投資用中古戸建ての固定資産税・都市計画税の基本
投資用中古戸建ての購入を検討する際、固定資産税・都市計画税はランニングコストとして収支計画に大きく影響します。本記事では、投資用物件における固定資産税の仕組み、経費計上の方法、実質利回りへの影響について詳しく解説します。
本記事のポイント
- 投資用でも居住用賃貸なら住宅用地の特例が適用(小規模住宅用地1/6軽減)
- 固定資産税・都市計画税は不動産所得の必要経費として全額計上可能
- 中古戸建ては経年により評価額が減少し、税負担も軽減される
- 購入時の精算金も経費計上でき、節税効果がある
- 固定資産税は実質利回りに数%程度の影響を与える
(1) 固定資産税の仕組みと税率
固定資産税は、土地・家屋・償却資産に課される市町村税です。総務省の資料によると、毎年1月1日時点の所有者が納税義務を負います。
固定資産税の基本
- 課税基準日: 毎年1月1日
- 納税義務者: 1月1日時点の所有者
- 税率: 標準税率1.4%(市町村により異なる場合あり)
- 納付時期: 年4回分割納付が一般的
投資用物件でも課税の仕組みは同じです。固定資産税評価額(公示地価の約70%)に税率を乗じて税額を算出します。
(2) 都市計画税との違いと合算納付
総務省の資料によると、都市計画税は市街化区域内の不動産に課される目的税です。
固定資産税と都市計画税の比較
項目 | 固定資産税 | 都市計画税 |
---|---|---|
課税対象 | 全国の土地・家屋 | 市街化区域内のみ |
税率 | 標準1.4% | 上限0.3% |
納付 | 4回分割納付 | 固定資産税と合算 |
用途 | 一般財源 | 都市計画事業 |
投資用中古戸建てが市街化区域内にある場合、固定資産税と都市計画税を合算した納税通知書が届きます。
(3) 中古戸建ての評価額の特徴
中古戸建ては築年数により建物部分の評価額が減価します。
経年減価による評価額の推移
- 築5年: 新築時の約80%
- 築10年: 新築時の約60%
- 築15年: 新築時の約40%
- 築20年以上: 新築時の約20%(下限値)
土地部分は築年数とは無関係ですが、建物部分は年々評価額が下がるため、固定資産税も徐々に減少します。投資用物件では、この減価を長期収支計画に織り込むことが重要です。
住宅用地の課税標準特例は投資用でも適用される
(1) 小規模住宅用地(200㎡以下)は評価額の1/6
総務省の資料によると、住宅用地には課税標準額を軽減する特例があります。
住宅用地の特例
- 小規模住宅用地(200㎡以下): 固定資産税評価額の1/6、都市計画税評価額の1/3
- 一般住宅用地(200㎡超): 固定資産税評価額の1/3、都市計画税評価額の2/3
この特例は投資用物件でも適用されます。例えば、150㎡の敷地に建つ投資用中古戸建ては、土地部分の課税標準額が1/6に軽減されます。
(2) 賃貸中でも住宅用地の特例が適用
投資用物件であっても、居住用として賃貸していれば住宅用地の特例が適用されます。
適用条件
- 1月1日時点で住宅の敷地として使用されている
- 建物が居住用家屋である(賃貸住宅も含む)
- 建物が存在していること
事務所や店舗として賃貸する場合は特例が適用されないため、用途によって税負担が大きく変わります。
(3) 空室時の適用可否の判断
空室期間が長期化した場合、住宅用地の特例が適用されるかは自治体の判断によります。
空室時の注意点
- 一時的な空室(数ヶ月程度): 原則として特例適用
- 長期空室(1年以上): 自治体により判断が分かれる
- 入居者募集中であることの証明が求められる場合あり
投資用物件では空室リスクを考慮し、万が一特例が外れた場合の税負担増加も収支計画に織り込んでおくことが望ましいでしょう。
固定資産税・都市計画税を必要経費として計上する
(1) 不動産所得の必要経費とは
国税庁の資料によると、賃貸収入を得るために支出した費用は不動産所得の必要経費として計上できます。
必要経費に該当する主な費用
- 固定資産税・都市計画税
- 減価償却費
- 修繕費・管理費
- 借入金利息
- 保険料
(2) 固定資産税の全額損金算入が可能
投資用物件の固定資産税・都市計画税は、全額を必要経費として損金算入できます。
経費計上による節税効果の例
- 年間固定資産税: 10万円
- 所得税率(課税所得による): 20%
- 住民税率: 10%
- 節税効果: 10万円 × 30% = 3万円
実質的な税負担は7万円となり、経費計上により3割程度の節税効果が得られます。
(3) 確定申告での計上方法とタイミング
固定資産税の計上時期は、発生主義または現金主義のいずれかを選択できます。
計上タイミング
- 発生主義: 賦課決定日(納税通知書の到達日)に計上
- 現金主義: 実際に納付した日に計上
一度選択した方法は継続適用が原則です。青色申告の場合は発生主義が基本ですが、10万円控除の場合は現金主義も選択可能です。
中古戸建て購入時の固定資産税精算の仕組み
(1) 売主・買主間での日割り精算
国土交通省の資料によると、中古不動産取引では固定資産税を売主・買主間で精算するのが一般的です。
精算の流れ
- 売主が年税額を確認(納税通知書)
