土地購入の登記・名義変更|地目・地積・境界の基礎知識

公開日: 2025/10/20

土地購入の登記とは?建物購入との違い

土地を購入した際、所有権を法的に確定させるために必要なのが所有権移転登記です。建物を購入する場合とは異なり、土地の登記には地目(ちもく)地積(ちせき)、**境界(きょうかい)**といった土地特有の登記事項があります。

土地購入の登記で押さえておくべきポイント:

  • 地目は23種類(宅地、田、畑、山林など)で、実際の用途と一致していることが重要
  • 地積は実測面積と登記簿の面積が異なる場合があり、測量が必要なケースも
  • 境界確定は必須ではないが、隣地とのトラブル防止のため推奨
  • 登録免許税は2%(住宅用地は2027年3月31日まで1.5%に軽減)
  • 農地の場合は農地法の許可が必要で、登記前に手続きが必要

土地特有の登記事項を理解する

土地の登記簿には、建物にはない特有の記載事項があります。購入前に登記簿謄本(登記事項証明書)を確認し、これらの内容を理解しておきましょう。

地目(ちもく)とは

地目とは、土地の用途を示す登記事項で、全23種類に分類されます。

地目 内容
宅地 建物の敷地および庭・駐車場
水を利用して耕作する土地
水を利用せず耕作する土地
山林 耕作や宅地でない樹木の生育する土地
原野 耕作や宅地に利用されていない草地
雑種地 上記以外の土地(駐車場など)

重要:地目が実際の用途と異なる場合、現況が変わってから1ヶ月以内に地目変更登記を申請する義務があります(不動産登記法第37条)。

地積(ちせき)とは

地積とは、土地の面積のことです。登記簿に記載されている面積が「公簿面積」、実際に測量した面積が「実測面積」です。

注意すべきケース:

  • 古い土地では、公簿面積と実測面積に10%以上の差がある場合も
  • 売買契約で「公簿売買」(公簿面積で取引)か「実測売買」(実測面積で取引)かを確認
  • 実測売買の場合、測量費用(30-80万円)が必要

土地の境界が未確定の場合、隣地所有者との境界確定作業も必要になります。

境界(きょうかい)の確認

土地の境界が明確でないと、将来的に隣地とトラブルになる可能性があります。売買契約時に「境界確定測量」を実施することが推奨されます。

境界確定の流れ:

  1. 土地家屋調査士に測量を依頼
  2. 隣地所有者の立ち会いを求める
  3. 境界標(杭)を設置
  4. 境界確認書に署名・押印
  5. 測量図を法務局に提出

費用は40-100万円程度ですが、将来のトラブル防止のため、売主負担で実施してもらうケースが一般的です。

所有権移転登記の流れ(土地購入)

土地購入時の所有権移転登記は、以下の流れで進みます。

ステップ 内容 所要期間
1. 登記簿の確認 地目・地積・権利関係を確認 購入前
2. 境界確定(任意) 測量・境界確定を実施 1-3ヶ月
3. 売買契約締結 重要事項説明・契約書締結 1日
4. 融資申し込み 土地購入ローンの審査 1-3週間
5. 決済・引き渡し 残代金決済と同時に所有権移転 1日
6. 登記申請 司法書士が法務局へ申請 即日
7. 登記完了 登記識別情報の受領 1-2週間

決済日に、以下の登記を同時に行います:

  1. 所有権移転登記(売主→買主)
  2. 抵当権設定登記(買主→金融機関、ローン利用時)
  3. 抵当権抹消登記(売主のローンが残っている場合)
  4. 地目変更登記(必要な場合)

登記費用と税制(土地購入)

土地購入時の登記費用は、登録免許税司法書士報酬の2つで構成されます。

登録免許税の計算

登記の種類 税率(原則) 軽減税率
所有権移転(土地) 2.0% 1.5%(2027年3月31日まで)
抵当権設定 0.4% 0.1%(住宅用家屋のみ)

軽減措置の要件:

住宅用地として購入する場合、以下の要件を満たせば軽減税率1.5%が適用されます:

  • 住宅を建築する目的で取得
  • 取得後1年以内に住宅を新築
  • 床面積50㎡以上

計算例:

固定資産税評価額2,000万円の土地を住宅用として購入する場合:

  • 軽減あり:2,000万円 × 1.5% = 30万円
  • 軽減なし:2,000万円 × 2.0% = 40万円

差額10万円の節税効果があります。

司法書士報酬の相場

土地購入の登記は、以下の報酬が目安です:

  • 所有権移転登記:5-8万円
  • 抵当権設定登記:3-5万円
  • 合計:8-13万円程度

測量や境界確定が必要な場合、土地家屋調査士への報酬(40-100万円)も別途かかります。

農地を購入する場合の注意点

土地の地目が「田」「畑」などの農地の場合、購入には農地法の許可が必要です。許可なしで売買契約を結んでも、所有権移転登記ができません。

農地法の規制

農地法第3条:農地を農地として売買する場合

  • 農業委員会の許可が必要
  • 買主は農業従事者であることが条件

農地法第5条:農地を宅地に転用して売買する場合

  • 都道府県知事(または農林水産大臣)の許可が必要
  • 市街化区域内は届出のみで可

農地転用の流れ

  1. 農業委員会に転用許可申請
  2. 許可が下りるまで1-2ヶ月
  3. 許可後、売買契約締結
  4. 決済・所有権移転登記
  5. 地目変更登記(田・畑→宅地)

