土地購入の登記とは?建物購入との違い
土地を購入した際、所有権を法的に確定させるために必要なのが所有権移転登記です。建物を購入する場合とは異なり、土地の登記には地目(ちもく)や地積(ちせき)、**境界(きょうかい)**といった土地特有の登記事項があります。
土地購入の登記で押さえておくべきポイント:
- 地目は23種類(宅地、田、畑、山林など)で、実際の用途と一致していることが重要
- 地積は実測面積と登記簿の面積が異なる場合があり、測量が必要なケースも
- 境界確定は必須ではないが、隣地とのトラブル防止のため推奨
- 登録免許税は2%(住宅用地は2027年3月31日まで1.5%に軽減)
- 農地の場合は農地法の許可が必要で、登記前に手続きが必要
土地特有の登記事項を理解する
土地の登記簿には、建物にはない特有の記載事項があります。購入前に登記簿謄本(登記事項証明書)を確認し、これらの内容を理解しておきましょう。
地目(ちもく)とは
地目とは、土地の用途を示す登記事項で、全23種類に分類されます。
地目 | 内容 |
---|---|
宅地 | 建物の敷地および庭・駐車場 |
田 | 水を利用して耕作する土地 |
畑 | 水を利用せず耕作する土地 |
山林 | 耕作や宅地でない樹木の生育する土地 |
原野 | 耕作や宅地に利用されていない草地 |
雑種地 | 上記以外の土地(駐車場など) |
重要:地目が実際の用途と異なる場合、現況が変わってから1ヶ月以内に地目変更登記を申請する義務があります(不動産登記法第37条)。
地積(ちせき)とは
地積とは、土地の面積のことです。登記簿に記載されている面積が「公簿面積」、実際に測量した面積が「実測面積」です。
注意すべきケース:
- 古い土地では、公簿面積と実測面積に10%以上の差がある場合も
- 売買契約で「公簿売買」(公簿面積で取引)か「実測売買」(実測面積で取引)かを確認
- 実測売買の場合、測量費用(30-80万円)が必要
土地の境界が未確定の場合、隣地所有者との境界確定作業も必要になります。
境界(きょうかい)の確認
土地の境界が明確でないと、将来的に隣地とトラブルになる可能性があります。売買契約時に「境界確定測量」を実施することが推奨されます。
境界確定の流れ:
- 土地家屋調査士に測量を依頼
- 隣地所有者の立ち会いを求める
- 境界標(杭)を設置
- 境界確認書に署名・押印
- 測量図を法務局に提出
費用は40-100万円程度ですが、将来のトラブル防止のため、売主負担で実施してもらうケースが一般的です。
所有権移転登記の流れ(土地購入)
土地購入時の所有権移転登記は、以下の流れで進みます。
ステップ | 内容 | 所要期間 |
---|---|---|
1. 登記簿の確認 | 地目・地積・権利関係を確認 | 購入前 |
2. 境界確定(任意) | 測量・境界確定を実施 | 1-3ヶ月 |
3. 売買契約締結 | 重要事項説明・契約書締結 | 1日 |
4. 融資申し込み | 土地購入ローンの審査 | 1-3週間 |
5. 決済・引き渡し | 残代金決済と同時に所有権移転 | 1日 |
6. 登記申請 | 司法書士が法務局へ申請 | 即日 |
7. 登記完了 | 登記識別情報の受領 | 1-2週間 |
決済日に、以下の登記を同時に行います:
- 所有権移転登記(売主→買主)
- 抵当権設定登記(買主→金融機関、ローン利用時)
- 抵当権抹消登記(売主のローンが残っている場合)
- 地目変更登記(必要な場合)
登記費用と税制(土地購入)
土地購入時の登記費用は、登録免許税と司法書士報酬の2つで構成されます。
登録免許税の計算
登記の種類 | 税率(原則) | 軽減税率 |
---|---|---|
所有権移転(土地) | 2.0% | 1.5%(2027年3月31日まで) |
