相続マンションの固定資産税・都市計画税|計算と軽減措置完全ガイド

公開日: 2025/10/19

相続購入マンションの固定資産税・都市計画税とは

相続でマンションを取得した場合、固定資産税と都市計画税の納税義務を引き継ぐことになります。これらの税金は毎年課されるため、相続後の資金計画に大きく影響します。課税の仕組みと軽減措置を正しく理解しておくことが重要です。

この記事のポイント

  • 固定資産税は1月1日時点の所有者に課される市町村税(標準税率1.4%)
  • 都市計画税は市街化区域内の物件に課される目的税(制限税率0.3%)
  • 相続発生時期によって納税義務の承継タイミングが異なる
  • 小規模住宅用地の特例で土地部分の課税標準が1/6に軽減
  • 新築マンションは3年間建物部分の税額が1/2に減額される

固定資産税の基本(標準税率1.4%)

固定資産税は、毎年1月1日時点の土地・建物所有者に課される市町村税です(総務省「固定資産税」)。

固定資産税の基本

  • 納税義務者:1月1日時点の所有者
  • 課税主体:市町村(東京23区は都)
  • 標準税率:1.4%(自治体により異なる場合あり)
  • 課税標準:固定資産税評価額(原則として時価の70%程度)

計算式 固定資産税 = 固定資産税評価額 × 税率(標準1.4%)

都市計画税の課税要件(市街化区域・制限税率0.3%)

都市計画税は、市街化区域内の土地・建物に課される目的税です(総務省「都市計画税」)。道路・公園・下水道等の都市計画事業の費用に充てられます。

都市計画税の基本

  • 課税対象:市街化区域内の土地・建物
  • 制限税率:0.3%以下(自治体により異なる)
  • 課税標準:固定資産税評価額
  • 非課税:市街化調整区域は課税されない

計算式 都市計画税 = 固定資産税評価額 × 税率(制限0.3%)

マンションが市街化区域内にある場合、固定資産税と都市計画税の両方が課税されます。

マンション特有の課税構造(専有部分+土地持分)

マンションの固定資産税は、専有部分(各戸の建物)と土地持分(敷地の共有持分)の両方に対して課税されます。

課税対象

  1. 建物部分:専有面積に基づく評価額
  2. 土地部分:敷地全体の評価額 × 各戸の共有持分割合

計算例

  • 専有面積:70㎡
  • 建物評価額:1,500万円
  • 敷地評価額:3億円
  • 共有持分:1/100
  • 土地評価額(自己分):3億円 × 1/100 = 300万円

合計評価額:1,500万円 + 300万円 = 1,800万円
固定資産税(軽減前):1,800万円 × 1.4% = 25.2万円

実際には後述する軽減措置が適用されるため、税額はこれより低くなります。

相続時の納税義務と課税タイミング

1月1日時点の所有者が納税義務者

固定資産税・都市計画税は、毎年1月1日時点の所有者が納税義務者となります(総務省「固定資産税」)。

課税タイミングの原則

  • 課税基準日:毎年1月1日
  • 納税義務者:1月1日時点の登記簿上の所有者
  • 年度途中の所有権移転:1月1日時点の所有者が1年分を納税

相続の場合も、この原則が適用されます。

相続発生日と納税義務の承継

相続が発生した時期によって、納税義務の承継タイミングが異なります。

パターン1:1月1日より前に相続が発生した場合

  • 1月1日時点の所有者:相続人
  • 納税義務者:相続人(当該年度から)
  • 納税通知書:相続人に送付

パターン2:1月1日より後に相続が発生した場合

  • 1月1日時点の所有者:被相続人
  • 納税義務者:被相続人(相続人が納税義務を承継)
  • 納税通知書:被相続人宛に送付(相続人が納税)

具体例

  • 相続発生日:2024年10月
  • 2024年度(1/1時点は被相続人):被相続人に課税、相続人が納税義務を承継
  • 2025年度(1/1時点は相続人):相続人に課税

遺産分割協議中の納税義務者の特定

相続発生後、遺産分割協議が完了していない場合でも、固定資産税の納税義務は発生します。

協議未了時の取扱い

  • 1月1日時点で遺産分割未了の場合:相続人全員が連帯して納税義務を負う
  • 自治体の対応:相続人代表者を指定して納税通知書を送付
  • 実際の負担:相続人間で協議して負担割合を決定

相続人代表者の指定 自治体は、相続人の中から代表者を指定し、納税通知書を送付します。代表者は他の相続人の分もまとめて納税し、後日相続人間で精算します。

遺産分割協議での決定事項

  • マンションを誰が相続するか
  • 固定資産税の負担割合
  • 過去に支払った固定資産税の精算方法

協議で決定した内容は、遺産分割協議書に明記します。

マンションの固定資産税評価と計算方法

専有面積による建物評価

マンションの建物部分の固定資産税評価額は、専有面積に基づいて算定されます。

評価の基本

  • 評価方法:再建築価格方式(建物を新築した場合の価格を基準)
  • 経年減価:築年数に応じて評価額が減少
  • 専有面積:各戸の床面積(壁芯面積ではなく内法面積)

