買い替え売却マンションの登記・名義変更|完全ガイド

公開日: 2025/10/19

マンション売却時の登記手続きとは

マンションを売却する際には、所有権を買主に移転するための登記手続きが必要です。登記は不動産の権利関係を法務局の登記簿に記録する法的手続きで、売主・買主双方の権利を保護する重要な役割を果たします。

買い替えでマンションを売却する場合、売却登記と購入登記を同日に行う「同時決済」が一般的です。本記事では、買い替えに伴うマンション売却時の登記手続きの全体像から、必要書類、費用、よくあるトラブルまで、実務上重要なポイントを詳しく解説します。

この記事のポイント:

  • 売却時には所有権移転登記と抵当権抹消登記が必要
  • 登記手続きは通常、司法書士が代行する
  • 登録免許税は買主負担、抵当権抹消費用は売主負担が一般的
  • 買い替えの場合、売却と購入の決済を同日に行うことが多い
  • 登記完了まで通常1〜2週間かかる

不動産登記の基本知識

登記とは

登記とは、不動産の権利関係を法務局の登記簿に記録する法的手続きです(法務局 不動産登記の申請手続)。登記簿には、不動産の所在地、面積、所有者、抵当権などの権利関係が記録されています。

登記は法的に義務付けられているわけではありませんが、登記しないと第三者に対抗できないため、実務上は必ず行われます。

登記の目的と重要性

登記の主な目的は以下の通りです:

  1. 権利の公示: 不動産の所有者や権利関係を公にする
  2. 取引の安全: 買主が安心して不動産を取得できる
  3. 権利の保護: 登記により第三者に対抗できる

買い替えでマンションを売却する場合、売却登記を完了しないと買主が所有権を取得できず、同時に購入する新居のローンも実行されない可能性があります。

登記簿の種類

不動産登記簿は、以下の3つの部分から構成されています:

  • 表題部: 不動産の所在地、面積、構造などの物理的情報
  • 甲区: 所有権に関する事項(所有者、差押え、仮登記など)
  • 乙区: 所有権以外の権利(抵当権、地上権など)

売却時には、甲区の所有権移転登記と、乙区の抵当権抹消登記を行います。

登記の種類と手続きフロー

所有権移転登記(売却時)

所有権移転登記は、不動産の売買により所有者が変わったことを登記簿に記録する手続きです(法務局 所有権移転登記)。

申請人:

  • 登記権利者(買主)と登記義務者(売主)の共同申請
  • 実務上は司法書士が両者の代理人として申請

申請時期:

  • 決済日(残代金支払日)と同日に申請するのが一般的

登録免許税:

  • 固定資産税評価額の2%(土地は1.5%)
  • 買主負担が慣例

抵当権抹消登記

抵当権抹消登記は、住宅ローン完済により金融機関の抵当権を消滅させる登記手続きです(法務局 抵当権抹消登記)。

申請人:

  • 抵当権設定者(所有者)が単独で申請
  • 実務上は司法書士に委任

申請時期:

  • 住宅ローン完済後、速やかに申請
  • 売却の場合は決済日に所有権移転登記と同時申請

登録免許税:

  • 不動産1個につき1,000円
  • 売主負担

登記手続きの流れ

買い替えでマンションを売却する場合の登記手続きの流れは以下の通りです:

  1. 売買契約締結: 売主・買主間で売買契約を締結
  2. 司法書士への委任: 登記手続きを司法書士に委任
  3. 必要書類の準備: 売主が権利証、印鑑証明書などを準備
  4. 決済日: 残代金支払いと同時に登記申請書類を司法書士に渡す
  5. 登記申請: 司法書士が決済日当日または翌日に法務局へ申請
  6. 登記完了: 通常1〜2週間後に登記が完了
  7. 登記識別情報の受領: 買主が新しい登記識別情報(権利証)を受け取る

買い替えの場合、売却の決済と購入の決済を同日に行い、午前中に売却登記、午後に購入登記を申請するケースが多いです。

必要書類と費用

売主が準備する書類

売主が準備する必要書類は以下の通りです:

