新築マンションを売却する際、固定資産税や都市計画税の負担がどうなるのか気になる方は多いでしょう。特に年度途中での売却や、減額措置期間中の売却では、税負担がどのように分担されるのかを理解しておく必要があります。
この記事では、新築マンション売却時の固定資産税・都市計画税について、課税の仕組みから実務上の清算方法まで基礎知識を解説します。
この記事のポイント
- 固定資産税は毎年1月1日時点の所有者が納税義務を負う
- 新築マンションの減額措置(3-7年間1/2)は買主に引き継がれる
- 売却時の日割り清算は法的義務ではなく商習慣である
- マンションは専有部分と土地持分で別々に評価・課税される
- 引渡し日での按分精算が一般的だが地域により起算日が異なる
新築マンション売却時の固定資産税・都市計画税の基礎
固定資産税の仕組みと標準税率1.4%
固定資産税は、土地・家屋・償却資産に課される市町村税です(総務省)。毎年1月1日時点の所有者が納税義務を負うため、年度途中で売却した場合でも、その年度の納税義務者は売主となります。
税率は標準で1.4%ですが、自治体により異なる場合があります。税額は以下の計算式で算出されます。
固定資産税額 = 課税標準額 × 税率(標準1.4%)
マンションの場合、専有部分(建物)と土地持分がそれぞれ評価され、合計額に対して課税されます。
都市計画税の目的と税率上限0.3%
都市計画税は、都市計画事業や土地区画整理事業の費用に充てるための目的税です(総務省)。市街化区域内の不動産に課税され、税率の上限は0.3%とされています。
都市計画税額 = 課税標準額 × 税率(上限0.3%)
市街化調整区域や非線引き区域では課税されないため、購入時にエリアを確認しておくことが重要です。
マンション特有の課税構造(専有部分+土地持分)
マンションの固定資産税は、以下の2つの要素で構成されます。
課税対象 | 評価方法 |
---|---|
専有部分(建物) | 専有面積に応じて評価 |
土地持分 | 敷地全体を専有面積等で按分 |
土地持分は、マンション敷地全体の評価額を各戸の専有面積や持分割合で按分して算出されます。戸建てと比較すると土地持分が小さいため、土地に係る税負担は軽減される傾向にあります。
新築マンションの固定資産税評価と計算方法
新築の初回評価(完成翌年)
新築マンションの固定資産税は、完成(登記)の翌年度から課税が開始されます。例えば、2024年12月に完成した物件であれば、2025年度から納税義務が発生します。
初回の評価額は、建築費や使用資材、設備等を基に算定されます。その後、3年ごとに評価替えが行われ、経年劣化等を考慮して評価額が見直されます。
専有面積による建物評価
建物部分(専有部分)の評価は、専有面積に応じて算定されます。評価の際には、以下の要素が考慮されます。
- 構造(RC造、SRC造等)
- 設備(エレベーター、オートロック等)
- 築年数(経年減点補正率)
- 専有面積
新築時は減点補正がないため評価額が高く、経年とともに下がっていきます。
共有持分による土地評価
土地部分の評価は、マンション敷地全体の評価額を各戸の持分で按分して算出されます。土地の評価額は路線価や固定資産税評価基準に基づき、市町村が決定します。
マンションでは敷地を多数の区分所有者で共有するため、1戸あたりの土地持分は戸建てと比較して小さくなります。
新築住宅の減額措置と軽減期間
新築マンションの減額(3-7年間1/2)
新築住宅に対しては、一定期間、固定資産税額が2分の1に減額される措置があります(総務省)。マンション(3階建て以上の耐火・準耐火建築物)の場合、新築後5年間、建物部分の固定資産税が半額になります。
減額期間
- 一般のマンション(3階建て以上):5年間
- 長期優良住宅認定マンション:7年間
この減額措置は建物部分のみに適用され、土地部分には適用されません。
タワーマンションの減額期間(7年間)
高さ60mを超える、いわゆるタワーマンション(超高層マンション)については、減額期間が7年間に延長されます。ただし、この特例は平成30年度以降に新築されたタワーマンションに限られる場合があるため、各自治体の規定を確認することが重要です。
