戸建て買い替えの流れ:スケジュールを理解しよう
戸建ての買い替えでは、既存物件の売却と新居の購入を並行して進めるため、通常の購入よりもスケジュール管理が重要です。売り先行・買い先行・同時決済のどのパターンを選ぶかによって、資金計画や引越しのタイミングが大きく変わります。本記事では、戸建て買い替えの全体の流れ、各フェーズの所要期間、パターン別の注意点を解説します。
この記事でわかること
- 買い替え完了までの全体スケジュール(5~10ヶ月)
- 売却準備・購入準備を並行して進める方法
- 売り先行・買い先行・同時決済の違いと選び方
- 売買契約・住宅ローン審査・決済の流れ
- 買い替えで失敗しないタイミング調整のポイント
1. 戸建て買い替えスケジュール|全体の流れ
(1) 買い替え完了までの期間(5~10ヶ月)
戸建ての買い替えは、準備から新居への入居まで5~10ヶ月程度が目安です。売却と購入を並行して進めるため、通常の購入よりも長期間を要します。
全体スケジュールの目安
フェーズ | 期間 | 主な内容 |
---|---|---|
購入準備と売却準備の並行 | 1~2ヶ月 | 旧居査定、資金計画、事前審査 |
売却活動と購入物件探し | 2~4ヶ月 | 旧居売却、新居探し |
売買契約と住宅ローン審査 | 1~2ヶ月 | 売買契約、本審査 |
決済・引渡しと引越し | 1~2ヶ月 | 旧居引渡し、新居決済、引越し |
合計 | 5~10ヶ月 | - |
売却と購入がスムーズに進めば5~6ヶ月で完了しますが、売却が長期化する場合は10ヶ月以上かかることもあります。
(2) 各フェーズの所要期間
各フェーズの所要期間は、以下の要因により変動します。
所要期間に影響する要因
- 旧居の売却価格:希望価格で売れない場合、売却が長期化
- 新居の希望条件:条件が厳しいと物件探しが長期化
- 買い替えパターン:売り先行・買い先行・同時決済で期間が変動
- 住宅ローン審査:既存ローンの残債状況により審査期間が変動
買い替えでは、売却と購入のタイミング調整が最も重要です。
(3) 売り先行・買い先行・同時決済の違い
買い替えには3つのパターンがあり、それぞれメリット・デメリットがあります。
買い替えパターンの比較
パターン | メリット | デメリット |
---|---|---|
売り先行 | 資金が確定し安心、二重ローン不要 | 仮住まいが必要、引越し2回 |
買い先行 | 引越し1回、じっくり新居探し可能 | 二重ローンのリスク、資金余裕必要 |
同時決済 | 仮住まい不要、引越し1回 | タイミング調整が難しい |
資金に余裕がない場合は売り先行、資金に余裕があれば買い先行が選択されることが多いです。
2. 購入準備と売却準備の並行(1~2ヶ月)
(1) 旧居の査定と売却戦略
買い替えの第一歩は、現在の戸建ての査定です。査定により売却可能価格を把握し、新居の購入予算を決定します。
旧居査定の流れ
- 複数の不動産会社に査定依頼:一括査定サイトを活用
- 訪問査定の実施:実際に物件を見てもらい正確な査定額を取得
- 売却価格の設定:査定額を参考に、売出価格を決定
- 媒介契約の締結:不動産会社と専任媒介または一般媒介契約
売却戦略のポイント
- 相場より高すぎる価格設定は売却長期化のリスク
- 売り急ぎによる安売りを避けるため、余裕を持ったスケジュール設定
- 住宅ローン残債を確認し、売却価格が残債を上回るか確認
(2) 新居の資金計画と希望条件整理
旧居の売却可能価格を把握したら、新居の資金計画を立てます。
資金計画の立て方
項目 | 内容 |
---|---|
旧居売却代金 | 査定額から仲介手数料・諸費用を差し引いた金額 |
旧居ローン残債 | 売却代金から返済する金額 |
手元資金 | 売却代金-ローン残債 |
新居購入予算 | 手元資金+新規住宅ローン借入額 |
諸費用 | 購入価格の5~10%(登記費用・仲介手数料など) |
新居の希望条件整理
- 立地(通勤・通学の利便性、周辺環境)
- 間取り(家族構成に応じた部屋数)
- 予算(旧居売却代金+住宅ローン)
- 築年数(新築・築浅・中古のいずれか)
(3) 買い替えローンの事前審査
新居購入の住宅ローンは、旧居の売却前に事前審査を受けることができます(金融庁「住宅ローンの基本」)。
