投資用新築戸建ての固定資産税・都市計画税を理解して収益計画を立てよう
投資目的で新築戸建てを購入する際、固定資産税・都市計画税は重要なランニングコストです。これらの税金は不動産所得の必要経費として計上できるため、確定申告での節税効果があります。また、新築住宅の軽減措置により3年間は税負担が軽減されますが、4年目以降は税額が増加します。長期的な投資収益を正確に見積もるためには、これらの税金の仕組みを理解することが不可欠です。
この記事のポイント
- 新築戸建ては3年間、建物部分の固定資産税が1/2に軽減される(投資用でも適用)
- 住宅用地の特例により、土地部分の課税標準額が1/6に軽減される(賃貸中でも適用)
- 固定資産税・都市計画税は不動産所得の必要経費として全額損金算入可能
- 軽減期間終了後(4年目〜)は税額が増加するため、長期的な収支計画が必要
- 空室期間中の住宅用地特例の適用可否は自治体の判断による
1. 投資用新築戸建ての固定資産税の基本
(1) 固定資産税の仕組みと税率
固定資産税は、毎年1月1日時点で土地・建物を所有している者に課される地方税です。標準税率は1.4%で、固定資産税評価額(課税標準額)に税率を掛けて計算されます。
投資用不動産でも、自己居住用と同じ税率が適用されます。
(2) 都市計画税との違いと合算納付
都市計画税は、市街化区域内の土地・建物に課される目的税で、都市計画事業や土地区画整理事業の財源となります。税率は上限0.3%で、各自治体が条例で決定します。
固定資産税と都市計画税は、同じ納税通知書で合算して納付します。
(3) 納税時期と納付方法
固定資産税・都市計画税の納税通知書は、毎年4月頃に市区町村から送付されます。年4回に分けて納付するのが一般的です。
投資用不動産の場合、口座振替やクレジットカード払いの設定をしておくと、複数物件の管理が容易になります。
2. 新築戸建ての軽減措置は投資用でも適用される
(1) 3年間の軽減措置の内容と要件
新築戸建ては、建物部分の固定資産税が3年間、1/2に軽減されます。投資用でも、居住用として賃貸すれば適用されます。
適用要件:
- 居住部分の床面積が50㎡以上280㎡以下
- 新築後3年間
- 120㎡相当分まで軽減
この特例は建物部分のみに適用され、土地部分には適用されません。
(2) 長期優良住宅なら5年間の軽減
認定長期優良住宅の場合、新築住宅の減額特例の期間が5年間に延長されます。耐震性・省エネ性能などの基準を満たす必要があります。
長期優良住宅の認定を取得することで、2年間の軽減期間延長により、投資初期の税負担をさらに抑えることができます。
(3) 投資用でも適用される条件
投資用新築戸建てでも、居住用として賃貸していれば軽減措置が適用されます。ただし、事務所や店舗として貸し出す場合は適用外となります。
賃貸契約書に「居住用」と明記し、実際に居住用として使用されていることが条件です。
3. 住宅用地の課税標準特例で土地の税負担を軽減
(1) 小規模住宅用地(200㎡以下)は評価額の1/6
住宅用地の課税標準額は、以下のとおり軽減されます。
区分 | 固定資産税 | 都市計画税 |
---|---|---|
小規模住宅用地(200㎡以下) | 評価額の1/6 | 評価額の1/3 |
一般住宅用地(200㎡超) | 評価額の1/3 | 評価額の2/3 |
この特例は、建物が存在する限り適用されます。
(2) 賃貸中でも住宅用地の特例が適用
投資用不動産でも、居住用として賃貸していれば住宅用地の特例が適用されます。自己居住用と同じ軽減措置が受けられるため、税負担を大幅に抑えることができます。
(3) 空室時の適用可否の判断
一時的な空室期間中でも、住宅用地の特例は継続して適用されます。ただし、恒常的に空室の場合や建物を取り壊した場合は、特例が外される可能性があります。
自治体の判断により異なるため、空室期間が長期化する場合は、事前に市区町村の固定資産税課に確認することが重要です。
4. 固定資産税・都市計画税を必要経費として計上する
(1) 不動産所得の必要経費とは
投資用不動産の賃貸収入は、不動産所得として確定申告が必要です。不動産所得の計算では、賃貸収入を得るために支出した費用を必要経費として差し引くことができます。
