離婚時マンション売却の登記手続き|共有名義・財産分与ガイド

公開日: 2025/10/14

離婚時のマンション売却と登記の基本

離婚に伴いマンションを売却する際、登記手続きは財産分与と密接に関係します。特に共有名義の場合は全共有者の同意が必要であり、手続きの順序や方法により費用や期間が大きく変わります。

法務省の資料によれば、不動産登記は不動産の所在・面積・所有者などを公示する制度で、所有権移転には登記が不可欠です。

(1) 離婚と不動産登記の関係

離婚時のマンション売却では、以下の2つの登記方法があります:

  • 共有名義のまま売却:夫婦共同で買主に所有権移転
  • 財産分与で単独名義にしてから売却:まず一方に財産分与による移転登記、その後買主に売却

民法第768条によれば、財産分与は離婚時の財産清算の一環であり、不動産の名義変更も可能です。ただし、売却が目的の場合、共有名義のまま売却する方が効率的です。

(2) 共有名義と単独名義の違い

共有名義

  • 登記簿に夫婦それぞれの持分割合が記載(例:持分2分の1ずつ)
  • 売却には全共有者の同意が必要
  • 各自の実印・印鑑証明書が必要

単独名義

  • 登記簿に1名のみが所有者として記載
  • 単独で売却可能

マンションを購入時に夫婦で住宅ローンを組んだ場合、共有名義となっているケースが多くあります。

(3) 離婚前・離婚後の売却タイミング

離婚前でもマンションの売却は可能です。共有名義のまま売却し、売却代金を離婚協議に基づき分配する方法が一般的です。

離婚前の売却メリット

  • 財産分与の手続きがシンプル(現金を分配)
  • 登記手続きが一度で完了(共有名義→買主)

離婚後の売却

  • 離婚協議で財産分与方法を明確化してから売却
  • 時間をかけて売却活動が可能

共有名義マンションの売却登記の流れ

共有名義のマンションを売却する場合、全共有者が売主として登記手続きに関与します。

(1) 共有名義のまま売却する場合

法務局の資料によれば、共有名義不動産の売却では、全共有者が共同で売買契約を締結し、所有権移転登記を申請します。

手続きの流れ:

  1. 夫婦で売買契約書に署名・押印
  2. 決済日に売買代金を受領
  3. 司法書士が所有権移転登記を申請
  4. 売却代金を離婚協議に基づき分配

(2) 全共有者の同意と必要書類

共有名義不動産の売却には、全共有者の同意が必須です。一方の同意のみでは所有権移転登記は進められません。

全共有者が準備する書類

  • 権利証または登記識別情報(共有者それぞれ)
  • 印鑑証明書(発行後3ヶ月以内、各自)
  • 実印(各自)
  • 本人確認書類(運転免許証など、各自)

別居中で連絡が取りにくい場合でも、売却には双方の協力が必要です。

(3) 持分移転登記の手続き

共有名義のまま売却する場合、各共有者の持分が同時に買主に移転します。登記簿には「持分全部移転」として記録されます。

財産分与による所有権移転登記と売却登記の選択

離婚時のマンション処分では、財産分与による名義変更と売却という2つの選択肢があります。

(1) 財産分与を原因とする登記とは

財産分与による所有権移転登記は、離婚協議に基づき、共有持分の全部または一部を相手方に移転する登記です。

民法第768条に基づく財産分与は、贈与税の対象外です(過度に高額でない限り)。登記原因は「財産分与」となります。

(2) 登録免許税の違い(財産分与2% vs 売買2%)

国税庁の資料によれば、登録免許税の税率は以下の通りです:

  • 財産分与による移転:固定資産税評価額の2%
  • 売買による移転:固定資産税評価額の2%(土地は軽減税率1.5%)

税率は同じですが、手続きが二度必要になる場合、費用が二重に発生します。

(3) どちらの手続きを選ぶべきか

売却目的の場合: 共有名義のまま売却する方が効率的です。財産分与で単独名義にしてから売却すると、以下のデメリットがあります:

  • 登記手続きが二度必要(財産分与→売却)
  • 登録免許税と司法書士報酬が二重に発生
  • 時間がかかる

一方が住み続ける場合: 財産分与により単独名義にすることで、住み続ける側が単独で所有できます。

住宅ローンと抵当権抹消の手続き

離婚時のマンション売却では、住宅ローンの処理が重要です。

(1) 連帯債務・連帯保証の解消

夫婦で住宅ローンを組んだ場合、以下の形態があります:

  • 連帯債務:夫婦それぞれが債務者。各自が全額の返済義務
  • 連帯保証:一方が債務者、他方が連帯保証人

売却代金でローンを完済すれば、連帯債務・連帯保証の関係も自動的に解消されます。

(2) 売却代金による一括返済と抵当権抹消

売却時の手続きの流れ:

  1. 売買契約締結
  2. 決済日に売買代金を受領
  3. 受領した代金で住宅ローンを一括返済
  4. 金融機関から抵当権抹消書類を受領
  5. 抵当権抹消登記と所有権移転登記を同時申請

