戸建て売却の流れとスケジュール|期間・手続き・必要書類

公開日: 2025/10/18

戸建て売却の基本的な流れとスケジュール

初めて戸建てを売却する方にとって、全体の流れを把握することは重要です。戸建て売却は査定から引き渡しまで平均3-6ヶ月かかりますが、地域や物件の状態によって期間は大きく変動します。

戸建て売却の全体フローは以下の6ステップで構成されます:

  1. 売却準備と査定依頼(1-2週間)
  2. 媒介契約の締結(1週間)
  3. 売却活動(1-3ヶ月)
  4. 売買契約の締結(1日)
  5. 決済・引き渡し(契約から1-2ヶ月後)
  6. 税務手続き(確定申告)(売却翌年の2月16日-3月15日)

各ステップの所要期間の目安

ステップ 所要期間 主な内容
売却準備・査定 1-2週間 書類準備、複数社へ査定依頼、査定結果の比較
媒介契約締結 1週間 不動産会社と契約、売却条件の決定
売却活動 1-3ヶ月 広告掲載、内覧対応、価格交渉
売買契約 1日 重要事項説明、契約書締結、手付金受領
決済・引き渡し 契約から1-2ヶ月 残代金受領、登記、鍵の引き渡し
確定申告 翌年2-3月 譲渡所得税の申告

マンションとの違いと戸建て特有の手続き

戸建て売却には、マンションにはない土地に関する手続きが必要です:

戸建て特有の手続き:

  • 境界確定測量:隣地との境界を明確化(費用40-100万円、売主負担が一般的)
  • 建物状況調査(インスペクション):建物の劣化状況を専門家が診断(費用5-10万円)
  • 土地測量図・境界確認書の準備:購入時の測量図があれば提出、なければ測量が必要
  • 地目・地積の確認:登記簿の記載内容と現況の一致確認

マンションは管理組合が境界を管理しますが、戸建ては個人の責任で境界を確定させる必要があります。

売却準備と査定依頼

戸建て売却の第一歩は、必要書類の準備と複数の不動産会社への査定依頼です。

必要書類の準備と確認事項

売却前に以下の書類を準備しましょう:

必須書類:

  • 登記済権利証または登記識別情報
  • 固定資産税納税通知書・評価証明書
  • 土地測量図・境界確認書(あれば)
  • 建築確認済証・検査済証
  • 購入時の売買契約書・重要事項説明書
  • 本人確認書類(運転免許証、パスポートなど)
  • 印鑑証明書(3ヶ月以内)

任意書類:

  • 建物図面・間取り図
  • 設備の説明書・保証書
  • リフォーム・修繕履歴
  • 建物状況調査報告書(インスペクション済みの場合)

複数社への査定依頼のポイント

査定は最低3社以上に依頼することが推奨されます。査定価格だけでなく、以下を比較しましょう:

  • 査定価格の根拠(近隣の成約事例、類似物件との比較)
  • 売却実績(同じ地域での売却件数、平均売却期間)
  • 販売戦略(広告の出し方、ターゲット層の設定)
  • 担当者の対応(レスポンスの速さ、質問への回答の丁寧さ)

注意点:

査定価格が高いからといって、その価格で売れるとは限りません。相場より明らかに高い査定額を提示する会社は、媒介契約を取るための「高値提示」の可能性があります。

境界確定と測量の必要性

戸建て売却で最も重要な準備が境界確定測量です。境界が不明確な土地は、買主が購入を躊躇するため、売却価格が下がったり、売却自体が困難になります。

境界確定の流れ:

  1. 土地家屋調査士に測量を依頼
  2. 隣地所有者の立ち会いを求める
  3. 境界標(杭)を設置
  4. 境界確認書に署名・押印
  5. 確定測量図を作成

**費用:**40-100万円(土地の形状・隣接地の数により変動)

購入時の確定測量図があれば、再測量不要の場合もあります。まずは測量図の有無を確認しましょう。

媒介契約の締結と売却活動

査定結果を比較して不動産会社を選んだら、媒介契約を締結します。

媒介契約の種類と選び方

媒介契約には3種類あり、それぞれ特徴が異なります:

契約種類 複数社と契約 自己発見取引 レインズ登録 報告義務
一般媒介 可能 可能 任意 なし
専任媒介 不可 可能 義務(7日以内) 2週間に1回以上
専属専任媒介 不可 不可 義務(5日以内) 1週間に1回以上

選び方の目安:

  • 一般媒介:人気エリアで早期売却が期待できる場合。複数社が競争して売却活動を行う
  • 専任媒介:じっくり売却活動を進めたい場合。1社が責任を持って売却活動を行う
  • 専属専任媒介:不動産会社に完全に任せたい場合。自己発見取引も不可なので慎重に

**契約期間:**3ヶ月が標準(更新可能)

レインズ登録と報告義務

**レインズ(REINS)**とは、国土交通大臣指定の不動産流通標準情報システムです。専任媒介・専属専任媒介では、一定期間内にレインズへの登録が義務付けられています。

レインズに登録されると、全国の不動産会社が物件情報を閲覧でき、買主候補が広がります。

報告義務:

  • 専任媒介:2週間に1回以上、売却活動の報告
  • 専属専任媒介:1週間に1回以上、売却活動の報告

報告内容には、内覧件数、問い合わせ件数、広告の掲載状況などが含まれます。

内覧対応と価格交渉

売却活動中は、購入検討者の内覧対応が重要です。

内覧対応のポイント:

  • 清掃・整理整頓:第一印象が重要。玄関・リビング・水回りは特に念入りに
  • 明るさの確保:カーテンを開け、照明をつけて明るい印象を
  • 臭い対策:ペット臭・タバコ臭は印象を悪化させる。換気や消臭剤を活用
  • 質問への誠実な回答:建物の不具合や近隣状況は正直に伝える

購入希望者から価格交渉があった場合、以下を考慮して判断します:

  • 売却希望時期(急ぐなら価格交渉に応じる)
  • 他の購入検討者の有無(複数候補がいれば強気の交渉も可能)
  • 市場相場との乖離(相場より高値なら値下げも検討)

売買契約の締結と手付金

購入希望者と条件が合意できたら、売買契約を締結します。

重要事項説明の内容確認

契約日には、宅地建物取引士による重要事項説明が行われます。買主に対して、以下の内容が説明されます:

  • 物件の状況(構造、面積、設備、権利関係)
  • 法令上の制限(建築基準法、都市計画法など)
  • 契約条件(代金、支払時期、引き渡し時期)
  • 契約不適合責任の範囲と期間
  • 手付金の性質と額

売主も同席し、内容を確認します。誤りや不明点があれば、その場で指摘しましょう。

売買契約書の記載事項

売買契約書には、以下の事項が記載されます:

  • 売買代金・支払方法(手付金・残代金の金額と支払日)
  • 物件の引き渡し時期
  • 所有権移転登記の時期
  • 契約不適合責任の範囲・期間
  • 手付解除の条件(手付金放棄による契約解除の期限)
  • 融資特約(買主のローン審査が通らなかった場合の解除条件)

契約書に署名・押印すると、法的拘束力が生じます。内容をよく確認してから署名しましょう。

手付金の受領と契約解除条件

契約時に、買主から手付金を受け取ります。手付金の相場は**売買代金の5-10%**です。

手付金の性質:

  • 証約手付:契約成立の証拠
  • 解約手付:手付金を放棄(買主)または倍返し(売主)することで契約解除が可能

**手付解除の期限:**契約書に明記された期日まで(通常は契約から1-2週間)

期限内なら、売主は手付金を倍返しすることで契約を解除できます。ただし、買主が履行に着手した後は解除できません。

決済・引き渡しと所有権移転

売買契約から1-2ヶ月後、残代金決済引き渡しを同時に行います。

残代金決済の流れ

決済日には、以下の関係者が立ち会います:

  • 売主・買主
  • 不動産会社(仲介業者)
  • 司法書士
  • 金融機関担当者(買主が住宅ローンを利用する場合)

決済の流れ:

  1. 登記書類の確認(司法書士)
  2. 買主から売主へ残代金の支払い
  3. 固定資産税・都市計画税の清算
  4. 鍵・書類の引き渡し
  5. 所有権移転登記・抵当権設定登記の申請

決済と引き渡しは同日に行われるため、「同時履行の原則」が適用されます。

登記手続きと所有権移転

決済日に、司法書士が以下の登記を申請します:

  1. 抵当権抹消登記(売主の住宅ローンが残っている場合)
  2. 所有権移転登記(売主→買主)
  3. 抵当権設定登記(買主が住宅ローンを利用する場合)

登記完了まで1-2週間かかりますが、決済日時点で所有権は買主に移転します。

引き渡し前の最終確認事項

引き渡し前に、以下を最終確認します:

  • 荷物の搬出完了
  • 設備の動作確認(給湯器、エアコン、インターホンなど)
  • 境界標の確認
  • 鍵の本数確認(玄関・勝手口・物置など)
  • 公共料金の清算(電気・ガス・水道)
  • 住民票の転出手続き

売却後の税務手続きと確定申告

戸建てを売却した年の翌年、確定申告が必要です。

譲渡所得税の計算方法

譲渡所得の計算式:

譲渡所得 = 売却価格 - (取得費 + 譲渡費用)

**取得費:**購入価格 + 購入時の諸費用 - 減価償却費 **譲渡費用:**仲介手数料、測量費用、取り壊し費用など

譲渡所得税の税率:

  • 短期譲渡(所有期間5年以下):39.63%
  • 長期譲渡(所有期間5年超):20.315%

**所有期間の判定日:**売却した年の1月1日時点

3,000万円特別控除の適用

居住用財産の3,000万円特別控除は、自宅を売却した場合、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる制度です。

主な要件:

  • 自己が居住していた不動産であること
  • 住まなくなってから3年以内の売却
  • 売却先が配偶者・親族でないこと
  • 前年・前々年にこの特例を利用していないこと

この特例を利用すれば、多くのケースで譲渡所得税が非課税になります。

確定申告の時期と必要書類

**申告期間:**売却した年の翌年2月16日から3月15日まで

必要書類:

  • 確定申告書(譲渡所得の内訳書)
  • 売買契約書のコピー(売却時・購入時)
  • 仲介手数料などの領収書
  • 登記事項証明書
  • 戸籍の附票(居住用財産の特例を利用する場合)

譲渡所得がゼロまたはマイナスでも、特別控除を利用する場合は申告が必要です。

まとめ

戸建て売却は、査定から引き渡しまで平均3-6ヶ月かかります。マンションと異なり、境界確定測量や建物状況調査など、土地に関する手続きが必要です。

媒介契約は、物件の人気度や売却希望時期に応じて、一般媒介・専任媒介・専属専任媒介を選択します。内覧対応では、清掃・整理整頓を徹底し、第一印象を良くすることが重要です。

売買契約時には重要事項説明と契約書の内容を十分に確認し、不明点はその場で質問しましょう。決済・引き渡しは同日に行われ、残代金の受領と同時に所有権が移転します。

売却後は、翌年2月16日から3月15日までに確定申告を行います。居住用財産の3,000万円特別控除を利用すれば、多くのケースで譲渡所得税が非課税になります。

よくある質問

Q1戸建ての売却にはどのくらいの期間がかかりますか?

A1平均3-6ヶ月程度が目安です。査定から媒介契約まで1-2週間、売却活動1-3ヶ月、契約から引き渡しまで1-2ヶ月かかります。ただし、地域や物件の状態、価格設定により大きく変動します。人気エリアや適正価格なら1-2ヶ月で売れることもあれば、条件の悪い物件は1年以上かかることもあります。

Q2戸建て売却で境界確定は必須ですか?

A2法的義務ではありませんが、実務上ほぼ必須です。隣地との境界が不明確だと、買主が購入を躊躇し、売却価格が下がったり売却自体が困難になります。測量費用は40-100万円程度で、売主負担が一般的です。購入時の確定測量図があれば再測量不要の場合もあるため、まず測量図の有無を確認しましょう。

Q3媒介契約はどの種類を選ぶべきですか?

A3物件の人気度や売却希望時期によって選びます。人気エリアで早期売却が期待できるなら一般媒介(複数社が競争)、じっくり売却活動を進めたいなら専任媒介(1社が責任を持って対応)が適しています。専属専任媒介は自己発見取引も不可のため、知人への売却可能性がある場合は避けましょう。契約期間は3ヶ月が標準で、更新可能です。

Q4売却後の確定申告はいつまでに行えばよいですか?

A4売却した年の翌年2月16日から3月15日までに確定申告が必要です。譲渡所得がある場合は申告必須で、居住用財産の3,000万円特別控除を受ける場合も申告が必要です。譲渡所得がゼロまたはマイナスでも、特別控除を利用する場合は申告しないと控除が適用されないため注意しましょう。

Q5仲介手数料はいくらかかりますか?

A5仲介手数料の上限は、売買代金が400万円超の場合「売買代金×3% + 6万円 + 消費税」です。例えば売買代金3,000万円なら、上限は105.6万円(税込)となります。仲介手数料は成功報酬のため、売却が成立しなければ支払う必要はありません。広告費用などは原則として仲介手数料に含まれますが、特別な広告を依頼する場合は別途費用が発生することもあります。

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