評価額の目安

  • 新築時:建築費の50~70%程度
  • 築10年:新築時の60~70%程度
  • 築20年:新築時の40~50%程度

新築マンションの場合、相続後も建物評価額は比較的高い水準で維持されます。

共有持分による土地評価

マンションの土地部分は、敷地全体の評価額に各戸の共有持分割合を乗じて算定されます。

共有持分の決定方法 共有持分は、各戸の専有面積の割合で決定されるのが一般的です。

計算例

  • マンション総戸数:100戸
  • 各戸の専有面積:70㎡
  • マンション全体の専有面積合計:7,000㎡
  • 共有持分:70㎡ / 7,000㎡ = 1/100

土地評価額の計算

  • 敷地全体の固定資産税評価額:3億円
  • 自己の土地評価額:3億円 × 1/100 = 300万円

この土地評価額に対して固定資産税・都市計画税が課税されます。

評価替え(3年ごと)と税額変動

固定資産税評価額は、3年ごとに見直されます(評価替え)。

評価替えの仕組み

  • 基準年度:3年ごと(直近は2024年度)
  • 次回:2027年度
  • 評価方法:時価の変動を反映

税額変動の要因

  1. 建物の経年劣化による評価額の減少
  2. 土地の時価変動(地価の上昇・下落)
  3. 新築特例の終了(3年経過後)

一般的に、建物は経年劣化により評価額が下がるため、税額は徐々に減少します。ただし、土地の地価上昇や新築特例の終了により、税額が上昇するケースもあります。

相続後の軽減措置と特例適用

小規模住宅用地の特例(200㎡以下1/6)

住宅用地は、固定資産税・都市計画税の課税標準が軽減されます(総務省「住宅用地の特例」)。

軽減措置の内容

区分 固定資産税 都市計画税
小規模住宅用地(200㎡以下) 課税標準1/6 課税標準1/3
一般住宅用地(200㎡超) 課税標準1/3 課税標準2/3

マンションの場合の適用面積 マンションは、「敷地面積 / 総戸数 × 10」が各戸の適用面積の上限となります。

計算例

  • 敷地面積:3,000㎡
  • 総戸数:100戸
  • 適用面積上限:3,000㎡ / 100戸 × 10 = 300㎡

各戸の土地持分が200㎡以下であれば、全額が小規模住宅用地として1/6の軽減を受けられます。

税額の計算例

  • 土地評価額:300万円
  • 軽減前:300万円 × 1.4% = 4.2万円
  • 軽減後:300万円 × 1/6 × 1.4% = 0.7万円

年間3.5万円の軽減効果があります。

新築マンションの減額特例(3年間1/2)

新築マンションの建物部分は、3年間固定資産税が1/2に減額されます(総務省「新築住宅の減額特例」)。

特例の内容

  • 対象:新築後3年間(中高層耐火建築物)
  • 減額割合:建物部分の固定資産税1/2
  • 適用面積:120㎡まで(それを超える部分は通常課税)
  • 要件:床面積50㎡以上280㎡以下

注意点 都市計画税は減額対象外です。固定資産税のみが減額されます。

税額の計算例(新築マンション)

  • 建物評価額:1,500万円
  • 土地評価額:300万円(小規模住宅用地特例適用後:50万円相当)

1年目~3年目(新築特例期間中)

  • 建物:1,500万円 × 1.4% × 1/2 = 10.5万円
  • 土地:50万円相当 × 1.4% = 0.7万円
  • 合計:11.2万円/年

4年目以降(新築特例終了後)

  • 建物:1,500万円 × 1.4% = 21.0万円
  • 土地:0.7万円
  • 合計:21.7万円/年

新築特例が終了すると、税額が約2倍になります。資金計画に注意が必要です。

特例適用の継続条件

相続によりマンションを取得した場合でも、各種軽減措置は継続して適用されます。

継続適用される特例

  1. 小規模住宅用地の特例:居住用として使用している限り適用継続
  2. 新築住宅の減額特例:新築後3年間は相続後も残期間適用

適用が終了するケース

  • 住宅を取り壊した場合
  • 住宅用以外の用途に変更した場合(事務所、店舗等)
  • 空き家として放置し、管理不全状態になった場合

相続後も居住用として使用していれば、特例は継続適用されます。

納期と支払い方法の実務

固定資産税・都市計画税の納期は、自治体によって異なりますが、一般的には年4回に分けて納付します。

標準的な納期(東京都の例)

  • 第1期:6月
  • 第2期:9月
  • 第3期:12月
  • 第4期:翌年2月

納付方法

  1. 納付書による納付(金融機関、コンビニ等)
  2. 口座振替
  3. クレジットカード払い
  4. スマートフォン決済(PayPay、LINE Pay等)

