離婚売却マンションのローン基礎|連帯債務・財産分与の処理

公開日: 2025/10/19

離婚時のマンション売却と住宅ローンの基礎知識

離婚によりマンションを売却する場合、共有名義の住宅ローンの処理が大きな課題となります。本記事では、離婚時のマンション売却における住宅ローンの基礎知識と実務を解説します。

この記事のポイント

  • 財産分与では住宅ローン残債も対象となる
  • 連帯債務・連帯保証・ペアローンで債務の扱いが異なる
  • マンション売却で完済し財産分与するのが最も確実
  • オーバーローンの場合は負債の分担方法を協議で決める
  • 離婚協議書には売却時期・価格・ローン分担を明記すべき

離婚時の住宅ローンと財産分与の基礎

(1) 財産分与の基本ルール

e-Gov法令検索による民法第768条によれば、財産分与は離婚時に夫婦の共有財産を分割する制度です。住宅ローン残債も財産分与の対象となり、マンションの売却価格とローン残債の差額を分配することになります。

(2) 住宅ローン残債の取り扱い

住宅ローンが残っている場合、売却価格でローンを完済できるか(アンダーローン)、完済できないか(オーバーローン)により、財産分与の方法が異なります。

(3) 慰謝料・養育費との区別

財産分与は慰謝料や養育費とは別の制度です。慰謝料は離婚原因による精神的損害の賠償、養育費は子どもの養育費用であり、財産分与とは分けて協議します。

連帯債務・連帯保証・ペアローンの取り扱い

(1) 連帯債務の特徴と離婚後の扱い

住宅金融支援機構によれば、連帯債務は夫婦が共同で債務を負う形態です。離婚後も両者に返済義務が残るため、マンションを売却してローンを完済するか、一方が債務を引き継ぐ(ただし金融機関の承諾が必要)かを選択します。

(2) 連帯保証の特徴と離婚後の扱い

連帯保証は一方が主債務者、他方が保証人となる形態です。保証人も全額返済義務を負うため、離婚後も保証人の責任は継続します。保証人から外れるには金融機関の承諾が必要ですが、認められるケースは少ないとされています。

(3) ペアローンの特徴と分割方法

ペアローンは夫婦それぞれが個別にローンを組む形態です。離婚時は各自のローンを各自が返済するのが原則ですが、マンションを売却する場合は両方のローンを完済する必要があります。

離婚時のマンション売却とローン処理

(1) 売却による完済の流れ

国土交通省によれば、マンション売却時は以下の流れで手続きを進めます。

  1. 不動産会社による査定
  2. 売買契約の締結
  3. 引き渡し(残代金決済)
  4. 住宅ローンの完済と抵当権抹消
  5. 売却益の分配(財産分与)

(2) 売却価格とローン残債の確認

売却前に住宅ローンの残債を確認し、売却価格で完済できるかを確認します。金融機関から残債証明書を取得しましょう。

(3) 離婚協議書への記載事項

離婚協議書には以下を明記することが推奨されます。

  • マンションの売却時期
  • 売却価格の目標額
  • ローン完済後の残金分配方法
  • オーバーローン時の負債分担
  • 売却までの返済分担
  • 抵当権抹消費用の負担

公正証書にすることで法的拘束力が高まります。

共有名義の解消方法

(1) 売却による解消

マンションを売却してローンを完済し、残金を分配する方法です。最も確実で公平な方法とされています。

(2) 名義変更による解消

一方が他方の持分を買い取り、単独名義にする方法です。ただし、金融機関の承諾が必要で、単独での返済能力が求められます。承諾が得られないケースも多いとされています。

(3) それぞれのメリット・デメリット

方法 メリット デメリット
売却 確実に解決、公平な分配 引越し費用、新居探しの負担
名義変更 住環境の継続 金融機関の承諾が必要、返済負担

オーバーローン時の財産分与

(1) オーバーローンの定義

オーバーローンとは、住宅ローン残債が物件の売却価格を上回る状態です。例えば、ローン残債3000万円に対し、売却価格が2500万円の場合、500万円のオーバーローンとなります。

(2) 負債の分担方法

オーバーローンの場合、負債も財産分与の対象となります。差額を自己資金で補填して売却するか、負債を含めた分担方法を協議で決めます。収入や資産状況に応じた公平な分担が原則です。

(3) 自己資金補填の準備

売却時にオーバーローンを解消するには、差額を自己資金で補填する必要があります。事前に資金を準備しておくことが重要です。

金融機関との協議手順

(1) 離婚決定時の相談タイミング

離婚が決定したら、早めに金融機関に相談します。売却予定であることを伝え、残債証明書の発行を依頼します。

(2) 債務者変更の可否確認

名義変更を希望する場合、金融機関に債務者変更の可否を確認します。単独での返済能力が求められるため、年収や勤続年数などが審査されます。

(3) 売却時の手続き調整

売却が決定したら、金融機関と引き渡し日の調整を行います。引き渡し当日に残債を完済し、抵当権抹消書類を受領します。

まとめ

離婚時のマンション売却では、共有名義の住宅ローンを適切に処理することが重要です。連帯債務・連帯保証・ペアローンで債務の扱いが異なるため、自分のローン形態を確認しましょう。

マンションを売却してローンを完済し財産分与するのが最も確実な方法です。オーバーローンの場合は負債の分担方法を協議で決め、離婚協議書に明記します。金融機関との協議も早めに開始し、スムーズな売却を実現しましょう。

不明な点は弁護士や司法書士に相談し、適切な手続きを進めることが推奨されます。

よくある質問

Q1離婚時に共有名義の住宅ローンはどう処理すべきですか?

A1マンションを売却してローンを完済し財産分与するのが最も確実です。売却価格で完済できない(オーバーローン)場合は、負債を含めた財産分与の協議が必要です。名義変更も選択肢ですが金融機関の承諾が必要で、単独での返済能力が求められます。専門家に相談して最適な方法を選択することが推奨されます。

Q2連帯債務・連帯保証・ペアローンの違いは何ですか?

A2住宅金融支援機構によれば、連帯債務は夫婦が共同で債務を負い、離婚後も両者に返済義務が残ります。連帯保証は一方が主債務者、他方が保証人で、保証人も全額返済義務を負います。ペアローンは夫婦それぞれが個別にローンを組む形態です。離婚時の処理方法が異なるため、自分のローン形態を確認することが重要です。

Q3離婚協議書にはローン関連で何を記載すべきですか?

A3マンションの売却時期、売却価格の目標額、ローン完済後の残金分配方法、オーバーローン時の負債分担、売却までの返済分担、抵当権抹消費用の負担などを明記します。公正証書にすることで法的拘束力が高まります。弁護士や司法書士に相談して漏れのない協議書を作成することが推奨されます。

Q4オーバーローンの場合、離婚時の財産分与はどうなりますか?

A4オーバーローン(ローン残債が売却価格を上回る状態)の場合、負債も財産分与の対象です。差額を自己資金で補填して売却するか、負債を含めた分担方法を協議で決めます。収入や資産状況に応じた公平な分担が原則です。金融機関との協議も必要なため、専門家のサポートを受けることが重要です。

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