計算
購入予算 相続資金+住宅ローン(併用の場合)
諸費用 購入価格の5~10%(登記費用・仲介手数料など)
手元資金 生活費・緊急予備資金を確保

相続資金を全額購入に充当するのではなく、生活費や緊急時の予備資金を確保することが重要です。

(2) 住宅ローン事前審査(併用の場合)

相続資金だけでは購入資金が不足する場合、住宅ローンを併用します(金融庁「住宅ローンの基本」)。

事前審査の準備書類

  • 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
  • 収入証明書類(源泉徴収票、給与明細など)
  • 勤務先情報(勤続年数、雇用形態)
  • 相続資金の証明書類(遺産分割協議書、預金通帳など)

相続資金を頭金として計上すれば、借入額を減らせるため、住宅ローン審査で有利になります。

(3) 希望条件の整理

戸建ての希望条件を整理することで、物件探しがスムーズになります。

希望条件の例

  • 立地:通勤・通学の利便性、実家との距離
  • 間取り:家族構成に応じた部屋数(3LDK、4LDKなど)
  • 予算:相続資金+住宅ローンを合わせた総予算
  • 築年数:新築・築浅・中古のいずれか
  • その他:駐車場、庭、周辺環境など

相続を機に新生活を始める場合、立地や間取りを慎重に検討しましょう。

4. 物件探しと契約(2~3ヶ月)

(1) 物件探しと内見(1~2ヶ月)

希望条件に合う物件を探し、実際に内見します。

物件探しの方法

  1. 不動産ポータルサイト:SUUMO、LIFULL HOME'Sなどで検索
  2. 不動産会社への相談:希望条件を伝え、非公開物件も紹介してもらう
  3. 内見:気になる物件は実際に訪問し、周辺環境も確認

内見時のチェックポイント

  • 間取りと日当たり
  • 設備の状態(キッチン、浴室、トイレなど)
  • 周辺環境(スーパー、病院、公園など)
  • 交通の便(最寄り駅、バス停までの距離)

相続資金で購入する場合、現金比率が高いため、金額の大きい物件も検討対象になります。

(2) 購入申込みと重要事項説明(1週間)

購入したい物件が見つかったら、購入申込書を提出します。

購入申込みから契約までの流れ

  1. 購入申込書の提出:購入意思を売主に伝える
  2. 価格交渉:売主と価格や条件を交渉
  3. 重要事項説明:宅地建物取引士から物件の詳細説明を受ける
  4. 売買契約の準備:契約書の内容確認、手付金の準備

重要事項説明では、物件の法的制限(建築基準法、都市計画法など)、設備の状況、契約条件を確認します。

(3) 売買契約(手付金支払い)

重要事項説明を受けた後、売買契約を締結します。

売買契約時の流れ

項目 内容
契約書の署名・押印 売主・買主双方が契約書に署名・押印
手付金の支払い 購入価格の5~10%程度を現金で支払い
契約書の受領 契約書の写しと重要事項説明書を受領
住宅ローン特約の確認 ローンが通らなかった場合の解除条件を確認

手付金は相続資金から支払うのが一般的です。現金購入の場合、住宅ローン特約は不要です。

5. 住宅ローン審査と契約(1~2ヶ月)

(1) 本審査申込みと必要書類(1~2週間)

住宅ローンを併用する場合、売買契約締結後に本審査を申し込みます(住宅金融支援機構「フラット35」)。

本審査の必要書類

書類 内容
本人確認書類 運転免許証、マイナンバーカードなど
収入証明書類 源泉徴収票、確定申告書、給与明細など
物件関連書類 売買契約書、重要事項説明書、登記簿謄本など
相続資金証明 遺産分割協議書、預金通帳など

相続資金を頭金として計上する場合、遺産分割協議書や預金通帳で資金の出所を証明します。

(2) 審査期間(2~3週間)

本審査では、以下の項目が審査されます。

審査項目

  • 返済能力:年収、勤続年数、雇用形態
  • 信用情報:過去の借入・返済履歴、延滞の有無
  • 物件の担保価値:物件の評価額、築年数、立地
  • 頭金の割合:相続資金を頭金とする場合、審査で有利

相続資金を多く頭金として投入できれば、借入額が減り、審査が通りやすくなります。

(3) 金銭消費貸借契約(1週間)

本審査承認後、金融機関と金銭消費貸借契約を締結します。

金銭消費貸借契約の内容

  • 借入金額、金利、返済期間、月々の返済額の確定
  • 抵当権設定の承諾
  • 団体信用生命保険の加入(フラット35以外は通常必須)
  • 火災保険の加入義務の確認

