住み替え時の中古マンション購入と固定資産税の基本
住み替えで中古マンションを購入する際、固定資産税・都市計画税の負担はどうなるのか、旧居と新居で二重に税金を支払う必要があるのか――こうした疑問を持つ方は少なくありません。住み替えにおける税負担を正しく理解するには、固定資産税の課税基準日と納税義務者の仕組みを把握することが重要です。
本記事のポイント(結論要約)
- 固定資産税は1月1日時点の所有者に課税される(年の途中で購入しても納税義務は翌年から)
- 購入時は日割り精算で売主と税負担を按分するのが一般的な商慣行
- 1月1日をまたいで旧居と新居を所有すると二重課税期間が発生する
- マンションは専有面積按分で土地持分の評価額を算出し、住宅用地特例(1/6軽減)を適用
- 中古マンションは経年減価により評価額が低く、新築より税負担が少ない傾向
(1) 固定資産税の課税基準日と納税義務者
総務省の公式情報によると、固定資産税は毎年1月1日時点で土地・建物を所有している人に課される地方税です。標準税率は1.4%で、課税標準額(固定資産評価額)に税率を掛けて税額が決まります。
重要なのは1月1日の所有者が年間の納税義務者となる点です。たとえば6月に中古マンションを購入しても、その年度の固定資産税は前所有者(売主)が納付します。購入者は翌年1月1日以降に納税義務者となり、翌年6月頃に納税通知書が届きます。
(2) 都市計画税の課税対象
都市計画税は、都市計画事業や土地区画整理事業の費用に充てるための目的税です。税率は上限0.3%で、自治体の条例により決定されます。主に市街化区域内の土地・建物に課税されるため、市街化区域外のマンションは課税されない場合があります。
固定資産税と都市計画税は合わせて納付書が届くため、住み替え時の精算も両方を合算して日割り計算するのが一般的です。
マンション特有の固定資産税評価の仕組み
中古マンションの固定資産税は、専有部分と共用部分、土地持分を合算して算出されます。戸建てとは異なる評価方法を理解しておきましょう。
(1) 専有部分と共用部分の評価方法
国土交通省のマンション評価情報によると、マンション(区分所有建物)の固定資産税は以下の要素で算出されます。
- 専有部分: 各戸の室内部分(床・壁・天井等)の評価額
- 共用部分: エントランス・廊下・エレベーター等の評価額を専有面積で按分
- 土地: 敷地全体の評価額を各戸の土地持分比率で按分
専有面積が広いほど共用部分の按分額も大きくなり、税額が高くなる傾向があります。
(2) 土地持分に応じた評価額の算出
マンションの土地評価額は、敷地全体の評価額に自分の持分比率を掛けて算出します。例えば敷地評価額が10億円、自分の持分が1/100なら、土地部分の評価額は1,000万円です。
この土地評価額に住宅用地特例(小規模住宅用地は1/6)を適用し、課税標準額を算出します。
住宅用地特例とマンションでの適用方法
住宅用地には固定資産税・都市計画税の軽減措置があり、マンションでも適用されます。
(1) 小規模住宅用地の1/6軽減
総務省の住宅用地特例情報によると、住宅用地には以下の軽減措置があります。
区分 | 固定資産税 | 都市計画税 |
---|---|---|
小規模住宅用地(200㎡以下) | 評価額の1/6 | 評価額の1/3 |
一般住宅用地(200㎡超) | 評価額の1/3 | 評価額の2/3 |
(2) マンションでの専有面積按分計算
マンションの場合、敷地全体の面積ではなく、各戸の土地持分面積で判定します。例えば:
- 敷地面積: 3,000㎡
- 総戸数: 100戸
- 自分の持分: 1/100
- 土地持分面積: 3,000㎡ × 1/100 = 30㎡
30㎡は200㎡以下なので、小規模住宅用地として1/6軽減が適用されます。ほとんどのマンションは200㎡以下となるため、1/6軽減を受けられます。
購入時の固定資産税清算と日割り計算
中古マンションを購入する際、固定資産税・都市計画税は売主と買主が日割り精算するのが一般的です。