  1. 登記済証または登記識別情報: 所有権を証明する書類(いわゆる「権利証」)
  2. 印鑑証明書: 発行後3ヶ月以内のもの
  3. 実印: 売買契約書や委任状に押印
  4. 固定資産税評価証明書: 登録免許税の計算に使用
  5. 本人確認書類: 運転免許証、パスポートなど
  6. 住民票: 登記上の住所と現住所が異なる場合

抵当権抹消に必要な書類(金融機関から受け取る):

  • 抵当権解除証書
  • 登記済証または登記識別情報(抵当権設定時のもの)
  • 委任状

登録免許税の計算

登録免許税は、固定資産税評価額に税率を乗じて計算します(国税庁 登録免許税の税額表)。

所有権移転登記(売買):

  • 土地:固定資産税評価額 × 1.5%(2026年3月31日まで軽減)
  • 建物:固定資産税評価額 × 2%

抵当権抹消登記:

  • 不動産1個につき1,000円
  • マンションの場合、土地(敷地権)と建物で2,000円

例:固定資産税評価額2,000万円(土地1,200万円、建物800万円)のマンションの場合

  • 土地:1,200万円 × 1.5% = 18万円
  • 建物:800万円 × 2% = 16万円
  • 抵当権抹消:2,000円
  • 合計:約34.2万円

登録免許税は買主負担が慣例ですが、抵当権抹消の登録免許税(2,000円)は売主負担です。

司法書士報酬の相場

司法書士報酬は自由化されており、地域や物件により異なりますが、以下が相場です:

  • 所有権移転登記: 5〜10万円
  • 抵当権抹消登記: 1〜3万円
  • 買い替えの場合(売却+購入): 10〜20万円

司法書士報酬は、登録免許税とは別に発生します。所有権移転登記の司法書士報酬は買主負担、抵当権抹消の司法書士報酬は売主負担が一般的です。

登記申請の方法

オンライン申請と書面申請

登記申請には、オンライン申請と書面申請の2つの方法があります:

  • オンライン申請: インターネットで登記申請書を送信する方法。登録免許税が5,000円減額される特典あり
  • 書面申請: 法務局の窓口または郵送で登記申請書を提出する方法

実務上、司法書士はオンライン申請を利用するケースが多いです。

司法書士への委任

登記申請は本人でも可能ですが、以下の理由から司法書士に委任するのが一般的です:

  1. 専門知識が必要: 登記申請書の作成や必要書類の準備に専門知識が必要
  2. 時間の節約: 平日に法務局へ出向く必要がある
  3. 取引の安全: 決済日当日に登記を完了させる必要があり、ミスが許されない

特に買い替えの場合、売却と購入の登記を同日に行う必要があるため、司法書士への委任が不可欠です。

申請から完了までの期間

登記申請から完了までの期間は、通常1〜2週間です。繁忙期(3月、9月)は2〜3週間かかる場合もあります。

登記完了後、買主には新しい登記識別情報(12桁の英数字)が発行されます。売主は特に受け取る書類はありませんが、登記事項証明書を取得して登記が正しく完了したことを確認することができます(法務局 登記事項証明書の請求)。

よくあるトラブルと対処法

書類不備による遅延

登記申請書類に不備があると、法務局から補正指示が出され、登記が遅延します。よくある不備は以下の通りです:

  • 印鑑証明書の有効期限切れ(3ヶ月以内)
  • 登記上の住所と現住所の不一致(住所変更登記が必要)
  • 権利証の紛失(事前通知制度または本人確認情報の作成が必要)

買い替えの場合、売却登記が遅延すると購入登記も遅れ、引越しスケジュールに影響するため、事前に司法書士と十分に打ち合わせることが重要です。

登記漏れのリスク

抵当権抹消登記を失念すると、以下のリスクがあります:

  • 登記簿に抵当権が残ったままになる
  • 次の買主が住宅ローンを組めない可能性がある
  • 将来、金融機関の協力が得られず抹消できない場合がある

住宅ローン完済後は、速やかに抵当権抹消登記を行うことが重要です。売却時には必ず抵当権抹消登記を完了させる必要があります。

登記内容の確認方法

登記が正しく完了したかを確認する方法は以下の通りです:

  1. 登記事項証明書の取得: 法務局の窓口またはオンラインで取得(手数料600円)
  2. 登記内容の確認: 所有者名、抵当権の有無などを確認
  3. 登記識別情報の確認: 買主は新しい登記識別情報を受け取る

オンライン請求の場合、手数料が480円に減額されます。

専門家の活用

司法書士への依頼メリット

司法書士に登記を依頼するメリットは以下の通りです:

  1. 専門知識: 登記手続きに精通しており、ミスがない
  2. 時間の節約: 平日に法務局へ出向く必要がない
  3. 取引の安全: 決済日当日に登記を完了させ、買主の権利を保護
  4. トラブル対応: 書類不備や権利証紛失などのトラブルに対応できる

特に買い替えの場合、売却と購入の登記を同日に行う必要があるため、司法書士への依頼が不可欠です。

費用を抑えるポイント

司法書士報酬を抑えるポイントは以下の通りです:

  1. 複数の司法書士に見積もり依頼: 報酬は自由化されているため、比較検討が可能
  2. 不動産会社の紹介: 不動産会社と提携している司法書士は報酬が抑えられている場合がある
  3. 抵当権抹消のみ自分で行う: 所有権移転登記は司法書士に依頼し、抵当権抹消のみ自分で行う

ただし、買い替えの場合は同日決済が必要なため、費用を抑えるより安全性を優先すべきです。

自分で登記する場合の注意点

登記を自分で行うことも可能ですが、以下の注意点があります:

  1. 専門知識が必要: 登記申請書の作成や必要書類の準備に専門知識が必要
  2. 時間がかかる: 平日に法務局へ出向く必要がある
  3. ミスのリスク: 書類不備により登記が遅延する可能性がある
  4. 売買では困難: 決済日当日に登記を完了させる必要があり、実務上は司法書士への委任が一般的

抵当権抹消登記のみ自分で行うことは可能ですが、所有権移転登記は司法書士に依頼することをおすすめします。

まとめ

買い替えでマンションを売却する際には、所有権移転登記と抵当権抹消登記が必要です。登記手続きは通常、司法書士が代行し、決済日当日に登記申請を行います。登録免許税は買主負担、抵当権抹消費用は売主負担が一般的です。

買い替えの場合、売却と購入の決済を同日に行う「同時決済」が一般的で、午前中に売却登記、午後に購入登記を申請するケースが多いです。登記完了まで通常1〜2週間かかるため、引越しスケジュールに余裕を持つことが重要です。

登記は不動産取引の最終段階で行われる重要な手続きです。書類不備や登記漏れを防ぐため、事前に司法書士と十分に打ち合わせ、必要書類を早めに準備することをおすすめします。

よくある質問

Q1売却時の登記手続きは誰が行いますか?

A1通常は司法書士が代行します。売主は権利証(登記識別情報)、印鑑証明書、固定資産税評価証明書などを準備します。登記費用(登録免許税と司法書士報酬)は買主負担が一般的ですが、抵当権抹消費用は売主負担です。決済日当日に司法書士が必要書類を受け取り、法務局へ登記申請を行います。

Q2登録免許税はどのくらいかかりますか?

A2所有権移転登記は固定資産税評価額の2%(土地は1.5%)です。抵当権抹消登記は不動産1個につき1,000円です。例えば、固定資産税評価額2,000万円(土地1,200万円、建物800万円)のマンションの場合、所有権移転登記が34万円、抵当権抹消が2,000円です。軽減措置が適用される場合もあります。

Q3登記を自分で行うことはできますか?

A3可能ですが、書類準備や法務局への申請手続きに専門知識が必要です。特に売買では決済と同日に登記を完了させる必要があり、司法書士への委任が一般的です。費用は所有権移転登記が5-10万円、抵当権抹消が1-3万円程度です。買い替えの場合は同日決済が必要なため、司法書士への依頼が不可欠です。

Q4抵当権抹消登記を忘れるとどうなりますか?

A4抵当権が登記簿に残ったままだと、次の買主が住宅ローンを組めない可能性があります。将来、金融機関の協力が得られず抹消できない場合もあります。売却時には必ず抵当権抹消登記を完了させる必要があります。住宅ローン完済後は、金融機関から抵当権解除証書などの書類を受け取り、速やかに抹消登記を行うことが重要です。

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