法務省の資料によれば、抵当権抹消登記は債務完済後に債権者(金融機関)と債務者が共同で申請します。実務では司法書士が代行します。

(3) 債務者変更が認められない場合

住宅ローンが残っている状態で一方が住み続ける場合、債務者変更または連帯保証解除が必要ですが、金融機関の承認が得られない場合があります。

この場合、売却により完済し、財産を分配する方が確実です。

登記にかかる費用と必要書類

離婚時のマンション売却登記では、登録免許税と司法書士報酬が発生します。

(1) 登録免許税と司法書士報酬

登録免許税

  • 所有権移転登記:固定資産税評価額の2%(買主負担が一般的)
  • 抵当権抹消登記:不動産1個につき1,000円(売主負担)

司法書士報酬

  • 所有権移転登記:3〜5万円
  • 抵当権抹消登記:1〜2万円

共有名義の売却でも、司法書士報酬は通常の売却と同程度です。

(2) 離婚協議書・公正証書の作成

売却代金の分配方法を明確化するため、離婚協議書の作成が推奨されます。公正証書にすることで、より確実に合意内容を記録できます。

日本公証人連合会によれば、公正証書作成費用は財産額により異なりますが、数万円程度が一般的です。

(3) 必要書類の準備タイミング

決済日の1週間前には、以下の書類を揃えておくことが推奨されます:

  • 権利証または登記識別情報(共有者全員分)
  • 印鑑証明書(発行後3ヶ月以内、全員分)
  • 離婚協議書または公正証書
  • 固定資産税評価証明書

別居中でも、書類の受け渡しは司法書士や不動産会社を通じて行えます。

離婚時のマンション売却登記でよくある質問

離婚時のマンション売却では、特有の疑問が生じます。以下、よくある質問に回答します。

登記手続きの専門家への依頼

離婚に伴うマンション売却では、司法書士への依頼が推奨されます。共有名義の売却、抵当権抹消、財産分与など複雑な要素が絡むため、専門家の関与により確実に手続きを進められます。

登記完了後の確認

登記完了後、登記簿謄本を取得して内容を確認することが重要です。所有者が買主に変更され、抵当権が抹消されていることを確認してください。

まとめ

離婚時のマンション売却における登記手続きは、共有名義の場合、全共有者の同意が必要です。売却目的であれば、共有名義のまま売却する方が効率的で、財産分与で単独名義にしてから売却すると登記手続きが二度必要になり費用と時間がかかります。住宅ローンが残っている場合、売却代金で一括返済し、抵当権抹消登記と所有権移転登記を同時に行います。離婚前でも売却は可能で、売却代金を離婚協議に基づき分配する方法が一般的です。登録免許税は固定資産税評価額の2%で、司法書士報酬と合わせて数万円〜十数万円の費用が発生します。離婚協議書や公正証書で売却代金の分配方法を明確化し、司法書士に依頼することで確実な手続きが可能です。

よくある質問

Q1共有名義のマンションを離婚時に売却する場合、どちらか一方の同意だけで登記できますか?

A1共有名義不動産の売却には全共有者の同意が必要です。売買契約書への署名・実印押印、印鑑証明書の提出が全員分必須となります。一方の同意のみでは所有権移転登記は進められません。法務局の資料によれば、共有名義不動産の売却では全共有者が共同で登記申請を行う必要があります。別居中でも、司法書士や不動産会社を通じて書類の受け渡しを行い、双方の協力により手続きを進めます。

Q2財産分与による名義変更と売却、どちらを先に行うべきですか?

A2売却目的の場合、共有名義のまま売却する方が効率的です。財産分与で単独名義にしてから売却すると、登記手続きが二度必要になり、登録免許税と司法書士報酬が二重に発生します。また、手続きに時間がかかります。共有名義のまま売却し、売却代金を離婚協議に基づき分配する方法が一般的です。ただし、一方が住み続ける場合は財産分与により単独名義にする選択もあります。

Q3離婚前にマンションを売却した場合、登記手続きに影響はありますか?

A3離婚前でも売却可能です。共有名義のまま売却し、売却代金を離婚協議に基づき分配する方法が一般的です。登記手続き上は通常の共有名義売却と同じで、夫婦で売買契約書に署名・押印し、決済日に所有権移転登記を行います。ただし、売却代金の分配割合については離婚協議書で明確化しておくことが重要です。公正証書にすることで、より確実に合意内容を記録できます。

Q4住宅ローンが残っている共有名義マンションの売却登記はどうなりますか?

A4売却代金で住宅ローンを一括返済し、同時に抵当権抹消登記を行うのが通常です。連帯債務・連帯保証の場合、売却による完済で自動的に解消されます。決済日に抵当権抹消と所有権移転を同時に履行します。法務省の資料によれば、抵当権抹消登記は債務完済後に債権者(金融機関)と債務者が共同で申請し、実務では司法書士が代行します。売却代金でローンを完済できない場合は、自己資金を補填する必要があります。

関連記事