相続マンション売却のローン基礎・審査対応|完全ガイド

公開日: 2025/10/14

相続マンション売却時のローン基礎知識

相続によりマンションを取得した際、住宅ローンが残っている場合の対応は団体信用生命保険(団信)の有無によって大きく異なります。団信に加入していれば保険金でローンが完済されますが、未加入の場合は相続人が債務を承継し返済を継続するか、売却による完済が必要です。本記事では、相続マンション売却時のローン処理について、実務上の重要ポイントを解説します。

この記事のポイント

  • 団体信用生命保険(団信)加入の有無で対応が大きく変わる
  • 団信未加入の場合、相続人は法定相続分に応じて債務を相続する
  • オーバーローン時は相続放棄も選択肢(3ヶ月以内に判断必要)
  • 相続登記完了後に売却手続きを進める
  • 相続税と譲渡所得は別課税、専門家への相談が重要

相続時の住宅ローンの扱い

債務の相続と承継

民法第896条により、相続人は被相続人の権利義務を承継します。住宅ローンも例外ではなく、相続人は債務を相続することになります。ただし、団体信用生命保険(団信)に加入している場合は、被相続人の死亡により保険金でローンが完済されるため、相続人が債務を負担することはありません。

法定相続分と債務の分担

複数の相続人がいる場合、民法により各相続人は法定相続分に応じて債務を相続します。例えば配偶者と子2人が相続人なら、配偶者1/2、子それぞれ1/4の割合で債務を負担します。ただし、遺産分割協議により分担方法を変更することは可能です。金融機関に対しては、協議内容にかかわらず法定相続分での責任を負う点に留意が必要です。

相続放棄の選択肢

住宅ローンの残債がマンションの価値を大きく上回る場合(オーバーローン)、相続放棄を検討する選択肢もあります。相続放棄は家庭裁判所への申述により行い、プラス・マイナスの財産すべてを放棄します。申述期限は相続開始を知った日から3ヶ月以内であり、期限内に判断が必要です(裁判所: 相続放棄の手続き)。

団体信用生命保険(団信)による返済

団信の仕組み

団体信用生命保険(団信)は、住宅ローン契約者が死亡または高度障害状態になった場合、保険金でローン残債が完済される保険です。多くの金融機関では住宅ローン契約時に団信加入が条件となっていますが、住宅金融支援機構のフラット35など、加入が任意の商品もあります。

保険金によるローン完済の流れ

団信に加入している場合、被相続人の死亡を金融機関に連絡し、団信の請求手続きを行います。保険会社の審査後、保険金でローンが完済され、抵当権が抹消されます。通常1-3ヶ月程度を要します。完済後は相続登記を行い、マンションを売却する場合は名義変更後に手続きを進めます。

団信未加入の場合

団信に加入していない場合、相続人が住宅ローンの債務を相続し、返済を継続する必要があります。相続人が返済を継続できない、または継続を希望しない場合は、マンションを売却してローンを完済する方法が一般的です。

残債がある場合の相続対応

残債の確認方法

まず金融機関に連絡し、住宅ローンの残債額を確認します。団信の加入有無も併せて確認しましょう。残債証明書の発行を依頼すると、正確な残高を把握できます。

相続人による返済継続

団信未加入で残債がある場合、相続人が返済を継続することになります。複数の相続人がいる場合は、誰が返済を負担するかを遺産分割協議で決定します。一人が全額負担する代わりにマンションを単独相続する、または売却して残債を清算し残額を分配するなどの方法があります。

売却による完済

返済継続が困難な場合や、相続人全員が売却を希望する場合は、マンションを売却してローンを完済します。売却価格が残債を上回れば(アンダーローン)、差額を相続人で分配できます。売却価格が残債を下回る場合(オーバーローン)は、不足分を自己資金で補填する必要があります。

状況 対応方法
団信加入あり 保険金でローン完済→相続登記→売却
団信未加入・アンダーローン 売却→ローン完済→残額分配
団信未加入・オーバーローン 自己資金補填または相続放棄

相続マンション売却とローン処理

相続登記完了後の売却

マンションを売却するには、まず相続登記により所有権を相続人名義に変更する必要があります。2024年4月から相続登記が義務化され、相続開始を知った日から3年以内に登記しないと10万円以下の過料が科される可能性があります。相続登記完了後、売却手続きを進めます。

抵当権抹消手続き

住宅ローンが残っている場合、マンションには金融機関の抵当権が設定されています。団信でローンが完済された場合や、売却代金でローンを完済する場合は、抵当権抹消登記を行います。通常は売却決済時に同時に手続きを行います。

オーバーローン時の対応

売却価格が残債を下回る場合、不足分を自己資金で補填できなければ売却できません。金融機関と交渉し、任意売却の可能性を探る方法もあります。いずれにせよ、早めに専門家(不動産会社、司法書士、弁護士)に相談することが重要です。

遺産分割協議とローン残債

遺産分割協議での扱い

遺産分割協議では、マンション(資産)と住宅ローン(負債)をセットで扱います。マンションを取得する相続人が住宅ローンの返済も負担する、売却して残債清算後に残額を分配するなど、相続人全員の合意により決定します。