契約後、融資実行日(引渡し日)が決定されます。現金購入の場合、この工程は不要です。

6. 引渡しと入居(1ヶ月)

(1) 残金決済と所有権移転登記

引渡し日当日、残金決済と所有権移転登記を行います(法務局「不動産登記の申請手続」)。

残金決済の流れ

  1. 融資実行:住宅ローン併用の場合、金融機関から融資実行
  2. 残代金の支払い:買主が売主に残代金を支払い(相続資金+融資)
  3. 諸費用の精算:固定資産税などを日割り計算で精算
  4. 所有権移転登記:司法書士が法務局に登記申請
  5. 鍵の引渡し:売主から買主に鍵を引渡し

現金購入の場合、相続資金から残代金を支払います。住宅ローン併用の場合、抵当権設定登記も同時に行います。

(2) 引渡しと鍵の受け渡し

残金決済完了後、物件の鍵を受け取り、引渡しが完了します。

引渡し時の確認事項

  • 設備の動作確認(給湯器、エアコン、水回りなど)
  • 付帯設備の引継ぎ(照明、カーテンレールなど)
  • 近隣への挨拶(引越し日の連絡)

引渡し後、設備に不具合があれば速やかに売主または不動産会社に連絡します。

(3) 入居と新生活のスタート

引渡し後、引越しと入居手続きを行います。

入居時の手続き

  • 電気・ガス・水道の契約
  • インターネット回線の契約
  • 転入届の提出(市区町村役場)
  • 住宅ローン控除の確定申告(翌年2~3月、ローン併用の場合)

住宅ローン控除を受けるには、入居後最初の確定申告が必須です(国税庁「住宅ローン控除」)。現金購入の場合、住宅ローン控除は適用されません。

まとめ

相続資金で戸建てを購入する場合、相続発生から引渡しまで7~18ヶ月程度が目安です。相続手続き(3~10ヶ月)、購入準備(1~2ヶ月)、物件探しと契約(2~3ヶ月)、住宅ローン審査と契約(1~2ヶ月)、引渡しと入居(1ヶ月)の流れで進みます。

相続手続きでは、財産調査、遺産分割協議、相続税申告が必要です。遺産分割協議が難航すると購入スケジュールが遅れるため、相続人間の合意形成が重要です。相続税の納税資金を確保した上で、購入資金を決定しましょう。

現金購入の場合、住宅ローン審査(1~2ヶ月)が不要なため、購入フェーズは短縮できます。ただし相続手続きは短縮できないため、全体では5~13ヶ月程度を見込む必要があります。相続税の申告期限(10ヶ月以内)と購入スケジュールを調整し、専門家(税理士・不動産会社)と連携して進めることが成功の鍵です。

よくある質問

Q1相続資金で戸建てを購入する場合、どのくらいの期間がかかりますか?

A1相続発生から購入完了まで7~18ヶ月程度が目安です。相続手続き3~10ヶ月、購入準備1~2ヶ月、物件探し2~3ヶ月、ローン審査1~2ヶ月、引渡し1ヶ月が標準的な流れです。遺産分割協議がスムーズに進めば7~8ヶ月で完了しますが、協議が難航すると18ヶ月以上かかることもあります。

Q2相続税申告前に戸建てを購入しても問題ありませんか?

A2相続税申告期限(相続開始から10ヶ月以内)前でも購入は可能です。ただし相続財産の評価が確定していない段階での購入はリスクがあります。遺産分割協議が完了し、資金が確定してからの購入が安全です。相続税の納税資金を確保した上で、残額を購入資金に充当することが重要です。

Q3相続不動産を売却して新居を購入する場合のスケジュールは?

A3相続手続き(3~10ヶ月)→売却活動(2~3ヶ月)→購入活動(4~8ヶ月)で、合計9~21ヶ月程度が目安です。相続不動産の売却には譲渡所得税の計算も必要なため、税理士への相談を含めた余裕のあるスケジュール調整が重要です。相続開始から3年10ヶ月以内の売却であれば、取得費加算の特例を利用できる可能性があります。

Q4相続資金で現金購入する場合、スケジュールは短縮できますか?

A4住宅ローン審査(1~2ヶ月)が不要なため、購入フェーズは2~3ヶ月短縮可能です。ただし相続手続き(3~10ヶ月)は短縮できないため、全体では5~13ヶ月程度が目安です。現金購入の場合、住宅ローン控除は適用されませんが、融資実行を待つ必要がないため、引渡しまでの期間が短縮されます。

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