(2) 固定資産税の全額損金算入が可能
固定資産税・都市計画税は、不動産所得の必要経費として全額計上可能です。これにより、所得税・住民税の節税効果があります。
【計算例】
- 賃貸収入:月10万円 × 12か月 = 120万円/年
- 固定資産税・都市計画税:15万円/年
- その他経費(管理費、修繕費等):20万円/年
- 不動産所得:120万円 - 15万円 - 20万円 = 85万円
所得税率20%の場合、固定資産税15万円の経費計上により、所得税3万円(15万円 × 20%)の節税効果があります。
(3) 確定申告での計上方法
固定資産税・都市計画税は、確定申告書の「不動産所得の収支内訳書」の「租税公課」欄に記載します。納税通知書の金額をそのまま計上すればよいため、計算は簡単です。
5. 軽減期間終了後の税額変化と投資収益への影響
(1) 4年目以降の税額増加
新築住宅の減額特例は3年間で終了します。4年目以降は建物部分の固定資産税が通常の税額に戻るため、税額が増加します。
【計算例:土地100㎡、建物延床面積100㎡の新築戸建て】
- 土地評価額:1,500万円
- 建物評価額:1,000万円
軽減措置適用中(1〜3年目)
- 固定資産税:(1,500万円 × 1/6 + 1,000万円 × 1/2) × 1.4% = 10.5万円/年
- 都市計画税:(1,500万円 × 1/3 + 1,000万円 × 1/2) × 0.3% = 3.0万円/年
- 合計:13.5万円/年
軽減措置終了後(4年目〜)
- 固定資産税:(1,500万円 × 1/6 + 1,000万円) × 1.4% = 17.5万円/年
- 都市計画税:(1,500万円 × 1/3 + 1,000万円) × 0.3% = 4.5万円/年
- 合計:22.0万円/年
4年目以降は年間8.5万円の税負担増加となります。
(2) 投資収益率への影響試算
【投資収支シミュレーション】
- 賃貸収入:月10万円 × 12か月 = 120万円/年
- 1〜3年目:固定資産税13.5万円 → 実質収入106.5万円
- 4年目〜:固定資産税22.0万円 → 実質収入98.0万円
4年目以降は実質収入が約8%減少します。ただし、固定資産税は経費計上できるため、所得税の節税効果により実際の手取り減少額は限定的です(所得税率20%なら、8.5万円 × 20% = 1.7万円の税還付)。
(3) 減価償却との関係
建物は減価償却により、毎年評価額が下がります。木造戸建ての場合、法定耐用年数は22年で、毎年約4.5%ずつ評価額が減少します。
長期保有すると、減価償却により建物評価額が下がるため、固定資産税も徐々に減少していきます。
6. 長期的な投資収支シミュレーションと注意点
(1) 購入1年目〜3年目の収支
新築住宅の軽減措置により、建物部分の固定資産税が1/2になるため、投資初期の税負担が軽減されます。この期間は、投資収益率が高くなります。
(2) 4年目以降の収支変化
4年目以降は軽減措置が終了し、固定資産税が増加します。ただし、建物の減価償却により評価額が下がるため、固定資産税の増加幅は限定的です。
10年後には、建物評価額が約半分になるため、固定資産税も減少に転じます。
(3) 税理士への相談を検討すべきケース
以下のケースでは、税理士への相談を検討しましょう。
- 複数物件を保有している場合の確定申告
- 減価償却の計上方法の確認
- 消費税の課税事業者となる場合の税務処理
- 法人化を検討している場合の税務戦略
まとめ
投資用新築戸建ての固定資産税・都市計画税は、以下のポイントを押さえておきましょう。
- 新築戸建ては3年間、建物部分の固定資産税が1/2に軽減される(投資用でも居住用賃貸なら適用)
- 住宅用地の特例により、土地部分の課税標準額が1/6に軽減される(賃貸中でも適用)
- 固定資産税・都市計画税は不動産所得の必要経費として全額損金算入可能
- 軽減期間終了後(4年目〜)は税額が増加するが、経費計上により所得税が減少するため影響は限定的
- 長期保有では減価償却により建物評価額が下がるため、固定資産税も減少に転じる
投資用不動産の収益計算では、固定資産税・都市計画税を正確に見積もり、長期的な収支計画を立てることが成功の鍵です。