一括納付 第1期の納期限までに一括納付することも可能です。ただし、一括納付による割引はありません。

相続直後の納付 相続発生直後で名義変更が完了していない場合でも、納税通知書が届いたら期限までに納付する必要があります。納付後、遺産分割協議で決定した負担割合に基づき、相続人間で精算します。

相続登記と固定資産税の関係

相続登記未了でも納税義務は発生する

相続登記が完了していなくても、固定資産税の納税義務は発生します。

登記と課税の関係

  • 登記簿上の所有者:被相続人のまま
  • 実際の所有者:相続人
  • 納税義務者:相続人(自治体が相続人を調査)

自治体は、戸籍謄本等を調査して相続人を特定し、納税通知書を送付します。

相続登記の義務化(2024年4月施行)

2024年4月から相続登記が義務化され、相続を知った日から3年以内に登記することが法律で義務付けられました。

義務化のポイント

  • 期限:相続開始を知った日から3年以内
  • 罰則:正当な理由なく登記しない場合、10万円以下の過料
  • 対象:2024年4月以前の相続も含む

相続登記が完了していないと、将来の売却や担保設定ができません。早期に登記手続きを進めることが重要です。

相続登記完了後の固定資産税

相続登記が完了すると、翌年度から正式に相続人宛に納税通知書が送付されます。

登記完了後の流れ

  1. 相続登記申請(法務局)
  2. 登記完了(1~2週間)
  3. 自治体への通知(法務局から自動的に通知)
  4. 翌年度から相続人宛に納税通知書送付

登記完了前でも納税義務は発生しているため、納税通知書が届いたら期限までに納付してください。

まとめ

相続でマンションを取得した場合、固定資産税と都市計画税の納税義務を引き継ぎます。毎年1月1日時点の所有者が納税義務者となるため、相続発生時期によって納税義務の承継タイミングが異なります。

小規模住宅用地の特例により土地部分の課税標準が1/6に軽減され、新築マンションの場合は3年間建物部分の税額が1/2に減額されます。これらの特例は相続後も継続適用されますが、新築特例終了後は税額が約2倍になるため、資金計画に注意が必要です。

相続登記は2024年4月から義務化され、相続から3年以内の登記が必要です。登記未了でも納税義務は発生するため、早期に司法書士に相談し、登記手続きを進めることをお勧めします。

よくある質問

Q1. 相続でマンションを取得した場合、いつから固定資産税を払うのですか?

A. 1月1日時点の所有者が納税義務者です。相続発生が1月1日より前なら相続人が当該年度から納税義務を負います。1月1日より後に相続が発生した場合は、被相続人に課税された税金を相続人が承継します。相続登記の完了時期は課税とは無関係です。

Q2. 遺産分割協議中で相続人が確定していない場合、固定資産税は誰が払いますか?

A. 1月1日時点で遺産分割未了の場合、相続人全員が連帯して納税義務を負います。自治体は相続人代表者を指定して納税通知書を送付します。実際の負担割合は相続人間で協議して決定します。

Q3. 相続したマンションが新築の場合、固定資産税の減額特例は引き継がれますか?

A. 新築住宅の減額特例(3年間建物部分1/2)は物件に紐づく制度で、相続後も残期間は継続適用されます。ただし特例終了後は税額が約2倍になるため、資金計画に注意が必要です。

Q4. 相続登記をしないと固定資産税は誰に請求されますか?

A. 登記簿上は被相続人のままでも、自治体は戸籍謄本等を調査して相続人を特定し、納税通知書を送付します。相続人が納税義務を負います。ただし、相続登記未了は2024年4月から過料の対象となるため、早期の登記が必須です。

よくある質問

Q1相続でマンションを取得した場合、いつから固定資産税を払うのですか?

A11月1日時点の所有者が納税義務者です。相続発生が1月1日より前なら相続人が当該年度から納税義務を負います。1月1日より後に相続が発生した場合は、被相続人に課税された税金を相続人が承継します。相続登記の完了時期は課税とは無関係です。

Q2遺産分割協議中で相続人が確定していない場合、固定資産税は誰が払いますか?

A21月1日時点で遺産分割未了の場合、相続人全員が連帯して納税義務を負います。自治体は相続人代表者を指定して納税通知書を送付します。実際の負担割合は相続人間で協議して決定します。

Q3相続したマンションが新築の場合、固定資産税の減額特例は引き継がれますか?

A3新築住宅の減額特例(3年間建物部分1/2)は物件に紐づく制度で、相続後も残期間は継続適用されます。ただし特例終了後は税額が約2倍になるため、資金計画に注意が必要です。

Q4相続登記をしないと固定資産税は誰に請求されますか?

A4登記簿上は被相続人のままでも、自治体は戸籍謄本等を調査して相続人を特定し、納税通知書を送付します。相続人が納税義務を負います。ただし、相続登記未了は2024年4月から過料の対象となるため、早期の登記が必須です。

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