相続売却マンションの登記・名義変更|完全ガイド2024

公開日: 2025/10/19

相続したマンション売却時の登記の基本

親から相続したマンションを売却する場合、まず相続登記を完了させ、その後に売却登記を行う必要があります。2024年4月から相続登記が義務化され、相続を知った日から3年以内に申請しないと10万円以下の過料が科されるようになりました。

本記事では、相続したマンション売却時の登記手続きの全体像から、相続登記の義務化、遺産分割協議から相続登記・売却登記までの流れ、登記にかかる費用、よくある質問まで、実務上重要なポイントを詳しく解説します。

この記事のポイント:

  • 2024年4月から相続登記が義務化(3年以内、過料10万円以下)
  • 相続登記を完了しないと売却登記は進められない
  • 遺産分割協議がまとまらない場合は法定相続分での登記も可能
  • 相続登記の登録免許税は評価額の0.4%、売却登記は2%
  • 相続登記と売却登記を同日に申請することも可能

相続したマンション売却時の登記の基本

相続と不動産登記の関係

相続により不動産を取得した場合、被相続人(亡くなった人)名義の不動産を相続人名義に変更する相続登記が必要です。相続登記を完了しないと、不動産の売却や担保設定ができません。

従来、相続登記は任意でしたが、2024年4月から義務化され、相続を知った日から3年以内に申請しないと10万円以下の過料が科されるようになりました(法務省 相続登記の義務化)。

相続登記から売却登記までの流れ

相続したマンションを売却する場合の登記手続きの流れは以下の通りです:

  1. 相続の発生: 被相続人の死亡
  2. 遺産分割協議: 相続人全員で遺産の分け方を協議
  3. 相続登記: 被相続人名義から相続人名義に変更
  4. 売買契約: 買主と売買契約を締結
  5. 売却登記: 相続人名義から買主名義に変更

相続登記を完了しないと売却登記は進められないため、まず相続登記を優先する必要があります。

2024年4月施行の相続登記義務化

2024年4月1日から、相続登記が義務化されました(不動産登記法)。主な内容は以下の通りです:

  • 申請期限: 相続を知った日から3年以内
  • 罰則: 正当な理由なく申請しないと10万円以下の過料
  • 遡及適用: 2024年4月1日以前の相続も対象(義務化から3年以内に申請)

相続したマンションを売却する場合、売却前に必ず相続登記を完了させる必要があります。

相続登記の義務化と手続きの流れ

義務化の内容(3年以内、過料10万円)

相続登記の義務化により、以下の義務が生じます:

  1. 不動産を取得した相続人: 相続により所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請
  2. 遺産分割による取得: 遺産分割協議が成立した日から3年以内に遺産分割による登記を申請
  3. 罰則: 正当な理由なく申請しないと10万円以下の過料

正当な理由には、相続人が多数で戸籍収集に時間がかかる場合、遺産分割協議が難航している場合などが含まれます。

相続登記の申請期限

相続登記の申請期限は、以下のように計算します:

  • 自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、所有権を取得したことを知った日から3年以内

実務上は、被相続人の死亡を知った日から3年以内と解釈されます。ただし、遺産分割協議中の場合は、まず法定相続分での相続登記を行い、協議成立後に遺産分割による登記を追加することも可能です。

必要書類(戸籍謄本・遺産分割協議書等)

相続登記に必要な書類は以下の通りです(法務局 相続による所有権移転登記の手続き):

共通書類:

  1. 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
  2. 被相続人の住民票の除票または戸籍の附票
  3. 相続人全員の戸籍謄本
  4. 相続人全員の住民票
  5. 固定資産税評価証明書

遺産分割協議による場合: 6. 遺産分割協議書(相続人全員の署名・実印押印) 7. 相続人全員の印鑑証明書

法定相続分による場合:

  • 遺産分割協議書・印鑑証明書は不要

遺産分割協議から相続登記まで

遺産分割協議書の作成

遺産分割協議書は、相続人全員が遺産の分割方法に合意した内容を記載した書面です(法務局 遺産分割協議書の作成)。記載事項は以下の通りです:

  1. 被相続人の氏名・死亡日・本籍
  2. 相続財産の表示: 不動産は登記簿謄本の記載通りに記載
  3. 誰が何を取得するか: 相続人ごとに取得する財産を明記
  4. 作成日と相続人全員の署名・実印押印

マンションを売却する場合、売却する相続人が単独で相続する内容にすると、その後の売却手続きがスムーズです。

相続人全員の同意と印鑑証明

遺産分割協議書には、相続人全員の署名・実印押印と印鑑証明書の添付が必要です。相続人の一人でも同意しない場合、遺産分割協議は成立しません。

相続人が多数の場合や、相続人間の関係が疎遠な場合は、協議が難航することもあります。その場合は、家庭裁判所の調停・審判を経る必要があります。

法定相続分での登記と遺産分割での登記

遺産分割協議がまとまらない場合、法定相続分での相続登記を行うことも可能です:

法定相続分での登記:

  • 遺産分割協議書・印鑑証明書は不要
  • 相続人全員が法定相続分で共有登記される
  • その後の売却には相続人全員の同意が必要

遺産分割での登記:

  • 遺産分割協議書・印鑑証明書が必要
  • 特定の相続人が単独で所有権を取得
  • その後の売却は単独でできる

マンションを売却する場合、遺産分割での登記が望ましいです。

相続登記から売却登記への移行

相続登記完了後の売却手続き

相続登記が完了すると、登記事項証明書に相続人名義が記録されます。その後、通常のマンション売却手続きに進みます:

  1. 不動産会社への査定依頼
  2. 売買契約締結
  3. 決済・引渡し
  4. 売却登記(所有権移転登記)

相続登記完了から売却登記まで、通常3〜6ヶ月程度かかります。

相続人全員での売却と単独相続後の売却

相続登記の方法により、売却手続きが異なります:

法定相続分で共有登記した場合:

  • 売却には相続人全員の同意が必要
  • 売買契約書や登記申請書に相続人全員の署名・実印押印が必要
  • 売却代金は法定相続分に応じて分配

遺産分割で単独登記した場合:

  • 売却は単独でできる
  • 売買契約書や登記申請書は単独で署名
  • 売却代金は単独で取得

マンションを速やかに売却したい場合は、遺産分割で単独登記することが推奨されます。

数次相続の場合の中間省略不可

被相続人が亡くなった後、相続登記をしないまま相続人も亡くなった場合(数次相続)、中間の相続登記を省略することはできません。

例:祖父→父→子の順で相続が発生した場合

  • 祖父名義→父名義の相続登記
  • 父名義→子名義の相続登記
  • 子名義→買主名義の売却登記

の3段階の登記が必要です。中間省略はできないため、相続登記は速やかに行うことが重要です。

登記にかかる費用と税金

相続登記の登録免許税(評価額の0.4%)

相続登記の登録免許税は、固定資産税評価額の0.4%です(国税庁 登録免許税の税率)。

例:固定資産税評価額2,000万円のマンションの場合

  • 登録免許税:2,000万円 × 0.4% = 8万円

登録免許税は、相続人が負担します。

売買による所有権移転登記の登録免許税(2%)

売却時の所有権移転登記の登録免許税は、固定資産税評価額の2%(土地は1.5%)です。

例:固定資産税評価額2,000万円(土地1,200万円、建物800万円)のマンションの場合

  • 土地:1,200万円 × 1.5% = 18万円
  • 建物:800万円 × 2% = 16万円
  • 合計:34万円

売却時の登録免許税は、買主負担が慣例です。

司法書士報酬の相場

司法書士報酬は自由化されており、以下が相場です:

  • 相続登記: 5〜10万円
  • 所有権移転登記(売却): 5〜10万円
  • 合計: 10〜20万円

戸籍収集を司法書士に依頼する場合、追加で3〜5万円程度かかります。

相続マンション売却の登記でよくある質問

以下、よくある質問をFAQ形式でまとめます。

相続登記をせずに売却できるか

相続登記を完了しないと、売却登記は進められません。2024年4月から相続登記が義務化され、相続を知った日から3年以内に申請しないと10万円以下の過料が科されます。まず相続登記を完了させることが必須です。

遺産分割協議がまとまらない場合の対応

遺産分割協議がまとまらない場合、以下の選択肢があります:

  1. 法定相続分での相続登記: 相続人全員が法定相続分で共有登記(その後の売却には相続人全員の同意が必要)
  2. 家庭裁判所の調停・審判: 協議が難航する場合、家庭裁判所の調停・審判を経て売却

実務上、法定相続分での相続登記を行い、その後に相続人全員で売却するケースもあります。

相続登記と売却登記の同時申請

相続登記と売却登記を同日に申請することは可能ですが、法務局では相続登記を先に処理してから売却登記を行います。実務では、相続登記完了後に売却登記を申請する方が確実です。

同日申請の場合、司法書士への委任が不可欠です。

登録免許税の比較

相続登記の登録免許税(評価額の0.4%)と売却登記の登録免許税(2%)では、売却登記の方が5倍高くなります。

例:固定資産税評価額2,000万円のマンションの場合

  • 相続登記:8万円
  • 売却登記:34万円(土地1,200万円×1.5%+建物800万円×2%)

ただし、売却登記の登録免許税と司法書士報酬は買主負担が慣例です。

まとめ

相続したマンションを売却する場合、まず相続登記を完了させ、その後に売却登記を行う必要があります。2024年4月から相続登記が義務化され、相続を知った日から3年以内に申請しないと10万円以下の過料が科されるようになりました。

遺産分割協議がまとまらない場合は、法定相続分での相続登記も可能ですが、その後の売却には相続人全員の同意が必要です。マンションを速やかに売却したい場合は、遺産分割で単独登記することが推奨されます。

相続登記の登録免許税は評価額の0.4%、売却登記は2%です。売却登記の登録免許税と司法書士報酬は買主負担が慣例ですが、相続登記の費用は相続人負担です。相続登記は専門知識が必要なため、司法書士に依頼することをおすすめします。

よくある質問

Q1相続登記をせずにマンションを売却することはできますか?

A1相続登記を完了しなければ売却登記は進められません。2024年4月から相続登記が義務化され、相続を知った日から3年以内に申請しないと10万円以下の過料が科されます。まず相続登記を完了させることが必須です。相続登記には、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本、遺産分割協議書(相続人全員の実印押印)などが必要です。

Q2遺産分割協議がまとまらない場合、マンションは売却できませんか?

A2法定相続分での相続登記は可能ですが、その後の売却には相続人全員の同意が必要です。遺産分割協議がまとまらない場合、家庭裁判所の調停・審判を経て売却する方法もあります。実務上、法定相続分での相続登記を行い、その後に相続人全員で売却するケースもあります。速やかに売却したい場合は、遺産分割で単独登記することが推奨されます。

Q3相続登記と売却登記を同時に行うことはできますか?

A3相続登記と売却登記を同日に申請することは可能ですが、法務局では相続登記を先に処理してから売却登記を行います。実務では、相続登記完了後に売却登記を申請する方が確実です。同日申請の場合は、司法書士への委任が不可欠です。相続登記完了まで通常1〜2週間、その後に売却登記を申請します。

Q4相続登記の登録免許税と売却登記の登録免許税はどちらが高いですか?

A4相続登記は固定資産税評価額の0.4%、売買による所有権移転登記は2%(土地は1.5%)です。売却登記の方が5倍高くなります。例えば、評価額2,000万円のマンションの場合、相続登記は8万円、売却登記は34万円です。ただし、売却登記の登録免許税と司法書士報酬は買主負担が慣例です。相続登記の費用は相続人負担です。

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