住み替え売却時の新築戸建て登記の基本
住み替えで新築戸建てを売却する際、登記手続きは避けて通れない重要なプロセスです。新築物件の場合、すでに表示登記・保存登記が完了しているため、売却時には所有権移転登記と抵当権抹消登記が主な手続きとなります。
この記事のポイント
- 売却時の登記は「抵当権抹消→所有権移転」の順で決済当日に実施
- 登記費用は所有権移転が買主負担、抵当権抹消が売主負担
- 司法書士は買主側が指定するのが一般的
- 抵当権抹消には金融機関からの書類が必要(1~2週間程度かかる)
- 登録免許税は固定資産税評価額に応じて計算される
(1) 新築戸建て売却時の登記の種類
新築戸建てを売却する場合、以下の登記手続きが必要です。
登記の種類 | 内容 | 実施者 |
---|---|---|
所有権移転登記 | 売主から買主へ所有権を移転 | 買主側司法書士 |
抵当権抹消登記 | ローン完済に伴い担保権を抹消 | 買主側司法書士(売主が委任) |
新築時に実施済みの表示登記(建物の物理的状況を示す)や保存登記(初めての所有権登記)については、売却時に改めて手続きする必要はありません。ただし、登記簿の内容が現況と一致しているか、売却前に確認することが重要です。
(2) 表示登記・保存登記の確認
新築戸建ての場合、以下の登記がすでに完了しているはずです。
- 表示登記: 建物の所在地・構造・床面積などの基本情報
- 保存登記: 初めて記録される所有権登記
これらの登記内容に誤りがあると、売却時にトラブルの原因となる可能性があります。法務局で登記簿謄本を取得し、以下の点を確認しましょう。
- 所有者の氏名・住所が現在の情報と一致しているか
- 建物の面積・構造が実際と一致しているか
- 抵当権の設定内容が正確か
(3) 住み替えローン利用時の登記の流れ
住み替えローンを利用する場合、売却物件の抵当権抹消と新居購入時の新たな抵当権設定が同時進行します。このため、売却決済と新居購入の決済日を調整し、登記手続きがスムーズに進むよう計画することが大切です。
所有権移転登記の手続きと流れ
所有権移転登記は、売却物件の所有権を売主から買主へ正式に移転する手続きです。法務局に申請することで、不動産の権利関係が公示され、第三者に対抗できる効力を持ちます。
(1) 所有権移転登記の申請方法
所有権移転登記の申請は、以下の流れで進みます。
- 決済日に必要書類を準備: 売主は権利証(登記識別情報)、印鑑証明書、本人確認書類などを用意
- 司法書士が書類確認: 買主側が指定した司法書士が売主・買主双方の書類を確認
- 登記申請書を作成: 司法書士が登記申請書を作成
- 法務局へ申請: 決済当日または翌日に法務局へ登記申請
- 登記完了: 申請から1~2週間程度で登記が完了し、新しい権利証が買主に交付
(2) 決済日に実施する登記手続き
売却決済日には、以下の登記手続きが同時に行われます。
- 抵当権抹消登記: ローン完済に伴い、金融機関の担保権を抹消
- 所有権移転登記: 売主から買主へ所有権を移転
抵当権が設定されたままでは所有権を移転できないため、抵当権抹消登記を先に行い、その後で所有権移転登記を実施します。これらの手続きは司法書士が一括して行うため、売主・買主は必要書類を準備するだけで済みます。
(3) 買主側司法書士との調整
所有権移転登記は、買主側が指定した司法書士が手続きを担当するのが一般的です。売主は、司法書士から指示された書類を期日までに準備し、決済日に持参します。
事前に司法書士と面談し、必要書類や本人確認の方法を確認しておくとスムーズです。特に、登記上の住所と現住所が異なる場合は、住所変更登記が別途必要となるため注意が必要です。
抵当権抹消登記のタイミングと必要書類
住宅ローンを利用して新築戸建てを購入した場合、物件には金融機関の抵当権が設定されています。売却時にローンを完済すると、この抵当権を抹消する登記が必要です。
(1) ローン完済と抵当権抹消のタイミング
抵当権抹消登記は、以下のタイミングで実施します。
- 売却決済日: 買主から受け取った売買代金で住宅ローンを完済
- 同日中に抵当権抹消: 完済と同時に抵当権抹消登記を申請
- 所有権移転登記: 抵当権抹消後、所有権移転登記を実施
売却決済と抵当権抹消を同日に行うことで、買主は抵当権のない「きれいな」物件を取得できます。
(2) 金融機関からの必要書類
抵当権抹消登記には、金融機関から以下の書類を受け取る必要があります。
- 抵当権解除証書: 抵当権を解除することを証明する書類
- 登記済証または登記識別情報: 抵当権設定時に金融機関が受け取った権利証
- 委任状: 司法書士に抹消登記を委任するための書類
- 資格証明書: 金融機関の会社謄本(発行後3か月以内)
これらの書類は、ローン完済後に金融機関から郵送されます。通常1~2週間程度かかるため、売却決済日に間に合うよう、事前に金融機関へ確認しておきましょう。
(3) 抹消登記と所有権移転の同時実施
抵当権抹消登記と所有権移転登記は、決済日に同時に申請されます。司法書士が両方の登記申請書を作成し、法務局へ提出します。
売主が負担するのは抵当権抹消登記の費用のみで、所有権移転登記の費用は買主が負担します。