複数相続人との調整

複数の相続人がいる場合、マンションの取得を希望する人、売却を希望する人で意見が分かれることがあります。残債がある場合は返済負担も考慮し、公平な分配となるよう調整が必要です。話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所の調停を利用する方法もあります。

協議書への記載事項

遺産分割協議書には、マンションを誰が取得するか、住宅ローンの返済を誰が負担するかを明記します。売却する場合は、売却代金から残債を清算し、残額を相続人間でどう分配するかを記載します。協議書は相続登記や金融機関への届出に必要となるため、正確に作成しましょう。

相続税との関係

相続税の計算と住宅ローン

相続税は、相続開始時(被相続人の死亡時)のマンション評価額から住宅ローン残債を差し引いた純資産額で計算されます。住宅ローン残債は債務控除の対象となります(国税庁: 相続税の申告と納税)。団信でローンが完済される場合、完済後の評価額が相続税の対象です。

売却時の譲渡所得

マンション売却時には、譲渡所得税が別途課税されます。相続により取得したマンションの取得費は、被相続人の取得費を引き継ぎます。売却価格から取得費と譲渡費用を差し引いた譲渡所得に対し、所有期間に応じた税率(短期39.63%、長期20.315%)で課税されます。所有期間は被相続人の取得日から起算します。

相続税申告期限と売却時期

相続税の申告期限は相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内です。期限前にマンションを売却すれば、実際の売却価格を相続税評価の参考にできます。ただし、売却を急ぐと不利な価格で売却することになりかねません。相続税の納税資金が必要な場合は、延納や物納の制度もあります。税理士に相談し、最適な売却時期を検討しましょう。

まとめ

相続マンション売却時のローン対応は、団体信用生命保険(団信)の有無により大きく異なります。団信加入なら保険金で完済されますが、未加入の場合は相続人が債務を承継します。複数相続人がいる場合は遺産分割協議で分担方法を決定し、オーバーローン時は相続放棄も選択肢です。売却には相続登記が必須であり、相続税と譲渡所得は別課税となります。早めに専門家に相談し、法的・税務的リスクを最小化しながら手続きを進めることが重要です。

よくある質問

Q1: 相続したマンションに住宅ローンが残っている場合、どう対応すべきですか?

A: 団体信用生命保険(団信)に加入していれば保険金でローンが完済されます。団信未加入の場合は相続人が債務を相続し、返済を継続するか売却して完済します。オーバーローン(残債が売却価格を上回る)なら自己資金補填または相続放棄も選択肢です。相続放棄は相続開始を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所への申述が必要です。

Q2: 団体信用生命保険(団信)でローンが完済される場合の手続きは?

A: 被相続人の死亡を金融機関に連絡し、団信の請求手続きを行います。保険会社の審査後、保険金でローンが完済され抵当権が抹消されます。通常1-3ヶ月程度かかります。完済後は相続登記を行い、売却する場合は名義変更後に手続きを進めます。

Q3: 複数の相続人がいる場合、住宅ローンの債務はどう分担されますか?

A: 民法により相続人は法定相続分に応じて債務を相続します。ただし遺産分割協議で分担方法を変更可能です。一人が全額負担する代わりにマンションを取得、売却して分配するなど柔軟に決定できます。金融機関への対応は原則として相続人全員で行いますが、代表者を決めることもできます。

Q4: 相続マンションの売却と相続税の関係は?

A: 相続税は相続開始時(被相続人の死亡時)の評価額で計算され、ローン残債は債務控除の対象です。売却時の譲渡所得は別途課税されます。相続税申告期限(10ヶ月)前に売却すれば実際の売却価格を参考にできますが、売却を急ぐと不利な価格になる可能性もあります。税理士に相談して税負担を最小化する売却時期を検討しましょう。

よくある質問

Q1相続したマンションに住宅ローンが残っている場合、どう対応すべきですか?

A1団体信用生命保険(団信)に加入していれば保険金でローンが完済されます。団信未加入の場合は相続人が債務を相続し、返済を継続するか売却して完済します。オーバーローン(残債が売却価格を上回る)なら自己資金補填または相続放棄も選択肢です。相続放棄は相続開始を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所への申述が必要です。

Q2団体信用生命保険(団信)でローンが完済される場合の手続きは?

A2被相続人の死亡を金融機関に連絡し、団信の請求手続きを行います。保険会社の審査後、保険金でローンが完済され抵当権が抹消されます。通常1-3ヶ月程度かかります。完済後は相続登記を行い、売却する場合は名義変更後に手続きを進めます。

Q3複数の相続人がいる場合、住宅ローンの債務はどう分担されますか?

A3民法により相続人は法定相続分に応じて債務を相続します。ただし遺産分割協議で分担方法を変更可能です。一人が全額負担する代わりにマンションを取得、売却して分配するなど柔軟に決定できます。金融機関への対応は原則として相続人全員で行いますが、代表者を決めることもできます。

Q4相続マンションの売却と相続税の関係は?

A4相続税は相続開始時(被相続人の死亡時)の評価額で計算され、ローン残債は債務控除の対象です。売却時の譲渡所得は別途課税されます。相続税申告期限(10ヶ月)前に売却すれば実際の売却価格を参考にできますが、売却を急ぐと不利な価格になる可能性もあります。税理士に相談して税負担を最小化する売却時期を検討しましょう。

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