- 引渡日を基準に日割り計算
- 買主負担分を清算金として授受
- 売主が全額を納税
この精算は法的義務ではなく商慣行ですが、ほぼすべての取引で実施されています。
(2) 起算日による違い(1月1日または4月1日)
固定資産税精算の起算日は地域により異なります。
地域別の起算日
- 関東(東京・神奈川など): 1月1日起算
- 関西(大阪・京都など): 4月1日起算
精算金額の差異(年税額12万円、7月1日引渡しの例)
起算日 | 買主負担期間 | 買主負担額 |
---|---|---|
1月1日(関東) | 7/1~12/31(184日) | 約6.0万円 |
4月1日(関西) | 7/1~3/31(274日) | 約9.0万円 |
起算日により精算金額が大きく変わるため、契約前に確認が必要です。
(3) 精算金の取り扱いと経費計上
購入時に支払った固定資産税精算金は、必要経費として計上できます。
経費計上の方法
- 精算金額を「租税公課」として計上
- 購入年の不動産所得から控除
- 領収書または決済書類を保管
例えば、7月に物件を購入し、6万円の精算金を支払った場合、その年の確定申告で6万円を経費計上できます。
固定資産税が投資収益に与える影響
(1) 実質利回りへの影響試算
固定資産税は賃貸経営のランニングコストとして、実質利回りに影響します。
利回り計算の例
- 物件価格: 2,000万円
- 年間家賃収入: 120万円(表面利回り6%)
- 年間固定資産税: 12万円
- その他経費(管理費等): 18万円
- 実質利回り: (120万円 - 12万円 - 18万円) / 2,000万円 = 4.5%
固定資産税だけで利回りが0.6%低下します。ただし、経費計上による節税効果(約3.6万円)を考慮すると、実質的な影響は0.4%程度です。
(2) 築年数による評価額減少と税負担軽減
中古戸建ては築年数の経過とともに建物評価額が減少し、固定資産税も減少します。
築年数による税負担の変化(建物部分)
- 築5年: 新築時の約80% → 固定資産税も約80%
- 築10年: 新築時の約60% → 固定資産税も約60%
- 築20年: 新築時の約20% → 固定資産税も約20%
長期保有では税負担が軽減されるため、築年数の経過がキャッシュフローにプラスに働くケースもあります。
(3) 減価償却との関係
固定資産税は減価償却とは別の制度ですが、両者は投資収益に相互に影響します。
減価償却と固定資産税の関係
- 減価償却: 建物取得費を耐用年数で按分し経費計上(キャッシュアウトなし)
- 固定資産税: 年間の税負担(キャッシュアウトあり)
- 両者の合計が経費として所得税を減らす
木造中古戸建ての耐用年数は短く(築20年超なら4年)、減価償却費が大きくなるため、固定資産税と合わせて大きな節税効果が期待できます。
投資用中古戸建ての長期的な税負担管理
(1) 評価替えによる税額変動
固定資産税評価額は3年ごとに評価替えが実施されます。
評価替えの影響
- 土地: 地価動向により増減(近年は横ばい~微減傾向)
- 建物: 経年減価により減少
- 3年サイクルで税額が変動する可能性
評価替え年度(2024年、2027年など)には納税通知書をよく確認し、税額の変動を収支計画に反映させましょう。
(2) ランニングコストとしての位置づけ
国土交通省の資料によると、賃貸住宅経営では固定資産税を含むランニングコストの管理が重要です。
主なランニングコスト
- 固定資産税・都市計画税: 年間数万円~十数万円
- 管理費・修繕費: 年間家賃の10~20%
- 借入金利息: ローン残高により変動
- 保険料: 年間数万円
固定資産税はランニングコストの1~2割程度を占めるため、収支計画では正確な見積もりが必要です。
(3) 税理士への相談を検討すべきケース
以下の場合は税理士への相談を検討しましょう。
税理士相談が推奨されるケース
- 複数物件を保有している
- 事業的規模(5棟10室以上)に達している
- 青色申告特別控除65万円を受けたい
- 相続や贈与で取得した物件がある
- 固定資産税の評価額に疑問がある
税理士に相談することで、適切な経費計上や節税対策が可能になり、固定資産税を含む税負担を最適化できます。
まとめ
投資用中古戸建ての固定資産税・都市計画税について、重要なポイントを整理します。
押さえるべきポイント
- 投資用でも居住用賃貸なら住宅用地の特例が適用され、小規模住宅用地は評価額の1/6に軽減
- 固定資産税・都市計画税は不動産所得の必要経費として全額計上でき、所得税・住民税の節税効果がある
- 中古戸建ては築年数により建物評価額が減価し、固定資産税も徐々に減少する
- 購入時の精算金も経費計上できるため、実質的な税負担は軽減される
- 固定資産税は実質利回りに数%程度影響するため、収支計画に正確に織り込む必要がある
- 3年ごとの評価替えで税額が変動する可能性があり、長期的な視点での管理が重要
固定資産税は賃貸経営の重要なランニングコストですが、適切に経費計上することで節税効果が得られます。収支計画に正確に反映させ、長期的な視点で税負担を管理していきましょう。不明点がある場合は、税理士や不動産会社に相談することをお勧めします。