売却決済と同時に行う登記手続き
売却決済日は、売買代金の授受と登記手続きを同時に行う重要な日です。ここでは、決済当日の登記の流れを詳しく解説します。
(1) 決済当日の登記の流れ
決済日の典型的な流れは以下の通りです。
- 売主・買主・司法書士・不動産会社が金融機関に集合(10:00~11:00頃)
- 司法書士が本人確認・書類確認(30分~1時間)
- 買主が売買代金を振込または手渡し
- 売主がローンを完済し、抵当権抹消の準備完了
- 司法書士が法務局へ登記申請(決済日当日または翌日)
- 1~2週間後に登記完了、買主に新しい権利証が交付
(2) 抵当権抹消→所有権移転の順序
登記手続きは、以下の順序で行われます。
ステップ1: 抵当権抹消登記
ローン完済後、金融機関から受け取った書類をもとに抵当権抹消登記を申請します。
ステップ2: 所有権移転登記
抵当権が抹消された後、売主から買主へ所有権を移転する登記を申請します。
この順序を守ることで、買主は担保権のない物件を取得できます。
(3) 司法書士による本人確認と書類確認
司法書士は、決済日に以下の確認を行います。
- 本人確認: 運転免許証やマイナンバーカードで売主・買主の本人確認
- 権利証の確認: 売主が所有権を有していることを登記識別情報で確認
- 印鑑証明書の照合: 売主の実印と印鑑証明書が一致しているか確認
- 抵当権抹消書類の確認: 金融機関からの書類がすべて揃っているか確認
これらの確認が完了して初めて、登記申請が可能となります。
登記にかかる費用と負担者
登記にはさまざまな費用がかかります。誰が何を負担するのか、事前に把握しておくことが大切です。
(1) 登録免許税の計算方法
登録免許税は、登記申請時に国に納める税金です。以下のように計算されます。
登記の種類 | 税率 | 計算方法 |
---|---|---|
所有権移転登記 | 固定資産税評価額の2%(土地1.5%) | 評価額 × 税率 |
抵当権抹消登記 | 不動産1個につき1,000円 | 土地・建物で各1,000円 |
計算例:
固定資産税評価額2,500万円の新築戸建ての場合
- 所有権移転登記: 2,500万円 × 2% = 50万円(買主負担)
- 抵当権抹消登記: 土地1,000円 + 建物1,000円 = 2,000円(売主負担)
※ 登録免許税の税率は、年度ごとに改正される可能性があるため、最新情報は国税庁のウェブサイトで確認してください。
(2) 所有権移転登記費用(買主負担)
所有権移転登記にかかる費用は、慣例上、買主が負担します。
- 登録免許税: 固定資産税評価額の2%程度
- 司法書士報酬: 5万円~10万円程度(地域や案件により異なる)
(3) 抵当権抹消登記費用(売主負担)
抵当権抹消登記にかかる費用は、売主が負担します。
- 登録免許税: 不動産1個につき1,000円(土地・建物で2,000円程度)
- 司法書士報酬: 1万円~3万円程度
抵当権抹消の費用は比較的少額ですが、事前に司法書士へ見積もりを依頼しておくと安心です。
司法書士への依頼と注意点
登記手続きは専門的な知識が必要なため、司法書士に依頼するのが一般的です。ここでは、司法書士への依頼方法と注意点を解説します。
(1) 買主側司法書士が手続きを担当
所有権移転登記は、買主側が指定した司法書士が手続きを行うのが一般的です。売主は、この司法書士に対して以下を委任します。
- 所有権移転登記の手続き
- 抵当権抹消登記の手続き
売主が自分で司法書士を探す必要はなく、買主側の司法書士の指示に従って必要書類を準備すれば問題ありません。
(2) 司法書士報酬の相場
司法書士報酬は、案件の複雑さや地域によって異なりますが、一般的な相場は以下の通りです。
登記の種類 | 報酬相場 |
---|---|
所有権移転登記 | 5万円~10万円 |
抵当権抹消登記 | 1万円~3万円 |
登記簿取得・事前調査 | 5,000円~1万円 |
報酬は地域や案件の内容により変動するため、事前に見積もりを取得することをおすすめします。
(3) 売却前の登記簿確認の重要性
売却を進める前に、法務局で登記簿謄本を取得し、以下の点を確認しましょう。
- 所有者情報: 氏名・住所が現在の情報と一致しているか
- 抵当権の有無: どの金融機関にどれだけの抵当権が設定されているか
- その他の権利: 地役権や賃借権など、売却に影響する権利がないか
登記簿の内容に誤りがあると、売却時にトラブルの原因となります。特に、住所変更をしたのに登記簿上の住所が古いままの場合、売却前に住所変更登記(数千円程度)が必要です。
まとめ
住み替えで新築戸建てを売却する際の登記手続きは、抵当権抹消登記と所有権移転登記が中心です。決済日に両方の登記が同時に行われるため、事前に必要書類を準備し、司法書士の指示に従ってスムーズに進めることが大切です。
特に、抵当権抹消には金融機関からの書類が必要で、受け取りまでに1~2週間程度かかる点に注意しましょう。また、登記費用は売主・買主で負担区分が異なるため、事前に確認しておくことをおすすめします。
売却前に登記簿の内容を確認し、必要に応じて住所変更登記などを済ませておくことで、トラブルのない取引が実現できます。