離婚売却新築マンションの固定資産税・都市計画税|完全ガイド

公開日: 2025/10/19

離婚売却と固定資産税の関係

離婚に伴い新築マンションを売却する場合、固定資産税・都市計画税の取り扱いが重要な論点となります。特に新築マンションには5年間の減額特例が適用されているため、離婚協議中や財産分与時の税負担の分担を正しく理解しておく必要があります。

本記事では、離婚売却時の固定資産税・都市計画税の基本から、新築特例の適用、財産分与時の精算実務まで、実務上重要なポイントを解説します。

この記事のポイント:

  • 固定資産税は毎年1月1日時点の所有者に課税される
  • 新築マンションは5年間、建物部分の固定資産税が1/2に減額される
  • 共有名義の場合は連帯納税義務があり、共有者全員が納税責任を負う
  • 離婚協議中の税金支払い分担は財産分与協議書に明記すべき
  • 特例期間中の売却でも買主への特例引継ぎは適用されない

固定資産税・都市計画税の基本知識

固定資産税の課税の仕組み

固定資産税は、毎年1月1日時点で土地・家屋・償却資産を所有している人に課される市町村税です(総務省 固定資産税)。標準税率は1.4%ですが、市町村により異なる場合があります。

課税のタイミングは毎年1月1日時点の所有者であることが重要です。離婚に伴い年内に売却しても、その年の固定資産税は1月1日時点の所有者が納税義務を負います。

都市計画税の概要

都市計画税は、都市計画法による市街化区域内の土地・家屋の所有者に課される目的税です(総務省 都市計画税)。税率の上限は0.3%で、固定資産税とあわせて納付します。

新築マンションの減額特例

新築マンションには、一定期間、建物部分の固定資産税が1/2に減額される特例があります。適用要件は以下の通りです:

  • 床面積50㎡以上280㎡以下
  • マンション(3階建以上の耐火・準耐火建築物)は5年間適用
  • 認定長期優良住宅の場合は7年間適用

離婚により特例適用期間中に売却する場合、残存期間の特例は買主に引き継がれず、1月1日時点の所有者にのみ適用される点に注意が必要です。

離婚による財産分与と固定資産税

財産分与と名義変更のタイミング

離婚による財産分与で不動産を取得した場合、税務上の取得時期は財産分与の原因となった事実が発生した時とされます(国税庁 財産分与により取得した資産の取得時期)。

ただし、固定資産税の納税義務者は1月1日時点の登記名義人です。離婚協議中に名義変更が遅れると、本来負担すべきでない人に課税される可能性があります。

財産分与する側の税負担

離婚による財産分与で不動産を渡す側は、譲渡所得税の課税対象となる場合があります(国税庁 離婚による財産分与と譲渡所得)。財産分与時の時価が取得費を上回る場合、譲渡益に対して課税されます。

固定資産税とは別の税負担ですが、財産分与協議では総合的な税負担を考慮した分担が重要です。

共有名義の連帯納税義務

共有名義の不動産の場合、共有者全員が固定資産税の連帯納税義務を負います。離婚協議中であっても、1月1日時点で共有名義のままであれば、どちらか一方が全額納付する義務があります。

納税後の求償権は民法により保護されますが、トラブル防止のため、離婚協議書に固定資産税の分担方法を明記することが推奨されます。

売却前に確認すべき手続き

財産分与登記の手続き

離婚に伴う不動産の名義変更(財産分与登記)は、離婚届提出後に行います(法務省 離婚と不動産登記)。必要書類は以下の通りです:

  • 離婚届受理証明書
  • 財産分与協議書(実印押印・印鑑証明書添付)
  • 登記済証または登記識別情報
  • 固定資産税評価証明書

登記完了まで通常2週間程度かかります。年末に離婚・売却する場合は、1月1日までに登記を完了させないと、翌年の固定資産税が旧名義人に課税されます。

固定資産税の精算

中古マンション取引では、売主・買主間で固定資産税を日割り計算して精算する慣習があります。起算日は地域により異なり、関東は1月1日、関西は4月1日が一般的です。

離婚に伴う売却でも、この精算慣行は適用されます。引渡日を基準に日割り計算し、買主が負担すべき分を売買代金から調整します。

新築特例終了後の税負担増加

特例終了のタイミング

新築マンションの5年間の減額特例が終了すると、建物部分の固定資産税が約2倍になります。特例適用の起算日は新築年の翌年1月1日です。

例えば、2023年12月に新築マンションを取得した場合:

  • 2024年度〜2028年度:建物部分1/2減額
  • 2029年度〜:通常税額

離婚協議が長期化し、特例終了年度をまたぐ場合、税負担が急増する点に注意が必要です。

税額シミュレーション

固定資産税評価額3,000万円(土地1,500万円、建物1,500万円)の新築マンションの場合:

特例適用期間中(5年間):

  • 土地:1,500万円 × 1/6(小規模住宅用地特例) × 1.4% = 35,000円
  • 建物:1,500万円 × 1/2(新築特例) × 1.4% = 105,000円
  • 都市計画税(土地):1,500万円 × 1/3 × 0.3% = 15,000円
  • 都市計画税(建物):1,500万円 × 0.3% = 45,000円
  • 合計:約20万円

特例終了後(6年目以降):

  • 土地:35,000円
  • 建物:1,500万円 × 1.4% = 210,000円
  • 都市計画税(土地):15,000円
  • 都市計画税(建物):45,000円
  • 合計:約30.5万円

特例終了により、年間約10万円の負担増となります。

離婚協議書への記載事項

固定資産税の分担条項

離婚協議書には、以下の事項を明記することが推奨されます:

  1. 分担割合: 共有持分に応じた負担、または合意により決定
  2. 支払方法: 一方が納付後に他方へ求償、または事前に分担金を支払う
  3. 納付期限: 市町村からの納税通知書到達後○日以内に分担分を支払う
  4. 売却時の精算: 売却代金から未払い税額を優先控除する

財産分与時の税負担の考慮

離婚による財産分与では、不動産の評価額だけでなく、以下の税負担も考慮した総合的な分与が望ましいとされています:

  • 固定資産税・都市計画税の当年分・翌年分
  • 譲渡所得税(財産分与する側の負担)
  • 不動産取得税(財産分与を受ける側の負担)
  • 登録免許税(財産分与登記の費用)

まとめ

離婚に伴う新築マンション売却時の固定資産税・都市計画税は、1月1日時点の所有者に課税されることが基本です。新築マンションの5年間の減額特例は、離婚売却により中断されることはありませんが、買主への引継ぎもありません。

共有名義の場合は連帯納税義務があるため、離婚協議中の税負担分担を明確にし、財産分与協議書に明記することが重要です。また、特例終了後の税負担増加も考慮し、売却時期を検討する必要があります。

固定資産税は地方税であり、自治体により取り扱いが異なる場合があります。具体的な税額や手続きについては、市町村の税務課や税理士に相談することをおすすめします。

よくある質問

Q1離婚でマンションを売却する場合、固定資産税は誰が支払いますか?

A1固定資産税は毎年1月1日時点の所有者に課税されます。離婚に伴い年内に売却しても、その年の固定資産税は1月1日時点の所有者が納税義務を負います。共有名義の場合は共有者全員に連帯納税義務があるため、どちらか一方が全額納付する義務があります。納税後の求償権は民法により保護されますが、離婚協議書に分担方法を明記することが推奨されます。

Q2新築マンションの固定資産税減額特例は離婚売却でどうなりますか?

A2新築マンションの5年間の減額特例(建物部分1/2)は、1月1日時点の所有者に適用されます。離婚により特例適用期間中に売却しても、売却年の1月1日時点で所有していれば特例が適用されます。ただし、残存期間の特例は買主に引き継がれず、買主は通常税額を負担します。特例終了年度をまたぐ場合、税負担が約2倍になる点に注意が必要です。

Q3離婚協議中の固定資産税の分担はどうすればよいですか?

A3離婚協議書に固定資産税の分担条項を明記することが推奨されます。共有持分に応じた負担または合意により決定し、一方が納付後に他方へ求償する方法、または事前に分担金を支払う方法があります。市町村からの納税通知書到達後の支払期限、売却時の精算方法も明記すべきです。共有名義の場合は連帯納税義務があるため、明確な合意が重要です。

Q4離婚で財産分与する際、固定資産税以外にどんな税金がかかりますか?

A4財産分与で不動産を渡す側は、時価が取得費を上回る場合に譲渡所得税が課税されます。財産分与を受ける側は原則として不動産取得税が課税されます(離婚による財産分与は非課税となる場合あり)。また、財産分与登記の登録免許税(固定資産税評価額の2%)も発生します。固定資産税・都市計画税の当年分・翌年分も含め、総合的な税負担を考慮した分与が望ましいとされています。

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