抵当権設定 | 0.4% | 0.1%(住宅用家屋のみ) |
軽減措置の要件:
住宅用地として購入する場合、以下の要件を満たせば軽減税率1.5%が適用されます:
- 住宅を建築する目的で取得
- 取得後1年以内に住宅を新築
- 床面積50㎡以上
計算例:
固定資産税評価額2,000万円の土地を住宅用として購入する場合:
- 軽減あり:2,000万円 × 1.5% = 30万円
- 軽減なし:2,000万円 × 2.0% = 40万円
差額10万円の節税効果があります。
司法書士報酬の相場
土地購入の登記は、以下の報酬が目安です:
- 所有権移転登記:5-8万円
- 抵当権設定登記:3-5万円
- 合計:8-13万円程度
測量や境界確定が必要な場合、土地家屋調査士への報酬(40-100万円)も別途かかります。
農地を購入する場合の注意点
土地の地目が「田」「畑」などの農地の場合、購入には農地法の許可が必要です。許可なしで売買契約を結んでも、所有権移転登記ができません。
農地法の規制
農地法第3条:農地を農地として売買する場合
- 農業委員会の許可が必要
- 買主は農業従事者であることが条件
農地法第5条:農地を宅地に転用して売買する場合
- 都道府県知事(または農林水産大臣)の許可が必要
- 市街化区域内は届出のみで可
農地転用の流れ
- 農業委員会に転用許可申請
- 許可が下りるまで1-2ヶ月
- 許可後、売買契約締結
- 決済・所有権移転登記
- 地目変更登記(田・畑→宅地)
農地転用許可が下りない場合もあるため、売買契約書に「許可が下りない場合は契約解除」という特約を入れることが重要です。
建物建築予定時の登記の注意点
土地を購入して住宅を建築する場合、以下のタイミングで複数の登記が必要になります。
土地購入時
- 所有権移転登記(土地)
- 抵当権設定登記(土地、ローン利用時)
建物完成時
- 建物表題登記(新築建物の登記簿作成)
- 所有権保存登記(建物の所有者を登記)
- 抵当権設定登記(建物、住宅ローン利用時)
注意点:
- 土地購入時と建物完成時で2回に分けて登記費用がかかる
- つなぎ融資を利用する場合、土地と建物で別々に抵当権を設定
- 建築条件付き土地の場合、建物プランが確定してから登記手続きを進める
登記完了後の確認事項
登記が完了したら、以下を確認しましょう:
登記識別情報の確認
登記完了後、法務局から登記識別情報通知が交付されます。これは従来の「権利証」に代わるもので、12桁の英数字が記載されています。
重要:
- 再発行不可のため、厳重に保管
- 将来の売却時に必要
- 紛失した場合、本人確認手続きが必要(司法書士による本人確認・公証人による認証など)
登記事項証明書の取得
登記完了後、法務局で登記事項証明書(登記簿謄本)を取得し、以下を確認します:
- 所有者の氏名・住所が正しく記載されているか
- 地目が正しいか(変更登記を行った場合)
- 抵当権の設定内容が正しいか
- 地積・境界が正確か
誤りがあれば、速やかに司法書士に連絡して更正登記を申請しましょう。
まとめ
土地購入の登記は、建物購入と比べて「地目」「地積」「境界」といった土地特有の確認事項が多く、専門知識が必要です。特に農地を購入する場合は、農地法の許可が必須で、登記前に手続きが必要になります。
登記手続き自体は司法書士に依頼するのが一般的ですが、購入前に登記簿謄本を確認し、地目や境界の状況を把握しておくことが重要です。測量や境界確定が必要な場合は、売主負担で実施してもらうよう交渉することをおすすめします。
土地購入後に建物を建築する場合、登記は2回に分けて行われるため、それぞれのタイミングで登記費用が発生します。全体の資金計画を立てる際は、登記費用も含めて検討しましょう。