(1) 売主との按分精算の慣行
按分精算とは、購入時に売主と買主が固定資産税・都市計画税を日割り計算で負担を分け合う商慣行です。納税義務は売主にありますが、買主が引渡日以降の分を負担することで公平性を保ちます。
精算金は売買代金の一部として売主に支払われ、売主はその資金で固定資産税を納付します。この按分精算は法律で定められたものではなく、不動産取引の商慣行として定着しています。
(2) 起算日と清算金額の計算例
日割り計算の起算日には「1月1日起算」と「4月1日起算」の2パターンがあり、地域や不動産会社により異なります。
計算例(1月1日起算):
- 年間固定資産税: 12万円
- 引渡日: 7月1日
- 買主負担期間: 7月1日〜12月31日(184日間)
- 買主負担額: 12万円 × 184日 / 365日 = 約6.0万円
起算日により精算金額が数万円変わることもあるため、売買契約前に不動産会社に確認しましょう。
旧居と新居の二重課税リスクと対策
住み替えで最も気になるのが、旧居と新居の両方に固定資産税が課税される「二重課税期間」の有無です。
(1) 1月1日をまたぐ住み替えの税負担
固定資産税は1月1日時点の所有者に課税されるため、1月1日をまたいで旧居と新居を両方所有すると二重課税が発生します。例えば:
パターンA(二重課税あり): 2025年11月に新居購入、2026年3月に旧居売却
- 2026年1月1日時点: 旧居と新居を両方所有 → 両方の固定資産税を納付
パターンB(二重課税なし): 2025年3月に旧居売却、2025年6月に新居購入
- 2025年1月1日時点: 旧居のみ所有 → 旧居の固定資産税のみ納付(日割り精算で一部回収)
- 2026年1月1日時点: 新居のみ所有 → 新居の固定資産税のみ納付
(2) 引渡時期調整による負担軽減
二重課税を避けるには、以下のような引渡時期の調整が考えられます。
- 売り先行: 旧居を先に売却し、仮住まい期間を経て新居購入(二重課税回避)
- 買い先行: 新居を先に購入し、旧居を年内に売却(1月1日までに売却完了で二重課税回避)
ただし、税負担の最適化よりも資金計画や市場動向を優先すべきです。二重課税期間が1年程度なら、税負担増加を許容する選択肢もあります。
住み替え時の税制優遇と資金計画
住み替えで中古マンションを購入する際、税制優遇を活用して税負担を軽減できる場合があります。
(1) 住宅ローン控除の適用
中古マンション購入で住宅ローンを組む場合、住宅ローン控除を利用できます。適用要件は以下の通りです。
- 耐震基準適合証明書を取得(1982年以降の建物は不要)
- 床面積50㎡以上(登記簿面積)
- 借入期間10年以上
住宅ローン控除により年末ローン残高の0.7%が所得税・住民税から控除されます(控除期間10年)。
(2) 住み替えローンと固定資産税負担
住み替えローンを利用する場合、旧居の残債を新居のローンに上乗せできます。ただし、固定資産税はローンとは別に毎年納付が必要です。
東京都主税局の納付情報によると、固定資産税は年4回の分割払いが可能です(6月・9月・12月・翌年2月)。購入時の按分精算金はローンに含めず、自己資金で支払うのが一般的です。
まとめ
住み替え時の中古マンション購入における固定資産税・都市計画税について、課税の仕組み、マンション特有の評価方法、二重課税リスク、税制優遇を解説しました。
重要ポイントの再確認
- 固定資産税は1月1日時点の所有者に課税(年の途中で購入しても納税義務は翌年から)
- 購入時は日割り精算で売主と税負担を按分(起算日に注意)
- 1月1日をまたいで所有すると二重課税期間が発生(引渡時期調整で回避可能)
- マンションは専有面積按分で住宅用地特例(1/6軽減)を適用
- 中古マンションは経年減価により税負担が少ない傾向
固定資産税・都市計画税は住み替え時の重要な費用項目です。引渡時期の調整や税制優遇の活用により、税負担を最適化できる可能性があります。不動産会社や税理士と相談しながら、計画的に住み替えを進めましょう。