買い替えローンの審査ポイント
- 現在の住宅ローン残債の状況
- 旧居の売却予定価格
- 新居の購入予定価格
- 年収・勤続年数・信用情報
旧居のローン残債がある場合、二重ローンのリスクを金融機関が審査します。売り先行の場合、旧居売却後に新規ローンを借りるため審査は比較的通りやすいです。
3. 売却活動と購入物件探し(2~4ヶ月)
(1) 旧居の売却活動(2~3ヶ月)
不動産会社と媒介契約を締結後、売却活動を開始します。この工程が最も時間がかかります。
売却活動の流れ
- 物件情報の公開:不動産ポータルサイトに掲載
- 内覧対応:購入希望者に物件を見せる
- 価格交渉:購入希望者から価格交渉があれば対応
- 購入申込の受領:購入希望者から購入申込書を受領
内覧対応のポイント
- 整理整頓・清掃を徹底し、好印象を与える
- 設備の不具合は事前に修繕または告知
- 内覧希望者のスケジュールに柔軟に対応
売却活動中も新居探しを並行して進めます。
(2) 新居の物件探しと内見(1~2ヶ月)
希望条件に合う戸建てを探し、実際に内見します。
物件探しの方法
- 不動産ポータルサイト:SUUMO、LIFULL HOME'Sなどで検索
- 不動産会社への相談:希望条件を伝え、非公開物件も紹介してもらう
- 内見:気になる物件は実際に訪問し、周辺環境も確認
内見時のチェックポイント
- 間取りと日当たり
- 設備の状態(キッチン、浴室、トイレなど)
- 周辺環境(学校、スーパー、公園など)
- 交通の便(最寄り駅、バス停までの距離)
(3) 売却・購入のタイミング調整
買い替えで最も重要なのが、売却と購入のタイミング調整です。
タイミング調整のポイント
- 売り先行:旧居が売れてから新居を本格的に探す。売却資金が確定するまで購入契約を待つ
- 買い先行:新居を先に購入し、その後旧居を売却。二重ローンの期間を最小限にする
- 同時決済:旧居の引渡しと新居の決済を同日に行う。不動産会社と綿密に調整
売り先行の場合、仮住まいの準備が必要です。買い先行の場合、二重ローンの返済能力を金融機関が審査します。
4. 売買契約と住宅ローン審査(1~2ヶ月)
(1) 旧居の売買契約(手付金受領)
購入希望者が見つかったら、売買契約を締結します。
売買契約時の流れ
項目 | 内容 |
---|---|
契約書の署名・押印 | 売主・買主双方が契約書に署名・押印 |
手付金の受領 | 売却価格の5~10%程度を現金で受領 |
引渡し日の設定 | 決済・引渡し日を確定(通常1~2ヶ月後) |
ローン特約の確認 | 買主のローンが通らなかった場合の解除条件を確認 |
手付金は売却代金の一部として充当されます。引渡し日までに旧居を引き払う準備を進めます。
(2) 新居の売買契約(手付金支払い)
購入したい戸建てが見つかったら、売買契約を締結します。
購入契約時の流れ
- 購入申込書の提出:購入意思を売主に伝える
- 重要事項説明:宅地建物取引士から物件の詳細説明を受ける
- 売買契約:契約書に署名・押印、手付金を支払い
- 引渡し日の設定:旧居の引渡しとタイミングを調整
売り先行の場合、旧居の売却が確定してから新居の契約を行います。買い先行の場合、新居の契約を先に行い、その後旧居を売却します。
(3) 住宅ローン本審査(2~3週間)
新居の売買契約締結後、住宅ローンの本審査を申し込みます(住宅金融支援機構「フラット35」)。
本審査の必要書類
- 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
- 収入証明書類(源泉徴収票、確定申告書など)
- 物件関連書類(売買契約書、重要事項説明書など)
- 旧居の売買契約書(売却予定価格の証明)
- 旧居のローン残高証明書
買い替えの場合、旧居の売却予定価格と残債を考慮して審査されます。売り先行の場合、旧居売却後に新規ローンを借りるため審査は比較的スムーズです。
5. 決済・引渡しと引越し(1~2ヶ月)
(1) 旧居の決済・引渡し
引渡し日当日、旧居の残金決済と引渡しを行います(法務局「不動産登記の申請手続」)。
旧居の決済・引渡しの流れ
- 残代金の受領:買主から残代金を受け取る
- ローンの一括返済:受領した代金で旧居のローンを完済
- 抵当権抹消登記:司法書士が抵当権抹消登記を申請