農地転用許可が下りない場合もあるため、売買契約書に「許可が下りない場合は契約解除」という特約を入れることが重要です。

建物建築予定時の登記の注意点

土地を購入して住宅を建築する場合、以下のタイミングで複数の登記が必要になります。

土地購入時

  1. 所有権移転登記(土地)
  2. 抵当権設定登記(土地、ローン利用時)

建物完成時

  1. 建物表題登記(新築建物の登記簿作成)
  2. 所有権保存登記(建物の所有者を登記)
  3. 抵当権設定登記(建物、住宅ローン利用時)

注意点:

  • 土地購入時と建物完成時で2回に分けて登記費用がかかる
  • つなぎ融資を利用する場合、土地と建物で別々に抵当権を設定
  • 建築条件付き土地の場合、建物プランが確定してから登記手続きを進める

登記完了後の確認事項

登記が完了したら、以下を確認しましょう:

登記識別情報の確認

登記完了後、法務局から登記識別情報通知が交付されます。これは従来の「権利証」に代わるもので、12桁の英数字が記載されています。

重要:

  • 再発行不可のため、厳重に保管
  • 将来の売却時に必要
  • 紛失した場合、本人確認手続きが必要(司法書士による本人確認・公証人による認証など)

登記事項証明書の取得

登記完了後、法務局で登記事項証明書(登記簿謄本)を取得し、以下を確認します:

  • 所有者の氏名・住所が正しく記載されているか
  • 地目が正しいか(変更登記を行った場合)
  • 抵当権の設定内容が正しいか
  • 地積・境界が正確か

誤りがあれば、速やかに司法書士に連絡して更正登記を申請しましょう。

まとめ

土地購入の登記は、建物購入と比べて「地目」「地積」「境界」といった土地特有の確認事項が多く、専門知識が必要です。特に農地を購入する場合は、農地法の許可が必須で、登記前に手続きが必要になります。

登記手続き自体は司法書士に依頼するのが一般的ですが、購入前に登記簿謄本を確認し、地目や境界の状況を把握しておくことが重要です。測量や境界確定が必要な場合は、売主負担で実施してもらうよう交渉することをおすすめします。

土地購入後に建物を建築する場合、登記は2回に分けて行われるため、それぞれのタイミングで登記費用が発生します。全体の資金計画を立てる際は、登記費用も含めて検討しましょう。

よくある質問

Q1土地の地目が「畑」ですが、住宅を建てられますか?

A1地目が「畑」(農地)の場合、住宅を建てるには農地法第5条に基づく転用許可が必要です。都道府県知事(または農林水産大臣)の許可を取得後、売買契約を締結し、所有権移転登記を行います。その後、地目変更登記で「畑」から「宅地」へ変更します。市街化区域内であれば届出のみで済みますが、許可には1-2ヶ月かかるため、売買契約書に「許可が下りない場合は契約解除」という特約を入れることが重要です。

Q2登記簿の面積と実測面積が違う場合、どうなりますか?

A2登記簿の面積(公簿面積)と実際の測量面積(実測面積)が異なる場合、売買契約で「公簿売買」か「実測売買」かを確認する必要があります。公簿売買なら面積の差は清算しませんが、実測売買なら差額を清算します。古い土地では10%以上の差がある場合もあるため、実測売買を希望する場合は測量費用(30-80万円)が必要です。トラブル防止のため、購入前に境界確定測量を実施することをおすすめします。

Q3土地購入の登録免許税はいくらかかりますか?

A3土地の所有権移転登記の登録免許税は、固定資産税評価額の2.0%が原則です。ただし、住宅用地として購入する場合、2027年3月31日まで1.5%に軽減されます。軽減を受けるには、取得後1年以内に床面積50㎡以上の住宅を新築することが要件です。例えば評価額2,000万円の土地なら、軽減ありで30万円、軽減なしで40万円となり、差額10万円の節税効果があります。

Q4境界確定測量は必ず必要ですか?

A4法律上は必須ではありませんが、境界が未確定の土地を購入すると、将来隣地とのトラブルになる可能性があります。売買契約時に「境界確定測量」を実施し、隣地所有者の立ち会いのもと境界標(杭)を設置し、境界確認書に署名・押印してもらうことが推奨されます。費用は40-100万円程度ですが、売主負担で実施してもらうよう交渉することが一般的です。

Q5土地購入と建物建築で登記は何回必要ですか?

A5土地購入時と建物完成時の2回に分けて登記が必要です。土地購入時には「所有権移転登記」と「抵当権設定登記」(ローン利用時)を行います。建物完成時には「建物表題登記」「所有権保存登記」「抵当権設定登記」(建物分)を行います。つなぎ融資を利用する場合、土地と建物で別々に抵当権を設定するため、登記費用も2回分かかる点に注意が必要です。

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