減額期間中の売却と引継ぎ
新築住宅の減額措置は物件に紐づく制度であるため、減額期間中に売却しても、残りの期間は買主に引き継がれます。
例えば、新築後3年目に売却した場合、買主は残り2年間(一般マンションの場合)の減額措置を受けられます。ただし、減額期間終了後は税額が約2倍になるため、購入検討者にはこの点を説明しておくことが望ましいでしょう。
売却時の固定資産税清算実務
1月1日時点の所有者が納税義務者
固定資産税の納税義務者は、毎年1月1日時点で登記簿に記載されている所有者です(東京都主税局)。年度途中で売却した場合でも、その年度の納税義務は売主が負います。
つまり、2025年3月に売却しても、2025年度(2025年4月~2026年3月)の固定資産税は売主が納税する義務があります。
引渡し日での日割り清算
実務では、引渡し日を基準に固定資産税・都市計画税を日割り計算で按分精算するのが一般的です。売主が年度全額を納税し、買主が引渡し日以降の日数分を売主に支払う形で清算します。
按分精算の例
- 年間税額:120,000円
- 引渡し日:2025年7月1日
- 4月1日起算の場合、買主負担分:120,000円 × 275日/365日 ≒ 90,411円
この精算方法は法的義務ではなく、あくまで商習慣です。売買契約書に精算条項を明記することが重要です。
日割り起算日の地域差(関東1/1、関西4/1)
日割り清算の起算日は地域により慣習が異なります。
地域 | 起算日 |
---|---|
関東エリア | 1月1日 |
関西エリア | 4月1日 |
関東では1月1日を起算日とするため、例えば3月末引渡しでは買主負担分が少なくなります。一方、関西では4月1日起算が一般的です。不動産会社に確認し、契約書に明記することが重要です。
住宅用地特例の適用と注意点
小規模住宅用地の特例(マンション敷地持分で按分)
住宅用地には、固定資産税・都市計画税の軽減特例があります。小規模住宅用地(200㎡以下の部分)については、以下の軽減が適用されます。
税目 | 軽減率 |
---|---|
固定資産税 | 課税標準額が1/6 |
都市計画税 | 課税標準額が1/3 |
マンションの場合、敷地全体を戸数や専有面積で按分した土地持分が対象となります。
マンション敷地の特例適用
マンションでは、敷地全体を区分所有者全員で共有しているため、各戸の土地持分が小さくなります。多くの場合、1戸あたりの持分は200㎡以下となるため、小規模住宅用地の特例が適用されます。
この特例により、土地部分の税負担は大幅に軽減されます。
売却後の特例適用
住宅用地特例は、1月1日時点で住宅の敷地として利用されている土地に適用されます。売却により所有者が変わっても、買主が居住用として利用する限り、特例は継続して適用されます。
売却タイミングによる税負担の違い
売却のタイミングによって、固定資産税の負担に違いが生じます。
年度初め(4-6月)の売却
- 売主:納税通知前に売却可能、買主への精算が必要
- 買主:年度のほとんどを負担
年度途中(7-12月)の売却
- 売主:既に納税済み、買主から精算金を受け取る
- 買主:残り期間分のみ負担
年末(1-3月)の売却
- 売主:翌年度の納税義務なし
- 買主:翌年度から納税義務発生、当年度の大部分を負担
減額措置期間中の売却では、買主が残りの軽減期間を享受できる点をアピールポイントとして活用できます。
まとめ
新築マンション売却時の固定資産税・都市計画税について、以下のポイントを押さえておきましょう。
- 納税義務者は1月1日時点の所有者:年度途中売却でも売主が納税
- 引渡し日で日割り精算:商習慣であり法的義務ではない、契約書への明記が重要
- 減額措置は買主に引き継がれる:新築後5-7年間は建物部分が1/2に軽減
- マンションは専有部分+土地持分で評価:土地持分が小さいため土地税負担は軽め
- 住宅用地特例の適用:土地部分は課税標準額が1/6(固定資産税)に軽減
売却時の固定資産税精算は地域や契約内容により異なるため、不動産会社や税理士に確認しながら進めることをおすすめします。