- 所有権移転登記:買主への所有権移転登記
- 鍵の引渡し:買主に鍵を引渡し
旧居の売却代金は、ローン返済後の残額が手元に残ります。この資金を新居の購入資金に充当します。
(2) 新居の決済・引渡し
新居の引渡し日当日、残金決済と引渡しを行います。
新居の決済・引渡しの流れ
- 融資実行:金融機関から住宅ローンが実行され、買主の口座に入金
- 残代金の支払い:買主が売主に残代金を支払い
- 所有権移転登記:司法書士が法務局に登記申請
- 抵当権設定登記:金融機関の抵当権を設定
- 鍵の引渡し:売主から鍵を受け取り
同時決済の場合、旧居の引渡しと新居の決済を同日に行います。
(3) 引越しとタイミング調整
売り先行・買い先行・同時決済で引越しのタイミングが異なります。
パターン別の引越しタイミング
パターン | 引越しのタイミング |
---|---|
売り先行 | 旧居引渡し前に仮住まいへ引越し→新居完成後に本引越し(計2回) |
買い先行 | 新居決済後に旧居から新居へ直接引越し(1回) |
同時決済 | 旧居引渡しと新居決済を同日に行い、直接引越し(1回) |
売り先行の場合、仮住まいの賃貸契約や引越し費用が余分にかかります。買い先行・同時決済の場合、引越しは1回で済みます。
6. 買い替えパターン別のスケジュール調整
(1) 売り先行(資金確定、仮住まい必要)
売り先行は、旧居を先に売却してから新居を購入するパターンです。
売り先行のメリット
- 売却資金が確定するため、購入予算が明確
- 二重ローンのリスクがない
- 住宅ローン審査が通りやすい
売り先行のデメリット
- 仮住まいが必要(賃貸契約・引越し費用が余分にかかる)
- 引越しが2回必要(旧居→仮住まい→新居)
- 仮住まい期間中の家賃負担
スケジュール例
時期 | 内容 |
---|---|
1~2ヶ月目 | 旧居査定、売却活動開始 |
3~4ヶ月目 | 旧居売買契約、仮住まい探し |
5ヶ月目 | 旧居引渡し、仮住まいへ引越し |
5~7ヶ月目 | 新居探し、売買契約 |
8~9ヶ月目 | 住宅ローン審査、新居決済 |
9~10ヶ月目 | 新居へ引越し |
(2) 買い先行(二重ローン、資金余裕必要)
買い先行は、新居を先に購入してから旧居を売却するパターンです。
買い先行のメリット
- 引越しが1回で済む
- じっくり新居を探せる
- 仮住まいが不要
買い先行のデメリット
- 二重ローンの期間が発生(旧居ローン+新居ローン)
- 資金に余裕が必要
- 住宅ローン審査が厳しくなる
スケジュール例
時期 | 内容 |
---|---|
1~2ヶ月目 | 新居探し、売買契約 |
3~4ヶ月目 | 住宅ローン審査、新居決済 |
4~5ヶ月目 | 新居へ引越し、旧居売却活動開始 |
6~8ヶ月目 | 旧居売買契約、引渡し |
8ヶ月目 | 旧居ローン完済 |
買い先行の場合、旧居が売れるまで二重ローンの返済が続くため、資金に余裕が必要です。
(3) 同時決済(理想だが難易度高い)
同時決済は、旧居の引渡しと新居の決済を同日に行うパターンです。
同時決済のメリット
- 仮住まい不要
- 引越しが1回で済む
- 二重ローン期間がない
同時決済のデメリット
- タイミング調整が非常に難しい
- 売主・買主双方のスケジュール調整が必要
- 不動産会社の高い調整力が求められる
実現のポイント
- 旧居の買主と新居の売主の都合を合わせる
- 不動産会社に同時決済の希望を事前に伝える
- 決済日の変更リスクを考慮し、柔軟に対応
同時決済は理想的ですが、実現できるケースは少ないため、売り先行または買い先行を選ぶのが現実的です。
まとめ
戸建ての買い替えは、準備から新居入居まで5~10ヶ月程度が目安です。売却準備と購入準備を並行して進め、売却活動2~4ヶ月、契約・審査1~2ヶ月、決済・引越し1~2ヶ月の流れで進みます。
買い替えには売り先行・買い先行・同時決済の3パターンがあります。売り先行は資金が確定し安心ですが仮住まいが必要、買い先行は引越し1回で済みますが二重ローンのリスクがあります。同時決済は理想的ですがタイミング調整が難しいです。
資金に余裕がない場合は売り先行、余裕があれば買い先行がおすすめです。不動産会社と綿密に相談し、自分に合ったパターンを選びましょう。